sumika 撮影=後藤壮太郎
『EIGHT BALL FESTIVAL 2024』sumika
『EIGHT BALL FESTIVAL 2024』、2日間を締めくくる大トリはsumika。昨年出演予定だった彼らにとってリベンジとなるステージだ。しかも、現在彼らはツアーの真っ最中で、間もなくアリーナツアーも待ち構えているという、ライブバンドにとってこれ以上ない、脂ののりきった絶好調な状態。昨年末は活動の歩みを止めざるを得ない時期もあったからこそ、この日のライブに懸ける想いはひとしおだった。
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ライブが始まる直前、片岡健太(Vo.Gt)は「ひとりでライブに来た人に寂しいとか思わせない。必ずひとりにはしません。誰かと来た人にはその縁が深くなるライブをします!」と宣言。さらに、昨年代打で出演してくれたMOROHAから「ステージから見える光景、全員の顔が素晴らしかった。来年は自分の目で見届けて」と鼓舞する言葉をもらったという。そして今日の出番直前、MOROHAのライブを観たという片岡は「ずっと(今日のステージを)想像して歩んできた。MOROHAから勇気をもらって涙が出たけど、ここからはバンドマンとして“俺のがヤバイ”って言いにきました!」と、宣戦布告。
と、ライブレポートに入る前に伝えたい言葉の数々がある。ライブ中、アーティストからのメッセージはステージからダイレクトに届けられるけど、この日この瞬間の観客の声が直接届けられる機会はあまりない。今回イベントで展開された特設ブースでは観客から直筆のメッセージが集められ、楽屋エリアにいるアーティストへ映像として届けられていた。その一部を抜粋したい。
「sumikaのおかげで毎日頑張れる」
「最幸」
「sumikaに出会えてよかった。生きててよかった」
「今の私の半分以上がsumikaでできている」
「バンドを続けてくれてありがとう」
一部の抜粋だが、そのどれもが愛に溢れているものばかりだ。
そしてこの日のライブに向けてのメッセージも数多く寄せられた。
「リベンジをありがとう」
「ぶちかませ!」
「なによりも、岡山を楽しんで帰って」
「ただこの日を一緒に楽しみたい」
誰もがこの日を待ちわびていた、そんなメッセージばかりが並んでいた。今日のこの瞬間が代え難い多幸感に満ち満ちていたことが伝わればうれしい。
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待ちに待った本編、1曲目は「ふっかつのじゅもん」。いつも以上にダイナミックなバンドサウンドが鳴り響くし、観客の声のなんて大きなこと。小川貴之(Key.Cho)とのダブルボーカルも楽曲をよりカラフルに見せてくれる。続く「Lovers」では愛おしさ大爆発なポップセンスを響かせ、「めちゃくちゃいい顔してるじゃない!」の片岡の言葉通り、観客を満面の笑顔に換える。
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「ソーダ」のタイトルのまんま、荒井智之(Dr.Cho)の弾けるビートに煽られ、フロアのテンションは高まるばかり。「カルチャーショッカー」の歓声やハンズクラップの大きさには「その声が聴きたかった」と、メンバーも満足げな表情を見せる。
小川がメインボーカルを取る「イコール」。伸びやかなキーボードの歌声、心弾む片岡のメロディ、生命力に満ちた荒井のビート。感情が丁寧に紡がれた歌詞と、そこに乗る観客の歌声。全部ひっくるめて愛おしいったらない。この2日間、“待ちに待った”という言葉がこれほどぴったりハマる瞬間はなかったかもしれない。
ハピネスな音だけがsumikaではない。時には「Babel」みたいな切なくも色艶たっぷりなナンバーで多面的なバンドの魅力を打ち出してみたりと、限られた演奏時間のなかでも、これでもかとバンドの魅力を打ち出していく3人。
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今日までの長かった1年を振り返り、「やっと何か大きなものから解放された。やっと純粋に音楽を楽しめるようになってきた。苦しかったし、悔しかった。でも、音楽は楽しまなきゃダメ。(今日のライブで)本質的なものにたどり着いた気がする」と、安心した表情を見せる片岡。「音楽は誰にとっても対等。いつでも音楽は逃げない。ステージからみんなの顔を見てて、音楽はそうなんだと思った。いつでも帰ってきて、頼ってほしい。オレたちも同じ人間。ライブを頼って生きていっていいんだな。そう許された気持ちになれた。オレの今の気持ちを救ってくれたのは『EIGHT BALL FESTIVAL』に来るという選択をしてくれたあなたのおかげです」と感謝の思いを告げる。
「あなたの心にブッ刺して帰りたい! 大声で歌うぞ!」と投下したのは「Starting Over」。すべての気持ちを昇華させる胸がすくバンドサウンド、ひときわ大きく響き渡る観客の大合唱。心の打つ側から明るくする光にも似たsumikaの音楽を全身で楽しもうと、観客はみな高く両手を掲げて音に応える。最終曲は「らしく笑って帰ろうと思います!」と、めいっぱいの感謝の気持ちを込めた「Phoenix」で本編は終了。
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アンコールはもちろん、ライブアンセムでもある「「伝言歌」」。「次があるのは当たり前じゃないから! この瞬間に全部を込めて!」、片岡の言葉にオーディエンスはこの日一番の大合唱を響かせながら、2日間にわたって繰り広げられたイベントの幕が閉じた。岡山で始まったロックフェス『EIGHT BALL FESTIVAL 2024』、2年目にしてすでに忘れがたい情景がそこにはあったことは間違いない。
終演後、スクリーンに映し出されたのは『EIGHT BALL FESTIVAL 2025』の開催を告げる文字。この2日間で積み重ねてきた歴史を刷新する、新たな伝説は生まれるのか。またこの目で確かめたい。
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取材・文=黒田奈保子 撮影=後藤壮太郎