ひなた坂46が初ライブ、高本彩花の卒業セレモニーに日向坂46全メンバーが駆けつける
7月3日・4日の2日間に渡って、神奈川・パシフィコ横浜 国立大ホールで、ひなた坂46のライブが行われた。ひなた坂46は、アイドルグループ・日向坂46が11thシングル「君はハニーデュー」から選抜制を導入したことにより、アンダーグループとして誕生した。この初ライブでは、すべてのメンバーが曲ごとにセンターを務めるなど、全員にスポットライトが当てられるとともに、日向坂46の新たな可能性も感じさせるライブになった。また、このパシフィコ横浜は、日向坂46の前身グループ・けやき坂46(通称ひらがなけやき)が初めてのツアーの初日を迎えた場所でもあり、くしくも同じ地で新たなスタートが切られる形となった。ここでは、メンバーの高本彩花の卒業セレモニーも行われた2日目のライブの内容をレポートする。
オープニングでは、明るく元気な日向坂46のイメージを覆す重低音とともにメンバーが登場。ひなた坂46の「座長」を務める髙橋未来虹の「ひらがなライブ、行くぞー!」という一声でライブがスタートした。一曲目は、いきなり日向坂46の楽曲の中でも最もダンスの難易度が高い「ってか」。このステージをもってグループから卒業する一期生の高本彩花が、クールにセンターを務めた。続いて、山口陽世がセンターに立っての「One choice」。グループの「アオリ番長」とも呼ばれる山口らしく、「行くぞー!」と豪快に叫んだ。そして「You’re in my way」へ。センターの平岡海月らが曲中のセリフをカッコよく決めるたびに、観客から歓声が湧いた。
ここで最初のMC。髙橋が大量の汗をかきながら、「みなさんの声援も相まって、会場、熱くないですか?」と今日の盛り上がりを表現した。高本は、「ひらがなひなたを全力で盛り上げるために死ぬ気で頑張る」と宣言した上で、先ほど「One choice」でセンターを務めた山口のパフォーマンスに心打たれ、涙が出たと告白。山口も「魂込めましたよ、私も死ぬ気でやってますから!」と応えた。
ここからは期別曲のブロック。グループ最年少の渡辺莉奈が「全員もっともっと盛り上がれんだろー!」と観客をアオり、竹内希来里が「弾けちゃえるジャンプ」を観客にレクチャーした上で、三期生曲「青春ポップコーン」をパフォーマンス。センターの石塚瑶季らメンバーが、弾けるポップコーンのようにジャンプするのに合わせ、観客も飛び上がって会場を揺らした。次はファンにも人気が高い二期生曲「世界にはThank you!が溢れている」。センターを務めた清水理央は、間奏で大きな白いフラッグを使った見事な演技を見せた。続いて高瀬愛奈の「おひさま(日向坂46ファンの総称)、行っくよー!」という掛け声から、一期生曲「どうする?どうする?どうする?」。最後は、竹内をセンターにして三期生曲「ゴーフルと君」をパフォーマンス。全員でタオルを振り回して、フェスのような空気を作り上げた。
MCでは、今しがた披露した曲の裏話を紹介。実はセトリが組まれる前に、石塚が「青春ポップコーン」を歌う映像を森本茉莉に送ったことがあり、今回その石塚がセンターを務めることになって「瑶季のその(動画で見た)表情を見れたことが嬉しいです」と森本は語った。なお、MCで話す内容を森本が考えているとき、石塚が「このエピソードどうですかー!」と提案したそう。また、髙橋はレッスンで清水のダンスを見ていて、「日向坂46のパフォーマンスに欠かせなくなってくる」メンバーだと思ったという。最後は、仲良しの高本彩花と濱岸ひよりが、ふたりでいるときのノリで「やれんの?」と会場に呼びかけ、「やれるよー!」とファンが応えてMCを締めた。
続いては懐かしのユニット曲のブロック。けやき坂46時代の楽曲「夏色のミュール」「割れないシャボン玉」を四期生メンバーが中心になって披露した。次に森本茉莉と山口陽世が「一番好きだとみんなに言っていた小説のタイトルを思い出せない」を歌唱。通常は同期の上村ひなのがひとりで歌っている曲だが、舞台『幕が上がる』でW主演を務め、生年月日も同じという運命的なコンビが担当することになった。続く「男友達だから」を歌ったのは、一期生と二期生でありながらプライベートで沖縄旅行に行くほど仲の良い高本彩花と濱岸ひより。これで最後となるふたりでのパフォーマンスに、ともに涙を流しながら抱き合う姿を見せた。最後は髙橋未来虹が「わずかな光」を独唱。歌唱力に定評のある髙橋が、気持ちの入った歌声で会場を引き込んだ。
再びMCに入ると、先程四期生たちと一緒に「割れないシャボン玉」をパフォーマンスした一期生の高瀬愛奈が、「私自身もすごい懐かしい気持ちになりました」と語った。この曲と「夏色のミュール」の衣装は、すべて発表当時のメンバーが着ていたもので、四期生たちは「ほんっとにかわいい」と興奮していた。
ここからは、アップテンポの「アゲ曲」が続く。髙橋未来虹のソロダンスから始まるダンストラックを挟んでから「My fans」。最年少ながらダンスに定評のある渡辺莉奈が、センターとして堂々たるパフォーマンスを見せた。続いてはバトルアニメを思わせるハイテンションな楽曲「Dash&Rush」。センターの森本茉莉が、間奏でダイナミックなソロダンスを見せる。次はソウル風のダンス曲「愛はこっちのものだ」。バレエ経験者の濱岸ひよりが、長い手足を存分にいかしてノリノリでセンターを務めた。そして小西夏菜実センターの「恋した魚は空を飛ぶ」。現在は二期生7人で歌っている曲だが、小西のスキのない表情と、12人での大迫力のパフォーマンスで会場を熱くした。
ここでVTRが流れる。4月にこのひなた坂46ライブが発表された際、森本茉莉が涙ながらに語った「やってやるぞ!って気持ちで頑張ります」という言葉や、各メンバーのこのライブにかける気持ちが紹介される。そして髙橋未来虹が、全員を代表してステージ上でスピーチした。
「本日はライブにお越しいただき、そして配信でご覧いたいだき、本当にありがとうございました。リハーサルから今日を迎えるまでの、忙しなくもあり、愛おしい日々がだんだん終わりに近づいているんだなぁと実感して、今は少し寂しさすら感じています。
今日は少しだけ、私のお話をさせてください。周りの人に、私に足りないものはなんだろうって訊いた時に、自信が足りないって言われることが多くありました。このライブでは、そんな自身のない自分から脱却したくて、これまで頑張ってきました。そして、そんなタイミングで、ひなた坂46のセンター、そして単独ライブの座長に選んでいただき、今の私にとっては、大きすぎる試練だなと思うと同時に、自分が何か変われる大きなきっかけでもあると確信しました。ファンのみなさんはもちろん、スタッフのみなさん、そしてメンバーのみんなに、たくさんたくさん支えていただいて、私は今日、自信を持ってステージに立つことができました。
今作、自分に与えられた役割をまっとうできたかは、たぶん、このライブが終わってから分かると思っています。でもひとつ、確かに言えるのは、ひなた坂46の初のセンターに立てて、すごく楽しかったなぁということです。このライブがひなた坂46の未来につながること、そして、ひなた坂46がさらに坂を上り続けていくことを、私は心から願っています。これからも、どうぞ、日向坂46の応援をよろしくお願いします」
本編最後は、「錆つかない剣を持て!」。11thシングルに収録されたひなた坂46の楽曲で、彼女たちの新しい門出を応援するような一曲だ。センターを務める髙橋未来虹が、模造刀を使って高度な殺陣を披露したのに続き、中華風の衣装に身を包んだメンバーたちが本気のパフォーマンスを披露した。サビでは、メンバーの歌唱に合わせて「Hey!」という大コールが起きていた。
ここで本編が終了。「ひらがな!」という声の混じるアンコールを受け、ステージに登場したのは、ペールピンクのドレスに身を包んだ高本彩花だった。ここから、高本の卒業セレモニーが始まる。高本は、用意してきた手紙を読み上げた。
8年間、本当にありがとうございました。2016年の5月8日に、けやき坂46のオーディションに合格して、今日まで、本当に幸せでした。あの日から、人生が180度変わりました。普通に生きてきた、進路に迷う高校3年生だった私が、突然アイドルという憧れていた存在になることができました。
振り返ってみると、はじめは欅坂46さんの背中を追いかけていました。偉大な先輩たちの背中は本当に大きくて、かっこよくて、その背中を見ていられることが、当時の私は、嬉しくてたまりませんでした。同じグループで活動できたことが、本当に幸せに思います。
けやき坂46で過ごした時間も、私は本当に大切で、何よりも大切にしています。今この瞬間、思い出すのは、「走り出す瞬間」ツアーです(※注「走り出す瞬間」は2018年にリリースされたけやき坂46の1stアルバム)。本の世界から登場するメンバーがかわいくて、初めての自分たちのアルバムの楽曲だけでライブができたことが本当に嬉しくて、ユニット曲のリハーサルを客席で見ていたのを今でも覚えています。いろいろあり、アルバムが発売する前のツアーで、知らない曲のはずなのに、公演を重ねるごとに、ペンライトの色が揃ったり、コールが聴こえてくる。ファンのみなさんと一緒に作り上げたツアーだったと思います。そんな思い出深いツアーをしたこのパシフィコ横浜で、卒業セレモニーをさせていただけることが、本当に幸せに思います。
私にとって、日向坂46は、温かくて、優しくて、居心地の良い、大好きな場所でした。大好きなメンバーと一緒に目標に向かって、心を一つに、切磋琢磨して活動する時間が、本当に幸せで、かけがえのない思い出でいっぱいです。中途半端で何事も長続きせずにずっと生きていた私ですが、けやき坂46と日向坂46は、初めて真剣にやり遂げたいと思ったことだったかもしれません。
8年間のすべての出逢いが私に大きな力をくれました。メンバー、支えてくださるスタッフの皆さん、そして、私を好きと言って応援してくださるファンのみなさんに出会えたこと。この世界には、たくさんの人がいます。そんな中から、私を見つけて、応援してくれて、たくさんの温かい言葉と、最高の景色を見せてくださり、本当にありがとうございました。
はじめの頃は、アイドルと自信をもって言えないくらい、ネガティブで自信のなかった私ですが、これまでの経験と、ファンのみなさんの支えが、自信を与えてくれましたし、何事も前向きに考えられるようになりました。そして、たくさんの夢もかなえることができました。憧れだったアイドルになれて、自分の考え方や、人格が、アイドルになる前の私よりも好きになれたことは、人生の財産です。
これから私は日向坂46を卒業し、新たな道へ進んでいきます。きっと、険しい道のりもあると思います。これまでの経験を活かして、新たなことにチャレンジしていきたいと思っています。どうか温かく見守っていただけると、うれしいです。
メンバーのみんなへ。みんなと一緒に活動できた時間は青春でした。一期生はもう一緒にいすぎて、何を考えているか分かるようになりましたし、二期生はアイドルとして尊敬できるメンバーばかりで、三期生は花丸をあげたいくらい努力家のメンバーで、四期生の若い力は日向坂46の宝だと思います。この8年、当たり前のように家族よりも長い時間を共に過ごしてきたので、その当たり前がなくなってしまうことが本当にさみしいです。頑張るみんなに力をもらえていました。みんなといるから笑顔になれることがたくさんありました。挫けそうなときも、みんなと一緒だから乗り越えられることがたくさんありました。最高で、最強のみんなが大好きです。これから私も、おひさまとしてみんなのことを応援し続けたいと思います。ずっときらきら輝く日向坂46でいてください。
そして、ひなた坂46のメンバー、みんなこのライブを通してたっくさん成長したと思います。私はリハーサルやライブをしていて、みんなの良さをたくさん見つけました。一緒にこのライブを作ることができて、本当に楽しかったです。みんなのいいところをたくさん知っています。このライブを通してたくさんの方に気づいてもらえたはずです。自信を持って、笑っていてほしいです。みんなとリハーサルをしてると、もっとここにいたくなりました。これからもみんなを支えたかったですが、近くにはいれないけど、離れたところから、ずっと応援しています。
そして、いつも支えてくださるスタッフのみなさん。8年間、本当にお世話になりました。みなさんと一緒にお仕事ができて、本当に幸せでした。愛にあふれるスタッフのみなさんがいてくださるから、安心して活動することができました。どんなときも寄り添ってくださり、たくさんわがままを聞いてくださり、ここまで育ててくださり、本当にありがとうございました。
そして最後に、おひさまのみなさん。どんなときも味方でいてくださり、みなさんの存在が、心の支えでした。私達メンバーにとって、おひさまの存在は、本当に大きいんです。これからも日向坂46を温かく照らしてください。おひさまがいるから、ひなたができるんです。雨が降っても、おひさまがいたら、虹ができるんです。みなさんがくれる、温かい言葉が大好きでした。その言葉に何度も救われました。卒業発表してから、幸せになってねという言葉をたくさんいただきました。もう十分、あふれるくらいの大きな幸せを今、いただいています。誰かの幸せを願えるって本当に素敵なことだと思います。おひさまのみなさんも幸せになってください。ずっと願っています。これから先も大好きです。アイドルになり、おひさまのみなさんと出会えたことが、人生の宝物ですし、誇りです。
最後になりますが、8年間、本当に本当に、ありがとうございました。
2024年7月4日日向坂46 高本彩花
高本が手紙を読み終えると、今日のライブには出ていないメンバーも含めて、一期生がステージに上がった。佐々木美玲は、このパシフィコでけやき坂46のツアー初日を行った際、まだ音源が発売されていない楽曲をパフォーマンスし、会場にマイクを向けたところ、ファンが鼻歌で歌ってくれた思い出を振り返った。高本と初期の頃から仲が良かった東村芽依は、「今日は泣かない」と宣言し、涙をこらえながら、高本とのユニット「あゃめぃちゃん」でユニット曲「夢は何歳まで?」を歌えたことを「宝物だなって思います」と語った。
そして一期生みんなで、けやき坂46時代の名曲「おいで夏の境界線」を歌唱。さらに、二期生の小坂菜緒もステージに上がり、「Footsteps」をパフォーマンス。さらに、ステージに28人の日向坂46全メンバーが集結。「みーんなでやったら絶対楽しいだろうなって曲」と高本が語る「永遠の白線」を披露し、ラストは高本オリジナルの「あやちぇりポーズ」を全員で決めた。この曲を選んだ理由について、高本は「もともと大切にしていた「永遠の白線」って楽曲を、私の力を使って全員でやりたいって思って」と言って会場を和ませた。
そして最後に歌ったのは日向坂46の代表曲「JOYFUL LOVE」。ファンのサイリウムで作られた「虹」に包まれながら、メンバー全員から花を受け取り、高本はステージを後にした。その背中を見送ってから、ひなた坂46を代表して髙橋未来虹が「あやねぇさんが大切に思ってくれたこのひなた坂46という場所を、私達も大切に守っていきたいと思います」と語った。さらにこの日は予定にないダブルアンコールが起こり、一度ステージを後にしたひなた坂46メンバーが再び登場。アンコール用のTシャツ姿のまま、「錆つかない剣を持て!」をパフォーマンスした。
グループにとって初の選抜制導入をきっかけに結成された、ひなた坂46。メンバーは表題曲の選抜から洩れた者だが、森本の「やってやる!」という意気込みや、髙橋の「このひなた坂46という場所を、私達も大切に守っていきたいと思います」という思いで分かるように、むしろ彼女たちのモチベーションはかつてなく高まっている。今回のライブで彼女たちひとりひとりの個性が伝わるとともに、表題曲選抜メンバーもいい刺激を受けたなら、選抜制導入は大成功と言えるだろう。8月27〜29日には、四期生による日本武道館3days公演、そして9月7日、8日には、宮崎県のサンマリンスタジアム宮崎を会場とした大規模イベント「ひなたフェス2024」の開催が予定されている。今後の活動は、きっとひなた坂46がもたらした変化を感じられる場になるだろう。
7月4日セットリスト
M1 ってか
M2 One choice
M3 You’re in my way
M4 青春ポップコーン
M5 世界にはThank you!が溢れている
M6 どうする?どうする?どうする?
M7 ゴーフルと君
M8 夏色のミュール
M9 割れないシャボン玉
M10 一番好きだとみんなに言っていた小説のタイトルを思い出せない
M11 男友達だから
M12 わずかな光
M13 My fans
M14 Dash&Rush
M15 愛はこっちのものだ
M16 恋した魚は空を飛ぶ
M17 錆つかない剣を持て!
EN1 おいで夏の境界線
EN2 Footsteps
EN3 永遠の白線
EN4 JOYFUL LOVE