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「新しいTHE YELLOW MONKEYの宝石だと思っています」 10枚目のオリジナルアルバム『Sparkle X』に込められたメンバー4人の想い

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THE YELLOW MONKEY

THE YELLOW MONKEY

THE YELLOW MONKEY『Sparkle X』
最速試聴会&合同メディアインタビュー 2024.05.10

THE YELLOW MONKEYが2024年5月10日(金) に都内でメディア向けの試聴会イベント『Listening party & Media interview』を開催した。このイベントは、5月29日(水)にリリースされる10作目のオリジナルアルバム『Sparkle X』の全曲試聴及び、メンバー全員が登壇し、アルバムの制作エピソードなどが語られた。

イベント前半は『Sparkle X』全11曲が大音量で披露され、その全貌が明らかに。先行デジタルリリースされている「ホテルニュートリノ」、「SHINE ON」、「ソナタの暗闇」を含め、結成35周年を迎えたTHE YELLOW MONKEYの魅力が、真っすぐに伝わってくる王道ロックアルバムとなっている印象を受けた。

試聴が終わると、THE YELLOW MONKEYのメンバー、吉井和哉(Vo.Gt)、菊地英昭(Gt/ 以下・EMMA)、廣瀬洋一(Ba/以下・HEESEY)、菊地英二(Dr/以下・ANNIE)が登壇。MCを務める落合健太郎の進行のもとで4人がアルバムの詳細についてトークを行った。

まずは、4月27日(土)に行われた3年振りの東京ドーム公演『THE YELLOW MONKEY SUPER BIG EGG 2024 “SHINE ON”』をそれぞれが振り返った。HEESEYはライブを前に前夜から眠れないまま本番に臨んだといい、「寝ないでやったことも含めて、歴史の1ページに刻まれるようなライブでよかったなと思ってます」と安堵した様子。吉井は「自分は病気後初のフルステージ、しかもそれがいきなり東京ドームというのは正直プレッシャーも不安もあったんですけど、ステージ袖にスタンバった時点で“これはもう怯んでいてもしょうがないな”って逆にそこで僕はスイッチ入っちゃって。どんどん声は枯れていってもうカスカスになって、どこまで持つかわからなかったですけど、何とか完走できました。課題はたくさん残ったけど、そういう切羽詰まった状態っていうのがすごくやっぱロックには必要なんだなって、いい勉強になりました」と、喉の状態に不安を抱えながらも乗り越えたライブを生々しく振り返った。ANNIEは「今回の東京ドームは、スタンドの奥までちゃんとTHE YELLOW MONKEYのエネルギーで埋め尽くすことができたような感じがして、すごく充実したライブでした」と、今までの東京ドーム公演で一番楽しめたという。EMMAが「過去一番、お客さんと一体になれたドームライブだったと思います。やっぱり、LOVIN(吉井)のこともあって、見守ってくれてる感じもすごくあったし、一緒に楽しもうっていうオーディエンスの気持ちがすごく伝わってきました」と話すと、吉井は「何か、願いとか祈りのパワーってあるんだなって痛感しましたね」と、素直な心境を吐露した。また、オープニングの「バラ色の日々」が会場に集まったお客さんの声から始まったことについて、「イヤモニを外してました。やっぱそれは聴かないと始められないと思ったので。すごかったですよ」(EMMA)。「あの声を聴いて、本当のスイッチが入ったというか。“これは絶対いいライブになるな”って確信しました」(HEESEY)と感激した様子で語ると、吉井が「確かに僕から見ても3人がキレキレでしたね。HEESEYは毎回寝ない方がいいんじゃないかなって」と場内を笑わせた。

吉井和哉

吉井和哉

今までのTHE YELLOW MONKEYの、シャツのボタンを3つぐらい開けて“Yeah!”みたいな感じはあんまりないかも知れないですが、代わりに出てきた新しい部分は、新しいTHE YELLOW MONKEYの宝石だと思っています。

そして話題はアルバムの話へ。タイトルの『Sparkle X』は、「東京ドームのタイトル“SHINE ON”と連動して“もう1回輝こう”というキーワードとしてあったので、“Sparkle”とつけました。“X”は10枚目という意味の他に、これからまた“未知”のものに向かって進んでいくっていうことでつけました」(吉井)。

アルバムは、「SHINE ON」でスタートする。歪んだギターがコードを鳴らしバンドがなだれ込むように一体となる、様式美すら感じさせるロックンロールだ。そんなロックバンド然としたアルバムになった理由について吉井が語る。

「今までやっていそうでやっていないロックンロールを、あえてやってみようかなっていうことがありました。僕が声を出せない状態が長く続いたんですけど、ドームに紐づいてアルバムのリリースも決まっているスケジュールの中で、“この声でも曲を作らなきゃ”っていう状態で作ったので。そうすると潜在能力で得意なものしか出せないっていうか、実験作とか作ってる場合じゃないので(苦笑)。それで割とベタなロックンロールにすがったというか。あとはもうメンバーの演奏で華やかにしてもらえばいいかなっていう感じでした」。

菊地英昭(EMMA)

菊地英昭(EMMA)

「(「ドライフルーツ」のギターは)アルバムの中で一番好きなテイク。今までのTHE YELLOW MONKEYになかったソロを弾きたくてチャレンジした感じ」

MCから、アルバム曲全体が跳ねている印象であることを伝えると、ANNIEがすぐさま反応する。「THE YELLOW MONKEYって“跳ね”だなってすごく最近思っていて。例えば2000年代に入った頃はデジタル音楽が出てきて、僕らもそんなことができた方がいいんじゃないかみたいな時期もあったんですけど、今は完全に開き直って自分たちのグルーヴってやっぱり“跳ね”だよねっていうところに帰着しているんです。それが最強の武器だなっていうこともすごく認識しました」。それを受けてHEESEYは、「ちょっとした原点回帰をしつつも曲調然り跳ね感然り、どの曲を聴いてもありそうでなかったところもあるし、完全に新しいものもあるし、新しいけどなんかやっぱりTHE YELLOW MONKEYっぽいねっていう作品に仕上がったなって思います」とアルバムを表現した。「ロックは2000年代からどんどん変化してきましたけど、我々もチャレンジしたりいろいろ通過した中で、今回はロックのフォーマットでやろうって見つめ直した感じです。だからメロディーも割と大きいし、ラップの要素とか一切ないし、そういうものを排除してロックの原点に行ったような気もします」と吉井が付け加えた。

アルバムは「SHINE ON」、「罠」とストレートなロックチューンが続いた後、「ホテルニュートリノ」へと続く。これまでになかった新しい部分としてスカのリズムを取り入れたアレンジについて訊かれると、「とはいえ、70年代のマッドネスとかザ・スペシャルズみたいな感じなので、新しいつもりはまったくないんです。むしろ、“これはやってなかった”っていう方が強いですね」(吉井)。「アルバム制作の第1弾でメンバーで合わせた曲だったから新鮮さもあって、この曲のおかげで “ここからまた10枚目を作るんだな”っていう気持ちにもなりました」(EMMA)。また、「ホテルニュートリノ」の歌詞には《人生の7割は予告編で 残りの命 数えたときに本編が始まる》という歌詞に込められた思いについてMCから訊かれた吉井は、「自分が病気になったことは、改めていつまでも命ってあるもんじゃないんだなっていうのを痛感させられた出来事であったんですけど、それと同時にすごく背筋が伸びたというか。僕はこれまで割と、命とか生きることっていうのを真正面から言わなかったんですけど、聴いてくださる人の中にもそういう状況の人もいると思うので、そういう人たちも含めてここでできるロックって何だろうとか考えたんです。そうすると必然的にいろんな曲の歌詞にそういう要素が入ってきたんですよね。だから歌詞は逆に、今回あんまり悩まなかったです。僕はデヴィッド・ボウイが大好きなんですけど、ボウイが癌になって死の宣告をされてからの作品って、やっぱりすごくクリエイティブになったし、そういう余命とか命のことを考えたときに、何か新しいアートができるような気がしていて。それはすごく一つの作品としては意味があったと思います」と心境を明かした。

廣瀬洋一(HEESEY)

廣瀬洋一(HEESEY)

「(三国義貴について)90年代のTHE YELLOW MONKEYにあって再集結後になかったものの一つとして、相当音楽的には大きかったです」

今回、アルバムには90年代のTHE YELLOW MONKEYを語るには欠かせないサポートメンバーのキーボーディスト・三国義貴が久しぶりに参加している。「いつか来てもらいたいなってずっと思っていて、このタイミングで久しぶりにレコーディングに来ていただいたんですけど、本当にいぶし銀のプレイで全然衰えてなかった」(吉井)。「人間性もプレイも、独特の魔力を持っていて、それがダビングされて重なっていくごとに、“これだったんだ”みたいなところもあったんです。90年代のTHE YELLOW MONKEYにあって再集結後になかったものの一つとして、相当音楽的には大きかったです」(HEESEY)。

「ドライフルーツ」のギターについてEMMAは、「アルバムの中で多分一番好きなテイクです。今までのTHE YELLOW MONKEYになかったソロを弾きたくてチャレンジした感じです。これまで使うことがほとんどなかったアームを使ってみたりしました」。「Beaver」は吉井の中に古くからあった曲だという。「初めて言いますけど、今回僕が曲を作るのにいろいろ制限があったので、“メンバーがソロでやったらこういう曲を作りそうだな”っていうイメージで曲を書きました。再集結してからは、“それはもうさんざん聴いたから違うことをやりましょう”ってやってきたんだけど、そうじゃなくて、“好きなことをやってください”っていう、線だけ書いてある塗り絵をみんなに渡したような感じというか。「Beaver」はその最たるものですね」(吉井)。

最後まで歌詞ができなかったという「ラプソディ」には完成に至るまでにこんなエピソードが。「ある時ジムの帰りにお茶してたら、小さい男の子がお母さんに“おっぱい、おっぱい!”ってせがんでいて、それを聴いて今まで自分の中になかったメロディーができたんです。でも“おっぱい”から抜け出せなくなって(笑)。デモも“おっぱい”で歌ったんですけど、さすがにこれは世に出せないからずっと考えていて。ある日、移動の新幹線の中で考えていたときに、クラリネットのあれなんだっけ?(「クラリネットをこわしちゃった」) オパキャマラドじゃなかったっけ? キター! と思ってそれを使ったんです。しかもクラリネットをこわしちゃったという歌だし、自分の声帯のこととも重なると思って《オパ オパ オパ オパ》という歌詞になったんです」(吉井)。すぐにメンバーにグループLINEで歌詞ができたことを伝え、全員で歓喜を分かち合ったという4人。じつにTHE YELLOW MONKEYらしい閃きとユーモアを感じさせる制作エピソードであった。

菊地英二(ANNIE)

菊地英二(ANNIE)

「もう1回バンドができる喜びがこのアルバムにすごく詰められていると思うので、感じ取っていただけると思います」

アルバムのラストを飾るのは、東京ドームでも初公開された際に泣いているファンもいたという「復活の日」。「最初はアルバムの1曲目のつもりでしたけど、最後にすることによってリバースで聴いてもらってもいいと思いました。この曲は歌詞ができる前から東京ドームで初公開されることになっていたので、オーディエンス全員で書いてるような気持ちで書いたんです。だからすごくわかりやすい曲だと思います」(吉井)。

イベントも終盤になり、メディアからの質疑応答が行われた。若い世代の人たちに向けて、「THE YELLOW MONKEYのロックとは何か?」を問う質問に対して吉井は、「メンバーが年を重ねると、ファンも生活のことがあったりしてライブを観たり聴いたりできなくなる。それを考えたときに、若い人たちに向けて僕らが全力でやってもそれはちょっと違うなと思うんです。まさに今回のアルバムは自分たちが本当に目をつぶってもできるような楽曲を、“これが大好きだ”ってやることが一番大切かなと思って作りました。あとは若い方たちの中にも、ご両親が音楽好きでこういうロックを車の中で小さい頃に聴いていた人たちが、当時はよくわからなかったけどよく聴いてみればカッコイイかもねって言って聴いてくれればいいのかなって思っていて。ちゃんとルーツを知ってる子たちが聴いてくれると嬉しいし、もちろん知らないで感性で聴いてくれる子たちも嬉しいし、こっちも選んでお届けしたいっていうのはありますね」と語った。時代の変化に迎合することなく自分たちの音楽をありのままに届けようという姿勢に、揺ぎない自信と信念を感じさせた。

最後に、改めてメンバー一人ひとりがアルバムへの思いを伝えた。

「今回、アルバム発売前に3曲が配信リリースされていますが、まだ世の中に出ていない曲の底力が全部詰まった上で、『Sparkle X』というアルバムになるっていうことを強調したいというか、いつも以上にいろんな曲が出ている分、出ていない部分もすごく期待してほしいです。そういう曲がライブで力を発揮したりすることを僕ら自身も願っていますし、みなさんもそういう感覚で全曲聴いていただけたらと思います」(HEESEY)

「先ほどもお話ししたように、自分の病気という個人的なことがアルバムの一つのテーマになっていることは事実です。なので今までのTHE YELLOW MONKEYの、シャツのボタンを3つぐらい開けて“Yeah!”みたいな感じはあんまりないかも知れないですが、代わりに出てきた新しい部分をすごく大事にしたいし、それは新しいTHE YELLOW MONKEYの宝石だと思っています。僕たちはやっぱりライブが重要なので、ライブをどんどん強化していきたいし、そのためにアルバムを頑張って作るっていうのは一つの宿命だと思っています。それは新しく我々が挑戦し続けていくことだと思っていますし、まずはライブで『Sparkle X』を体感してほしいと思っています」(吉井)

「もう1回バンドができる喜びっていうのがこのアルバムにすごく詰められていると思うので、感じ取っていただけると思います。今までは、死と言いながら生を歌うとか、絶望と言いながら希望を歌うとか、そういうちょっとひねくれたような表現をしていたと思うんですけど、今回のアルバムはすごくストレートに吉井が乗り越えてきたことが伝わると思いますし、言葉の一つひとつの思いが多分違って聴こえると思います。大変なことを乗り越えてきた吉井が力強い言葉で曲を歌うことで、今困ってる人や悩んでる人がちょっとでも希望の光を見てくれたらいいなと思っています。そういうアルバムにもなっていると思いますので、ぜひみなさんでかわいがってあげてください」(ANNIE)

「「復活の日」という曲がありますが、世の中的にもいろいろあったので、僕はTHE YELLOW MONKEYがこの4人でまたやれるっていうことが、本当に復活の狼煙になっている気がしています。このアルバムをもとにライブもしたいですし、また新しい世界を広げたいですし、素晴らしいオーディエンスのところに音を届けて一緒にまた新しい世界を目にしたいです。できることはまだあると思うので、何かを探してまた転がっていきたいと思います。みなさん、これからもよろしくお願いします」(EMMA)

イベントを通して、THE YELLOW MONKEYとしてアルバムを作り活動することができている喜びがひしひしと伝わったきた。『Sparkle X』は、そんな4人が日本のロックシーンを牽引してきた歴史と風格の味わい深さ、そして文句なしにかっこいいアルバムだ。なお、先行試聴会がTHE YELLOW MONKEYのメジャーデビュー記念日となる5月21日(火)に、東京・名古屋・大阪の3会場で2部制にて開催されることも決定している。

取材・文=岡本貴之 撮影=横山マサト

 

 

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