DEZERT 撮影=西槇太一
今年1月にアルバム『The Heart Tree』でメジャーデビューを果たしたDEZERT。本作を携えた全国ツアー『DEZERT LIVE TOUR 2024 “The Heart Tree” 【PHASE_1】 -延命ピエロ編-』終了直後の彼らに、ツアーの手応え、メジャーデビュー後の心境、そして3月29日(金) 渋谷 CLUB QUATTROからスタートする新たな全国ツアー『DEZERT LIVE TOUR 2024 “The Heart Tree” 【PHASE_2】 -匿名の神様編-』の構想まで、たっぷりと訊いた。千秋(Vo)の好物である寿司になぞらえて熱く語られるバンド観にも注目だ。
――1月10日にアルバム『The Heart Tree』でメジャーデビューをしてから約4ヶ月。バンドで何か変わったことってありました?
SORA(Dr):難しくなりましたね。物事を決める、ということに対して。
――具体的に、どういうことでしょう?
SORA:今まではライブにせよリリースにせよ、シンプルに思いつきでやってきたんですよ。それが、ありがたいことに考えてくれる人が増えたぶん、その意見を統括・統一することに良い意味で時間がかかるようになりました。やっぱりみんな真剣で、いろんなアイディアを出してくれるんですよ。だから自分もベストなアイディア、ベストな意見を出すために、みんなで集まる前にしっかりと考えざるを得なくなって。考えるために考えることを増やさないといけないフィールドに入った感じですね。
千秋(Vo):逆に、僕は楽になりました。今まで自分たちでバンドをプロデュースしてきて、本来ならバンドがやらなくてもいい業務もずっと請け負ってきたから、そのへんをメジャーデビューに伴って僕は放棄したんです。例えば予算管理だとか、プロモーションだとかを、フォーマットのあるレコード会社に渡すことができたので、こうやって二人三脚でやっていけるのはメジャーならではなんじゃないかなと。
■昔は千秋が気に食わないことがあったらライブを投げ出しちゃったりして(苦笑)。もう地獄でしたけど……(SORA)
――メジャーに行くと規制が厳しくなるとか、今までやれていた音楽ができなくなるイメージも持たれがちですが、そのへんは問題なく?
Miyako(Gt):全然ないです。メジャーっていろんな制約があったり、動きづらくなるんじゃないかという懸念は、確かに俺も持っていたんですよ。でも実際はそんなことなく、むしろ今までやれていたことの幅だったり視野が、より広がっていくようなイメージなんですね。レコード会社の人たちも、みなさん本当に音楽好きなんだというのが話していても伝わってきて、そこは自分の想像とは真逆で嬉しかったです。
Sacchan(Ba):もちろん、第三者的な意見が強めに入るようになったところはありますよ。例えば、アルバムのオンエア推奨曲にしても、果たして今までのDEZERTチームだけだったら「楽園」を選んだだろうか?ってことですよね。ただ、地方とかでもお客さんからよく“有線で「楽園」が流れてました”とかって聞くようになったので、今までとは違う手法で結果が出るのは良いことなんじゃないかなと。あとは僕の場合、締め切りが明確になって、1日たりとも遅れることが許されなくなったのは大きいと思います。まだ曲出しとかは少し融通が利きますけど、最後のデータ納品日とかは、テンション感で延ばすことが不可能になった!(苦笑)
千秋:相手が事務所なら“またですか”と呆れながらも、基本的に優しく許してくれるんですよ。でも、それがレコード会社になると“いや、間に合わないかもしれないです”って言ってる顔が……マジなんです。言ってみれば、良い保護者がついたという感じですね。ウチの事務所は割とロックなんで、文句を言いつつ何とかしてくれちゃうから、保護者にはならないんです。
Sacchan:締め切りを引っ張ったからといって、聴き手にわかるほどの明らかな違いが生まれるとは限らないですからね。もしかしたら時間をかけないほうが良かったかもしれないし、聴き手はその二つを比べることもできないわけだから。
DEZERT/千秋(Vo) 撮影=西槇太一
――そんな中で始まったアルバムツアーの『PHASE_1』が終わり、私も東京公演(3月2日 Spotify O-EAST)を拝見しましたが、集まっていたファンが本当に熱くて! みんな“DEZERTだから”来ているんだということを強烈に感じたんです。単純に“カッコいいから”来ているわけではないなと。
SORA:確かに数字を見るとすごく伸びているし、支持されているんだなという実感もありますね。
――その理由って、ぶっちゃけ何なんでしょうね。
SORA:カッコいいバンドって、実はいっぱいいるんですよ。友達のライブとかを観に行っても確かにカッコよくて、でも、どう応援したらいいかわからないんですよね。それがLUNA SEAとかX JAPANとかみたいに完成されたバンドなら、ひたすらカッコよさを浴びるだけで十分ハッピーですよ。でも、昨今は完成されていないのにカッコつけてるバンドが多いように僕は思っていて。例えるなら、お客が3人しか来ないのに8万円のコースを出してる飲食店みたいな感じ。逆に、僕たちは良くも悪くも自分に素直にやってきたから、それこそ昔は千秋が気に食わないことがあったらライブを投げ出しちゃったりして(苦笑)。もう地獄でしたけど、そういったエピソードの積み重ねが、振り返ってみればバンドの物語になって、ファンの子からすると“応援したい”と思わせる要因になっている気がするんです。
――なるほど。ファンの熱さは、等身大に振る舞うバンドを応援したいという想いから来ていると。
SORA:それは『PHASE_1』の映像を観ても感じました。ビジュアル系バンドを集めて『V系って知ってる?』っていうイベントを2022年末に武道館でやってから、昨今はビジュアル系シーンを背負ってるとかまで言われるようになって。そんな中でメジャーデビューをしたから“なんかやってくれそうだな”って思わせられたのが良かったんでしょうね。だから、逆にプレッシャーはすごいですよ。演奏はもちろん、水面下では信じられないくらい悩んでますし、もっと応援したい気持ちにさせるには、どうすればいいんだろう? どこにバスドラを置いて、どんな音作りをすればいいんだろう? みたいなことも、最近すごく考えてます。13年やっていて今年が一番メンバーと話す時間が多いし、千秋とも週に1、2回は電話してますよ。
DEZERT/Miyako(Gt) 撮影=西槇太一
■好き嫌いあるだろうネタを提供している3時間のライブにあるのって、共感じゃなく“共有”なんですよね。(千秋)
――それを聞いて腑に落ちたのが、皆さんステージ上で本当に堂々とパフォーマンスしているのに、すごく客席に求めているなと感じたんですね。曲の並びと、その間に挟み込まれる千秋さんの言葉が全部繋がっていて、そこでは“俺たちの音楽を信じてほしい”という強烈なメッセージが込められている。
千秋:ただ、O-EASTの話をさせてもらうと、自分のパフォーマンス的には、あの日がツアーで最低だったんですよ。ちょっと喉を壊していたところもあって、初日からどんどん下がっていって。そのままファイナルの札幌に突入して、終わったときに、自分たちは共感と共有の狭間にいるなと気づいたんです。例えば、まだワンマンができなくてイベントで20分とか30分のステージだけをやっていた時代、お客さんとの間にあったのは“共感”だったと思うんですよ。それこそ「「殺意」」だったり、攻撃的な楽曲と歌詞にファンは共感してくれていたけれど、その土台にあるのは“共有”なんですよね。
――では、共感と共有の違いとは?
千秋:例えばDEZERTがお寿司屋さんだとしたら、僕の声がめちゃくちゃ調子いいときってネタが新鮮なんですよ。でも、他人のライブを観に行って、ボーカルの声の調子が悪かったりすると、僕ちょっとワクワクするんです。ネタが多少悪くても、しっかりと握ってくれればいいんだよ!っていう感じ。そもそも僕らの曲にもいろんな種類があって、綺麗事もあればF●CKを叫ぶ曲もあるわけだから、全部のネタで共感なんか得られないんですよ。メジャーデビューを機に「楽園」から入ってきた人が「「殺意」」を好きになるのか?っていう話。そうやって好き嫌いあるだろうネタを提供している3時間のライブにあるのって、共感じゃなく“共有”なんですよね。
――なるほど! 全員がすべてのネタを美味しく食べるとは限らなくても、寿司屋の同じ空間を共有しているという。
千秋:そう。ライブのセットリストって、言ってみれば“おまかせセット”で、それぞれの注文を聞いて食べたいネタを出すことはできないので。もちろん、すべてのネタで共感させるバンドもいますよ。でも、常連客が共感できるネタしか出さないのでは、店ってやっていけないですよね。だから、アルバムの曲を知らなくてもいい。高いチケット代を払ってライブ会場に来る、同じ場所にいるということが、すごく大事なんだ……ってことを『PHASE_1』で痛感したんです。なのに、それまで僕は、どこかで“共感してほしい”という想いがあった。
――いや、みんなそう言いますよ。特にボーカリストは。
千秋:だから苦しかったんです。『PHASE_1』のファイナルになった札幌が終わったとき、SORAくんに「今日のライブは難しかった。久しぶりに“千秋”な感じがあった」って言われて、たぶん俺は“共感してほしい”という想いを強く出しちゃったんだろうなと。もちろん共感してくれる人は満足できるだろうし、それはそれで有り難いけど、みんながみんな共感できるわけじゃないんだから難しくなるのは当たり前。だったら共感じゃなく、基本的に共有を求めればいいんじゃないかって、札幌から帰る飛行機の中で考えたんです。やっぱり俺は長くバンドを続けたくて、そういう意味でリスペクトしているのがBUCK-TICKなんですよ。しっかりファンとの共有の場ができていて、もちろんコアなファンには共感もあるだろうけど、そうじゃない人も年末には武道館に足を運ぶじゃないですか。そうやって一定の集客をずっと保ち続けて、新しい音楽を出し続けていく、あれは最高の共有の場なんだろうなぁって。
DEZERT/Sacchan(Ba) 撮影=西槇太一
――すごくよくわかります。全員がすべての楽曲に共感を持っていなくても、ただ、その空間にいることを楽しめるということですね。
千秋:僕は、それをビジュアル系でやりたかったんですよ。例えば、これまで日本であまり知られていなかったドイツ料理が流行ったとして、“ドイツ料理が好き”って言うとカッコいいっていう風潮が生まれたら、みんな新しい店ができるたびに行くじゃないですか。そこまで飛び抜けて美味しくなくてもいいんですよ。そうやって場を共有することが“流行り”なわけで、ラップだって根底となる歴史とか存在意義があるけれど、リスナーはそこに共感しているわけじゃない。ビジュアル系にしても、昔は“××が好き”ってブログ書いておけばカッコいい、みたいなものがあったのに、そうやって共有する場所が今はカッコよくなくなっちゃったんですよね。どうせ出店するなら山手線沿線がいいのに、なんかアンダーグラウンドに行っちゃった。
――確かに同じ店でも、郊外より都心にある方がカッコいいイメージがあるかもしれない。
千秋:もちろん、あえて人のいないところに出すという戦略もありますよ。でも、それを僕は求めていない。隠れ家じゃ嫌なんで。僕、最近ビリー・ジョエルのライブを観に行ったんですけど、50年前のアルバムの曲をやっても素晴らしかったんですよ! そこで重要なのは、どういう音楽をやっているかではなく、どうお客さんに届けるか?なんですよね。そこに気づけたので、『PHASE_2』ではもっと共有の場を届けたいし、そこで何を届けられるか?ってことやセットリストも早く考えたいし、練習もしたいし、早く声も戻したい。だから、なぜお客さんが増えたのか?をまとめると、DEZERTのライブの場を共有したいと思ってくれる人が増えたからでしょうね。でも、まだまだ足りないんです。それこそ店構えから清潔感、雰囲気、照明、ネタ、海苔、酢飯、職人、おしぼりを置く店員……全然そろってない! そういった細かいところを一つずつ改善していけば、もっと魅力のあるカッコいい場所にできるはずで。つまり、まだまだ未来はあるってことなんですよ。
DEZERT/SORA(Dr) 撮影=西槇太一
――足りない=伸びしろがある、ということですからね。ちなみに楽器隊の皆さんが、今回のアルバムやツアーで感じた“共有”って何でしょう?
Miyako:今回の『PHASE_1』って、全箇所のセットリストにアルバムの曲が全曲入っていたんですよ。それって俺が加入してからは初めてのことで、きっと、このアルバムをやりたいと俺らが思ったからだし。お客さんもアルバムを聴きたい、もっとライブで曲を知りたいと望んでくれたからなんです。だから『PHASE_1』はアルバム全曲が入ったセットリストでブレずに最後までやってこれたし、自分たちの出している音だったり気持ちがちゃんと届いているからこそ、さっきの話にもあった“応援したいバンド”に今、なれているんだろうなって。
千秋:確かに全曲やらなくてもよかったんだなって、今、気づいた。
SORA:いや、『PHASE_1』はこれでよかったよ。始まりだから。
Sacchan:ここまでしっかりアルバムを掲げたツアーって、今までなかったんじゃないかな。メジャー1発目だし、一回ちゃんとやってみようって(笑)。
――でも、メジャー1発目を意識して、アルバム曲を全部入れたわけではないですよね?
SORA:ないです。自然に……ですね。
■なんか部活みたいだなって、最近すごく思うんですよ。目指すものがあって、それに対して個人でもバンドとしても進んでいる。(Miyako)
千秋:ちょっとナメてたんですよね。リスナーの“聴く”パワーを。買い物にも美味しいものを食べることにも興味がなくて、ずっと“虚しい”って言い続けてきた僕だけど、ライブで何か届いたなと感じたときは幸せになれるんです。で、1月にアルバムの予約購入者限定で、アルバムの曲だけを演奏するライブをやったら、すごく盛り上がったんですよ! 正直『PHASE_1』のO-EASTより盛り上がった。それくらい聴く人のパワーが、この13年の間に培われていたので、全曲やっても大丈夫だろうと自然に思えたんです。とはいえ、Sacchanとも結構話したよね。アルバム14曲入れたら過去曲は3曲くらいしか入れられないけど、どうする? ライブに行って知ってる曲がなかったら嫌だよね? って。
Sacchan:十代のころに好きだったバンドのライブに最近行ったら、直近の曲ばかりで全然曲がわからなかったんですよ。しかも、それで3時間とかやられて(笑)。
千秋:でも、それはSacchanが今のファンじゃないからだし、今回は『The Heart Tree』のツアーなんだから、もうええやん!って。実際、セットリストが良くなかったっていう声はひとつもないんですよ。全国くまなく回ったリリースイベントで会った子たちも、みんな音楽への愛であふれていて、それがすごく自信につながって。聴いてる人のパワーを信じてよかった、アルバム全曲やってよかったって感じました。
Miyako:なんか部活みたいだなって、最近すごく思うんですよ。みんなの話を聞いていても、すごくストイックで、目指すものがあって、それに対して個人でもバンドとしても進んでいる。俺、野球部だったんですけど、野球でもそんなチームが応援されるんですよね。
――初期を思い返すと、本当にDEZERTは“応援したいバンド”に激変したと思います。当時は尖り切っていて、ストイックのスの字も見せなかったのが、今ではライブのMCで“ここ数年、俺たち愛であふれてる”と断言するくらいですから。
千秋:折れたんですよ、尖りすぎて。鉛筆の芯と同じで、削りすぎたよね?
Sacchan:尖ってる先端を、まだ研いでました(笑)。
――ただ、そこまで変わったらファン層がゴッソリ入れ替わっても当然なところ、そうでもないのがDEZERTの不思議なところで。
千秋:むしろ戻ってきてる。“子供が生まれて十何年ぶりに来ました”っていう話とか、今回のリリースイベントで何回も聞きましたからね。まだ10人くらいしかファンがいなかった時期に通ってくれてた子たちが来てくれたりして、なんか嬉しいな!みたいな。
Sacchan:まぁ、その人たちも年取ってるわけですからね。そりゃ変わりますよ。
Miyako:個人的に表題曲の「The Heart Tree」なんかは、俺、すごく“共感”できたんです。送られてきたデモをイヤホンで聴いたときに、まだ歌詞は完成形ではなかったんですけど、すごく心に刺さって。《消えてしまいそうな夜も 壊れてしまいそうな夢も 投げ出したくなる決意も 誰にも笑わせやしないさ》という歌詞が、すごく寄り添ってくれているようで感動して、千秋くんに“いいね”って伝えた覚えがあります。
――ネタの種類が増えることで、リスナーに新たな“美味い!”を発見させることもあるでしょうし、何より心地のいい共有の場を提供できているんでしょうね。
千秋:ただ、そこに気づけたのは最近ですからね。お客さんからしたら、これは共感、これは共有、なんて考える必要はないし、好きだから来るでいいんですけど、店の側からするとそうはいかない。ガリひとつにもこだわらないといけないし、そのへん、SORAくんは厳しいですね。SORAくんは“スタッフは千秋のことを怖がってる”とか言ってますけど、絶対SORAくんが一番怖いですよ! 店の掃除が行き届いてるか、おしぼりが臭くないかとかまで細かくチェックする人で、特に時間の使い方には厳しい! 効率よくできないと、すごく怖いんです。
SORA:だって、チケット代いくらですか? チケットだけじゃない。この前、サービスエリアでマックのメニュー見てたら、セット950円ですよ?
千秋:高ぇ! 昔はチーズバーガーセット、400円くらいだったのに!
SORA:それを考えると、時間がいかに大切か?ってことですよ。今って、みんなホントに時間ないと思うんです。家に帰って100人中98人はスマホを見る時代に、わざわざチケット代を払ってライブ会場に足を運んでくれてるんですよ。ちゃんと見合うものを返さないといけないし、名を上げてる人ってみんな細かいところまで目を配ってるんだってことを、この2、3年で先輩の背中から僕は学んだんです。
千秋:また寿司の話していいですか? ウチのチケット代って、コロナ前に比べて1.5倍になってるんですよ。だったら今まで10貫おまかせだったメニューも、量を1.5倍にしなきゃダメなんじゃないかって、最初は思ってたんです。もう、本編で20曲くらいやってやろうかと。でも、数を増やしたところでお腹いっぱいになって食べ切れないし、むしろ客を遠ざけかねない。そうなると店の居心地のよさとか、スタッフの接客とかも重要な付加価値になるわけで、それって寿司を作る俺らの力だけじゃ足りないんですよね。ガリにしたって市販のガリじゃダメで、自家製で丁寧に作ってたら嬉しいじゃないですか。あとは……正直、客層もあります。僕は将来ホールでツアーできるバンドになりたいので、好き勝手に暴れてぶつかり合うのは求めてない。できるだけたくさんの人に届けたいし、共有できる空間は作りたいけれど、そこは誤解しないでもらえたら。
■チケット代が高かったら、メチャクチャ演出があるんだなと思ってもらえれば。もしくは、入場のときに大トロが食える(笑)。(Sacchan)
――……メンバーのみなさんは、千秋さんがこんなにお寿司好きなことをご存知だったんですか?
SORA:知ってますよ。
Miyako:俺、企画で千秋くんにお寿司握りましたからね。ボロクソに言われて、最終的にプロの人が握ったのを食べてました(笑)。
――まぁ、同じ寿司でも酢飯ひとつ、握り方ひとつでまったく違いますからね。
千秋:だからネタもそろえず、店内の環境にも気を配らないのに、ネームバリューだけでチケット代が高い人たちは軽蔑してます。逆に、良いネタすべてそろってるなら、いくら高くてもいいと思ってますよ。なので、12月27日の日本武道館ワンマンのチケット代はまだ決まってないですけど、来てほしいから安くすることはしない。強い意思を持って、俺らの“おまかせセット”の値段を決めます。
――潔いですね。普通は安ければ安いほど良いと考えがちなのに。
千秋:僕も最初はそうだったんです。でも、違うんですよ。例えば1500円の寿司を食いたいか?って話で、だったら回転寿司でいいじゃないですか。それでも十分美味しいんだし。
SORA:そういうところも含めて真剣に考えているんで、場合によっては武道館の赤字を回収するために、僕は起業するかもしれない。起業じゃなくてもバイトとか(笑)。
千秋:まぁ、メチャクチャ仕込むのであれば、チケット代高くしますけどね。
Sacchan:なので、チケット代が高かったら、メチャクチャ演出があるんだなと思ってもらえれば。もしくは、入場のときに大トロが食える(笑)。
千秋:でも一発目で大トロ出してくるのは、いい店じゃないよ。油だからね。本当は白身から始めないといけない。
SORA:いろいろ思いが乗っかるように、みんなで考えているので。それも含め、チケット代の発表を楽しみにしてください。きっと詳細が出たタイミングで、また話す機会は絶対にあるだろうから、そのときにまた色々伝えたいです。日々、考え方はアップデートしていますから。
――ちなみに3月29日から始まる、アルバムツアーの『PHASE_2』のほうは、『PHASE_1』と何が変わってくるんでしょう?
千秋:ま、「ともだちの詩」は、もうやんないですね。
Sacchan:名指しされました(笑)。
千秋:これ、8年ぐらい前にレコーディングした曲で、何かしら胸のつっかえだったり、昔を回顧する部分もあったんですよ。それでもあえてリリースして、ツアーでは本編の最後に毎回やって。こんな曲で終わるライブなんかしたことなかったんですけど、最終日の札幌で歌い終えたときに“ああ、しばらくやんないんだな”と思ったんです。“やりたくない”じゃなくて“やらなくていい”。この先もやるとなったら、むしろ「ともだちの詩」が可哀想。いや、わかんないですよ? ものすごく「ともだちの詩」をやりたくなったら、もしかしたら、またするかもしれないけど、もう俺の中でかなり血となり肉となったので、今の時点では“ありがとう。「ともだちの詩」”という感じですね。だから『PHASE_2』で聴くのを楽しみにしてる人は、このインタビューを見て諦めてもらいたいです。
――了解しました。ところで『DEZERT LIVE TOUR 2024 “The Heart Tree”』のファイナルは、6月22日の三郷市文化会館ということですが……。
千秋:ここの三郷を取るのに命かけてました! もう1年以上前から“2024年6月22日の三郷市文化会館 大ホールを絶対に取ってくれ!”と。ツアーファイナルを三郷でやるバンドとか、俺らが初じゃない?
SORA:その日が自分の誕生日で、三郷は地元なんです。ちょうどタイミングがよかったとはいえ、本当にありがたいですよね。以前に小ホールでやったときに、今度は絶対に大ホールでやりたいと言っていたのが叶って、メンバーにもスタッフにも感謝しかないです。
千秋:ここでSORAくんはギターボーカルするんだもんね? 小ホールのときも俺とパートチェンジしてhideさんやったんで、それ、やるしかない。
SORA:やります。
――初日の3月29日、渋谷CLUB QUATTROは東京出身のMiyakoさんバースデーですし、メンバーの記念日を大事にしている、とても温かいバンドですよね。
千秋:寿司は魂ですから!
――そこはブレないんですね。DEZERTは寿司屋であると。
千秋:はい。どんな寿司屋を目指すのかは、正直まだわかっていなくて。都心の高級店かもしれないし、下町に1店舗しかない専門店に落ち着くかもしれないけど、寿司屋というのだけは決まってます。ここでフライドチキン屋になったりしたら、それこそが路線変更だと僕は思っているので。だって、久しぶりに好きな寿司屋に行って、フライドチキン屋になってたら悲しいじゃないですか。尖り切っていた時代から、寿司屋であることだけは変わっていないんですよ。
取材・文=清水素子