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上原理生と堂珍嘉邦が一日限りのデュオコンサートで熱いギフトを届ける!〜『Bitter & Sweet 上原理生×堂珍嘉邦 Special Concert』公演レポート

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2024年6月8日(土)、埼玉・ウェスタ川越にて『Bitter & Sweet 上原理生×堂珍嘉邦 Special Concert』が開催された。

俳優・声楽家としてミュージカルやクラシックの垣根なく活躍する上原理生と、CHEMISTRYとしての活動はもちろん、近年はソロアーティスト、ミュージカル界でも存在感を放っている堂珍嘉邦。一見異色の二人かもしれないが、ミュージカルという共通点が彼らを引き合わせることで本コンサートの実現に至った。

指揮は水野蒼生、ピアノ・編曲は山本清香、演奏は特別編成のウェスタBitter&Sweetオーケストラ、さらにトランペット&サックスユニットのPasso a Passoをはじめ、ベースの米光椋、ギターの村山遼、ドラムスの阿部将大が加わるなど、コンサートを盛り上げる布陣も豪華だ。第一部はバンド編成で昭和歌謡&ポップス、第二部はオーケストラ編成でミュージカル&映画音楽という、二人のBitterでSweetな魅力を余すことなく堪能できる構成となっていた。

ステージ中央に並ぶ2つのスタンドマイク。一体ここでどんな化学反応が起きるのだろうと開演前から胸が高鳴る。会場が暗くなりバンドメンバーがポジションにつくと、ドラムをきっかけにコンサートが幕を開けた。バンドが繰り出す陽気な音楽と共に、Bitter担当の上原とSweet担当の堂珍が颯爽と登場。二人が「め組のひと」(ラッツ&スター/1983年)を歌い始めると客席からはすぐさま手拍子が起こり、会場の温度が急上昇するのがわかった。印象的な「めッ」の振付を楽しそうにキメる上原と堂珍の微笑ましい様子からも、二人の仲の良さが感じ取れる。その後は興奮冷めやらぬまま2曲目「浪漫飛行」(米米CLUB/1990年)へ突入。疾走感溢れる爽やかなサウンドに二人の歌声が重なり合い、ホールの天井へと舞い上がる。

最初のMCコーナーでは馴れ初めトークに花が咲き、二人が出会ったミュージカル『ヴェローナの二紳士』(2014年)と、久しぶりの共演となった『THE PARTY in PARCO劇場』(2022年)の思い出話が飛び出した。『THE PARTY in PARCO劇場』で昭和歌謡を歌ったときから“昭和の帝王”と呼ばれるようになった上原は、その名に相応しい昭和の名曲「かがやける愛の日に」(尾崎紀世彦/1973年)をソロで披露。色気のある歌声で悠々と歌い上げ、情熱的な歌詞をまっすぐ客席へと届けた。続く堂珍のソロ「ダンスホール」(尾崎豊/1985年)は、同じ昭和の名曲でも全く正反対の魅力が詰まったナンバー。流れるように美しい旋律と、堂珍の語りかけるような甘く優しい歌声が溶け合って耳に心地良い。タイプの異なる2曲のソロによって、昭和の名曲の幅の広さを改めて感じると共に、二人の歌い手が持つ異なる魅力を存分に味わうことができた。

昭和に生まれ、平成を駆け抜け、令和の今を活躍する上原と堂珍。そんな二人は平成と令和からそれぞれ「TSUNAMI」(サザンオールスターズ/2000年)と「美しい鰭」(スピッツ/2023年)というヒット曲を披露した。上原は「自身にとって思い出深い曲」と紹介した「TSUNAMI」を、大海原を連想させるような豊かな歌唱で表現し、原曲とは異なる魅力を引き出した。堂珍は「新しい曲なのに懐かしさも感じる不思議な魅力がある」と語った「美しい鰭」を実に軽やかに歌い上げ、透明感のある美しい高音をホール中に響かせる。

第一部の最後は「Bitter & Sweet」というタイトルにぴったりな、甘くほろ苦いラブソング「ガラス越しに消えた夏」(鈴木雅之/2014年)を堂珍が選曲し、二人でデュエット。夏の終わりを感じさせる哀愁漂うメロディーと切ない歌詞が、コンサートがもう半分も終わってしまったという寂しさともリンクする。上原と堂珍が生み出す珠玉のハーモニーが会場全体を包み込み、しっとりとした余韻を残す第一部の終幕となった。

打って変わって第二部はとびきり明るいナンバーでの幕開けだ。1階客席の扉からサプライズ登場した上原が、ランプの魔人ジーニーに扮して映画『アラジン』より「フレンズ・ライク・ミー」を茶目っ気たっぷりに歌いながらステージへと駆け上がる。一気にヒートアップした会場の空気はそのまま、堂珍がドラマチックなジャズナンバー「キャラバン」(デューク・エリントン)を披露。オーケストラ編成を最大限に活かしたアレンジが施されており、特にラストのデクレッシェンドから盛り上がっていくクライマックスは鳥肌ものだ。音楽に身を委ね、オーケストラとのセッションを心から楽しみながら歌う堂珍の姿が印象的だった。

その後のMCでは指揮の水野蒼生も加わり、3人で音楽トークを繰り広げる。“クラシックDJ”として多岐に渡る活動に取り組む水野は、クラシック・ポップス・ロックといった区別なく「いい音楽はいい!」と断言。彼のこの力強い言葉は、多彩な音楽を楽しめる本コンサートそのものを表していたように思う。

後半はミュージカルナンバーのソロが続いた。まず上原が『チェス』より「アンセム」を切々と情感たっぷりに歌い上げて客席を魅了。クラシカルな趣があり壮大な曲であるが故に、オーケストラとの相性も抜群だ。堂珍は出演作『RENT』より「One Song Glory」を歌い、自身が演じたロジャーの張り裂けそうな心の叫びを繊細に表現。本来エレキギターのソロの前奏が特徴的なロックナンバーなのだが、今回は弦楽器が巧みに取り入れられており、“びたすい”でしか聴けない特別感のある「One Song Glory」を堪能できた。

その後もミュージカルのビックナンバーが畳み掛ける。上原は『ラ・マンチャの男』より「見果てぬ夢」で迷いのない芯のある歌声を響かせ、ひとりの男の覚悟を深く胸に刻み込む。堂珍は『モーツァルト!』より「僕こそミュージック」を自由に伸び伸びと歌い上げ、音楽と共に生きる彼自身と本ナンバーとが見事に合致している様を見せつけてくれた。

コンサートもそろそろ終盤となった頃、「せっかく堂珍さんと一緒に歌えるなら」と上原が堂珍にCHEMISTRYの楽曲をリクエスト。このコンサートがみなさんへのギフトになれば……そんな想いも込めて上原×堂珍による「My Gift to You」が観客へと贈られた。二人からのギフトを受け取った客席からの熱狂的な拍手が鳴り止まない中、上原と堂珍は再び舞台上に姿を見せる。ここで上原がジャケットを脱いでいることに気付いた堂珍が舞台上でジャケットを脱ぐと、指揮の水野も負けじとジャケットを脱ぎ捨て、客席からは思わず歓声が上がる。盛り上がりが最高潮に達したアンコールは、オールスタンディングで手拍子をしながら「オー・プリティー・ウーマン」(ロイ・オービソン)で華やかに幕を閉じた。

今回は一日限りのスペシャルコンサートではあったものの、BitterでSweetな魅力溢れる二人にまたどこかで会えるかもしれない。そんな期待を抱いてしまう程に、熱く実りのあるコンサートだった。

取材・文=松村蘭(らんねえ) 撮影=冨田味我

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