「Cody・Lee(李)は良いバンドなので、もっと多くの人に聴かれるべきだと思っています」メジャーデビュー2周年、特別な装いで臨んだBillboard Live TOKYO公演を振り返る

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Cody・Lee(李)

Cody・Lee(李)

2nd Anniversary LIVE Cody・Lee(李) in Billboard Live TOKYO
2024.06.16 Billboard Live TOKYO

「Cody・Lee(李)は良いバンドなので、もっと多くの人に聴かれるべきだと思っています。3年目も僕たちのことを知らない人にも届くようにがんばっていきたいと思っているので、みなさんもどうか変わらずご愛顧のほどよろしくお願いいたします!」

最後の挨拶を、高橋響(Vo, Gt)はそう締めくくった。

なるほど。メジャーデビュー2周年の記念に、いつもとはちょっと違うライブをということで、サポートメンバーも含め全員が大人っぽい装いで、この日(6月18日)、六本木の東京ミッドタウンにあるライブレストラン、Billboard Live TOKYOのステージに立ったのは、ひと回り成長した姿を披露した上で、バンドが新たな一歩を踏み出す気持ちを直接伝えたかったのか――とその時、『2nd Anniversary LIVE Cody・Lee(李) in Billboard Live TOKYO』と題したこの日のライブの主旨に気づいたのだが、あれ、待てよ。その直前に高橋は何て語っていたっけ? それを思い返すと、「3年目も僕たちのことを知らない人にも届くようにがんばっていきたい」という言葉は、周年記念でよく耳にする常套句などではなく、新たな決意にも思え、なかなか感慨深いものになるのだが、まずはそこに至るまでの流れを振り返っておこう。

photo by Yuma Kanai

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この日、男性キーボード奏者と女性コーラス2人(1人はアコースティックとエレキのハイブリッドギター、1人はパーカッションも担当)を加えた7人編成でステージに立ったCody・Lee(李)の演奏は、リリースしたばかりのメジャー2ndアルバム『最後の初恋』から「涙を隠して(Boys Don’t Cry)」で始まった。力毅(Gt, Cho)がスライドフレーズを交えたギターリフを閃かせるマージ―ビート風のポップロックナンバー。曲が進むにつれ、高橋の歌の裏で鳴る楽器の音が増えていき、演奏の温度がぐっと上がったタイミングで、高橋が上げた「ビルボード!」の声に観客が拍手を返す。力毅がキメたギターソロの直後のいわゆるオチパートでは客席から自然に手拍子が起こり、ライブは1曲目からいい感じだ。

photo by Yuma Kanai

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そこに繋げたのがミッドテンポの8ビートで泣きやせつなさを含んだ歌を聴かせる「I’m sweet on you (BABY I LOVE YOU)」と「おどる ひかり」。胸を焦がす高橋の歌ももちろんだが、力毅による音色に煌めきや揺らぎを加えた前者のギタープレイ、ニシマケイ(Ba, Cho)による後者のリード的なベースプレイも聴きどころ。力毅は全曲でテクニックおよびギミックも駆使しながら、楽曲に彩りを加えていく。

photo by Yuma Kanai

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「いつもとはちょっと違う感じでやってます。ごはん食べてくださいね。僕らは演奏し続けているんで、気にせずトイレにも行ってください。楽しんでいたら終わってたって感じでやらせてもらうので、よろしくお願いします!」

高橋による改めての挨拶を挟んでから、3階席まである客席を沸かせたのが、シティポップなんて言葉も連想させるダンサブルなポップナンバー「愛してますっ!」。サビで原汰輝(Dr, Cho)が打ち鳴らす4つ打ちのリズムに合わせ、観客が手を振り始める。ワウを使って、音を波打たせた力毅のギタープレイもファンキーだ。

photo by Yuma Kanai

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客席の盛り上がりに気を良くしたのか、「Cody・Lee(李)がビルボードに新しいムーブメントを起こします!」と高橋が声を上げ、力毅がオリエンタルな魅力を持つリフを閃かせながら、バンドが演奏したのはMVを発表したばかりの「DANCE扁桃体」。

「ビルボード踊ろうぜ!」(高橋)

ツチドチ・ツチドチと原が刻むリズムがハジけ、高橋とサポートの女性メンバーが歌を掛け合うダンスポップナンバーだ。それもアップテンポの。「愛してますっ!」以上に観客が盛り上がったことは言うまでもない。あっ、タオルを振り回し始めた観客もいるではないか。筆者はBillboard Live TOKYOでタオルを振り回す観客をこの日初めて見た。その意味では、新しいムーブメントが起きたと言ってもいいかもしれない。

photo by Yu Hashimoto

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「飲んでますか? みなさん! 何を食べてるんですか? ピザ? フライドポテト? フィッシュ&チップス? いいね!」

観客に話しかける原はすっかりゴキゲンだ。

その原はこの日、普段しないネクタイを締め、ライブに臨んだそうだが、高橋とニシマはスーツを、自他ともに認めるファッショニスタである力毅は自分でデザインした衣装をあつらえたという。そんなところからもこの日のライブを特別にしたいと考えているメンバーたちの意気込みが窺える。

photo by Yuma Kanai

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「2周年記念です。ありがとうございます」(高橋)

その一言に感慨を込めながら、バンドはゆったりとしたテンポのフォークロックナンバー「Wedding Song」と『最後の初恋』収録の8ビートのポップロックナンバー「ほんの気持ちですが!」を曲の振り幅を見せつけるように披露していく。後者では演奏がフェイドアウトしてから、またフェイドインするというメンバーの息がぴったりと合っていないとできない演出も楽しませる。

photo by Yu Hashimoto

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この日、バンドが演奏した全12曲中、『最後の初恋』から選んだのは全5曲。Cody・Lee(李)史上最大規模となる『最後の初恋』のリリースツアー『I want to be a flower』が9月から始まるため、新曲は敢えて控えめにしたのだそうだ。

「(だから新曲を聴きにという意味合いを込め)ツアーも来てください!」と、このタイミングで新たにバンドのリーダーになったという原は観客をツアーに誘うことも忘れない。

「(Billboard Live TOKYOは)いい場所なので、いい景色が見られるんじゃないかな」

高橋が言うと、ステージの背後のカーテンが開き、まだ明るい六本木の街並みが観客の目の前に広がる。そして、ライブは後半戦に――。

photo by Yuma Kanai

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サポートの女性メンバーと高橋がハーモニーを重ね、盛り上げたネオアコナンバー「春」、世界観を作ることを意識したアンサンブルで淡い音像を描き出した「世田谷代田」、そして、ギターでコードをかき鳴らしながら高橋が歌い始め、メンバーたちが順々に音を加えていった「イエロー」と、まるで名残惜しいという気持ちを滲ませるようにじっくりと聴かせる曲を重ねていったが、本編最後を飾った「イエロー」はドラマチックな展開を見せながら、ドラムを連打する原を中心に演奏が白熱。ギターソロを奏でる力毅に応えるようにニシマがランニングフレーズを閃かせ、まさにクライマックスという言葉がふさわしい熱演を繰り広げた。

しかし、冒頭に書いた通り、真のクライマックスはアンコールに待っていた。

「2周年を迎え、いろいろ変わりゆく中で、うちの尾崎(リノ/Vo, Gt)も卒業しまして、本当に大変な期間が続きました。メンバーでリハに入って、(女性ボーカルのパートを試行錯誤する中)裏声でいろいろな曲をやってみたんですけど、これは人前ではできないということでライブも何本かキャンセルしました。そこから2周年を迎え、アルバムも出して、こうしてBillboard Live TOKYOでいっぱいのお客さんに囲まれてライブができることがすごく幸せです。あそこで心が折れて、やめなくてよかったと思います。本当にみなさんのおかげです。ありがとうございます」

photo by Yuma Kanai

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そんなことがあったのかとちょっとびっくりさせる高橋の言葉は、ピアノバラード風に始まった後、メンバー全員で渾身の演奏を繰り広げ、観客の気持ちを揺さぶった「生活」を挟んでから、冒頭の発言に繋がるのだが、バンドにとって心が折れそうになる瞬間があったことを知ったいま、「3年目もがんばっていきたい」という決意とともにバンドが踏み出した新たな一歩は、より力強いものに感じられ、その一歩を踏み出す瞬間に立ち会えたことがうれしくなるのだった。

ここからバンドのアンサンブルはさらに研ぎ澄まされていくことだろう。

それを確かめるために9月から始まるツアーにもぜひ足を運びたいと最後の最後に披露したディスコナンバー「我愛你」で高橋がギターソロを背面弾きでキメる勇姿を見ながら思った。

取材・文=山口智男
撮影=Yu Hashimoto,Yuma Kanai

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