SUPER BEAVER
『SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~駱駝革命21~』2024.3.24(SUN)埼玉・さいたまスーパーアリーナ
SUPER BEAVERが、3月24日(日)に埼玉・さいたまスーパーアリーナで『SUPER BEAVER 都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~駱駝革命21~』最終公演を開催した。
同公演は、昨年9月29日(金)広島・広島文化学園HBGホール公演を皮切りに全国10カ所21公演にわたり行われ、総計12万人を動員した過去最大規模のツアーの千秋楽。その期間中にも、大型フェスやイベント出演、最新アルバム『音楽』のリリースやそれに伴うメディア露出と、目まぐるしい日々を送ってきたSUPER BEAVER。当日は日本最大級のアリーナを埋め尽くす2万人が日本中から集まった。
SUPER BEAVER
開演を5分ほど過ぎた頃、暗闇から轟く上杉研太(Ba)のマッドなベース、藤原“35才”広明(Dr)の硬質なビート、柳沢亮太(Gt)の歪んだギターが合流し、広大な空間をレーザービームが旋回する中、そこにゆっくりと手を叩いて渋谷龍太(Vo)が登場。1曲目の「グラデーション」から、キャリア19年目にして今でもライブは年間100本以上と、徹底的に現場主義なバンドサウンドをぶっ放す!
「ようこそさいたまスーパーアリーナへ! 本日が正真正銘のツアーファイナル。SUPER BEAVER、気合いを入れてやって参りますので、最後までよろしくお願いします!」と渋谷が宣言すれば、柳沢のリフを始まりの合図に「ひたむき」へ突入。曲中に「一番上、よく見えますよ。その下、その一つ下も。ていうか全部よく見えてるんで!」と、はるかかなたの客席にまで目を配る渋谷。もはや促すまでもなく楽曲と並走するクラップも含めて、バンド、スタッフ、オーディエンスが一体となってライブを形成する。メンバーの表情もこの大舞台にまるで物おじすることなく、むしろ存分に楽しんでいるのが分かる。
渋谷が「最初からトップギアでいけますか!?」と切り込んだ「スペシャル」でも、躍動感と疾走感を引っ提げ最高潮を目指して突っ走る。もう無敵だわ、SUPER BEAVER!
SUPER BEAVER
「満員御礼ソールドアウト、ありがとうございます! この2日間だけでおよそ4万人ですから、すごいなと思います。ただ、俺たちはデカい場所で音楽をしたいと目標に据えたことは一度もないです。じゃあ何でやるのと言われたら理由は明白で。誰一人としてかぶっていないその人生が、SUPER BEAVERという音楽、その一点を真ん中にこれだけクロスオーバーする現場って、なかなかロマンチックだと思うんだよね。「あなたがいたから今日が成り立ちました」と俺は胸を張って言いたいし、「僕がいたから、私がいたから、今日が成り立ちました」とあなたは胸を張って、さいたまスーパーアリーナを後にしてほしい。そんな最高の一日を作るには、あなたが当事者であることが一番大事だと思ってる。傍観者になるなよ! 期待しています。期待していてください」(渋谷)
「決心」では巨大なステージセットの端まで赴き、大きなアクションでアピールする渋谷。「見えてるか?」ではなく「見えてます、安心してね」と述べるのも、何ともSUPER BEAVERらしい。
「大事なお客さまではなく、大事なファンでもなく、大事な仲間であるあなたにお願いがある。俺たちとの間を阻む余計なものを、この一曲でぶっ壊しませんか? いこうか埼玉!」(渋谷)
地を這うようなベースラインが鳴り響けば、スクリーンには美しい星空。100人に満たない人前でビーバーが必死に鳴らしていた「東京流星群」が今、2万人の心を震わせている。あのとき信じた音楽の力は間違いなかったと証明するような景色が目の前に広がる。一転、夜空が真っ赤に染まり、上杉が奏でる低音とともに高まる鼓動が導いた「名前を呼ぶよ」、そのエモーションを引き継いで柳沢の哀愁漂う旋律がいざなった「値千金」が、じわじわと胸に染みわたる。自ずと手拍子が沸き立ったのも、とても幸福な風景だった。
「楽屋に47都道府県の表が貼ってあって、どこから何人来てるのか、男女別・年齢別に全部書いてあるの。今日は日本全国津々浦々からありがとうございます! この規模で、自分たちの音楽があなたに届いて、あなたがその音楽を自分の気持ちに変えて俺たちに投げ返してくれるこの状況は、自分たちの歴史を考えると全然当たり前じゃないなと思います。その顔を見るたびに、うれしいな、ありがたいなとかみ締めながら音楽をやってます。でも、あなたにとっての幸せはまたきっと違う形だよね。「めっちゃ普通じゃん、そんなのどこが幸せなの?」と人は言うかもしれないけど、あなたの幸せはあなただけのもので。俺たちは他人で、自分以外です。心の底の底まで分かることは絶対に不可能で。じゃあそこで諦めるのか。その人が何をしたら楽しんでくれるかな、うれしいのかなと想像する気持ちが優しさで、思いやりで、愛情で、友情だと思う。分からないからこそ、どうか届いてほしい。どうか届けてほしい。そんなことを強く思います」(渋谷)
「幸せのために生きているだけさ」。それぞれに違う人生を、こうも束ねられる言葉が、音楽があるだろうか。ライブを通じて、常に一方通行ではなく気持ちの往来を丁寧に伝えてきたSUPER BEAVERだからこそ、ひときわ温かな感情が胸に去来する。長い長い喝采の余韻に溶け合うように始まった「儚くない」もしかりで、照明が落とされ、より楽曲に没入できるシチュエーションで、SUPER BEAVERのポップミュージックとしての可能性を確信させる、珠玉のバラードゾーンとなった。
ライブも折り返し地点となったところで、「おかげさまで、もうぼちぼち20年目(=19周年)になりますよ(※2024年4月1日~)。めちゃくちゃいい年にしたいと思ってるんで。いろいろと楽しみにしていてください!」と渋谷が語り、メンバーへとバトンをつなぐ。
SUPER BEAVER
「SUPER BEAVERの活動はずーっと地続きなんだけど、このツアーはよりそう感じられたツアーで。会いに行けなかった時期があったからこそ、たくさん近くに行った2023年だったし、だからこそ生まれた気持ちであったり楽曲が『音楽』というアルバムになったと思ってます。本当にいろんな気持ちがつながってここまで来れたなと思うし、これからもどんどん楽しいこと、カッコいいことをやっていきたいんでよろしくお願いします!」(柳沢)
「昨日もめちゃくちゃ最高だったけど、今日は超えてるんじゃないですか!? 昨日はスタッフと浦和で飲んだんですけど、いい街ですね。立ち飲み屋もいっぱいあるし、おじいちゃんおばあちゃんがやってる居酒屋にも行ったし、富士そばのトイレで寝てる人も起こしたし(笑)。そのパワーを持って今日ステージに立って、こんなにいいライブができるなんてもう最高過ぎるし、こういう毎日を音楽でシェアし合って、今年もいろいろと楽しいことを一緒にやっていきましょう!」(上杉)
「やべー! 俺、満員のさいたまスーパーアリーナに立ってる。今は座ってるけど(笑)(と言いながら本当に立ち上がる)。バンドって奇跡じゃね? もうすぐ20年目に入るんでしょ? ヤバくね? 日本全国から来てるんでしょ? やっぱ奇跡じゃね? 最後までよろしくね!」(藤原)
「いや~とっても楽しいです(笑)。でも、それを作ってるのはあなたなの。あなたが楽しかったら=俺たちが楽しいんだよ。一分一秒たりとも無駄にしたくない。よそ見なんかせず、あなたの目だけを真っすぐ見て、最後の最後まで音楽しますんで、何卒よろしくお願いします!」(渋谷、以下同)
後半戦の幕開けとなった「閃光」では、余力など一ミリも残す気はない全身全霊のパフォーマンスで見る者をフックアップ。「親愛なる仲間であるあなたのお手を拝借!」と告げるや、場内のボルテージが一気に上昇した「美しい日」では、スタンド席が揺れるほどの盛り上がりを見せる。アウトロで「これだけの数の人生が、一つの音楽を鳴らしてるなんてマジですげーことだぜ。あなたがいるから成り立ってるんだからな!」と叫ぶ渋谷。こんなにも「あなたが必要だ」と切実に訴え続けてくれるバンドが、いったいどこにいるだろう?
「過去最高を更新するなんて当たり前ですよね、「俺たちで」音楽をやってるんだから」。ギター、べース、ドラムがせめぎ合い絡み合う「予感」では、柳沢と上杉が花道へ。マイクスタンドから離れた2人をカバーする大観衆のコーラスは圧巻で、ライブは、音楽は、こんなにもすごいことができるのかと改めて思い知らされる。
これぞSUPER BEAVERな新たなアンセム「切望」は、特効もろとも強烈な求心力で今日という一度しかない夜を駆け抜ける! 嗚呼、もう何度でも言ってやる、最高か!!
「この先も気持ちの往来を何度もやろうぜ。受け取ってほしいんだよ、受け取らせてほしいんだよ。あなたじゃなきゃダメなんだよ。ちゃんと胸を張ってくれるまで、何度でも何度でも、俺たちはあなたたちじゃなく、あなたに歌う」
トドメの一撃はさいたまスーパーアリーナをぶち抜く<愛してる>、19年目のSUPER BEAVERによる過去最高の「アイラヴユー」! セットリストが進むごとにピークを更新していくすさまじさに圧倒され、容赦なく畳み掛ける音楽の渦に、演る側も見る側もヘトヘトになるほど完全燃焼。ライブはいよいよクライマックスへ……。
SUPER BEAVER
「それぞれがそれぞれの頑張り方をしてきて、ここにたどり着いてるんだと思うとグッときます。必死に生きて、立ち向かって、その道中で俺たちの音楽と出会って。あなたの大事な人生に、俺たちの音楽が鳴っている。これ以上うれしいことはないです」と渋谷が頭を下げると、盛大な拍手がそれを優しく受け止める。そして、渋谷はこう続ける。
「その拍手は自分に向けたものであってほしい。今日一番デカい拍手であってほしい。「おかげさまで」なんて軽々しく口にしてないから。今日はあなたのおかげでできたんだよ。これから俺たちが進んでいく先にあなたがいる、あなたが進んでいく先にもSUPER BEAVERがいる、そんなことをすごくうれしいなと純粋な気持ちで思えた一日を、また一緒に作ろうね。また一緒に音楽しようね。本日の主役で、立役者であるあなたへ。あなたが動かなきゃ何も変わらない。あなたが動かなかったなら今日は成り立たなかった。自覚してください。あなたはすげーぞ。だから何度でも起こそうぜ!」
高い天井にまで届くような藤原のリズムをのろしに、見渡す限りが拳を上げた「小さな革命」。ラストの「青い春」では、演奏しながら客席を愛おしそうに眺める藤原のもとに3人が集まった光景に、高校時代から人生を共にしてきたSUPER BEAVERの青春がフラッシュバックするかのようだった。
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アンコールでは、このツアーを通して説明してきた今後のライブついてのある方針に、渋谷がリラックスした面持ちで触れる。
「もちろんライブにはエンターテインメントな要素が必要で、ショーである瞬間もあると思う。でも、俺たちがやりたいのはあくまでもライブで。だから、ショー的なアンコールをなくして、俺たちもあなたも本編で全部出す。で、ライブがズバッと終わる。信頼関係があるからこその考えだと思って受け取ってほしい。今日のアンコールはね、謹んで、喜んで、やらせていただきます。本気のライブをこの先もずっと一緒にやりたいから、アンコールの曲もあなたと決めたいなと。こっちで2曲用意したんで1曲だけ選んでください。さぁ悩むんだ!(笑)」
アンコールはやめても楽しむことはやめない、SUPER BEAVERからの究極の二択。アンケートの結果、選ばれたのは「証明」! 「本当にすごく楽しかったよ。こういうことを何度もやろうね。俺たちが、否、「俺たちで」SUPER BEAVER! ありがとうございました!!」。最後の最後にその心意気にまたも奮い立たされる大団円で、『都会のラクダ TOUR 2023-2024 ~駱駝革命21~』を締めくくったSUPER BEAVERだった。
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なお、終演後には、10月4日(金)東京・J:COMホール八王子より、12月3日(火)・4日(水)東京・日本武道館まで、13都市17公演の『都会のラクダ TOUR 2024 〜セイハッ!ツーツーウラウラ〜』が発表。チケットのオフィシャル先行は、3月31日(日)23:59まで受付中。
また、WOWOWオンデマンドにて、この日のアーカイブ映像を4月23日(火)23:59まで配信中。4月27日(土)にはツアーに密着したバックステージ特番も放送される。
取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=青木カズロー