ONE☆DRAFT 写真=オフィシャル提供(撮影:Tasuku @photo_tasuku)
『ONE☆DRAFT TOUR 2024「Bee Alive Vol.16」』 2024.4.21(SUN)BananaHall
4月21日(日)、大阪梅田のBananaHallにて『ONE☆DRAFT TOUR 2024「Bee Alive Vol.16」』が行われた。2023年2月、咽頭がんと診断されたLANCE(MC&Vo.)。その後治療に専念し、同年12月には大阪・GORILLA HALL OSAKAで行われた『FILTER88 ~6年ぶり!! 復活祭!!~開催決定!!』で、短い時間ながらステージに復帰した。それから約4ヶ月。今年3月に17周年を迎えたONE☆DRAFTは、2年ぶりとなるワンマンライブで見事復活を果たした。チケットソールドアウトとなった、初日大阪公演のあたたかなライブの模様をレポートしよう。
雨の日曜日となったこの日、会場の梅田BananaHallには久々にステージに立つLANCEとMAKKI(DJ)の姿を見届けようと、大勢のファンが集まってフロアを埋め尽くした。めいめいにONE☆DRAFTのグッズを身につけて開演を待つファンからは高揚感と愛情が感じられ、いかにこのライブが待ち望まれていたかが伝わってきた。
定刻を10分ほど過ぎた頃、会場が暗転してSEが流れると、クラップが自然発生。会場の興奮度が一気に引き上がり、ステージの幕が開いて2人の姿が露わになる。すると悲鳴にも近い歓声が会場を包み込んだ。MAKKIが「初日楽しんでいこうぜ!」と煽り、腹まで響くビートでにパワフルに「MUSIC」を投下。LANCEはマイクスタンドを握りしめ、力いっぱい歌声を響かせる。その姿は決して病み上がりの弱々しいものではなく、雄々しくてオーラがある、堂々たるものだった。ステージから放たれるLANCEの生命力は、とても眩しく輝いていた。オーディエンスは大興奮でハンズアップ。早くも会場を一体感で包み込んだ。
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続けざまに「HERO」をヘヴィに叩き込んでゆく。会場の熱はさらに上がり、オーディエンスはしっかり手を挙げて疾走するビートに食らいつく。ここまで精悍な表情で歌っていたLANCEは<大空に仰いだ夢は儚くて…>で少し笑顔を見せ、「大阪ありがとうー!」と叫んで手の甲でぐいっと涙を拭った。その姿を見て思わずこちらも胸が熱くなる。「虹〜“晴れ”ときどき“涙”〜」ではLANCEはタオルをぎゅっと握りしめ、時折顔をしかめながらも、歌詞で歌われる暗闇の孤独から抜け出した希望を、自身の体験と重ねるかのようにパワフルに歌い上げる。MAKKIは笑顔で手を左右に振り、フロアを牽引しながらLANCEを支える。一緒に手を振る会場の空気はとてもあたたかく、2人を見守る眼差しはひたすらに優しかった。
MCでは「元気してますか? 久しぶりですね」とLANCE。2年ぶりのワンマンの空気を「この感じ思い出した」と懐かしみ、「ありがとう」と感慨深げ。このあと福岡・石川と続くツアーの初日は体調も含めて様子を見る必要があるため、「今後続いていく公演のために皆さん犠牲になってもらって。試し試し色んなことをやっていきたいと思います」と、実験的な部分もある公演になることを示唆した。LANCEは「そのために1回聞いておきたいことがある」と言って、「初めてONE☆DRAFTのライブに来た人ー?」とフロアに呼びかける。するとパラパラと数人の手が挙がり、「17周年ですよ。何で1回も来んかったん」と憎まれ口を叩く。だが逆を言えば、フロアにいるのはONE☆DRAFTのライブに来たことのある人ばかり。しかもチケットは即完。のちのMCでも「ちょっと空いてまた来ましたって奴がおるな。お前ら埋めやがって。完全に舞い戻ってきてんじゃん」と言っていたが、ONE☆DRAFTを愛する人たちが「おかえり」を言うために集まったことになる。その事実だけでまた感動が胸を駆け巡る。今回のライブの構成は、LANCEとMAKKIの2人で話し合ったそう。LANCEは「それも新しくて面白かった」と話していた。
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「ラヴソング」と「アイヲクダサイ」をショートバージョンで歌い上げた後は、1曲披露ごとにMCを挟みつつ、ゆったりとライブを進行。LANCEとMAKKIの漫才のような掛け合いが微笑ましく、笑いを誘う。和気藹々とした空気を楽しみ、久々の時間を共有するオーディエンスの姿も素敵だった。
「TIME」では、懸命に歌うものの高音が出ない箇所もあり、悔しそうな表情を浮かべるLANCE。すぐに「次の公演からはやめよう」と判断するなど、トライアンドエラーで無理せず着実にライブを進めていった。
ここでMAKKIの歌唱タイム! <またLANCEとライブして こんなに集まってくれて嬉しくて泣きそうだけど>という歌詞に、涙腺崩壊しそうなほど感動的な雰囲気が高まったが、LANCEが照れ隠しなのか(?)、「泣きそうは嘘」だとカットイン。2回目の歌唱ではMAKKIがハンドマイクで、先ほどよりも身振り手振りをつけて感情たっぷりに<今日はLANCEの誕生日>と歌い上げる。そう、4月21日はLANCEの誕生日当日だ。MAKKIは「ワスレナSWEEEENG」のトラックを流し、ステージの前に出て、タオル回しや「Oiコール」で思い切りフロアを盛り上げる。オーディエンスももちろん一緒にシンガロングして誕生日をお祝いする。
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そんなMAKKIを微笑みながら見守りつつ、LANCEはDJブースへ。「気持ち良くなったからこのままいっちゃっていい?」と述べて「情熱」をドロップ。フロアにはペンライトが真っ赤に灯り、MAKKIもペンライトを2本持ってオタ芸をし、まさにひとつになって大熱狂。LANCEは歌うところも歌わないところもあるが、誰もそんなことは気にしない。オーディエンスも一緒に歌い、全員で生のライブを作り上げた。LANCEが前に突き出す拳が力強く、熱量はどんどん加速。曲の後半ではLANCEが持っていたペットボトルの水を勢いよくフロアに撒き散らし、一気にテンションアップ! 最高潮の盛り上がりを見せた会場は、ものすごい熱気で包まれた。
LANCEは「ライブのことを色々考え過ぎて余計な力が入り、ペース配分がうまくいかず、最近自信がなくなった」と話し始める。それを打破するため、過去の自分たちのライブDVDを見ていたそう。当時のことが鮮やかに思い出され、それがテンションを上げてくれた。「今生きてる自分よりも過去の方がカラフルで華やかで鮮明なわけよ。「こんなふうにしたい」と思っていた未来がモノクロになって廃れていくことに気づいて、今ライブでやることはこれだと思った。だけど、それはもうやめようと思った」と語る。「未来をカラフルにしたい。皆が想像してる以上に俺の過去は金粉まみれでシャイニーなわけよ。それがくすんで忘れていっても、それはそれ。自分が生きる先の未来をもっとカラフルに彩るイメージをしながら、今を生きた方が良いなと思えた。それはライブの存在がでかい。MAKKIは大人だ。俺は今日、自分の未来に繋ぐようなライブができたと思った」と述べ、「一生懸命やるので」と本編最後の「Believe」を披露。<一番自分を信じて>という力強い歌詞を、澄んだ歌声で想いを込めて歌い上げた。
「ワンドラ、チャチャチャ!」というアンコールを求めるクラップが発生し、やがてLANCEとMAKKIがグッズTシャツに着替えて再びステージに登場した。LANCEは天邪鬼なところものぞかせつつ、感謝を述べて「もっと背負えるように、今年中に東京大阪福岡ぐらいで『DREAMING TOUR』をやろうかなと」と嬉しい言葉も飛び出した。「マジでありがとうね。今日は俺「やり終えたー」というよりも、「やってしまったー」ということの方が多いので、そういう意味ではリベンジさせてくれ」と力強く宣言し、「また迎えてほしいと思います。その時は皆来てね!」と晴れやかな顔で次なる約束をしたのだった。
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イントロから大盛り上がりだった「アンコール」では、フロアもひとつになってノリノリで大騒ぎ! LANCEは嬉しそうにジャンプを煽り、スッキリとした顔でフェイクを響かせる。とても良い表情だ。MAKKIの歌唱パートもあり、2人の間に流れる絆とフロアのあたたかな空気が多幸感をもたらした。「ありがとう〜!」と叫んだLANCEは「よっしゃ、エンジンかかってきた!」と述べて「ワンダフルデイズ」をより一層パワフルに響かせる。即興を織り交ぜたイントロはエモーショナルで、希望あふれる美しい空間を作り出す。拳を握り、纏うオーラを輝かせて力いっぱいに歌っていたLANCEが、感謝を伝えるように両手を合わせたのが印象的だった。その場にいた全員で人差し指を天高く突き上げ、ひとつになった景色は、彼らのライブではお馴染みかもしれないが、間違いなくこの日のハイライトだった。
ラストは「奇跡な軌跡」。LANCEは涙を滲ませて懸命に声を張り上げる。MAKKIのまっすぐな瞳が優しい。<NaNaNa…>ではフロアもシンガロング。またしても全員で作り上げたパワフルなハーモニーは、最高にハートフル。全てをやり終えて前に出てきた2人に贈られた大きな拍手と歓声は、ライブの成功を証明していた。
そしてここで、7月27日(土)には東京渋谷Eggmanにて、8月18日(日)には仙台LIVE HOUSE enn 2ndにて追加公演が決定したという嬉しいアナウンスもあり、会場は喜びに湧き上がった。
「今日は本当に、大阪スタートで僕は嬉しかったです。勇気づけられに来たつもりでやってるので。金まで取って勇気まで取って(笑)」とLANCEは言ったが、何よりも勇気をもらったのはオーディエンスの方だろう。本人曰く「俺が今何言っても刺さる」という無敵状態のLANCEは「このツアー全部ぶっ刺していくから!」と力強く宣言。MAKKIは「LANCEの魂の叫びを聴いていただいて、自分のスパイスにして」と綺麗に締めようとするもLANCEにダメ出しをされ、「これからは僕が前に出て、ガンガン引っ張っていくので、MAKKIをよろしくお願いします!」と叫び、最後は記念撮影をして、大団円でライブは終了した。
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昨年の『FILTER88 ~6年ぶり!! 復活祭!!~開催決定!!』では、2曲しか歌うことができなかったLANCE。自身のインスタグラムでは「上手く歌えるかが不安だ」と率直な想いを吐露しつつ、「どうであれ歌いたい。追加公演もしたい。俺が誰よりも楽しみにしてる。」と決意を書き記していた。歌唱は完璧ではなかったかもしれないが、その言葉通り12曲(MAKKIの歌唱曲を除き)を歌い上げ、追加公演も発表し、見事に復活を遂げた。ここから続いてゆく2人のカラフルな未来を、見守っていきたい。
取材・文=久保田瑛理 写真=オフィシャル提供(撮影:Tasuku @photo_tasuku)