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SAKANAMON「お耳の肴にしてください」ーーEPひっさげた『“来ぶらり”』ツアーファイナルで聴かせた、音楽を続ける理由

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SAKANAMON 撮影=酒井ダイスケ

SAKANAMON 撮影=酒井ダイスケ

SAKANAMON TOUR 2024 “来ぶらり” 2024.06.01(SAT) Spotify O-WEST

「4曲入りのEPのツアーです!」

ライブの終盤、森野光晴(Ba)が改めて説明したとおり、ライブをテーマにした4曲にSAKANAMONのライブ・アンセムと言える2曲のライブ音源を加えた「liverally.ep」をひっさげ、4月5日(金)から全国10か所を回ってきた『SAKANAMON TOUR 2024 “来ぶらり”』が6月1日(土)、東京・Spotify O-WESTでファイナルを迎えた。

ミラーボールが眩い光を放つ中、観客の手拍子に迎えられたSAKANAMONの3人は予想通り、「liverally.ep」の1曲目を飾る1分27秒のショトチューン「MIC CHECK ONE TWO」で演奏を始めると、早速、「光の中へ」「幼気な少女」と彼らのライブには欠かせないアンセミックなロックナンバーをたたみかけるように繋げ、見事にスタートダッシュをキメてみせた。

SAKANAMON

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エネルギッシュな演奏にテクニカルなプレイを詰め込んだ「光の中へ」に対して、木村浩大(Dr)が刻む8ビートを軸にしたタイトなアンサンブルが鮮やかな対比を見せる「幼気な少女」では、<やいやいやい><わぁわぁわぁ>という掛け合いと藤森元生(Vo,.Gt)が歌いながらかきならすトレモロピッキングが熱を放つ中、この瞬間を待っていたとばかりに観客がシンガロングの声を上げる。

その勢いのまま、「楽しんでますか? 渋谷、声を聞かせてもらえますか!?」と木村が観客に声を掛けながら、ダンサブルな「UTAGE」に繋げ、フロアを揺らした直後に藤森が言った「とうとう始まってしまいました。そして、終わろうとしています」という一言は、ライブの始まりの挨拶と言うには気が早すぎるだろうとメンバーと観客を苦笑いさせた。しかし「終わろうとしています」の前に「ツアーが」と主語を加えれば、ツアーが終わってしまうことを惜しむ気持ちから出たものであることがわかるだろう。

裏返せば、それだけ今回のツアーに大きな手応えを感じていたということだ。

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「liverally.ep」をリリースした時のインタビュー(こちら)で、藤森は「ようやくライブを楽しむ余裕が出てきた」と語っていたが、結成から15年を経て、改めてそう思えたことには大きな意味がある。なぜなら、それがSAKANAMONというバンドにとって、活動の大きなモチベーションになると考えるからだ。

うっかり書き忘れたが、この日のライブはソールドアウト。スタンディングの1階も、着席の2階もいっぱいだ。今現在のSAKANAMONにとっては、小ぶりとも言える会場を選んだのは、もしかしたらいつも以上に親密な空間でライブの醍醐味を観客と分かち合いたいと考えたからかもしれない。

「どんな曲が皆様に襲いかかるのか、しかと目と耳に焼き付けていってください!」

彼らしい言い回しで、この日のライブに臨む意気込みを語った藤森がトリッキーなギターリフを閃かせ、再び演奏になだれこんだ3人が披露していったのが「ロックバンド」をはじめ、変拍子も含めたテクニカルなプレイも楽しませるアップテンポのロックナンバーの数々なのだから、藤森が言った「襲い掛かる」はまさに言い得て妙。

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そんなセットリストに80’sニュー・ウェーブを思わせる音像を持つ「FEST」をさりげなく織りまぜ、ぐっと抑えた演奏に観客を釘付けにしたタイミングで、藤森が言った「順調に事が進んでおります。おかしなことが起きなければ、いいライブになる予定です」という言葉からは、ここまでの流れに彼らが大いに手応えを感じていることが窺えた。

「ツアーが終わるのがもったいない。もうちょっと回りたかった」と藤森が言ったことをキッカケに今回のツアーの思い出を振り返った、いや、振り返るはずだったトークコーナーへ。初日の仙台に向かう高速道路のサービスエリアで花の写真を撮り始めた藤森に「びっくりした」と木村が語ったことから、藤森が最近、散歩を楽しんでいるという話に発展。

「町って楽しい。道って楽しい」と語り出した藤森は「表札を見ているだけで楽しい」と散歩の途中に見つけた珍しい苗字を発表して、ツアーの思い出話からどんどん脱線していく。その藤森が札幌公演に向かうフェリーの中で、15歳下のマネージャーと対戦型のビデオゲーム『タギロン』で戦い、負けたことを本気で悔しがっていたのが大人げなかったと木村が暴露して、日頃の3人のざっくばらんな関係性を覗かせながらトークコーナーは終了。

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アーバンな魅力も持つ「OTOTOTOTONOO」からの後半戦は、80’sエレポップを思わせる「脳内マネジメント事情」も交えながら、前半戦とは対照的にバラードナンバーの数々を楽しませていく。ただし、バラードとは言え、「ARTSTAR」で森野が弾いたグルービーなリフおよびグリッサンドを交えたダイナミックなフレーズや、「猫の尻尾」のエキセントリックな展開など、演奏面でもしっかり魅せるところはSAKANAMONならではだ。

今回のツアーがライブをテーマにした「liverally.ep」のツアーであることを改めて説明した森野の言葉を受けて、藤森が言った「SAKANAMONは音楽とか、曲とか、バンドとかのことを題材にしたいものが多い。音楽が好きだから音楽のことを歌詞に書いちゃうんですよね」という言葉に観客が拍手を贈る。

そこから、さあライブはいよいよ大詰めに!

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「すっぽんぽん」は今回、一番楽しみにしていた曲だ。なぜ楽しみにしていたのかと言えば、藤森が彼のタイミングで歌う<すっ・ぽん・ぽん・ぽん>に森野と木村がいかにして、演奏を合わせるのかがライブの見どころになると予想していたからだ。なんとこの日、藤森は<すっ!><ぽん!>と歌った声をサンプリングしたドラムパッドも使って、わざと空振りするというフェイントも掛けながら、リズム隊の2人と<すっ・ぽん・ぽん・ぽん>のインプロビゼーションを繰り広げ、客席を大いに沸かせたのだった。

再びギターを持った藤森が披露したフリーキーなギターソロからなだれこんだアウトロのラテンパートが観客を踊らせる。そして、その勢いのまま、森野と木村がソロを応酬しながら繰り広げたジャムセッションから繋げた「DUAL EFFECT」から、「SECRET ROCK’N’ROLLER」「ミュージックプランクトン」と繋げ、観客のシンガロングとともに作り出したのは、クライマックスにふさわしい熱狂だ。

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「「liverally.ep」のliverallyはliveとrallyをくっつけた造語。rallyにはいろいろな意味がある。反復、長距離移動、再会、再集結。東京から地方に行くのもrally。いい感じのタイトルを付けられました。他にも反撃、立ち直る、盛り返すという意味もあって、我々、盛り下がったつもりはないですけどね。15周年を迎えて、毎回、周年の度にゼロに戻る感じがあるんですけど、いつもその先にあるのはライブなんです。音楽を作って、皆様に届けられるなんて、バンド冥利に尽きます。だから、やっていくことは変わらないんですけど、最近、ライブが特に楽しい。これまで必死だったんですけど、皆様に届ける気持ちをやっと持てるようになった。これから楽しみながら、この箱の中で楽しんでいる人のパーセンテージを上げられるように楽しいライブをどんどん続けていこうと思いますので、SAKANAMONをこれからもずっと皆様のお耳の肴にしてください」(藤森)

本編の最後を締めくくったのは、「liverally.ep」からの「おつかれさま」。SAKANAMONが音楽を続ける理由の1つを、<ほんの一寸でも今日が 報われます様に 言わせてよ お疲れ様>という言葉とともに改めて歌ったロックバラードだ。タイトなアンサンブルの中で、3人それぞれに繰り広げる存在感のある演奏を観客がじっと聴きいっている光景もまた、前述した熱狂とともにこの日のハイライトと言えるものだった。

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15周年イヤーを締めくくる前回のツアーファイナルでは、「liverally.ep」のリリースとそのリリースツアーの開催を発表したが、この日は「ツアーが終わるのが寂しいので、秋にツアーします」(森野)と『ト・モ・ダ・チ?トモダチッテウマイノカ???』と題した対バンツアーの開催を発表して、観客に歓喜の声を上げさせた。

「ツアーが終わるのが寂しい」という言葉には、もちろん嘘はないと思うが、それよりも今のSAKANAMONはライブが楽しいから、ツアーがしたくて堪らないのだ、きっと。

「最近、ライブが特に楽しい。皆様に届ける気持ちをやっと持てるようになった」と言っているのだから、ここからもっともっとライブが良くなっていくことは間違いない。対バンツアーでは対バンツアーならではの化学反応も起こるはずだ。大いに期待している。

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「くだらない曲か、妄想している曲か、箱に入っている感じの曲か」と森野が言いながら、観客の拍手の大きさでアンコールに演奏する曲を決める演出もおもしろかった。

この日の観客が選んだのは、妄想している曲――「妄想DRIVER」。アップテンポのエネルギッシュな演奏の中で繰り広げる変拍子も交えるテクニカルなプレイとソリッドなサウンドがダメ押しでアピールしたのは、オルタナロックの申し子であるSAKANAMONの真骨頂だった。

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取材・文=山口智男 撮影=酒井ダイスケ

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