CIRCLE’24 2024.5.19(SUN)福岡・海の中道海浜公園 野外劇場
2日目。11時過ぎに海の中道海浜公園内に入るが、物販ブースには凄い列の観客が並んでおり、一番長い列が2日間共に『CIRCLE』オフィシャルグッズだったという事からも、いかに『CIRCLE』が愛されているかがわかった。この日もトンビは相変わらず物凄く飛んでいる。天気も相変わらずピーカン。初日同様、一般的な出演者全組同じ文字数で詳細に記録する文章では無いが、引き続きのCIRCLEの空気感が伝われば幸いである。
CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN
CIRCLE STAGEトップバッター11時半にはCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUINが登場。2日続けて初出演のトップバッターだが、CHO CO PA COは音楽好きの間で昨年くらいから話題になっており、まだライブ本数も数えるほどなので、この日の私含め観客の期待度はとても高かった。小学校からの幼馴染であるDaido(作曲、映像)、So(サウンドエンジニア、DJ)、Yuta(Ba)、そしてサポートメンバーのドラムとパーカッションの5人で現れる。電子音楽と民族音楽の融合というと陳腐な言い方になるが、初めて聴いた時に若い世代が鳴らす新しい音楽と素直に感じた。ライブで初めて聴いたが、ライブの本数が多くないとはいえ、その姿は威風堂々としていて、何はともあれ魅入ってしまう。インストナンバー「秩父」を鳴らし終えると、コーラスのMaoも現れて、「ガンダーラ」、「声を聞かせて」、「りんご追分」のカバーとDaidoを中心に歌う。全員がヘッドホンを装着していたりと、何気ない見た目ではあるのだが、若くして独特の雰囲気を持つ集団である。
Mao
「空とぶ東京」はポップでキャッチ―なナンバーであり、そのスペイシーなサウンドは野外にピッタリで、朝イチにも関わらず多くの人がゆらゆらふわふわ踊っている。「花様年華」のDaidoとMaoの掛け合いの歌声にスティールパンの音色も乗っかったりと全ての歌と音に耳を傾けてしまう。いわゆるチルアウト的な感じだけでは無く、終盤にかけて徐々に熱を帯びていき。「アートマン」から「tradition」では、太古の昔の儀式はこうだったのではないかと思えるくらいに踊る事に没頭してしまう……。ラストナンバー「琉球Boogie Woogie」では三線も鳴らされ、「イヤーサーサー!」という合いの手にもたまらなく高揚する。世代で言えば、去年のムーンライダーズ、今年の大貫妙子らといったレジェンド世代の孫世代だが、世代関係なく良き音楽が鳴らされるのが『CIRCLE』であり、良き音楽の遺伝子継承を確かめられるのも『CIRCLE』なのだなと感激してしまった……。
YONLAPA
去年のMikan Hayashi(ゲシュタルト乙女)、落日飛車のように海外からの初出演組に出逢えるのも『CIRCLE』の良きところ。今年はタイからYONLAPAがKOAGARI STAGEトップバッターで登場。MCでは英語でコミュニケーションを取るが、個人的に英語を全て理解できないとはいえ、気持ちを込めて楽しそうに嬉しそうに話してくれるので、自然に想いが届く。終盤の「Last Trip」はエモーショナルさも感じる楽曲であり、バンドの日本の観客へ絶対に届けたいという強い気持ちを感じた。いわゆる海外バンドだからこそ、余計に感じたのかも知れないが、私同様に観客全員が凄く詳しいわけではなかっただろう。この日に初めて聴いた人もいただろうが、何しろ音を楽しもうという真っ直ぐな人ばかりだった。理想的なフェスでの楽しみ方である。2日通して、観客からは誰を観に来たみたいなお目当て感を良い意味で感じず、全ての音楽をフラットにMAXに楽しんでいた。あるようで中々無い風景なので、観客が全幅の信頼を『CIRCLE』に寄せている事が再認識できた。それと『CIRCLE』は穏やか緩やかなイメージもあるのだが、意外と出演者たちはYONLAPAも含めて、しっかりと轟音を聴かせる激しさも持ち合わせている。それも間違いなく興奮ポイントのひとつであった。演奏後、メンバー4人が横一列に並び肩を組み3度もお辞儀をして、その後も手を合わせて観客に感謝を伝えていた姿には感銘を受けた。決して来日ライブは安易な事では無いし、だからこその日本への強い気持ち強い愛を感じられた。
cero
CIRCLE STAGE二番手cero。ライブは8人編成な事もあり、高度な技術であったり、精密さや巧みさに目が行くが、この日のceroは、そこだけでは無い目に見えぬパッションであったり、どこかライブも肉体性をより感じた。「Fdf」イントロのゲーム音のような効果音も、どこかアグレッシブな鳴り響き方をしていた……。
「出演時間パツパツに曲を持ってきているんで、この時間もったいないのでいきましょう!」
cero
という何気ない言葉もそうだが、ceroを始め常連組が2日目は多かった事もあり、初日でも感じた『CIRCLE』だからこそという思いが、この日も誠に感じる事が多かった。どこでもいつでも素晴らしいライブをしているわけだが、そこに『CIRCLE』だからこそという特別な魂が乗っかるとでも言おうか。ceroからは、その感じがより一層伝わってきた。なので「Summer Soul」は、いつも以上に聴き手の我々も煽られるものがあった。初日同様に一番暑い灼熱に近い13時過ぎから14時過ぎという厳しい時間帯であったが、だからこそceroの音に魂を込めてぶっ放すというライブは潔すぎたし、良い意味で男臭さすら感じた。
グッドラックへイワ
KOAGARI STAGE二番手グッドラックヘイワ。野村卓史(key)と伊藤大地(Dr、口笛)によるインストゥメンタルデュオだが、少し斜め気味に横一列に並び、ふたりが顔を見合わせながら演奏する。ふたりきりでインストなのに、いやふたりきりのインストだからこそなのか、もっぱら聴き入るのみであり、音の楽しみを追求しまくっていたら完成したみたいな究極に研ぎ澄まされて削ぎ落された音楽であった。野村が福岡でしか髪を切らないので数年ぶりに散髪したという謎エピソードも面白かったが、そこへの伊藤の「『CIRCLE』にちょこちょこ出ないとね!」という返しも絶妙。ふたりという人数だけで考えると少人数でありながら、この存在感と感嘆せざるをえなかった……。
ペトロールズ
その点でいうとCIRCLE STAGE三番手ペトロールズも、そうとしか言いようが無いライブであった。長岡亮介がフロントマンのスリーピースバンドであり、ほんまに3人なのかと思ってしまい凄すぎて笑ってしまうほどの鉄壁のグルーヴ……。「雨」での音と言葉が一寸の隙も無く決まっていく様は圧巻であった。こんなに天気が良いので、今年は雨の歌に、こんなに惹かれるのは自分でも不思議でしか無かった。言動行動どれを取っても茶目っ気があり粋でもあり、素敵でしかない長岡だが、去り際の「次は在日ファンク。新しいギタリストが入りました」という一言は素敵すぎた。ただただカタログ的に出演者の名前が連なっているのでは無くて、出演者全員が『CIRCLE』というバトンを繋いでいる。
在日ファンク
在日ファンク
新ギタリスト小金丸慧の加入が4月22日(月)に発表されたばかりであり、『CIRCLE』で初御披露目という特別感のあるライブに間違いなくなったと最初から書いておきたい。ハマケンこと浜野謙太がド頭から投げキッス、指揮を取る、マイクを倒して戻す、軽やかなステップ&ターンなどなど一挙手一投足がキレキッレ……。「むくみ」から「クーポン」と繋がっていく凄いファンク……。在日ファンクが凄いファンクバンドなんて事はわかりきっていたが、やはり新生在日ファンクなのもあり、とんでもない威力……。小金丸も紹介されるが、まぁ気持ち良いくらいの超絶ギターでぶち上がるしかない。煽り言葉として何気にハマケンは日本武道館を例えに出していたが、もしも在日ファンクが日本武道館で単独公演をするような事があれば、すんげー事になるだろうなと妄想してしまうほど……。「おすし」→「きず」→「ダンボール肉まん」→「爆弾こわい」という凄いピッチャーしか登板していない勝利の方程式で〆。踊り狂う以外に何もする事は無い……。新生在日ファンク輝かしい一発目ライブ。
ZAZEN BOYS
時刻は17時過ぎの終盤CIRCLE STAGE四番手ZAZEN BOYS。リハーサルでのスタッフや観客への何気ない一言から貫禄すら感じたし、2007年の『CIRCLE』初年度から向井秀徳が出演している事もあり、最早座長感すらある。この人がいたら全てが成立するという絶対的安心感。アルコール一口含み、「海中CITY! MATSURI STUDIOからやって参りました! ZAZENBOYS!」というお決まりの口上から1曲目「HIMITSU GIRL’S TOP SECRET」へ。超高速な音の決め……。それだけで痺れる……。「日曜日だろうと月曜日だろうと木曜日だろうと大体がWeekend!」と言われての「Weekend」も完璧としか言葉が無いグルーブに感嘆するしかない……。そして、人気曲「ポテトサラダ」では胸いっぱいになってしまう……。
ZAZEN BOYS
この日は「ポテトサラダ」の前に鳴らされた「バラクーダ」を始めとして、セットリストの大半が今年頭にリリースされたニューアルバムからのナンバー。最新曲たちが一番盛り上がるというのは申し分が無さすぎる素晴らしきライブ……。「チャイコフスキーでよろしく」、「YAKIIMO」、「永遠少女」、「乱土」という最後の畳みかけは、グルーヴィーでありメロディアスであり、唯一無二感が凄すぎて……、それ以上の言葉は何も無い……。先程、胸いっぱいという表現を使ったが、ラストナンバーは「胸焼けうどんの作り方」……。タイトルからしてZAZENでしか無いオリジナリティーの極み……。こんなに贅沢な胸焼けは無い……。そうそう、途中、アルコール片手に観客と乾杯三唱をしたのだが、その時に主催者の是澤泰志氏の名前と主催イベンターBEAの名前を出していたのにも、揺るぎない座長感を感じられた。
青葉市子
KOAGARI STAGEトリは青葉市子。彼女も常連中の常連であり、2日に亘ってバンド編成が多かったKOAGARIの最後を彼女が弾き語りで務めるのには、主催側の期待と信頼を感じられた。
「この後はEGO-WRAPPIN’が待っているので休憩だと思って。海鮮丼海鮮丼からのガリみたいな感じだから」
青葉市子
笑いながら本人は言っていたが、2日間の終わりが近づいてきた18時過ぎという時刻だからこそガリが持つ清涼感が重要なのだ。ゆっくり後ろで聴いていても良いと促しながら、ギターを爪弾き「テリフリアメ」で始まる。「今日は新しい曲をたくさんやろうと」と言いながら、新曲を奏でていく。静かな音楽に浸っていると、鳥の鳴き声や屋台売り子の声も混ざってくる。でも、それが決して違和感が無く、それも含めて彼女の音楽に聴こえてくるのは摩訶不思議だ……。まだ日が暮れず、空に薄く白い月が見える中での「月の丘」は、どこか幻想的でもあり、フィナーレに向けて心身が浄化された時間だった。
EGO-WRAPPIN’
2日間の大トリEGO-WRAPPIN’。CIRCLE STAGE19時10分からだが、18時50分のリハーサル時点で中納良恵もステージに現れて、「マイクチェック! エゴラッピン! リハーサル! ワンツーワンツー!!」と本意気の声でリズムに乗っていく。屋台に並んでいる観客も、それだけで早くも踊っている。翌日は月曜日だというのに、多くの観客が初日同様に観客エリア前方に陣取っている。あれだけ暑かったのに、すっかりライブが始まる頃には涼しくなっており、日中以上に観客もノリノリで1曲目「Neon Sign Stomp」から踊りまくっている。
EGO-WRAPPIN’
4曲目「a love song」の頃には暗くなり、観客を照らすライトが夕焼け色に輝いていて美しい。ムーディーな「色彩のブルース」は日暮れの時間にぴったりで、酔いしれるとはこういう事なのだろう。ここからは「Nervous Breakdown」、「サイコアナルシス」、「くちばしにチェリー」と一気にクライマックスへ!
EGO-WRAPPIN’
「外、お酒、ご飯、祝福の2日間!」
そんなふうに『CIRCLE』を表現してくれたが、これ以上の言葉は無いだろう……、そして、ずっと音楽が鳴っていた2日間。始まったらあっという間で間もなく終わる中でのアンコールナンバーは「GO ACTION」! ステージも観客エリアも全ての人がジャンプしている! 終わりなのにGO ACTIONなんて最高すぎる……。真の祝祭……。
EGO-WRAPPIN’
全てのライブが終わり、海の中道海浜公園には、高橋幸宏と坂本龍一それぞれの音楽が鳴っている。
「追悼の意を込めて、どうしても、これで終わりたかった」
主催の是澤氏は舞台裏で後片付けをしながら話してくれた。魂と音楽は残るんだな……、ふとそんな事を思った。『CIRCLE』が開催し続ける限り、命ある限り、一緒に歌い一緒に踊りたい……、そう本気で思わせてくれる祝祭こそが『CIRCLE』だ。
取材・文=鈴木淳史 撮影=オフィシャル写真(ハラエリ、勝村祐紀、chiyori)
載せきれなかった写真は次のページに!
CIRCLE’24 2024.5.19(SUN)福岡・海の中道海浜公園 野外劇場 フォトレポート
CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN
CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN
CHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN
YONLAPA
YONLAPA
YONLAPA
YONLAPA
cero
cero
cero
グッドラックへイワ
グッドラックへイワ
ペトロールズ
ペトロールズ
ペトロールズ
ペトロールズ
ZAZEN BOYS
ZAZEN BOYS
ZAZEN BOYS
ZAZEN BOYS
在日ファンク
在日ファンク
在日ファンク
在日ファンク
在日ファンク
在日ファンク
青葉市子