宮川春菜
「クラシックギターをもっと多くの人に聴いてもらえるように頑張りたいです」と、胸に秘めた思いを語るのは、クラシックギタリストの新星・宮川春菜。小学時代から名だたるコンクールで輝かしい受賞を重ね、コロナ禍を経て、いよいよ大車輪を回す準備が整った。
まず、今年2024年7月に初のCDアルバム『Strelitzia(ストレリチア)』を発売する。9月21日(土)には都内ホールデビューとなるめぐろパーシモンホール小ホールでコンサートを開催し、アグレッシブに動き始める。
宮川春菜
スペインの名匠、ホセ・マリン・プラスエロ製の愛器で、幅広い時代、曲調の音楽を情感豊かに奏で、人気上昇中だ。
「音の伸びがよくて、力強い曲にもしっとりした曲にも合って、とても気に入っています」
奈良県出身。自然豊かなのどかな町でのびのびと育った。何か習い事をしたくて、小学2年生から自主的にギターを習い始めた。
「地元でギター教室を開いている牧瀬豊先生に、教わりました。レッスンは厳しかったです。でも生徒のやる気をうまく引き出してくださるので、それに応えようと自然と熱が入る。家でうまく弾けてなくても、教室だとなぜか弾けるようになるんです」
スケールやアルペジオなどの基礎トレ、カルカッシ・ギター教則本など、毎日最低1~2時間は練習。上達が早く、1年後にはギター曲のレッスンもスタート。
「友達が遊びに誘いに来ても『練習が終わってから…』と親も協力的で、それを友達も理解してくれました。遊びたいなと思ったこともあります。でも、ギターを辞めたくはなかったです」
またたく間に実力を開花させ、小学4年生のとき「日本ギターコンクール」に初出場するや、メリハリの効いた表現豊かな演奏でいきなり金賞受賞。その後も受賞を重ね、結果的に5年連続金賞の快挙達成! 他にも「山陰ギターコンクール」2年連続優勝、「ジュニアギターコンクール」優勝など、数々のコンクールで実力を発揮し続けた。
ジュニアギターコンクール
「小学生の高学年頃からギタリストに憧れを抱くようになり、中学2年生のとき、牧瀬先生が『プロとして活動してもいい』と言ってくださって、決心しました」
やがて「将来有望な高校生ギタリスト」と評価され、期待の新人として知名度も全国区に。だが、卒業した2021年はコロナ禍の真っただ中。すぐには自由に動け回れなかった。
日々研鑽を積む一方で、行動制限期間ながら開催された数少ないコンクールにチャレンジした。女性ギタリストの先駆者・渡辺綾子の基金による「イブラ・グランド・アワード・ジャパン・コンクール」では「AYAKO WATANABE PRIZE」を受賞。翌22年、米国のカーネギーホールで、ヒメネスの「ルイス・アロンソの結婚」を演奏した。
「受賞者によるガラコンサートです。ホールの保管が行き届いていて、装飾が素晴らしくて、今も心に残っています。とても楽しかったです」
NYカーネギーホール
さらに23年には「スペインギター音楽コンクール」第2位、今年24年は「J.S.バッハ国際ギターコンクール」で優勝と、受賞歴を更新。
バッハ国際コンクール
アルバムも録音し、『Strelitzia(ストレリチア)』と名付けた。「輝かしい未来」の花言葉を持つ、南アフリカ原産の特徴的な花だ。熱帯の優雅な鳥の姿をしていて「極楽鳥」と呼ばれたりもする。
収録曲は、これまで大切に弾き続けてきた、タレガ「アルハンブラの思い出」、バリオス「大聖堂」、J.S.バッハ「無伴奏ヴァイオリンソナタ第2番」の第4楽章「アレグロ」、アルベニスの「アストゥリアス」など。
「特に『アルハンブラの思い出』や『大聖堂』は小学生の頃から練習を重ねてきたので思い入れもあります。牧瀬先生仕込みのトレモロの美しさ、迫力やスピードなどさまざまな表現を味わっていただきたいです」
レコーディング風景
待望の9月のコンサートのタイトルは「宮川春菜 クラシックギターコンサート 2024 “Genesis”』。「Genesis」は、ものごとの「起源」を意味する言葉だ。
「アルバムの『大聖堂』『アストゥリアス』などの他に、バッハの『シャコンヌ』、ジュリアーニの『英雄ソナタ』、ヴィラ=ロボスの『12の練習曲』など、クラシックギターになじみのない方でもどこかで耳にしたことがある曲を盛り込む予定です」
演奏活動を通じて成し遂げたい目標がある。
「身近に思われるギターのなかで、クラシックギターのことはあまり知られていません。人の心を動かせるギタリストになって、クラシックギターがもっとポピュラーになるように頑張りたいです。私の出発点となる演奏会で、少しでも興味を持っていただけたらうれしいです」