撮影:ハタサトシ
■2024.6.16 RAISE A SUILEN LIVE 2024「ESSENTIALS」DAY2@東京ガーデンシアター
(C)BanG Dream! Project
ガールズバンドを題材にしたメディアミックスプロジェクト『BanG Dream!(以下、バンドリ!)』発のリアルバンド・RAISE A SUILEN(以下、RAS)によるワンマンライブ“RAISE A SUILEN LIVE 2024「ESSENTIALS」”が、6月15日と16日の2日間、東京ガーデンシアターで開催された。「バンドリ!」きってのライブバンドとして知られる彼女たちの2024年最初の国内単独公演、しかも2nd Album『SAVAGE』リリース直後のライブとあって、両日共に会場には多くのバンドリーマー(「バンドリ!」ファンの呼称)が詰めかけ、熱気溢れる2日間となった。本稿ではそのうち、6月16日のDAY2公演の模様をレポートする。
劇中でキャラクターを演じるキャストが実際にバンドを結成してライブ活動を行うという革新的な試みによって、アニメやゲームのストーリーともシンクロし合いながら“バンドミュージック”と“キャラクター”の新たな可能性を切り拓き続けている「バンドリ!」。その原点となるバンド・Poppin’Partyを筆頭に、現在は6バンドがリアルでの演奏活動も行っているわけだが、その中でも特殊な成り立ちを経て結成されたのがRASというバンドだ。
撮影:ハタサトシ
そもそも彼女たちは、2018年1月、リアルバンド活動を行っていない「バンドリ!」内バンドのライブをサポートするために結成されたバンド“THE THIRD(仮)”を前身としており、その時点ではキャラクターを背負うのではなく、純粋にバックバンドとしての活動に徹していた。その後、単独公演やメンバーの加入を経て、バンド名をRAISE A SUILENに改め、キャラクターを割り当てられてアニメやゲーム作品に登場することとなったのが、彼女たちの誕生の経緯だ。そのため、語弊を恐れずあえて断言するなら、当初から彼女たちの本質はリアルバンドとしての“ライブパフォーマンス”にあったと言っても過言ではない。
そんなRASが本公演では新たな試みを実施。なんとライブで披露する楽曲のうち10曲を、ファンからのアンケート投票によって決定したのだ。これまでロックフェスへの参加や海外公演を含め、どの現場でも必ず熱狂を巻き起こしてきた生粋のライブバンドである彼女たち。その熱にあてられ、RASに魅せられたファンたちが選ぶ“今ライブで聴きたい10曲”が並ぶ今回の2デイズ。それはもう、最高のステージが約束されたようなものだ。
撮影:ハタサトシ
4層構造の立体的で迫力のある客席は人で埋め尽くされ、客入りのSE(RAS楽曲のインストバージョンなど)で体を揺らしたり首を振って盛り上がるファンたち。きっとDAY1公演から連戦しているバンドリーマーも多かったのだろう、会場は開演前から早くも“仕上がっている”状態だ。そんななか客電が落ちて、ついにライブが開幕。メンバー紹介を兼ねたオープニング映像を経て、Raychell(Ba.&Vo./レイヤ役)、小原莉子(Gt./ロック役)、夏芽(Dr./マスキング役)、倉知玲鳳(Key./パレオ役)、紡木吏佐(DJ/チュチュ役)が開幕一発目に鳴らしたのは「BATTLE CRY」。2nd Album『SAVAGE』収録のアンセミックなナンバーだ。RASの特徴の1つであるレイヤの力強い歌声とチュチュのハイテンションなラップのコンビネーション、たしかな演奏力に裏打ちされた重厚なロックサウンドによって、会場のボルテージはいきなりマックスまでぶち上がる。
そこからRASが活動モデルに掲げるミクスチャーロックバンド、Fear, and Loathing in Las Vegasから楽曲提供を受けた「Repaint」に繋げてさらに加速すると、チュチュの流暢な英語によるメンバー紹介と共に各自がソロ演奏を順に披露。ラストはレイヤの紹介を受けてチュチュも巧みなターンテーブル捌きを披露し、続けざまに代表曲の1つ「A DECLARATION OF ×××」を投入して、会場中がハンズアップして盛り上がる。ドロップ部分ではレイヤの「頭回せー!」という声と、前面に躍り出てきたパレオの首振りに合わせて、誰もがヘドバン状態。レーザー光線が飛び交うライト演出を含め、「これぞRAS!」と言うべきド派手かつ熱量高いステージが繰り広げられていく。
撮影:ハタサトシ
そしてここからはお待ちかねの、ファン投票によって決まった10曲のお披露目タイムへ。カウントダウン形式の特別映像によって、まずは10位から8位までの3曲の披露が予告される。10位にランクインしたのは「Beautiful Birthday」。RASの結成ストーリーが描かれたTVアニメ『BanG Dream! 3rd Season』の挿入歌として、彼女たちの楽曲としては珍しく“愛”や“感謝”についてストレートに歌った、RASの絆を象徴するような1曲だ。その深くエモーショナルな一閃がファンの心を抉ると、続いてはチュチュのDJプレイとパレオのショルダーキーボードによるソロプレイを経て9位の「TWIN TALE」へ。ツインテールがトレードマークのパレオに焦点を当てた楽曲で、この日もツインテールでステージに立っていた倉知がステージを縦横無尽に行き交いながらショルキーでパフォーマンスする姿が印象的だった。
8位の緩急が効いたアップナンバー「mind of Prominence」でレイヤの強烈なハイトーンが炸裂すると、続いてカウントダウン映像で7位から4位までの演奏を告知。7位はまるでジェットコースターのように止まることなく突き進む「Domination to world」で、ロックのギターソロから終盤にかけての加速ぶりが凄まじい。そして6位に選ばれたのは、大合唱必至のエモーショナルなアンセムロック「REIGNING」。2番サビの“世界よ「僕ら」を聴け”というフレーズはRASから世界への宣戦布告であり、1サビとラスサビの“世界よ「僕ら」となれ”という言葉は、RASとファンを繋ぐ団結の証だ。誰もが“Wow wo wow”と声を上げ、会場中が一体となってライブの前半戦を締め括った。
この日最初にして唯一のMCタイムでは、いつもコール&レスポンスで客席を煽っているRaychellに代わって、メンバーそれぞれがコール&レスポンスを行うことに。倉知は「ご主人様ー!」というパレオのセリフでチュチュへの愛情を表現すると、小原は「うっふ~ん、Raychellよ~」とRaychellのモノマネ(?)をしながらコール&レスポンス。Raychellもその仕返しとばかりに思い切りぶりっ子しながら「小原莉子です♪」とモノマネを披露。結局メンバー全員が小原莉子のモノマネをしながら「小原莉子です♪」というコール&レスポンスで謎の一体感を作り上げた。
撮影:ハタサトシ
そのようにユーモラスな一面も見せつつ、いざライブになると隙のないかっこ良さを見せてくれるのがRAS。後半戦は上松範康(Elements Garden)のペンによる情熱的なメロディーが印象的な「POLARIS」でスタート。赤を基調としたライト演出と呼応するように、客席のペンライトも真っ赤に染まる。ラストは皆がコブシを上げて大合唱すると、各メンバーのソロ演奏をフィーチャーしたインタールード的なインストパートを経て、同じく上松が作曲した暴風雨のようなエレクトロニコア「CORUSCATE -DNA-」へ。背面の巨大スクリーンに同楽曲のアニメーションMVが流されるなか、勇ましささえ感じさせる5人の演奏と歌唱がバンドリーマーたちの心にさらなる火をつける。
ここでメンバーたちは一旦ステージを降り、煌びやかな光と映像の演出と共にRASのリミックス音源が次々とプレイされる、まるでDJフェスのようなコーナーへ。EDMやヘビーロックの要素をミクスチャーしたRASの音楽性ならではの光景と言える。そして再びスクリーンに投影されるカウントダウン映像。すでに4位までが演奏されたので、ついにトップ3の発表か?と思いきや、ここで新曲の披露という嬉しいサプライズ! その新曲とはNew Album『SAVAGE』のリード曲として新たに誕生したモンスター級のハイテンションナンバー「V.I.P MONSTER」。RASといえば、チュチュやパレオが派手な手ぶりやアクションで観客を扇動もしくはリードする点も、ライブ巧者として評価が高い理由の1つだが、サビに振り付けが用意されたこの楽曲ではその利点が大いに発揮され、観客やステージ袖のスタッフまでもがメンバーたちの動きに合わせて振りを踊って盛り上がる。ブレイクタイムでのヘドバン祭りを含め、ライブの新たなキラーチューンの誕生を実感できた。
そしてついに上位3曲。3位はキャッチ―なメロディーとパワフルなボーカル、躍動感溢れるラップが融合した5th Singleの表題曲「Sacred world」。TVアニメ『アサルトリリィ BOUQUET』のOPテーマでもあり、熱いアニソン特有のドラマチックな楽曲構成と展開も込みで、ライブでの威力は抜群だ。続く2位はRAS屈指のアグレッシブなタオル曲「OUTSIDER RODEO」。レイヤが「頭を置いていく準備はいいか?」「頭飛ばせー!」と檄を飛ばし、演奏がスタートすると会場は瞬く間に狂乱状態に。途中でロックがマスキングのそばまでいって2人の演奏にフォーカスを当てる見せ場もあり(演奏後、2人でこぶしを合わせていたのも印象的だった)、会場は天井知らずの興奮を見せる。
そしてチュチュが「あなたたち、聴きたかったのはこの曲でしょ?」と会場を煽るなか、お馴染みの煽情的なフレーズが流れだす。栄えある1位に選ばれたのは、今やRASのライブには欠かせない最強のお祭りチューン「灼熱 Bonfire!」だ。サビでの手を交互に振るような振り付けでは、みんなの心が1つになって、会場が笑顔と熱気で包まれていく。ヘドバンパートで数千人の観客が一様に首を振る光景も感動的で、夏を先取りする灼熱ぶりに誰もが熱狂していた。
撮影:ハタサトシ
これで1位まで完走したわけだが、RASのライブはまだ終わらない。最後にダメ押しの1曲、「HELL! or HELL?」のイントロが流れ出した瞬間、客席からは空気を震わせるほどの大歓声が沸き起こる。メンバー全員が通称“ヘルヘルポーズ”と呼ばれるハンドサインをアピールし、レイヤが「さあ、次でラストの曲だよ!」「OK、地獄に行こうか」「お前らついてこい」と呼び掛けて楽曲に雪崩れ込むと、もはや考える余地もなく、観客全員RASと共に地獄という名の天国へまっしぐら。目まぐるしくも力強く激走する演奏、チュチュの鮮烈なラップとレイヤの骨太なボーカルの交差、一瞬一瞬が気の抜けないハイライトの連続で、一気に絶頂まで駆け抜け、ラストは金テープの発射と共に大団円を迎えた。
撮影:ハタサトシ
本公演を観て改めて感じたのは、やはりRASのライブバンドとしての最強ぶりだ。今回はファン投票を反映したセットリストということで、いわばファンがライブで聴きたい楽曲が凝縮されたわけだが、最後にその選から漏れた「HELL! or HELL?」を持ってきてなおピークを作り上げられるということは、RASの持ち曲に厚みがあることの証明でもあるし、そのライブの火力に特化したセトリをテンションを落とすことなく最後まで走り抜けるパフォーマンス力とステージ構成力には脱帽せざるを得ない。今年12月から来年1月にかけて全国ツアー“RAISE A SUILEN ZEPP TOUR 2024-2025”を開催することも発表され、世界に向けてさらに加速していくであろうRASは、我々にとって今後も「ESSENTIALS(=必需品)」になることは間違いないだろう。
(C)BanG Dream! Project
取材・文:北野創 撮影:ハタサトシ