あほの坂田。「僕を本当のヒーローにしてくれてありがとう」 自身が目指してきた“ヒーロー”をテーマにした活動15周年記念ツアーファイナル・日本武道館公演をレポート

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あほの坂田。

あほの坂田。

AHO NO SAKATA 15th ANNIVERSARY TOUR -HERO-
2024.6.30 日本武道館

4人組ボーカルユニット・浦島坂田船のメンバーであるあほの坂田。が、全国5都市を巡る活動15周年記念ワンマンツアー『AHO NO SAKATA 15th ANNIVERSARY TOUR -HERO-』を2024年6月に開催。ソロとしては初のホール公演、出身地である兵庫県で初公演、ファイナルは初の日本武道館公演とアニバーサリーイヤーに相応しく“初”尽くしであり、彼が目指してきた“ヒーロー”をテーマにしたツアー。そのファイナルを華々しく飾るべく6月30日に行われた東京・日本武道館公演の模様をお伝えする。

場内が暗転、突如としてアリーナ客席通路に現れたのは、あほの坂田。のマスコットキャラクターであるケンちゃんによく似てはいるものの、悪魔のような角の生えた犬怪人ケンケン。浦島坂田船のグループ活動としてもメンバー個々のソロ活動でも初の着ぐるみのお出ましである。「俺様は人間の悲鳴が大好きさ。人間の悲鳴を聞けば聞くほど、俺様の力はどんどん強くなる!」と言いながら横行闊歩する犬怪人ケンケンを制したのは、「そこまでだ!」という勇ましい声。「誰だ!?」と問われ、「俺か?俺はな… あるときは一般人、あるときは浦島坂田船の赤色、またあるときはみんなのヒーロー、となりの坂田。だ!」とステージで堂々叫んだのは、もちろんあほ(となり)の坂田。。ヒーローの登場だ。ツアーのキービジュアルそのままの衣装をクールに着こなし、「みんな! 俺が来たからにはもう大丈夫だ。おまえらの声さえあれば、いつだって、どこだってかけつける!」と宣言すると、「ぽんこつレッド」へ。2024年6月6日にリリースされたばかりのソロアルバム『HERO』の幕開けを飾る曲だ。どんな困難が降りかかっても何度だって立ち上がって<君のため>に歌を届けるあほの坂田。に、彼のイメージカラーである赤を灯したペンライトを振りながら全力で<助けてさかたん!>コールをする坂田家(あほの坂田。ファンの呼称)。あほの坂田。が体現するのは、ただ完全無欠なヒーローではなく痛みを知る心優しきヒーローなのだ、とあらためて思う。

あほの坂田。

あほの坂田。

あほの坂田。

あほの坂田。

ダンサー2人と息ぴったりな軽やかダンス、マイクスタンドさばきでも魅せた「共鳴Tune!」。“太陽のような明るさと温かさを持つあほの坂田。のために”盟友・天月がかつて書き下ろした「サニーデイ」。咲き誇る<幸せの花>は色鮮やかだ。

一転、ステージ前にファイヤーボールが勢いよく噴き上がる中で巻き舌やロングトーンで圧倒したのは「荒波」。自ら道を切り拓く意志の強さに貫かれた「迷図」では、ステージ中央から延びる花道を通ってセンターステージへ。高まる一体感を全身で感じながら、「ホントに最初からずっと最高だよ!」と感無量な様子のあほの坂田。、突破力に満ちて尖ったさまもまた彼らしい。

あほの坂田。

あほの坂田。

今度は大胆にもステージに現れた犬怪人ケンケンがダンサー2人を洗脳して連れ去ってしまい、「俺はひとりじゃ何もできない」とあほの坂田。が肩を落としていると、浦島坂田船のメンバーであるうらたぬき、志麻、センラの声が響く。「坂田よ、力が欲しいか」「おまえはひとりではない」「俺たちがいる」「お前に俺たちの力を授ける」「これで会場を爆上げさせるのだ」「ライブ頑張ってな」という心強い言葉に励まされ、「確かに受け取ったぜ、おまえたちの力。使わせてもらう!」と見事立ち直り、サングラスをかけてパワフルに歌ったのは浦島坂田船の「レッドホットクレイジーナイト」だ。お互いに認め合い支え合う同志たちは、やはり特別な絆で結ばれている。

あほの坂田。

あほの坂田。

あほの坂田。

あほの坂田。

「仲間の力を借りて盛り上げるなんて反則じゃないか?」と犬怪人ケンケンに詰め寄られても、「だって浦島坂田船は俺の一部だもん」と即答するあほの坂田。、その表情は誇らしげ。直後、犬怪人ケンケンの僕(しもべ)となってしまったダンサーとヒーローショーさながらのダイナミックな戦闘アクションを繰り広げピンチに陥ったあほの坂田。だったが、ここで彼を救ったのは坂田家の「坂田」コールだ。ダンサーの洗脳を解いて犬怪人ケンケンを改心させ、無事に会場をハッピーで埋め尽くした「スーパーヒーロー」での坂田家とのコール&レスポンスは、驚くべきボリューム、熱量だった。

あほの坂田。

あほの坂田。

ツアーに向けての準備の様子、武道館公演に向けての熱い想い、浦島坂田船メンバーとして未来を見据えた決意を収めたドキュメンタリー的幕間VTRをはさみ、チェック柄セットアップに着替えて「NO DRIVE, NO LIFE」へ。「この曲、ここでやるの(浦島坂田船ライブで披露して以来)6年ぶりじゃない!?」と前置きした「スクールボーイ」にしても、あほの坂田。の柔らかな歌声と笑顔は癒し効果絶大だ。

あほの坂田。

あほの坂田。

「武道館、人パンパンやん! 嬉しい!」と笑顔を見せたロングMCでは、うらたぬきと一緒に初めて武道館のステージに立ったときの緊張、浦島坂田船として行った初武道館ワンマンを振り返り、ついにはソロで武道館公演を開催できるまでになった喜びを嚙みしめたあほの坂田。。後半戦の幕開けを飾ったのは、事前に募集した『あほの坂田。活動15周年記念楽曲リクエスト』をもとに構成された「15th ANNIVERSARY SPECIAL MEDLEY」だ。歌い手として歩み始めるきっかけとなった「1925」から自らアコースティックギターを手に弾き語りした「きみへ」に至るまで、15年の歩みがぎゅっと凝縮されたメドレーに、それぞれの大切な思い出を重ねた坂田家。さらに、「いつも僕のことを思ってコメントを投稿してくれたり、動画を再生してくれたり、そうやって支えてくれるみなさんの想いにいつまでも向き合って応えていきたい。心を込めて歌います」と言ってエレキギターを手に歌ったのは「Calc.」。これまでもこれからも、あほの坂田。は彼を求める人の人生に寄り添う歌を歌ってゆくのだろう。

あほの坂田。

あほの坂田。

「あくまで俺は、浦島坂田船のメンバーのひとりとして、浦島坂田船をまだまだ続けたくて、終わりたくなくて、そんな覚悟をもって臨んだ今日でした。みんなもどうか、その想いに応えてほしい」と告げた上での「独断」は、『HERO』に収録のエモーショナルなロックナンバー。武道館バージョンの浦島坂田船ワードを取り入れたコール&レスポールでも沸かせた「無駄≠無駄」からの、本編ラストに届けたのはこれもまた『HERO』に収録の「忘却ヒーロー」だ。坂田家を楽しませるために全身全霊で駆け抜けたあほの坂田。は、正真正銘のヒーローだった。

あほの坂田。

あほの坂田。

あほの坂田。

あほの坂田。

「ホシアイ」でスタートしたアンコールでは、バンドメンバー、ダンサー、坂田家、ケンちゃんと共に記念撮影。「やっぱ物語はハッピーエンドっしょ!」と笑顔で呼びかけて華麗なステッキパフォーマンスを披露した「未完成ユートピア」で締めくくるかと思いきや……「僕を武道館に来させてくれてありがとう。ものまねから始まった僕を本当のヒーローにしてくれてありがとう」と心からの感謝を口にして、最後に特別に届けたのは「ゆめのものまね」だった。あるときは一般人、あるときは浦島坂田船の赤色、またあるときはみんなのヒーロー、あほの坂田。。浦島坂田船、crew(浦島坂田船ファンの呼称)、坂田家への愛を貫く彼のヒーロー道は、まだまだ続いていく。

あほの坂田。

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文=杉江優花
撮影=小松陽祐(ODD JOB)、加藤千絵(CAPS)

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