Hilcrhyme、メジャーデビュー15周年記念公演「リサイタル 2024」のライブレポート到着
2009年7月15日リリースの「純也と真菜実」でのメジャーデビューから15年。確かなキャリアを重ねてきたHilcrhymeにとって、2度目の日比谷野外音楽堂でのワンマン公演となる「リサイタル 2024」が、6月29日に行われた。デビュー15周年を迎えるにあたり、クラブイベント「熱帯夜」の開催や、時代ごとに区切られた3枚のベスト盤の連続リリースなどこれまでの道のりを確かめてきたHilcrhyme。そのキャリアをライブとして、ファンとともに分かち合う記念すべきこの公演は、客席に加え立見席まで完売となり、その期待の高さを伺わせる。
1stアルバム「リサイタル」の冒頭を飾る「~OPENING~」に乗せて、タクトを手にしたHilcrhymeが登場し、ライブは「リサイタル~ヒルクライム交響楽団作品第1番変と短調~」からスタート。タクトとラップに導かれるように観客は手を振り、3000人超の観客に対し、Hilcrhymeが一人で対峙するというドラマティックなライブは幕を開けた。そして「遊ぼうか、日比谷!」と呼びかけ「チャイルドプレイ」へ。「さぁこの指止まれ」と人差し指を高々と掲げ、会場の一体感を更に高めていく。
「Hilcrhymeです、どうぞよろしく。『リサイタル2024』へようこそ。今日は2010年に行った1st TOUR『リサイタル』の再現公演なので、みんな曲は分かってると思いますが、それをこの最高な会場で歌いたい」というメッセージに続き、「もうバイバイ」へ。そのままHilcrhymeがメジャーデビューする以前に新潟で無料配布し話題となったデモアルバム「熱帯夜」に収録された「ヒルクライマー」「ライジングサン〜電光石火〜」をメドレー形式で披露。「ヒルクライマー」は「一人だろうが千人だろうが」を「一人だろうが三千人だろうが」に歌詞を変えるというこの日ならでは展開や、「ライジングサン〜電光石火〜」ではTOCと共にDJ KATSUの名前もコール。Hilcrhymeの原点となる楽曲が15年を経て歌い直される展開に胸を打たれる。
「今日は晴れて良かったね。15年前はこう思ってた。『雨も悪くないな』と」というMCから、しっとりと聞かせる「雨天」へ。そしてハードなミッドテンポのビートが響く「LAMP LIGHT」に続き、高速ラップも印象的な「RIDERS HIGH」へと一気に展開し、デビュー当時からHilcrhymeの楽曲が非常に幅の広い音楽性を誇っていたことを改めて証明した。残念ながらフィーチャリングのSUNSQRITTの参加は叶わなかったが、2人の客演パートもTOCが1人で歌いきった「射程圏内」に続き、「前回の日比谷で俺が思いっきり泣いているのがYouTubeにバッチリ残っているんだけど、前回のように泣いていいですか?」という言葉から「Please Cry」へ展開し、歌い終わると「今日は泣いてる暇なんて無いからね」と微笑みかける。「15年という時間を道に例えると、山あり谷あり丘あり、波乱万丈だった」というメッセージから、「これは薔薇の道じゃない荊の道」とアカペラで歌い始めると、それに被るようにBOXERが掛け合いとユニゾンで登場し、そのまま「イバラの道」へ。ラストは「15年経って味わう。これは薔薇の道じゃなくて茨の道」と締め、BOXERと共にステージを後にした。
ステージ上のスクリーンには、朱鷺メッセや武道館など、これまでのライブ映像がプレイバック。そして客席を通り、客席中央に作られたステージに登場し、オーディエンスに360度囲まれる形になったTOCは、「クラブ日比谷へようこそ!踊る準備はできてますか!」と呼びかけ、ライブの中盤戦を「East Area」からスタート。観客と目を合わせ、深くコミュニケーションを取りならがら進む「Little Samba~情熱の金曜日~」「OK!」の合唱が広がっていく「♪メリーゴーラン♪」と、ダンサブルな楽曲で客席の熱気を高めていく。
フロントステージに戻ったHilcrhymeは、メジャーとの契約を結んだ時期から現在までの時間を「日々模索してきた15年だった」と振り返る。そして「周りからどう見えているかは関係ない、自分がどうありたいのかを提示したいと思うし、いつか大きな花を咲かそう」「本当は今日、アリーナで、ドームでやりたかった。でもそれはまだまだ先。その気持ちがあるからやってこれたと思っている」とメッセージし、「ツボミ」へ。一輪の白いバラを持って「ここからの流れは分かるな?白いバラの花言葉、それは相思相愛」というガイダンスから、メジャーデビュー曲となる「純也と真菜実」へ。観客も楽曲に併せて、高く二本指を掲げ、彼の15周年を祝った。
「この曲で15年前にメジャー・デビューしました。(この曲のモデルとなった)純也と真菜実は、いまも仲良くしてます。その二人のように、Hilcrhymeのライブには、カップルで来て、夫婦になって、家族になった人がたくさんいるし、その光景を見るのは、心から幸せに思います。そして親から子へ、子から親へ、この曲は聴き継がれて欲しいし、歌い継がれてほしい。久々に歌いましょう」と、ワンマンでは暫く封印されていた「春夏秋冬」へ。Hilcrhymeをスターダムへと導いた曲を、高らかに歌い上げるTOCと、そのリリックをなぞるように大合唱する様々な世代の観客の姿は、アーティストとファンの理想的な形を感じさせた。アンコールの声に背中を押されるように再びステージに登場したHilcrhymeは、今年発表した新曲「Killer Bars」「ドラマ」を連続披露。現在進行形を表現しながら、「いつも今が最高だよ。今が一番格好いい。昔なんて忘れるよ」と、「ベテラン」であると同時に「最前線で戦う現役のプレイヤー」であることを改めて宣言した。
「夢見る少女じゃいられない MASHUP」では相川七瀬を呼び込み、「夢見る少女じゃいられない」のフックを相川とユニゾンし、楽曲の物語性をより立体化させる。「盟友を呼び込みましょう」という言葉に続き、仲宗根泉(HY)が花を持って登場。仲が良い2人の話は止まらなく、漫談のような掛け合いに発展していく。そして手をつなぎながら「事実愛」を丁寧に歌い上げた。
「次の一曲は撮っていいぜ。ファンの皆さんに向けた新曲です」という言葉に続いて披露された「24/7 LOVE」はドラマティックなバラード。Hilcrhymeがファンに向けまっすぐに歌ったこの新曲には、惜しみない拍手が贈られた。サングラスを外し、会場を感慨深く見渡しながら歌い上げた「My Place」に続き、「Technical」のアカペラを歌い出すと、そのラップにHIKAKINがビートボックスを乗せながら登場。タイトなセッションを披露していく。「5周年、10周年の公演に顔を出してくれてるのはHIKAKINだけです」という言葉に、「新潟魂です」と返すHIKAKIN。タイトなスケジュールの中、この日のオファーに即OKを出したという彼と共に披露したのは「らいおんハート」のRAPカバー。「本当に特別な一曲です。製品化はしません。心に刻んでください」と、Hilcrhyme彼をインディシーンで一躍注目させたビートジャック曲を、地元の盟友であるHIKAKINと歌うという物語の決着には、大きな歓声が上がった。
「今日は感無量だね。7月15日から16年目を迎えます。これからも一歩一歩踏みしめて、丘を登ろうと思います」と観客に呼びかけ、ラストソングは「大丈夫」。観客はOKサインを掲げ、合唱し、この日の一体感は最高潮を迎える。ステージを端から端まで歩き、名残惜しそうに観客に手を振るTOC。「新潟から15周年を迎えたHilcrhymeでした。最高の一日をありがとう。楽しんでくれたかな。すべての人にTOCから感謝と愛を!秋に会いましょう。バイバイ」と呼びかけ、万雷の拍手の中、ステージを降りた。
そしてスクリーンには秋から始まるツアーと、ニューアルバム COMING SOON!の文字が浮かび、観客からは喜びの声が上がる。15年前の曲であっても現在に通用する強度を持ち、それを古びさせること無くアップデートし、新曲と接続させ、Hilcrhyme楽曲の普遍性の高さを証明した「リサイタル2024」。この先にどんなクラシックが生まれるのか、改めて期待させられる。過去を見つめながらも、同時に未来を期待させるライブは、こうして幕を閉じた。
(テキスト:高木“JET”晋一郎)
SET LIST
01.〜OPENING〜
02.リサイタル〜ヒルクライム交響楽団 作品第1番変ヒ短調〜
03.チャイルドプレイ
04.もうバイバイ
05.ヒルクライマー 〜 〜ライジングサン電光石火〜
06.雨天
07.LAMP LIGHT
08.RIDERS HIGH
09.射程圏内
10.Please Cry
11.イバラの道 feat. BOXER(ゲスト:BOXER)
12.East Area
13.Little Samba〜情熱の金曜日〜
14.♪メリーゴーラン♪
15.ツボミ
16.純也と真菜実
17.春夏秋冬
EC
01.Killer Bars
02.ドラマ
03.夢見る少女じゃいられない Mash Up(ゲスト:相川七瀬)
04.事実愛feat.仲宗根泉(HY)(ゲスト:仲宗根泉(HY))
05.24/7 LOVE
06.My Place
07.らいおんハート RAPカバー(ゲスト:HIKAKIN)
08.大丈夫