バイオリニスト 三浦章宏(キセラホール杮落し公演 秋山和慶指揮大阪フィル 2018.11 キセラホール) 写真提供:みつなかホール
東京フィルハーモニー交響楽団でコンサートマスターを務めるバイオリニスト三浦章宏が、デビュー40周年の記念演奏会を、生まれ故郷の兵庫県川西市の市制70周年と併せてキセラホールで行う。見どころ、聴きどころとしては、長男で気鋭のバイオリニスト三浦文彰との親子共演に加え、三浦文彰の指揮するARKシンフォニエッタをバックに、バイオリン協奏曲を2曲演奏すること。ARKシンフォニエッタは、毎年10月にサントリーホールで開催される音楽祭『サントリーホールARKクラシックス』のレジデント・オーケストラ。2019年にアーティスティック・リーダーを務めるピアニスト辻井伸行と三浦文彰の呼びかけにより、日本を代表する若手演奏家が集結した日本最高峰のオーケストラだ。三浦章宏はARKシンフォニエッタでもコンサートマスターを務めているが、今回が関西初お目見えとなる。コンサート本番まで2週間を切り多忙を極める三浦章宏が、コンサートへの思いを語ってくれた。
バイオリニスト 三浦章宏 写真提供:みつなかホール
●デビュー40周年記念の演奏会は、オーケストラをバックにコンチェルトを弾きます。
――今回のコンサートは凱旋公演と銘打たれています。川西での思い出を教えて頂けますでしょうか。
山や川に囲まれた自然あふれる環境の中、幼少の頃は自転車で走り回ったり、川遊びをしたりして伸び伸びと暮らしていました。小学校高学年から中学生時代は野球部、高校時代はテニス部で運動に没頭していました。バイオリンは4歳からスズキ・メソードで始めましたが、当時はスポーツの方が好きで、高校に入るタイミングでやめてしまいました。大学は筑波大学に進んだことで、川西市を離れました。結果的にプロのオーケストラでバイオリンを弾くようになるのですが、川西市にみつなかホールが開館して以降、頻繁に呼んでいただき、故郷の素晴らしいホールで演奏してきました。
井上道義指揮、大阪フィルと共演(2009.5 みつなかホール) 写真提供:みつなかホール
――非常に挑戦的なプログラムですね。選曲理由と、聴きどころを教えてください。
デビュー40周年記念ということで、ずっとオーケストラに携わってきた者としてコンチェルトリサイタルにしたいと思い、ライフワークのバッハとベートーヴェン、あとはロマン派の代表的作品で人気の高いチャイコフスキーの協奏曲を演奏することにしました。
みつなかホールではオーケストラをバックにコンチェルトを演奏する機会は多い 写真提供:みつなかホール
――バッハはご子息の文彰さんとの共演で「2台のヴァイオリンのための協奏曲」。チャイコフスキーとベートーヴェンの協奏曲は文彰さんの指揮で演奏されます。親子共演についてはどのような気持ちですか。また、文彰さんの指揮者挑戦については、どのように思われているのでしょうか。
親子共演はそんなに多くはありませんが何度かあります。バッハはARKシンフォニエッタで数回演奏しました。彼は素晴らしいクォリティーのバイオリニストなので、負けないように挑んでいます。感覚的な部分が似ているので、音楽としては合わせやすいです。指揮についてはとても真面目に真摯に取り組んでいて、経験と共にどんどん良くなっています。オーケストラのスコアを勉強することは自分の演奏に取ってもプラスになるので、とてもいいことだと思います。
バイオリニスト・指揮者 三浦文彰 (c)Yuji Hori
――ARKシンフォニエッタは、今回が初めての関西公演です。どのようなオーケストラですか?
皆さん本当にレベルの高い奏者で、回を重ねるごとにオーケストラとして素晴らしいサウンド、音楽が奏でられるようになっています。若い人たちのフレッシュな感覚とエネルギーが一つになるのは本当に素晴らしいです。
ARKシンフォニエッタ (c)Yuji Hori
●バイオリニストに定年はありません。人の心に響くバイオリンを弾き続けたいです。
――オーケストラのコンサートマスターは年齢制限もあると思いますが、三浦さんは還暦を機にリサイタルを始められるくらいにお元気です。演奏家としての今後の人生設計をお聞かせいただけますでしょうか。
もちろんバイオリニストとしての定年はありません。できる限りより良い、人の心に響く演奏ができるよう邁進していくつもりです。
人の心に響く演奏をいつまでも届けていくつもりです 写真提供:みつなかホール
――最後に、このコンサートの抱負と、「SPICE」の読者に向けてメッセージお願いします。
故郷川西でこのような記念コンサートが出来ることを本当に幸せに思っています。息子文彰と若いARKシンフォニエッタの皆さんと、この日限りの特別な演奏をお届けできそうに思います。皆さま、是非会場にお越しください。
皆様のご来場をお待ちしています。(ピアノは長女 三浦舞夏) 写真提供:みつなかホール
取材・文 = 磯島浩彰