LET ME KNOW
LET ME KNOW ONE MAN LIVE 2024 -Nostalgic Modern- 2024.05.31(fri)原宿RUIDO
5月31日、原宿RUIDOでLET ME KNOWの初ワンマンライブを観た。予備知識はほぼ無い。知っているのはボーカルのMattyがSNS界隈の人気者であること、ギターのKen_MとドラムのLyoが双子であること、配信リリースわずか4曲で早耳音楽好きをざわつかせていること。なんたって昨年11月結成の若いバンドで、すべてはここからだ。超満員でぎゅうぎゅう詰めの観客と一緒に、初ワンマンの歴史的瞬間を先入観ゼロで楽しもう。
LET ME KNOW
ライブの1曲目は、LET ME KNOWとして2曲目にリリースをした「1800」。90’sブリットポップの香り高い、踊れるリズムと明快なギターリフ、キャッチーなメロディを散りばめた曲調がなんとも懐かしい。いや、10代や20代にはきっと新しい。「Goodbye Daily」は80’sネオアコと、もっと昔のオールディーズっぽい香りもする。「嘘嘘嘘」は、哀愁のメロディを配したエレクトロ風味のダンスロック。UKロック大好きの出自を丸出しに、しかしノリのいい日本語と情緒あふれるメロディ感覚は、しっかりとJ-POPだ。
その真ん中にいるボーカルのMattyは、一言で言えば華がある。革ジャンにサングラス、中にブラジルカラーのTシャツを着こみ、リアム・ギャラガーばりにやや顎を上げてスタンドマイクに向かう姿、エレクトリックギターを弾く姿、どれも絵になる。どちらかと言えば繊細な声質なのに、しゃがれた低音もハイトーンのシャウトもこなし、歌に没頭する姿勢に惹かれる。どちらもサングラスをかけたギターのKen_MとドラムのLyoの兄弟は、ジーザス&メリーチェインみたいだ。サポートベース・太田あさひの長い金髪もいいアクセント。音がかっこいいのはもちろん、バンドは見た目がかっこいいほうがかっこいい。
Matty(Vo)
「はじめましての人もきっと多いだろうから。たくさんしゃべるよりも、まず歌をたくさんみんなに届けようと思います。一生懸命歌うので聴いてください」(Matty)
潔い短いMCを皮切りに、3曲「SKY BLUE」「好きなんです」「バンドマンの元カレ」は少し趣を変え、テンポを落として心地よく聴かせ、グルーヴィーに踊らせる。未リリース曲ばかりなので歌詞は未確認だが、相当に独創的で面白いことばかり歌っている。ラブソング、というか恋愛にまつわるアレコレを、時にシリアスに時にユーモラスに時に偏執的に、女性目線を交えて歌う。Z世代の口説き方って何だ? バンドマンの元カレって? いちいち気になるが、曲はどれもポップで短く、ライブはどんどん進む。
「楽しみ方がわからん人もおると思うんですけど、体揺らしたり、手上げたり、恥ずかしいかもしれないけど、みんな自由に楽しんでほしいです。みんな味方だからね」(Matty)
Ken M(Gt)
柔らかい関西弁で、訥々としゃべるMatty。エレクトリックギターをかき鳴らして「You May Need Listen To ROCK’N’Roll」を歌い叫ぶMatty。ブルースマンのように振り絞る声がかっこいい、UKロックの伝統にのっとったMattyの(たぶん)自伝的激情ロックバラード。最新配信リリースでヒット中の「100円キッス」もスローナンバーだが、こちらはメロウで切ない感情が先に立つ、Mattyの(たぶん)自伝的恋愛ソング。この歌詞が実に素晴らしいのでぜひチェックを。せつないにも程がある。
キュートなシンセポップとフォークロックを合わせたような「最上級のエクスタシー」、そして「Happy」と、軽く体を揺らして聴けるポップチューンを2曲続けて。Mattyが革ジャンを脱いだ下のTシャツは、ナンバー10のKAKAのユニフォームだ。そのチョイスに込めたサッカー愛と哀愁に親近感。
「まだ4曲しかなくて、新曲ばかりやってますけど、楽しめてますか。そして4曲の中でLET ME KNOWと言えば、何の曲を想像しますか」(Matty)
Lyo(Dr)
「ハイボール」「聞こえないな」「ハイボール!」と、互いに照れくささ丸出しの掛け合いも初々しく、配信ヒット「偽愛とハイボール」へ突入する。クールなエレクトロサウンドとバンドグルーヴを混ぜ合わせ、Mattyの官能的なボーカルが映えるダンスチューン。Ken_MのストイックなカッティングとLyoのスクエアーなリズムがかっこいい。フロアは踊ったり手を振り上げたり、今日イチのリアクションでバンドに応える。「もっと揺らして!」、Mattyに煽られるまでもなく盛り上がる「初なFeeling」は、自然発生で手拍子が起きた。配信リリース1曲目LAD浪漫’s」は、イントロのギター一発で大歓声が湧いた。シンプル&キャッチーなポップパンクスタイルの、フェスでやったらブチ上がり必至の曲調が楽しい。フロアは「ヘイ!ヘイ!」の掛け声とダンスで沸騰状態。さぁ、残るは1曲。
「5月31日、ワンマンライブ、ありがとうございました。記念日みたいな感じやな」(Matty)
LET ME KNOW
感慨を振り切るように、猛スピード突っ走るラストチューンは英語詞の「LOVE SONG」。迷いなき疾走感、ニューウェーヴ感覚のあるソリッドビート、シンガロングできるメロディに巻き込まれ、フロアが一体になる。英語だからはっきりわからないが、この歌詞もいい。Mattyの(たぶん) 恋と音楽に生きる自伝的ソング。明るい一体感が、バンドヒストリーに残る初ワンマンのフィナーレにぴったりだ。
全14曲で65分。華のあるフロントマン・Mattyを中心に、ギターのKen_MとドラムのLyoががっちりとロックバンドの形を整える。UKロック中心の洋楽テイストに、J-POPとしての親しみやすさをブレンドし、ポップなメロディとひねりの効いた歌詞でぐいぐい引き込む。5月31日、原宿RUIDOでLET ME KNOWの初ワンマンライブを観られて良かった。可能性は無限大。すべてはここからだ。
取材・文=宮本英夫 撮影=シェイクソフィアン
LET ME KNOW
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