原因は自分にある。、結成からの歴史を振り返られる5周年記念ライブを開催
ネットカルチャーの奇才から次々に楽曲提供を受け、ミュージックビデオやライブでは2Dキャラとコラボレーション。次元を超えて存在感を示して、ジャパンカルチャーを牽引する新解釈アイドルグループ・原因は自分にある。(通称・げんじぶ)が、デビュー記念日の7月7日に「GNJB 5th Anniversary LIVE 夢現の続き」を東京・LINE CUBE SHIBUYAで開催した。当日は昼夜の2部制で行われたにもかかわらず、チケットは全席が完全ソールドアウト。結成から5年の歴史を振り返り、その間の進化を新旧織り交ぜたセットリストでしっかり示しつつ、七夕ならではの楽曲や夏曲も盛り込んで、メンバーの大倉空人いわく「5周年ということでセットリストも映像もこだわった特別仕様」に。アンコールでは初のライブBlu-ray発売と、東阪でのクリスマスライブの開催も告知され、満員の観測者(原因は自分にある。ファンの呼称)と記念すべき一夜を楽しんだ。
5周年を祝うステージには、大きな球体や三日月、星など、白とシルバーの多様なバルーンオブジェクトがあしらわれ、無数のスティックバルーンは草原や海草のようになびいて、まるで宇宙や海中のようにファンタジックな空間が目の前に。そこにディズニー映画のオープニングのように壮大なオーバーチュアが流れ、ステージ中央の巨大バルーンが割れると、ステージ奥から前に進み出る7人の姿が!「みなさん、原因は自分にある。です。今日も素敵な時間を過ごしていきましょう!」(大倉)と三日月のシルバーバルーンを手に、羽織った青いマントをはためかせながら「魔法をかけて」で記念すべきライブを幕開ける。ラブリーとキュートを詰め込んだナンバーを優しく、とろけそうな笑顔で歌いかける彼らは、まさしく観測者に魔法をかける魔法使いといった趣き。観測者をすっかり夢見心地にさせたところで、しかし、カメラに向かってニヤリと微笑み、1人ずつ順にマントを脱ぎ捨てれば空気は一変。それぞれの個性を活かしたジャケットスタイルの新衣装でイケメン力を全開にして、7月9日より放送開始するアニメ「エグミレガシー」の主題歌として書き下ろされた最新曲「P-P-P-PERO」をライブ初披露する。同作に声優としても出演している大倉を筆頭に、人差し指を頬に当てて甘ったるい笑顔で観測者のハートを撃ち抜く本曲は、彼らいわく“ペロペロポッピンクリーミーKAWAIIソング”。げんじぶの“可愛い”を爆発させながら、アニメに潜むある種の狂気を「くるみ割り人形」のサンプリングも交えて、ちょっぴりダークに表したポップナンバーは中毒性が半端ない。ソフトクリームがモチーフの「P-P-P-PERO」に続いては、愛らしい仕草で悩殺するげんじぶのアイスクリーム曲「チョコループ」で糖度をさらにアップ。桜木雅哉のほっぺで両隣の小泉光咲と杢代和人がハートを作れば、黄色い悲鳴があがるのも当然だ。「ジュトゥブ」では軽快なステップを踏みながら、吉澤要人による杢代のお姫様抱っこだけでなく、大倉が長野凌大をリフトしたり、小泉が武藤潤の手首を握って“連れて”行ったり、桜木がピースでウインクを決めたりと、いつにも増して和気藹々と楽しそうな様子を見せて、観測者にハッピーのおすそ分けをする。
そこから、げんじぶの“夏曲”をメドレー……と言っても、いわゆる“アツい”盛り上げ曲にはならないのが彼ららしさで、続いたのはチルなナンバーの数々。まずは武藤、小泉、長野で「Up and Dawn」を歌い上げると、吉澤、杢代、桜木、大倉へとバトンタッチする。歌詞の通り“揺れる陽炎”を思わせるエモーショナルな歌唱を聞かせ、スモークの満ちるステージに7人がそろうと「蝋燭」へ。煙った虚空に腕を伸ばし、緊張感のある動きと吉澤の低音ボーカルを軸にしたアンニュイな歌唱で、一言では形容しがたい曖昧な恋心を巧みに漂わせる表現力の高さは、次元の狭間で活動してきた彼らならではのものだろう。さらに、流麗なピアノアレンジでドラマティックに生まれ変わった「結末は次のトラフィックライト」では、スポットライトを浴びて順にソロボーカルをじっくり聞かせ、後のMCで桜木は「バラード大好きなんで楽しかった」と破顔。そこから小泉のボーカルが一気に突き抜けて、アッパーな「幽かな夜の夢」へとつなぎ、抑えきれない恋情をようやく熱くあふれさせる。そして夏ブロックを締めくくったのは、七夕の夜空を舞台に切ない三角関係を歌う「夏の二等辺大三角形」。「仮面ライダーギーツ」の撮影のため、1年間グループ活動を制限していた杢代にとってはこれが初のライブ歌唱となり、「この曲めちゃめちゃ好き。やっと“織姫 彦星”歌えた!」と喜びを表していた。
MCタイムでは、まずは5周年を迎えられたことを観測者に感謝。1部では「5周年を迎えられたのは観測者の皆さんがいてくれたからこそで、皆さんもおめでたい。共に拍手しましょう!」と誘う大倉に拍手が湧いて、小泉が「コンクールに出てるみたい!」と感想を述べる一幕も。2部では「5周年で浮かれちゃったエピソードしていい? 今日、7人の誕生日みたいなもんだから、朝ご飯にケーキ食べてきちゃいました!」と長野が明かしてみせた。そんなトークのさなか、今春リリースされたEP「仮定法のあなたへ」で誕生した宇宙人キャラ・キャトミンからのメールが届き、そのお願いにより七夕の短冊をバルーンのツリーに飾っていくことに。吉澤は1部で「(桜木)雅哉に背の高さ負けたくない」と切実な願いを綴り、杢代は「今年もレベチイケメンでいられますように」「イケオジになりたい!!」と2部一貫して美への追及を見せる。「皆SUNがどんな時でもhappyに」「桜木はよりかっこよくなっちゃうよ」と出した桜木が「なんでいつも俳句調なの⁉」と突っ込まれれば、武藤はU-NEXTの配信が入っていた2部で「これ、みんなで言いたいんだけど……」とカメラの前に全員集合させて「ライブ観るならU-NEXT!」とさすがのアピール。対して小泉は「これからも楽しく過ごせるように」「力持ちになりたい。」と、長野は「体力無限」「インドカレー一生食べたい」と、シンプルで可愛い願いを捧げてみせた。そして最後に大倉が「これからも観測者とずっと一緒にいられますように」(1部)、「これからも7人でずーっと一緒にいようね!」(2部)とカメラに満面の笑みを贈ると、ピンクのライトを浴びて「推論的に宇宙人」へ突入。宇宙人とのラブストーリーを描いたナンバーで7人元気に飛び跳ねるが、そんな姿からは想像もつかない情景が直後に訪れることになる。
一度メンバーがステージを去ると、2019年の結成からの歴史をMV撮影やライブの模様でプレイバックする映像がモニターに。歴代のアーティスト写真も現在から過去へとさかのぼり、最後にデビュー曲「原因は自分にある。」の画像が映し出されるとステージの扉が開いて、なんとまったく同じポーズ、ポジションの7人が登場! 平均年齢15歳のときにリリースした「原因は自分にある。」を、平均年齢が20歳を超えた今の7人でパフォーマンスし、5年の間に果たした心身の成長を完璧な表情管理に乗せて、今度はたった数分で観測者たちに叩きつけていく。ピアノロックを軸としたサウンドと哲学的な詞世界という、デビュー以降の彼らが果敢に挑戦し、育ててきた唯一無二の個性を、以降は惜しみなく披露。高速テンポで1秒も休まず歌とダンスを繰り出す「余白のための瘡蓋狂想曲」に、2021年発表の「嘘から始まる自称系」では難解なリリックに対する理解度の深まりが、その表情や歌声の響きから手に取るように伝わってくる。曲終わりの汗をにじませた武藤は、さすが最年長の色気をダダ漏れにして、客席に感嘆の声を引き起こした。さらに、桜木と小泉が妖しすぎる笑みで観る者の背筋を震わせ、大倉と吉澤の差し違えるような勢いのラップに歓声が湧く「無限シニシズム」まで。終始漂わせるシニカルなムードは、今や圧倒的に彼らの身になじみ、底知れぬものとなっている。
そこにパイプオルガンの音色がスリリングに響き、長野が女性になりすます狂気のストーカー役を演じて話題になったドラマ「シークレット同盟」のオープニング主題歌「Mania」を投下。危険なほどに過剰な愛を刻んだロックチューンで、メンバー同士が濃厚に絡み合い、小指を噛んで危険な香りを放出するなか、吉澤の低音と杢代の囁きを吹き込まれた長野は狂おしく舞い、観測者の全神経を釘付けにする。対照的にバレエで鍛えた吉澤が端正に舞う、その対比は不気味に美しく、最後は長野がガクリと膝をつくエンディングに場内は騒然。5月に配信されたばかりの新曲だけに、狂気に追いつめられていく様を描いていくライブ初パフォーマンスの衝撃は大きく、ざわめきはしばらく治まらなかった。
その動揺を鎮めるかのごとく「原因は自分にある。」のオルゴールバージョンをBGMに、モニターには“観測者のみんなへ”と5周年を迎えた7人からの直筆メッセージが。最後に浮かんだリーダー・吉澤の“来年の今日も一緒に過ごせますように。”に観測者から喜びの声があがり、笑顔の7人と“全力を尽くす”を意味する“Give it One’s all!”の文字が映し出されてからは、観測者と共に熱く盛り上がるターンへとなだれ込む。照明が客席を照らしての「THE EMPATHY」では場内が一体となってクラップし、大きく手を振って、吉澤の「会場の皆さんと一緒に歌いましょう!」という煽りに応えて大合唱。「GOD 釈迦にHip-Hop」では息の合ったコール&レスポンスを繰り広げる観測者に、杢代は「大好きだよ!」「愛してるぜ!」と告げ、さらに「みんなで一緒に盛り上がっていきましょう!」と号令をかけて本編ラスト曲「マルチバース・アドベンチャー」へと突き進む。冒険を求めて船出するダイナミックなナンバーで、歌うメンバーのイメージカラーに合わせて照明の色が変わる仕掛けも嬉しく、“もしもあなたがいてくれたら”という歌詞を“これからも観測者にそばにいてほしい”という祈りに変換して、7人全員の総意として強く訴えていった。
アンコールではグッズのTシャツをリメイクし、それぞれに装飾した特別仕様の衣装で「Q」を披露。自分は何者なのかと自問自答しながらも、自分の心の声に従って進むことを今一度自分に言い聞かせるナンバーをエモーショナルに、渾身の力で歌い上げる様には鬼気迫るものすらある。そうして5周年を迎えた今の想いと意志を楽曲に重ね、1時間20分に18曲を詰め込んだ本編を振り返り、大倉は「駆け抜けたね!」としみじみ一言。「この5年を振り返って、どう?」と問われた吉澤は「誰1人欠けることなく7人で5年間駆け抜けてこられたのは素晴らしいこと。改めてげんじぶの一員でいられることに感謝」と伝えた。2部では、昔、公園で小籠包を囲んで7人で話し合いをしたこと、そこで「空人が泣いちゃって」と桜木が暴露。また、杢代からは「最近、結成してから初めて7人でプライベートのごはんに行った」報告も為され、待ち合わせに2時間遅刻してきた長野メンバーに詰められる場面もあった。
ここで、8月28日に昨年ぴあアリーナMMで行われた彼ら初のアリーナ公演の模様を収めたライブBlu-rayがリリースされることを告知。げんじぶにとっては、これが初のライブ映像作品となり、杢代いわく「副音声がメチャメチャ面白いから絶対見て!」とのことなので期待したい。さらに、クリスマスライブ「Twinkle/Nightmare」を12月23日にZepp DiverCity(TOKYO)で、12月25日にZepp Namba(OSAKA)で行うことを発表すると、観測者から大歓声が。両日共に2部制で1部はTwinkle、2部はNightmareを関したライブになっており、吉澤いわく「2つの世界が楽しめる」とのことだ。
そして、最後に歌われたのは「Run away」(1部)と「時速3km」(2部)の2曲。穏やかなラブバラードの前者では観測者と一緒に大きく手を振り、後者では全員で肩を組んで“うまくいかなくてもね 否定しなくていい”と心励ます言葉と共に時間を共有できる喜びを歌う。歌い始める前に武藤が「これからも、みなさんと一緒に歩んでいきたいという想いを込めて」と告げた通りの2曲は、観測者と共に歩んだ5周年を刻むステージのラストを飾るのにふさわしい。ステージの去り際に、1部では「七夕ということで、僕から特別にプレゼントです!」と桜木から投げキスのプレゼントも。また、2部では「僕たち7人、そして観測者、チームげんじぶと共に、明るい未来へ進んでいきます!」と宣言した武藤が、「僕の本当の七夕の願いは……観測者のみんなの幸せだ!」と告白して、観測者の喝采をさらった。
11月17日には、自身2度目となるアリーナ公演「白昼夢への招待(インビテーション)」を、神奈川・ぴあアリーナMMで開催する原因は自分にある。。昨年11月に初のアリーナ公演を行いながらも、わずかに完売に届かなかった会場への再挑戦に、ライブ告知をした3月には「満席で良い景色を皆さんに見せることを約束したいと思います」と杢代は名言していたが、その言葉通りチケットは既に完売。約束は無事に果たされそうだ。ちなみに、本ライブのタイトル「夢現の続き」は、彼らが結成5周年に掲げたテーマタイトル。観測者を誰一人置いていかないと誓いを立てた“原因は自分にある。”の物語は、これから先も“あなた”と共に綴られていく。
文:清水素子
セットリスト
M1. 魔法をかけて
M2. P-P-P-PERO
M3. チョコループ
M4. ジュトゥブ
M5. Up and Down
M6. 蝋燭
M7. 結末は次のトラフィックライト
M8. 幽かな夜の夢
M9. 夏の二等辺大三角形
M10. 推論的に宇宙人
M11. 原因は自分にある。
M12. 余白のための瘡蓋狂想曲
M13. 嘘から始まる自称系
M14. 無限シニシズム
M15. Mania
M16. THE ENPATHY
M17. GOD釈迦にHip-Hop
M18. マルチバース・アドベンチャー
EN1. Q
EN2. <1部>Run away <2部>時速3km
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