Newspeak アルバムの手応え、音源とライブのアンサンブルの違い、新たな発見がライブハンドとしての成長を期待させた『Release Party』レポート

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Newspeak Major 1st Album 『Newspeak』 Release Party
2024.07.19 渋谷WWW

「ライブでやるために(曲を)作ったんだから!」

演奏中に口を衝いて出てきたRei(Vo, Key, Gt)の言葉が印象的だった。それは信頼できるサポートメンバー、Take(Gt)を含む4人でこの日、演奏しながら改めて見出した一つの真理だったのだと思う。

2022年10月に「Leviathan」でメジャーデビューしてから1年9か月。ほぼスタジオに籠って、楽曲制作上のトライを繰り返してきたNewspeakはこの日ついに、そんなトライの成果とも言えるメジャー1stフルアルバム『Newspeak』の『Release Party』に辿りついた。

Rei

Rei

それほど意識せずに言ったかもしれない言葉を取り上げられてもとメンバーたちは思うかもしれないが、「何はともあれ、メジャー1stフルアルバムのリリースおめでとございます!」(Rei)と自ら言ってしまうくらいだから、メンバー自身、アルバムの出来にはよっぽど手応えを感じているのだろう。ただし、この『Release Party』が2017年に活動を始めたNewspeakのキャリアにおけるマイルストーンを印象づけることだけで終わらずに、バンドに対する新たな興味を抱かせるものだったところにこそ見どころがあったということをまずは声を大にして言っておきたい。

そんな『Release Party』は見事ソールドアウト。3年ぶりとなるアルバムのリリースを祝うため集まった観客が期待に胸を膨らませる中、「楽しもうぜ、WWW!」とReiが声を上げ、バンドの演奏は最新アルバムからの先行配信シングルだった「Silver Sonic」からスタート。マイク片手にステージを左右に動きながら「Let’s go Tokyo!」「C’mon!」と観客に訴えかけるReiに応え、観客が一斉に手を振り始める。

その光景に思わず顔を綻ばせたReiが「渋谷、Singin’!!」と呼びかけると、早くも1曲目から観客のシンガロングの声が響き渡る。

「ようこそ!」

挨拶代わりにReiは一言言っただけで、スタートダッシュを決めたバンドの演奏は止まらない。音源よりもファンキーなニュアンスを強調した「Leviathan」、Reiと観客によるサビのコール&レスポンスにバンドとファンの強い結びつきが窺えた「Wide Bright Eyes」、そしてYohey(Ba)がファンキーなベースリフを閃かせた「Alcatraz」とダンサブルなロックナンバーをたたみかけるように繋げ、スタンディングのフロアを揺らしながら、序盤から大きな盛り上がりを作っていく。エネルギッシュにドラムをプレイしながら、Steven(Dr, Cho)が加えるコーラスも聴きどころだ。

Yohey

Yohey

「みなさん、楽しいでしょ!」とMCの冒頭でいきなりReiが言ったこの言葉が「みなさん、楽しんでますか?」の言い間違いではなく、本心からの出たものであることは、続く言葉からも明らかだ。

「3年ぶりのアルバムです。やっと出せました。いろいろなトライをしたから、出す前に不安がなかったと言ったらウソになるけど、みんなの顔を見て、どんどん確信に変わってきている気がします。いや、確信に変わりました。最高のアルバムを楽しませるため、いろいろ準備してきたので、最後までよろしく!」

中盤は、自然に起こった観客のシンガロングが「Wide Bright Eyes」同様、バンドとファンの結びつきを物語っていたロマンチックなポップナンバー「Lake」を挟みながら、音源のニュアンスに生っぽさが加えられたチルな「Before It’s Too Late」をはじめ、最新アルバムからじっくりと聴かせるタイプの曲の数々を続けて披露する。

バラードともアンセムとも言えるスケールの大きさを持つ「Higher Than The Sun」は、今年3月のワンマンライブで観客が思いっきり声を出してシンガロングしている光景に刺激され、「みんなでめちゃめちゃ歌いたい」と思って、作ったのだそうだ。その「Higher Than The Sun」に続けて、Reiがアコースティックギターを弾きながら歌った「Tokyo」は、Yoheyがベースプレイに加えた跳ねるニュアンスやTakeがキラキラと鳴らした単音リフも聴きどころ。Stevenが叩いたドラムパッドをはじめ、バンドがニューウェーブを思わせる淡々とした音像を奏でる一方で、Reiはせつないメロディを持つ歌に熱を込めていく。それもまたNewspeakの真骨頂なのだと言えそうだ。

Steven

Steven

そこに繋げた「Be Nothing」はReiのピアノの弾き語りから始まるバラードと思わせ、手数の多いバンドのプレイ、エモーショナルなReiの歌、ともに一気に白熱。緊張感とともに3分半という尺の中に熱をぎゅっと封じ込めるような演奏に気持ちをぐらぐらと揺さぶられた。

「何の根拠もないのに自信だけあった20歳の頃を思い出して、何も恐れていない人間の歌を作りました。これからも根拠のない自信を持って、いろいろな景色を見ていきたい。みんなで一緒に見ましょう」

そんなふうにReiが曲に込めた思いを語ってから演奏したアルバムのリードトラック「White Lies」もReiがアコギを弾きながら歌い上げるミッドテンポのアンセムながら、観客を圧倒するスティーブンのドラムの連打をはじめ、エネルギッシュな演奏とともにNewspeakというバンドが持つスケールの大きさをアピールしてみせる。因みに耳に残るキャッチーなリフをイントロではReiがキーボードで、2番の頭ではTakeがギターで、そしてアウトロでは同期のシンセで鳴らしたところに、このバンドならではのこだわりを感じたりも。

Rei

Rei

その「White Lies」から一転、Takeがガレージロック風にかき鳴らしたコードとStevenがフロアタムを響かせながら鳴らしたジャングルビートとともになだれこんだ「State Of Mind」からバンドの演奏は一気にテンポアップして、ライブは後半戦に突入していく。Stevenを中心に向かい合って演奏している4人の姿が物語っていたのは、ライブを心底楽しんでいるバンドの一体感。因みに、この曲のサビで絶妙に揺れながら鳴るギターフレーズはスライドなのだとばかり思っていた筆者は、チョーキングとビブラートで、そのフレーズを奏でているTakeのプレイを見てびっくり。

4つ打ちのキックを含めダンサブルなドラムと跳ねるベースリフに観客がジャンプしながら踊った「Media」でフロアはさらに盛り上がる。

「Clap your hands!!」(Steven)
「後半戦も楽しめますか!?」(Rei)

観客の手拍子とともになだれこんだ「24/7 What For?」はダンサブルなロックナンバー。観客のシンガロングから昔からのファンにはお馴染みの人気曲であることが窺えるが、この日、バンドが演奏した最新アルバムからの新曲と過去曲を聴き比べてみると、トライを繰り返しながら、Newspeakが作る曲は、ある意味、いわゆる歌ものとしての魅力も纏うようになってきたと言えるかもしれない。

「最高だよね!」

3曲立て続けに演奏したところでReiの口を衝いて出てきたのがこの言葉。

「俺たち、制作期間がめちゃくちゃ長かったよね? その間にスタジオに籠りすぎて、スタジオにいるためにバンドを始めたんじゃないと本気で思った(笑)。もし、ここで心臓発作か何かで突然死んじゃって、こんなにかっこいいバンドがみんなに知られないまま終わったらイヤだと思って、ツアーして、ライブをして、アルバムの曲を届けて、もちろん死にたくはないけど、死ぬんだとしたら、そんなふうにみんなに憶えてもらってからと思って、作った曲があります」

「White Lies」同様にReiが曲に込めた思いを語ってから、「Nokoribi」を披露。バンドサウンドはUSインディロック風を思わせる一方で、歌にはどこかドメスティックな雰囲気も感じられるその「Nokoribi」は、《革命前夜のWingless Believer》という今現在のNewspeakを自ら位置付けたことを思わせる言葉とともに最新アルバムの最後を飾る曲だが、この日、ライブの本編を締めくくったのは、2021年にインディーズでリリースした2枚目のアルバム『Turn』のオープニングナンバー「Blinding Lights」。ダメ押しするように観客をジャンプさせたあと、ステージの4人は再びStevenを中心に向かい合い、エンディングのキメに渾身の一音を鳴らしたのだった。

そして、エモーショナルに盛り上げた「July」と、「一緒に歌いましょう!」とシンガロングを求めライブの最後にふさわしい光景を作り上げた「Bonfire」の2曲をさらに披露したアンコールでは、11月~12月に開催する東名阪リリースツアーで、この日、演奏しなかった曲も含め、最新アルバムの曲を「余すことなくやります!」と宣言。「ツアーまで4か月。まだまだアルバムを楽しみましょう!」というReiの言葉からは、アルバムの出来に対する手応えの大きさが感じられたが、この日、彼らのライブを観て、音源とライブのアンサンブルの違いをはじめ、いろいろと新しい発見をした筆者は、ライブバンドとして、そして観客の気持ちに訴えかけるフロントマンとして、NewspeakおよびReiがここからどんなふうに成長していくのか、すでに興味津々なのだった。

12月8日に渋谷Spotify O-WESTで開催するリリースツアーのファイナル公演が今から楽しみでしかたない。

取材・文=山口智男 撮影=河島遼太郎

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