『TOKYO〜the city of music and love〜』囲み会見より 城田優 (C)ヒダキトモコ
城⽥優がプロデュースする歌とダンスのオリジナル・エンターテインメントショー『TOKYO〜the city of music and love〜』が2024年5⽉14⽇(火)に開幕、5月19⽇(日)まで東京・東急シアターオーブ、6⽉22⽇(土)にシンガポール Esplanade- Theatres on the Bayにて上演される。開幕に先がけ、マスコミ向けの公開ゲネプロ(※ゲスト出演者はmiwa)と囲み取材が行われ、取材には城田優が登壇した。
本作は、城⽥優が実⼒派クリエイター、キャストと共に[東京]をイメージしてつくりだす、歌とダンスのオリジナル・エンターテインメントショー。さまざまなジャンルから⽇本トップクラスの才能を集めたいという思いから、出演者は城⽥⾃らが約1年に渡り、時にはソーシャルメディアのチェック、時にはライブハウスへと⾜を運び、世代・ジャンル・⽑⾊の異なる多種多様なアーティストを集結させた。そのシンガーはSWEEP、RIOSKE(ペルピンズ)、吉⽥広⼤、Rainy。、yuzu(FYURA PROJECT)、そして城田。ダンサーは原⽥薫、⼤村俊介[SHUN]、碓井菜央、BOXER、⾼村⽉。さらにスペシャルゲストとして、miwa(5/14、15)、鷲尾伶菜(5/16、17、19)、島津亜⽮(5/18昼・夜)が特別出演する。演出は城⽥優、⾦⾕かほり。
囲み取材とゲネプロの様子をお届けする。
城田優の囲み取材レポート
『TOKYO〜the city of music and love〜』囲み会見より 城田優 (C)ヒダキトモコ
ーーこのショーはなぜつくられたのですか?
城田:きっかけはまさにここシアターオーブです。2021年にコロナの影響でミュージカル『CHICAGO』が中止となり、米倉涼子×城田優『SHOWTIME』をつくりました。その『SHOWTIME』は異例なコンサートショーになり、それがお客様にも、内部の人間にも、僕らつくり手や出演者にとっても楽しくおもしろく新しい刺激となりました。それで今回、「ああいうショーをオリジナルでつくってみませんか」ということになりました。だから今回はなにかが延期になったその代わりというわけではなく、『SHOWTIME』がおもしろかったから生まれた企画です。僕自身、演じることももちろん好きですが、ここ数年はなにかをつくりだすことに非常に意欲的で、ひとつの作品をつくりあげていく過程や、ゼロをイチにしていく作業みたいなものがすごく好きです。今回は、キャストもスタッフもなにをやるかも決まっていない状態から、みなさまから支えられてここまできました。でもまだ自分の中では68点くらいです。ここから詰めていくのはおそらくちっちゃなことなんですけれども、そのちっちゃなことにいかにこだわれるかがクオリティやクリエイティブの真髄で、大事にしたいです。
ご覧いただいたみなさんはきっと、このショーを例えば友達に「なにを観に行った」と説明するのは難しいと思います。ミュージカルコンサートでもなく、普通のショーでもなくて、楽曲はポップスもあればミュージカルもあるし、いろんな世界観の曲がある。ダンスもあって、演奏だけのゾーンもあって、みんなで一緒に盛り上がるシーンもある。でもそれは「いろんなものを詰めよう」と思ったわけではなく、「自分がおもしろいものをつくろう」と思った結果です。「東京」という、自分が育ち、いろんなエンターテインメントに触れてきたこの街で、感じてきたこと、培ってきたこと。25年間の芸能生活で僕自身が「大切にしなければいけない」と思ったこと、学んできたこと、刺激を受けたこと。そういったもののひとつの集大成として、プロデュース、演出をしながら出演もするというカタチでやらせていただきました。本当に勉強しかない日々です。
『TOKYO〜the city of music and love〜』舞台写真 (C)ヒダキトモコ
ーーショーのテーマは「東京」なのですか?
城田:説明が難しいのですが、僕は(本作の主催である)キョードー東京の社長から、もう何年も前から「世界に飛び出してほしいし、世界に飛び出すものをつくってほしい」ということを言っていただいていました。僕の中でもやはり、海外で観るショーのクオリティや、そこで受けた感銘、感動を日本でもつくりたいという気持ちがあります。もちろん現時点でも(日本の作品には)たくさんの感動や興奮がありますが、今回はちょっとなかなか誰もやらなさそうな、おもしろい観点でものづくりができたらなと。そのうえで、日本という国や東京という街で生まれた曲たちや、そこから派生して育っていったエンターテインメントをギュッとまとめました。だから、「東京のことをやるのかな」と思われるようなタイトルをつけてしまったのですが(そうではなく)、「海外で上演する」という前提でわかりやすく「TOKYO」としています。その中には、日本から生まれて世界で評価されている楽曲もあるし、日本の劇場で演じてきた海外(戯曲)の楽曲を僕らが表現するとこうなります、というものもあります。
ーーなかなか一堂に会さないキャストが集まりましたが、城田さんがオファーされたのですか?
城田:基本的にそうです。せっかくやるんだったら「シンガー、ダンサー、どっちも主役」というおもしろいショーがつくりたいなと思い、じゃあいろんな毛色のシンガーとダンサーを揃えようと考えました。僕が「うわ! この人おもしろい。(このショーで)どんな表現をするんだろう」と思った方々にお声がけして、結果的に十人十色になったと思います。キャストの3分の1くらいはSNSで見つけていたりします。こういうキャスティングの仕方も時代でおもしろいなと思います。
『TOKYO〜the city of music and love〜』舞台写真 (C)ヒダキトモコ
ーー選曲も幅広いです。
城田:ミュージカル曲というジャンルひとつとっても、名曲は何千曲とありますから、選曲は非常に難しかったです。ただ今回の裏テーマというようなもので、僕の頭の中では頭から最後までのストーリーがきっちりあるんです。でもそこをお客様に説明してしまうと余白もなくなってしまうし、みなさんに委ねるカタチでつくっています。ただやはり「人生」。生きるうえで感じること。気付き、発見、新しいよろこび。その先には、争ったり、意見が食い違ったり、結果的に誰かが傷ついたり、苦しんだり、悲しんだり。そういう中でも、みんなそれぞれ素晴らしいものを持っていて、時にそれはいろんなバランスで、良い相性にもなれば悪い相性にもなる。そういう「大丈夫だよ、みんな一人ひとり輝いてる。生きるうえではマイナスな感情もある。そういうことも受け入れたうえで幸せを感じる瞬間を過ごしてほしい」というようなことです。このショーで100分間のトリップをしていただきたいんです。このちょっとぶっ飛んだ世界観を通して、人間が感じるいろんな感情を味わって、それぞれのカタチで胸に染み込ませて、このシアターオーブを出たときに、なんかちょっと渋谷の景色が変わったり、「よし、明日からもがんばろう」と思えるような、そんなハッピーなポジティブなエネルギーの満ち溢れた空間になればいいなと思ってつくっています。
『TOKYO〜the city of music and love〜』舞台写真 (C)ヒダキトモコ
ーーシンガポール公演も含めた意気込みをお願いします。
城田:みなさんのおかげで念願の海外公演が実現しそうですが、まずは日本で一人でも多くの方に、「私が住んでる街って素敵だな」と誇れるような、そんなショーをつくりました。僕自身が客席から観ながら「しあわせだな」と思えるような、高いパフォーマンスを届けられるキャスト・スタッフが揃っています。ぜひ劇場に足を運んでいただき、生でこの感動やいろんな感情を感じていただければ幸いです。
公開ゲネプロレポート
ショーは休憩なしの約100分。開幕までの客席は街の雑踏の音が流れている。開演し目の前に大きく広がったのは渋谷の風景。劇場であるシアターオーブがあるエリアだ。改めて、この場所と外に広がる世界がひと続きであることを感じる演出でもある。生バンドの演奏と共に、出演者全員による「Seasons of Love」(『RENT』より)でショーがスタートした。
『TOKYO〜the city of music and love〜』舞台写真 (C)ヒダキトモコ
城田が囲み取材で「ミュージカルコンサートでもなく、普通のショーでもなく」と話していた通り、そこにひとつのストーリーが感じられるような演出が印象的なステージ。だがそれは“作品”のようにひとつのまとまった世界の中で展開されるのではなく、出演者一人ひとりの個性が強烈に飛び込んだり、飛び出したりしてくるところがおもしろい。
『TOKYO〜the city of music and love〜』舞台写真 (C)ヒダキトモコ
前半のダンサー紹介ナンバーで原⽥、⼤村、碓井、BOXER、⾼村とソロダンスが披露されたのだが、90年代から振付師やバックダンサーとして活躍し、メインキャストとして『ロミオ&ジュリエット』や『カーテンズ』などにも出演、ダンスにとどまらず歌や芝居を取り入れた表現スタイルのソロ公演も行う原田のダンス、安室奈美恵らアーティストのバックダンサーのほか舞台役者としても地球ゴージャスなどさまざまな作品に出演するジャズダンサー大村のダンス、パフォーマンス団体「チャパリアーナ」、振付集団「左 HIDALI」、劇団「ぼるぼっちょ」のメンバーで、森山開次や白井晃などの作品にも参加する碓井のダンス、インスタやTikTokのフォロワー数は110万を超え、大きな注目を浴びるハウスダンサーBOXERのダンス、幼少期から数々のダンスコンテストで優勝し、King Gnu「三文小説」ほかさまざまなMVに出演、米津玄師やMISIAのライブツアーに参加し、さらに生き様パフォーマンス集団「東京QQQ」のメンバーでもある高村のダンスと、一人ひとりの魅力が全く違う。ソロで踊るとその個性を感じ、しかし5人が揃って踊るシーンは一体感があり、その組み合わせによってまた違うグルーヴが生まれる。そこにダンスというものの魅力やパワーを改めて感じられたし、この作品に流れるテーマとも繋がるようだった。
『TOKYO〜the city of music and love〜』舞台写真 (C)ヒダキトモコ
『TOKYO〜the city of music and love〜』舞台写真 (C)ヒダキトモコ
もちろんシンガーたちも同様。熟練のキャストから次世代の才能まで幅広い面々が揃い、その一人ひとりが輝きながらハーモニーも奏でていく。城田は数多くのミュージカルをはじめ、テレビドラマや歌番組でも披露されてきた歌の魅力はもはや言うまでもないが、このステージのプロデュースと演出も務めながらこの楽曲の数々を歌いあげることにはやはり驚く。シンガーソングライターのSWEEPはソウルフルなボーカルでこのステージの音をグンと引っ張っていく。本作の音楽監督も務める人物だが、あらゆるジャンルの楽曲が、このショーに合うアレンジ、そしてシンガーの魅力に合うアレンジで届けられていたのも印象的だ。ミュージカル『RENT』でのエンジェル役でも知られる、2人組音楽ユニット「ペルピンズ-PeruPines- 」のRIOSKEは、SNSの動画累計再生数が8億回を突破する抜群の歌唱力がこれでもかと披露される。吉田とペアで歌うシーンも多かったが、ふたりのハーモニーは抜群で、ぜひ注目してほしいポイントでもあった。その吉田は『ロミオ&ジュリエット』のティボルト役から『女の友情と筋肉 THE MUSICAL』佐藤ヒロユキ役まで幅広く演じ、歌と芝居で注目を集めている人物。このステージも、歌のうまさはもちろん表現力の高さにグンと引き込まれ、中でも城田と二人で歌う「闇が広がる」(『エリザベート』)は一気に客席を染めるさまが見事だった。2022年にアニメ『名探偵コナン ゼロの日常』エンディング曲「Find the truth」でデビューしたRainy。は2008年生まれ。その歌声の美しさと透明感は圧倒的で、さまざまな楽曲をスッと自分のものにして観客を魅了していた。そしてこのカンパニーの最年少2010年生まれのyuzuは、6歳でヒップホップダンスを始め、10歳でラップの道に進み、12歳でボーカルトレーニングを開始し、今は女性ボーカルグループ「FYURA」の一員としてソウル、ファンク、ロック、ゴスペル、ポップ、ヒップホップと幅広いジャンルを歌いこなす人物。今回のステージでyuzuが楽曲の魅力を広げる存在になる場面もあり、Rainy。と共に「新しい才能」として希望を感じる存在となっていた。
『TOKYO〜the city of music and love〜』舞台写真 (C)ヒダキトモコ
『TOKYO〜the city of music and love〜』舞台写真 (C)ヒダキトモコ
そんな“十人十色”なシンガーとダンサーがつくりあげる世界に、特別ゲストが(このゲネプロではmiwaが)どこか異色の存在として音を重ねていく。このステージを観ていると、そこから生まれるものは無限のように思える。また、ミュージカルからポップスからディズニー音楽まで幅広い選曲は「え! この人が歌うの!?」と驚くような組み合わせもあって楽しい。
『TOKYO〜the city of music and love〜』舞台写真 (C)ヒダキトモコ
座組、選曲、演出も含め、なかなか観ることのできない組み合わせと化学反応が詰まったステージ。ぜひ劇場で驚いたり、楽しんだり、さまざまな感情を堪能してほしい。
取材・文=中川實穗