パーカーズ 撮影=高田梓
今年1月、渋谷WWWワンマン公演をソールドアウトさせ、ライブハウスシーンで頭角を現してきたバンドの勢いをアピールした4人組ロックバンド、パーカーズが結成から3年4ヵ月を経て、ついに1stフルアルバム『POP STAR』をリリースする。
この5月、『JAPAN JAM 2024』と『VIVA LA ROCK 2024』に出演して、さらに知名度を上げてきたタイミングを考えれば、今回のリリースは、まさに満を持してという言葉がふさわしい。バンドの新境地を物語る新曲に「運命の人」を含む代表曲の数々を加えた全14曲という『POP STAR』のボリュームからは、昔からのファンはもちろん、最近、彼らのことを知ったファンにも楽しんでもらえるものを作ろうと考えたバンドの思いが窺える。
結成は2021年3月。大学のサークルの繋がりから現在の4人が揃い、いつしか“POPS日本代表”を自ら掲げるようになった。
そして、2022年、「運命の人」がTikTokおよびYouTubeで注目されたことをきっかけに追い風が吹き始めた。
そこからの快進撃はすでに書いた通りだが、バンドはすでにさらに大きなステージを目指している。
リリースワンマンツアーを目前に控えた4人にインタビュー。
アルバムの聴きどころを掘り下げながら、改めて“POPS日本代表”の魅力に迫ってみよう。
――2021年3月の結成以来、パーカーズは着実にライブハウスシーンで頭角を現してきたという印象がありますが、現在のバンドの状況を、みなさんがどんなふうに受け止めているのか、まず聞かせていただけますか?
豊田賢一郎(Gt,Vo):たくさんの人に聴いていただける機会が増えて、パーカーズの存在がちゃんと広がっていることを感じると同時に、最近は、自分たちのポテンシャルも変わってきたと思っていて。お客さんに対してどう届けたらパーカーズのハッピーさがちゃんと伝わるのか、ライブを楽しみながら徐々にわかってきたと思うし、伝えたい言葉をちゃんとMCで伝えるところをライブのセットの中に作ることも含め、自分たちの見せ方を考えて、最近はライブができるようになってきたと思います。
ねたろ(Gt,Cho):バンドを始めた頃は、それこそコロナで、お客さんが全然いなかったんですよ。
――そうか。2021年3月と言ったら、コロナ禍の真っ只中でしたね。
ねたろ:その時は、もう自分のための音楽という感じだったんですけど、今は、みんなに聴いてもらうための音楽というか。もちろん自分のための音楽でもあるんですけど、今回のアルバムもそういうものが作れたと思います。
フカツ(Dr):多くの人に見てもらえるようになったぶん、どんなふうにライブをしたらお客さんは歓んでくれるかなとか、どうしたら僕たちの音楽がもっと届くかなとか、考えることもいろいろ増えてきて。ライブはもちろんですけど、SNSでもさまざまな工夫をしていきたいってなってきたんですけど、それもすごく楽しいと思いながらできるようになったと思います。
ナオキ(Gt):そうですね。僕ら、“POPS日本代表”を自分たちで謳っているんですけど、同時にポップスだけじゃねえぞっていう気持ちも芽生えてきて。今回、『POP STAR』という1stフルアルバムをリリースして、ポップスだけにとどまらない、もっと幅広い音楽ができるんだっていうことをもっと伝えていきたいという気持ちもあります。
豊田賢一郎(Gt,Vo)
――なるほど。バンドの認知度が高まってきたタイミングで、そういうことも訴えていきたい、と。それについては、後ほどじっくり聞かせてください。その前に、もうちょっとバンドが今現在、どんな状況にあるのか聞かせてほしいんですけど。自分たちの人気が出てきたという手応えももちろん、あるわけですよね?
ねたろ:昔に比べたら、ありますね。
フカツ:僕たち目当てのお客さんがゼロなんてこともしょっちゅうありましたからね。なんなら、最初の1年間はずっとそんな感じで。そこから初めて自主企画をやった時に自分たちのお客さんがいるって知って。それでも10人ぐらいでしたけど(苦笑)。そんな僕たちが渋谷WWWワンマンをソールドアウトしたんだから、着々と大きくなってきたとは思います。
ねたろ:でも、ばばーんって感じじゃなくて、本当に、よいしょ、よいしょって。
ナオキ:階段を一段一段上がってきたんです。
フカツ:今は、もっと大きいステージに立ちたいという気持ちのほうが逆に強くなってきちゃって。
――そんなこれまでの3年間を振り返って、ターニングポイントを挙げるとしたら?
フカツ:やっぱり、「運命の人」がTikTokを中心にすごい回ったことじゃないですか。それがきっかけでパーカーズっていう名前を知っている人が一気に増えて、Spotifyのバイラルチャートにもランクインさせてもらって、そこから状況ががらっと変わったのかなとは思います。
――ライブのお客さんも増えていって、自分たちの音楽を人に届けることを意識するようになったとおっしゃっていましたが、曲作りやライブのパフォーマンスにおいて、意識的に変えたものってありましたか?
豊田:それこそ「中華で満腹」は、ライブで楽しむことを考えて、ねたろ君が作ってくれたよね。
ねたろ:そうだね。「中華で満腹」は、ライブでお客さんとコール&レスポンスできるように作ったんですよ。
豊田:もちろん、ライブで育ってきた曲も全然あるんですけど、そんなふうにライブでやる前から、お客さんと一緒に楽しみたいってところにフォーカスして作った曲は、「中華で満腹」以外にもけっこうあるんですよ。
――パーカーズの楽曲は豊田さんとねたろさんが作詞・作曲していますが、メンバーに聴かせる時は、ある程度形にしているんですか、それとも弾き語りなんですか?
豊田:ねたろ君はDTMで作り込むんですけど、僕は弾き語りをメンバーに聴いてもらうという、2通りの作り方でやっています。なので、ねたろ君が作る曲はあらかじめアレンジが大体決まっていて、そこにバンドで話し合って、足したり、引いたりするんですけど。僕の曲は、弾き語りを基にメンバー全員でアレンジしていきます。そうやって作ると、曲の毛色が変わるからおもしろいんですよ。
――たとえば、今回のアルバムの11曲目の「Dramatic Blue」は、ねたろさんの曲ですが、途中、曲の展開が、“えっ、別の曲!?”って思えるくらいがらっと変わるじゃないですか。あそこはデモの段階からすでにあったんですか?
ねたろ:ありました。曲を作ったとき、2つのフレーズがあったんですよ。それがサビと、その展開ががらっと変わるところで、BPMが変わると思うんですけど、どちらかに合わせることができなかったので、もう、そのまま無理やりくっつけちゃったんです。
――ねたろさんが作る曲には、「Dramatic Blue」以外にも曲の中で雰囲気ががらっと変わるパートがけっこうあって。
ねたろ:自分では、それがいいなと思っていて。曲の二面性じゃないですけど、そういうのおもしろくないですか?
ねたろ (Gt,Cho)
――おもしろいと思います。おもしろいと言えば、パーカーズはギター3本という珍しい編成で、ツインリードギターのハモりや掛け合いがバンドアサンブルの聴きどころになっていますね。
ナオキ:そうですね。ギターが3人集まっちゃったんで、ハモろうかってなりました(笑)。って言うか、リードギターが2人いたら、自然とハモりたくなっちゃう。
豊田:バンドを始めて、スタジオに入ったとき、ナオキ君がねたろ君に「ハモろうぜ」って言ってから、ハモりのパートがどんどん増えていった気がします。
ナオキ:X JAPANがめっちゃ好きだから、ハモりたくなっちゃうんですよ。
豊田:僕がnever young beachがすごく好きで、あのバンドも元々はトリプルギターだったんですけど、それもあって、パーカーズ結成の段階で、ギター3人になっちゃう。どうしようってなった時も、いいんじゃないって、こういう編成になりました。
――音源では、ナオキさんのギターが右、ねたろさんのギターが左、というふうにはっきりと分かれているところがいいですね。
ナオキ:そうですね。思いっきり分かれているので、それぞれに何を弾いているかはっきりとわかると思います。
――使っているギターはナオキさんがストラトキャスター。
ナオキ:そうです。
――割と正統派だと思うのですが、ねたろさんのテレマスターは珍しいですよね?
ねたろ:もう完全に見た目重視。一目惚れしてしまいました。
――そして、豊田さんがL’s TRUSTという日本のギター・ベース工房の、ちょっと変わったギターという。
豊田:ビザール系になるんですかね。ミニハムバッカーが載っているけっこう特殊なギターなんですけど、デザインが可愛いと思って。バンドを始めた時は、ナオキと同じストラトキャスターを使っていたんですけど、音のキャラクターがかぶると思って、超クセの強いの使っちゃおうと思って、あれになりました。
ナオキ (Gt)
――ところで、“POPS日本代表”は、いつ頃から掲げているんですか?
フカツ:2年ぐらい前からだっけ? 遠征の帰りに何かキャッチコピーが欲しいよねって話になったんですけど、ちょうどFIFAワールドカップがカタールで開催されていて、「じゃあ“POPS日本代表”じゃね?」って盛り上がったんです。まさかそれをここまでずっと使うことになるなんてその時は思わなかったですけど、今となってはライブでも必ず言うし、SNSのプロフィールにも入っているし。
豊田:そういうキャッチコピーがあると、自分たちもそれを背負って、活動しているなっていうのを実感しながら、ライブができるので、キャッチコピーがあってよかったって思います。
――自分たちはポップスをやっているという自覚はありますか?
豊田:あります。
――さっきナオキさんはパーカーズはポップスだけじゃないとおっしゃっていましたけど、パーカーズの音楽を一言で言い表すなら、やはりポップスが一番ふさわしい、と?
フカツ:ほんと、詰め合わせと言うか、今回の『POP STAR』にはちょっとメタルっぽい雰囲気になる「地獄ランデブー」という曲も含め、いろいろな要素が入っているんですけど、そういうのを全部ひっくるめたのが、僕らのポップスなのかなというふうに思っていて。
豊田:そうだね。僕ら、聴いてきた音楽も全然違うので、そういうのもね、混ぜ合わさった感じでおもしろい。
――どんな音楽を聴いてきたのか、それぞれに聞かせてほしいのですが、1人1人掘り下げるには時間が足りないので、ミュージシャンとして、自分のルーツになっていると言えるアーティスト/バンドを1、2組ずつ教えてもらえますか?
ナオキ:影響を受けていると言ったら、さっきも言ったんですけど、僕はX JAPANとELLEGARDENですね。
ねたろ:ELLEGARDENは俺も好き。
ナオキ:幅広くいろいろ聴くんですけど、パンクとか、メタルとか、けっこう重い音楽も好きなんですよ。
ねたろ:僕もジャンルにはそんなに囚われてないですけど、曲作りという意味では、MONGOL800の言葉遊びとか、やさしい言葉遣いとかは、勝手に受け継いでいます。あと、大学時代によく聴いていたのはsaid。ナオキとコピバンやってたんです。ギターロックバンドなんですけど、アルペジオのハモりがめちゃめちゃきれいで、そういうところからもけっこう影響を受けていますね。
――豊田さんは?
豊田:最初のルーツはMr.Childrenですね。歌メロ、日本語の歌詞の良さを含め、ミスチルを聴いて、音楽を好きになって、そこからJ-POPを聴いて育ったんですけど。大学に入ったら、やっぱりいろいろな音楽を好きな人たちがたくさんいて、そこで意見を交わしていた時にnever young beachに出会って。あの歌謡曲感とトロピカルな感じにすごいハマって、そこからYogee New Waveをはじめ、シティポップ系を聴き漁るようになりました。
フカツ:僕はUVERworldです。CDを買ったのも、ロックバンドというものを意識したのもUVERworldが最初で、それまでももちろんいろいろなアーティストの曲は聴いていましたけど、初めて自分から聴きたいってなったのがUVERworldで。UVERworldを知ってから、歌詞をちゃんと読んだりとか、こういう人たちがこの音楽をやっているんだって顔を知ったりとか、バンドの中身まで掘り下げるようになりました。UVERworldってTAKUYA∞さんの歌がやっぱりいいっていうのがあるから、UVERworld以外でも歌がいいと思えるバンドが好きで。大学に入ってから、SUPER BEAVERにすごいハマって。パーカーズをやる上でも歌ってすごく大事だと思うんですけど、もう歌が大好きみたいな感じで、ずっとやってきてます。
フカツ (Dr)
――ありがとうございます。そんなふうに4人それぞれに聴きながら、受けてきた影響がパーカーズの音楽に生かされているんだと思うのですが、1stフルアルバムの『POP STAR』は、既発の代表曲もたっぷりと収録され、ここからパーカーズを聴き始めるリスナーでも、バンドの代表曲を知ることができる、とても親切な1枚になっていると思いました。
豊田:ありがとうございます(笑)。
――代表曲であると同時に今現在のライブのレギュラーと言える曲の数々なのかなと思うのですが、今回、収録されている既発の曲の中で、それぞれに推し曲を挙げるとしたら?
豊田:うわぁ、迷うなー。
フカツ:わかる!
ナオキ:俺、2曲に絞った。
フカツ:じゃあ、ナオキから言ってこう。
ナオキ:リードギタリストとして、いいフレーズをつけられたと一番思うのは「BERRY」ですね。曲そのものがめちゃめちゃ爽やかな、いい曲なんですけど、ギターフレーズも爽やかで。リードギターももちろんなんですけど、全部がイケたと思いますね。めっちゃ聴いてほしいです。
――ナオキさんは「BERRY」に限らず、いろいろな曲でギターソロに加え、豊田さんの歌の裏でメロディアスなフレーズを弾いていることが多いのですが、それはナオキさんなりのこだわりというか、それもパーカーズの曲の聴きどころという意識があるんでしょうか?
ナオキ:普通にコードを弾いていてもつまらないから、ボーカルを邪魔しないようにメロディを考えて、歌の裏で鳴らして、プラスねたろがハモれたらいいなみたいに考えてます。「BERRY」はそれもできているんですよね。
ねたろ:そうだね。あと、みんなが歌えるようなフレーズを弾いているよね。
ナオキ:歌えるフレーズは意識しています。リードギターは第2のボーカルだと思っているんですよ。それも「BERRY」が一番だと思います。
――ねたろさんは?
ねたろ:そうだな。「君が好き」ですかね。「君が好き」は2022年にリリースした『君に会えるならどこへだって』という1stミニアルバムの1曲目で、そのミニアルバムの4曲目の「運命の人」とダブルリードシングルだったんですけど。「運命の人」がどーんといっちゃったせいか、あんまり目立たなくなっちゃったのかな。でも、僕はこれが一番好きなんですよ。
――どんなところが好きですか?
ねたろ:最初のギターですね。ナオキとハモっているんです。あと、テンポが良くて、乗りやすい曲だから、ライブでもけっこうレギュラーになっていて、思い入れも思い出もあるんですよ。
――この曲で豊田さんはアコースティックギターを弾いていますね。
豊田:弾いてます。実はこの曲、最初はバラードっぽい雰囲気だったんですけど、リズムをちょっと跳ねさせて、バンドサウンドにしてみたら、超ハッピーなポップソングに化けたんですよ。歌詞はけっこうせつないのに曲調がハッピーという、なんだか情緒がちょっとおかしくなる曲になりました。
――フカツさんの跳ねるドラムがすごくいい感じです。
フカツ:ありがとうございます。実は一番てこずったところなんですよ。最初、跳ねるとは何なのかがわからず、豊田と衝突したんです。その跳ねを含め、豊田の考える曲のニュアンスっていうのが、自分がやってきた音楽と違いすぎて、最初全然わからなかったんですよ。
豊田:おもしろいよね。最初、フカツさんから「わからない」と言われたとき、「いや、それがわからないよ」って(笑)。
――軽やかに跳ねるドラムが多いから、てっきりフカツさんはそういうプレイが得意なんだと思いました。
フカツ:いえ、半ば無理やりやらされてできるようになりました(笑)。
豊田:パーカーズに鍛えられた(笑)。
――なるほど(笑)。豊田さんとフカツさんも推し曲を聞かせてください。
豊田:僕はやっぱり「運命の人」ですね。もう作っている時から、ぞくぞくしちゃうぐらいいい曲だと思っていたんです。早く世に出したいという気持ちのまま作れたんですよ。そんなふうに、曲としても、歌詞としても自分で満足できた曲が実際世に出たら、多くの人にとってパーカーズと出会うきっかけになってくれて、しかも、世の中のカップルがいろいろな動画で使ってくれるという広がり方もして。僕にとって、本当に大事な曲になりましたね。
――『君に会えるならどこへだって』では4曲目でしたけど、今回、1曲目にしたところからも大事な曲だということは伝わってきますね。では、フカツさんお願いします。
フカツ:僕は「ハッピーをちょうだい」にします。この曲を作っている頃がたぶん、バンドをやっていて、一番しんどかったと思うんですよ。
豊田:そうだね。
フカツ:豊田の曲作りも難航していたし、僕たちのバンド生活もあまりうまくいってなかったしっていうタイミングで。豊田がこの曲を弾き語りで持ってきて、すごいなと思いました。その時の自分にもすごい刺さったし、この曲ならいろいろな人を元気にできるって感じられたし。《ハッピーをちょうだい》という歌詞が浮かぶ豊田はすごいと思いました。普通、誰かに《ハッピーをちょうだい》なんて言わないじゃないですか。でも、それが最終的に《ハッピーをあげよう》に変わっているという。そういう言葉遊びもすごい。でも、一番は弾き語りを聴いた時の衝撃がすごかった。そういう意味では思い出深い曲ですね。
――この曲のドラムも絶妙に跳ねていますね。
フカツ:この曲を録る時は、跳ねるドラムにも慣れてきたところだったので、これは気持ちよく叩けました(笑)。
豊田賢一郎 (Gt,Vo)
――今、それぞれに挙げていただいた曲を含む代表曲8曲にプラス新曲が6曲。『POP STAR』には全14曲が収録されていますが、新曲を作るにあたっては、どんなことを考えましたか?
豊田:今回、僕は「ララバイ」と「痛いの飛んでゆけ」の2曲を書いたんですけど、この2曲は、自分が作ってきた中でも、パーカーズの曲の中でも、このアルバムの中でも、けっこう異色だと思っていて。「ララバイ」はパーカーズ初の3拍子のバラードで、「痛いの飛んでゆけ」は、4つ打ちのダンスビートっていう。ここまでがっつり4つ打ちっていうのは、この曲が初めてなので、けっこう挑戦した曲かなと自分では思っています。
――「痛いの飛んでゆけ」は、ベースもちょっとディスコっぽくて。
豊田:そうですね。オクターブで動いていて。
――こういうダンサブルな曲はライブで映えそうですね。
豊田:そうなったらいいですね。お客さんとどう楽しむかは、ライブでやりながら考えたいですけど、これを聴いて、元気づけられたって思ってほしいって気持ちで書いたので、ライブでやっていきたいですね。
――「ララバイ」は3拍子のバラードがパーカーズにはないからということで作ったんですか?
豊田:いえ、この曲はパーカーズを始める前からメロディと歌詞があって、それを基にメンバーと一緒に作っていきました。
ねたろ (Gt,Cho)
――それが新境地と言える曲になった、と。一方、もう1人のソングライターであるねたろさんは、今回、「地獄ランデブー」「ナンバーワン」「あいこでしょ」「SMASH」の4曲を作りました。
ねたろ:はい。豊田は王道と言える曲を作ってくるんですけど、その王道には勝てないと思っているので、僕はどちらかと言うと、変化球と言える曲が多いと自分で思っていて。もちろん、王道を捨てたわけではないんですけど。
――「地獄ランデブー」なんて、タイトルからして変化球中の変化球ですよね。
ねたろ:そうですね。「地獄ランデブー」もそうですけど、タイトルも聴き手を裏切りたいと思って付けることが多いですね。
――「地獄ランデブー」も曲の途中で、突然ファンキーになる演奏が意表を突きます。
ねたろ:間奏ですね。そこは、これは地獄だなってところを作り出したくて、そういうリズムにしたんですけど、とにかく聴いた人が地獄を思い浮かべるような曲にしたかったんです。自分はけっこうタイトルや曲のテーマを音で表現することにこだわっていて、たとえば、「地獄ランデブー」で言うと、Aメロ、Bメロ、サビのリズムが全部違うんですけど、シンコペーションの表と裏のリズムで現世と地獄を表現しているんです。
ナオキ:そうだったんだ! すごいね。天才じゃん。
ねたろ:それ以外にも地獄を連想させるフレーズを含め、音でいろいろ表現しているので、そういうところにもぜひ耳を傾けてほしいです。
豊田:「地獄ランデブー」は歌詞もすごいね。
ナオキ:そう。《君といたいよ》って聴こえますけど、歌詞カードでは《君といたい世》になってますからね。
豊田:そこ、ヤバい。ねたろ君の歌詞は好きですね。
フカツ:ねたろの歌詞はおもしろいことを言っているのかと思いきや、どれもちゃんとね、ラブソングなんだよね。
ナオキ:確かに。
ねたろ:どんなに嫌なことがあっても、好きな人がいたら、全部ポップになる。そういう曲を作りたいし、聴いている人にもそれを伝えたいんですよ。
ナオキ (Gt)
――フォーキーな魅力がある「あいこでしょ」は、ねたろさんの中では王道の曲なんですか?
ねたろ:うーん、王道かなぁ。
――王道じゃないんですね(笑)。
ねたろ:最初、じゃんけんの曲を作りたかったんですよ。何かふわっと、じゃんけんの曲を作ろうと思って、歌詞とかフレーズとか考えていく中で、《あいこでしょ》って、何かすごくいいワードだなと思って。それをコンセプトに作ってみたいなと思って、作った曲ですね。
――じゃんけんの曲を作りたいと思って、このストーリーになるところがすごい。
豊田:2番のBメロの歌詞がすごいんですよ。《ちょっと僕が踊ってると パッと明るくなって ぐっと君の心を掴むんだ》って、頭が《ちょっ》《パッ》《ぐっ》ってなってる。
フカツ:チョキ、パー、グーって。
――本当だ。
豊田:僕も最初、気づかなかったです。
ねたろ:この曲もけっこう音で遊んでいるので、探し出してほしいですね。
――パワーポップの「SMASH」もそういう音の遊びはあるんですか?
ねたろ:「SMASH」は少ないですね。《SMASH》って歌う瞬間に、そのSMASH感を表現しようと思ったくらいかな。ただ、そこのリズムがメンバーに言わせると、かなり特殊らしくて。
フカツ:《SMASH》って歌うタイミングが、僕たちが考えるよりもたぶん半拍遅いんですよ。きっと太鼓の音が全部、バンって来るようにこだわった結果だと思うんですけど。
ナオキ:そこはやっぱり《SMASH》って言うための曲だから。
フカツ:この曲、2番のAメロは、ねたろが1人で歌っているんですよ。
――あのラップっぽい歌は、ねたろさんだったんですか。
フカツ:今までコーラスやセリフはありましたけど、リードボーカルは初めてなんですよ。で、その裏ではナオキがタッピングをしている。
ナオキ:はい。思いっきりやりました。
フカツ:それも初めてで。だから、けっこう初めてづくしの曲なんです。
フカツ (Dr)
――青春パンク調の「ナンバーワン」についても聞かせてください。
豊田:これ、超好き。
ねたろ:この曲は、みんなのナンバーワンになれなくても誰かを大切にするナンバーワンにはなれると思って、作った曲です。
豊田:この間、ライブで歌ったんですけど、すごくいい歌詞だから超気持ちよかったです。自分も幸せになれるような気がしました。
――そうか。自分が書いたんじゃない歌詞を歌って、いい気持ちになれるって、改めて考えるとすごいことですよね。
豊田:自分も幸せになれるような気がしました。
――さあ、新境地も含め、聴きどころ満載の新曲が揃った、と。
フカツ:新曲はそれぞれに、これまでやったことないことが少なくとも1個は必ず入っていますね。「ナンバーワン」もかなりのショートチューンで、けっこう攻めていると思います。「あいこでしょ」は歌詞で歌っている情景が浮かびやすいようにコーラスに女性の声も入れているんですけど、それも初めてで。これまでやったことないことだらけの新曲たちになりました。
――新曲を作るからには、何かしら新しいことはやりたいという気持ちがあるんですか?
フカツ:そうですね。あと、新曲を作ったり、レコーディングしたりしていると、新しいことをやりがちというか、何かやったことないことをやってみようってなりがちなんです。
ねたろ:そこまでこだわっているわけではないですけど、同じものを作るのはちょっと嫌だなという気持ちは、根本にある気がします。
――いろいろ聞かせてもらいましたが、どんなアルバムになったという手応えがありますか?
豊田:いろいろなことに挑戦した結果、ポップスはポップスでもすごく幅広いポップスになっていると思います。聴き応えもしっかりボリューミーで、全14曲、流れもかなりこだわったので、最初から最後まで通しで聴いてもらえたらうれしいです。
――豊田さんはボーカリストとして、何か挑戦はありましたか?
豊田:リード曲の「地獄ランデブー」は、ライブではギターを持たずにピンボーカルで歌おうと思っています。リード曲がピンボーカルっていうのも初めてなんですよ。もっといい歌をお客さんに届けたいので、筋トレをがんばってます(笑)。メンバーそれぞれにそういう小さな努力をこつこつ積み上げることで、作ることができたアルバムになっているので、ぜひ聴いてほしいです。
――そんなアルバムをひっさげたワンマンツアー『POPS日本代表VICTORY TOUR』が8月3日から始まります。ツアーの意気込みを聞かせてください。
豊田:今回は、ツアーファイナルが東京・渋谷CLUB QUATTROということで、僕らも相当気合が入っています。今までワンマンツアーは2回やらせてもらったんですけど、MCを含め、見せ方という意味では全公演、同じものは用意してないというか、違った形で見せられたらと思っています。前回よりもさらにでかいスケールで、お客さんにたくさんのハッピーを届けられるツアーにしたいですね。
――今、ハッピーを届けたいとおっしゃったんですけど、パーカーズの曲はどれも日々、思い通りにいかないことはあるけれど、それでも人生をポジティブに捉えようという思いが根底にあるという意味では一貫しています。そこはこだわっているところなんでしょうか?
豊田:学生時代、部活動をしていたんですけど音楽がなきゃがんばることはできなかったと思っていて。なので、僕自身は聴いてくれる人がそれぞれがんばっていることに対して、挫けずにがんばりぬけるように背中を押したいという思いを込めて、曲も歌詞も書いているんです。だから、そういうこだわりは少なからずあります。
ねたろ:僕もほぼほぼ同じです。ポップスってスパイスだと思っているんです。聴いてくれる人の生活を彩って、景色も良くするというか、今回の『POP STAR』もそういうものを作りたかったんですけど、聴いてくれる人みんながPOP STARになれるようなアルバムになったんじゃないかなと思います。
豊田:まさに自信作と言える1枚ですね。
取材・文=山口智男 撮影=高田梓