暴動クラブ 撮影=和田遥瑠香
平均年齢20歳にして熟練のロックンロールバンドのような音を鳴らす4人組、暴動クラブがメジャー1stアルバム『暴動クラブ』を8月7日にリリースする。今春には『ARABAKI ROCK FEST.24』『JOIN ALIVE 2024』、そして秋には『氣志團万博2024』と大型フェスへの出演も相次ぎ、その挑発的かつスリリングでチャーミングなライブパフォーマンスは各地で大きな反響を呼んでいる。THE NEATBEATSのMr.PANをプロデューサーに迎え、彼が所有するオールアナログ機材のスタジオ・GRAND-FROG STUDIOでモノラルレコーディングされた『暴動クラブ』について、そしてバンドの未来像について聞いたSPICE初登場のインタビューをお届けする。
――最近、暴動クラブの名前が徐々に広まっていると思うんですが、今の状況をみなさんはどう受け止めていますか。
釘屋 玄(Vo):名前が広まってきて悪いことができないから頑張ろうって(笑)。
鈴木壱歩(Dr):単純に嬉しいですけど、僕らとしてもバンドの名前がどれぐらい知られているのか、未知数なところはありますよね。
――先日出演したジョイン(『JOIN ALIVE 2024』)ではけっこう反響があったみたいですけど。
釘屋:はじめての『JOIN ALIVE』だったのですが、お客さんがノッてくれてたのがよかったです。
――自分たち的な手応えはどうだったんですか。
釘屋:野外はまだ何回かしかやっていないので、いつもあっという間にステージが終わってしまうので、今度、野外でやる時はもう少しセットリストを詰めて、もっと完成度を上げていきたいと思います。
――ライブハウスと野外フェスの音作りって全然違いますもんね。
城戸“ROSIE” ヒナコ(Ba):違いますね。
――今年はアラバキ(『ARABAKI ROCK FEST.24』)に出て、ジョインがあって、秋には『氣志團万博2024』が控えています。さらに、8月27日には渋谷クラブクアトロでのワンマンライブがありますね。どんなライブにしたいですか。
城戸:私は、暴動クラブのひとつの節目だと思っているので、結成してからこれまでやってきた集大成を見せられたらなと。
マツシマライズ(Gt):世の中に“これがロックバンドだ”っていうのを知らしめたいです。下手に無駄なことをやらず、ストレートにやりたいです。
――やっぱり、最近のバンドはそんなにロックじゃないと感じてるところがありますか。
マツシマ:あぁ……まぁ……(苦笑)。音楽性がどうとかいう以上にスピリットがロックじゃねえなって感じることはあります。
――このバンドを始めたのは、そういうロックを感じさせるバンドがいないから自分たちがなってやろう、みたいなところがあった?
マツシマ:ああ、まさにそうですね。
――自分たちが思う“カッコいいロック”を提示しなきゃいけないんじゃないか、みたいな。
マツシマ:おっしゃる通り。
――でも、最近のロックンロールのシーンは数十年前に比べると小さくなってるのかなという印象があります。
マツシマ:小さくなりましたし、界隈の癒着が大きいなって感じはします。
――それはどういうことですか。
マツシマ:たとえば、このバンドはこのバンドとしかつるまないとか、このライブハウスにしか出ない、とか。あと、 1年に1度あるこのイベントには絶対このバンドしか出ないよな、みたいな。
城戸:排他的な……。
マツシマ:そういうのがある感じはしますね。でもうちらは、カッコつけて言えば、“どこにも染まらねえぞ”みたいな気持ちではいます。
――ジャンル問わず、アンダーグラウンドのシーンは固まりがちではありますよね。
釘屋:メジャーとアンダーグラウンドの音楽的にはどっちにも属していないところはありますね。だから身軽というか、どっち側から呼んでもらえてもやっていけるようなことをやってるつもりではいます。
――暴動クラブは平均年齢20歳ですでに熟練のロックンロールバンドのような音を出すということで、あちこちのメディアで散々驚かれまくっています。そんな状況にもさすがに飽きてきた頃だと思うんですけど……。
一同:あはは!
――こういう音楽をやっているのは、やっぱり家族からの影響が大きいですか。
城戸:私は子供の頃から70、80年代のハードロックとかプログレを聴いて育ってきたので、そういう影響はあると思います。
鈴木:僕は、親父が大のビートルズ(The Beatles)好きだったので、物心ついたときにはリビングでずっと赤盤(『ザ・ビートルズ1962年~1966年』)が流れてるような状態だったし、気づいたら太鼓を叩いてたっていうくらい音楽に囲まれた環境でしたね。
釘屋:俺の場合は親がそこまでいろんな音楽を聴いてたわけじゃなくて、高校生の頃から地元の広島にあるレコード屋さんによく行ってて……。
――STEREO RECORDSだ。
釘屋:あ、有名なんですね。地元ではみんな知ってます。だから、STEREO RECORDSが音楽におけるお父さん、みたいな(笑)。
――店長の神鳥くんが。
釘屋:あ、そうですそうです。神鳥さんが安いレコードを売ってくれたりして、あれが一番デカかったなあ。
釘屋 玄(Vo)
日本のバンドで歌がいい人たちはいっぱいいるけど、理屈抜きにカッコいいって思える人たちはそこまで多くない。村八分もルースターズも、海外みたいな音なのに歌は日本語でおもしろいなって。(釘屋)
――みなさんのルーツは50年代以降の多岐にわたるロックだと聞いていますが、それらをすべて掘っていくと大変なことになってしまうので、暴動クラブを形成する上で最も影響を受けているバンドを3組挙げてもらえますか。
釘屋:それぞれにモストフェイバリットはあるんですけど、バンド全体で3つというと……。
マツシマ:いや、決まんない!
釘屋:でも、みんなが好きなのはやっぱりめんたいロック。特に、ザ・ルースターズは全部聴いてますね。
城戸:サンハウスもじゃない?
釘屋:ルースターズ、サンハウス、シナロケ(シーナ&ザ・ロケッツ)……。
マツシマ:ダメダメダメ!(笑) 偏りすぎちゃう。
城戸:じゃあ、大きくくくってめんたいロックにしとく?
――めんたいロックの魅力はどのへんにありますか。
城戸:ルースターズに絞って話すと……そもそも暴動クラブっていう名前はルースターズの前身バンドの人間クラブから取っていて、名前の時点ですでに影響を受けているっていうのもありますし、音楽的にも日本的じゃないというか、イギリスのルーツがめちゃくちゃ強くて……。
釘屋:それでいて日本語で歌ってるっていうのは俺の中で好きなポイントではあります。
――2つ目のバンドは?
マツシマ:村八分。
釘屋:あー、マツシマと俺は割とそうだね。村八分もみんな髪長いし。日本のバンドで歌がいい人たちはいっぱいいるけど、村八分みたいに理屈抜きにカッコいいって思える人たちはそこまで多くない。村八分もルースターズと同じように、海外みたいな音なのに歌は日本語でおもしろいなって。
――では、3つ目。
釘屋:海外いっとくか。
城戸:ストーンズ(THE ROLLING STONES)?
城戸:ドールズ(New York Dolls)?
釘屋:ああ、ドールズはちょうどいいんじゃない? ジョニー・サンダース(Johnny Thunders)とか。まず、デカい男がお化粧をして髪も長いっていう、今見るとすごく危なっかしいのがカッコいいし、下手くそなのもいい。
――理屈を超えたところにあるカッコよさ。
釘屋:そうですね。人間的なカッコよさ。
マツシマ:あと、バンドの実力って演奏の技術ではかられることが多いと思うんですけど、僕らもそうですし、今挙げたバンドに関しても技術はぶっちゃけどうでもよくて。カッコよければそれでいい、っていう感じがすごく好きです。
マツシマライズ(Gt)
あんまり精神論だけで語っちゃいられない。だから、初期衝動だけじゃないよっていうのがこのアルバムの醍醐味だと思います。(マツシマ)
――みなさんは最近のバンドも聴いたりするんですか。
釘屋:曲や演奏を真似しようとは思わないけど、俺はちょくちょく聴きます。
城戸:毛嫌いして聴かないっていうことはないです。でも、聴くけどハマんないかな。
マツシマ:聴くけど、それが誰か聞かれてもぱっと思いつかないレベルですね。
釘屋:俺は昨日、リフはすごくギターだけどハウスっていうか、ケミカルブラザーズ(The Chemical Brothers)を今風にした感じのバンドがツイッター(現X)に流れてきて、“これ、カッコいい”と思ってすぐダウンロードしました。それぐらい軽い感じです。
――じゃあ、同年代でシンパシーを感じるバンドっていたりしますか。
城戸:フーテン族。
マツシマ:あと、ちょうどこの前対バンして個人的にめっちゃいいと思ったのがthe Tigerっていう女性ボーカルのバンド。
城戸:ああ、カッコよかった。
釘屋: Sorry No Camisoleっていう90年代のオルタナみたいな感じで、女の人が歌ってるバンドなんですけど、めっちゃカッコよくて。俺は90年代の音楽も好きなのでめっちゃ刺さりました。こないだ対バンしたんですけど、“ぜひまた一緒にやりたいです!”って感じで。
――やっぱり、自分たちと近い感じのバンドに惹かれるんですね。
釘屋:ルーツがある人が俺はすごく好きだし、いいなって思います。
――今回リリースされる1stアルバム『暴動クラブ』はthe NEATBEATSのMr.PANによるプロデュースと録音ということですが、Mr.PANさんが所有するGrand-Frog Studioは普通のスタジオではなく、アナログ機材しかないという特殊な場所です。そういう環境でのレコーディングはどうでしたか。
釘屋:大変でした。これまで録ってたスタジオだと、歌のピッチとかちょっとミスったところをパソコン上でポチポチって直せたんですけど、今回はアナログのレコーダーだったからそういうことができなくて、ほぼ一発録りだったんですよ。
鈴木:でも、それが楽しかった。
――1曲につき何テイクぐらい録ったんですか。
マツシマ:曲によります。
釘屋:マジの1テイクの曲もあるし、最高で20ぐらいやった曲もある。
――1テイクで録ったのは?
釘屋:1曲目の「とめられない」です。ボーカルは別で録ったんですけど、演奏も歌も1テイクで“これでいいじゃん!”みたいな。しかも、これが最後に録った曲でした。
城戸:曲ができたのもこれが最後だよね。
釘屋:そう。レコーディング前日に俺が曲を上げて、みたいな感じだったよね。
――じゃあ、曲が仕上がってから録るまでの時間がかなり短かったんですね。
釘屋:そうですね。
城戸:でも、一番うまくいくっていう。
マツシマ:ある意味、新鮮でよかったと思います。
鈴木:プリプロのプの字すらない(笑)。
城戸“ROSIE” ヒナコ(Ba)
自分たちの根底にあるのは今回のアルバムみたいなものだと思うんで、変わっていくにしても進化するにしても、多分今回の進化系みたいな感じになっていくかなと。急に裏切るかもしれないけど(笑)。(城戸)
――今回のアナログレコーディングを通じて発見したことはありますか。
マツシマ:発見というか、Mr.PANさんにたくさんしごかれた記憶しかないです。ギターで言うと、たとえば1、2弦が同時にちゃんと鳴ってなくて、“こうやって弾くんやで”みたいなこととか。
鈴木:ドラムは“8ビートとはなんぞや”というところから始まって。まさかそんなこと言われるとは思わなくてすごく悔しかったですけど、指摘が的確でちゃんと根拠があって、理屈と感性の鞭を入れてくれたのですごくよかったです。
――具体的にはどんなことを言われたんですか。
鈴木:右手の8分音符が全然なってないっていう。“8ビートなんだから8分音符をちゃんと際立たせろ”って言われました。そこをズバっと指摘されたので自分の姿勢を変えなきゃなと思いました。
――あはは! 城戸さんはどうでしたか。
城戸:ベースに関してはそんなに言われなかったんですけど、レコーディングに向けての練習の仕方とか、曲の作り方とかについても指導していただいて、本当に勉強になりました。
――曲作りに関してまでアドバイスがあったんですね。
釘屋:歌詞の内容であったり、構成であったり、進行であったり、キーとかについてもすっごい理論的なことを教えてくれて。そこまで言ってくれる人はこれまでいなかったし、すごくありがたいなって。the NEATBEATSも3コードという制限がある中でいろいろ表現してて、俺らもある意味同じような枠組みでやってるから、その中でできるアレンジとかを教えてくれたりして。
城戸:引き出しもすごくて、昔の例とかをたくさん出してくれて。
釘屋:歌も何回も録り直しさせられて。“ピッチが全然合っとらん”って。真鍋さん(Mr.PAN)はエンジニアとしての視点はもちろん、バンド側の目線もある人なんですごいなって。的確だし痛いところを突いてくるっていう。ためになるレコーディングでしたね。
鈴木壱歩(Dr)
僕らは僕らの音楽をやるだけです。満足して言い訳なしで死ぬ。(鈴木)
――先ほど、ロックンロールのスピリットの話をしていたけど、技術面においてやるべきこともちゃんとあるという。
マツシマ:あんまり精神論だけで語っちゃいられないよね。
釘屋:ライブだと目で見てカッコいいことが大事だと思いますけど、レコーディングはずっと残るものだし、後になって聴いて“1st、良くねえな……”って思うのは嫌なんで、“これでよかった”と思えるものにするためにはやっぱり考えないといけないですね。
マツシマ:だから、初期衝動だけじゃないよっていうのがこのアルバムの醍醐味だと思います。
――初期衝動を詰め込んでいるように聴こえるけども、実はそうじゃない。
釘屋:意外と真面目なんですよ(笑)。
――暴動クラブって真面目なバンドですか?
城戸:めっちゃ。
釘屋:特にこの2人(釘屋と城戸)が。根は真面目じゃないけど、好き勝手やってたらバンドがバラバラになっちゃうような気がしなくもないというか。やっぱ、人が4人集まってやってることだし……頑張ってますよ(笑)。
――どうやってそのことに気づいたんですか。
釘屋:前に組んでたバンドは趣味っていうか、やりたいことだけをラクにやってる感じだったので、それでうまくいく人もいるかもしれないけど、残念ながら俺はうまくいかなかったから、ここまで来たからにはバンド全体である程度考えて動かないと。好き勝手やるのもある意味ロックンロール的ではありますけど、そうじゃなく、ある程度考えて、狙ってやっていくっていうのも俺はロックンロール的だなと思ってて。ピストルズ(SEX PISTOLS)みたいに、敢えて狙ってあざとくやるのもロックの在り方のひとつなんじゃないかなと。だから俺は真面目に楽しくやってます。
――とはいえ、ピストルズみたいにセンセーショナルに世の中に現れたけど短命で終わるようなバンドにはしたくない。
釘屋:そうっすね。ピストルズがあのまま続いて、その中でジョン・ライドンがPIL(Public Image Ltd.)みたいなことをやって、 シド(Sid Vicious)がもっとパンクなことをやってたら本当はもっと面白かったんじゃないのって。それに、やっぱバンドがなくなっちゃうのは聴いてる側としては寂しい。いつまでも見ていたいバンドっているじゃないですか。だから、俺は簡単にはやめたくないなって。
――アルバムの話に戻ります。僕は「ロケッツ」のオープニングのドラムがめちゃめちゃカッコよくて好きです。ああいうフレーズって事前に頭の中で練っているものなんですか。それともアドリブ的なノリだったりするんですか。
鈴木:あれはあんまり覚えてないですね。どうやって出てきたんですかね?
マツシマ:聞くなよ、知らねえよ(笑)。
鈴木:本当に覚えてないんですよ。
――ドラムからはじまることだけ決まってたって感じですか。
鈴木:いや、それも全然。どっかからアレがやってきて、1回やってみたらけっこうしっくりきたし、みんなもいい反応をしてくれたんで調子に乗ってやりました。
――今の話に限らず、その場で湧いてきたフレーズがそのまま楽曲に反映されることは多いんですか。
マツシマ:それは多分みんなあると思います。
――あんまり曲は固めていかない?
マツシマ:プリプロでガチっと決めてもつまんないから、その場のノリっていうのはけっこう大事にしてます。
城戸:でも、ガチッと決めていかないせいでソロとかめっちゃ時間かかってるじゃん(笑)。
マツシマ:そう(笑)。“これ違う”って。
釘屋:“結局、1番目のテイクがよかったじゃん”とか。でも、しょうがないよね。
マツシマ:決めちゃうとそれしか見えなくなるからさ。
釘屋:ソロはそういうとこあるよね。
――その流れでいうと、「すかんぴん・ブギ」の中盤からはじまるギターソロがすごく好きです。
釘屋:うん、俺もけっこういいと思う。
マツシマ:僕は元々ロカビリー少年で、あの曲のソロの速い部分は50年代のロックンロールみたいなテイストにしたいなとずっと思ってたので、思うままに弾きました。その後もギャロッピングしてたり、元々考えてたイメージと手癖が混ざった感じのソロになってます。
――ベースに関しては、ルースターズのカバー「C.M.C.」が特に躍動しているように感じました。
城戸:あれはもう、大尊敬してる方々の曲を私なんかが…っていうプレッシャーを感じながら、本当に必死で弾きました。
――他の曲と違う感じに聴こえますけど、それは必死さによるものだったんですね。
城戸:まあ、言ってしまえばそうなのかもしれないです……(笑)。
――歌に関してもビッとしましたか。
釘屋:そうですね。俺が普段つくらないタイプの曲なので難しかったです。
――暴動クラブの場合、演奏もそうだし、ボーカルに関してもうまければいいってわけではないですよね。暴動クラブのOKテイクの基準はどこなんですか。
釘屋:「とめられない」に関してはピッチも合ってないし、本来歌おうと思ってたメロディは全然出てないんですよ。でも、録ったのを聴いてみたら雰囲気がよかったので、真鍋さんと話して“雰囲気的にはめちゃくちゃいいですよね”って。曲によってピッチの正確さをとる場合と面白さをとる場合があって、ガレージっぽい曲では面白さが大事だったりするのでこの曲に関しては面白さを優先しました。ていうか、真鍋さんがそういう感じで選んでくれたんですよね。“これでええやないか”みたいな。
――やっぱり、カッコいいだけじゃない面白さがあるところが暴動クラブの歌なんですかね。
釘屋:俺はそういうのがいいと思ってます。「ROAD RUNNER」もぐちゃぐちゃな感じになってるとこがあるけど、そこに人柄が出るっていうか。なので、半分意識的に、半分意識や技術が追いついてない状態でやってます。
――アルバムの出来栄えには満足してますか。
城戸:私たちの全部が出た。そういう意味で満足してます。
マツシマ:自分たちの中では、“あ、ここミスってる”っていうのはけっこうあるんですけど、これは真鍋さんとも話してたんですけど、“確かにミスってはいるけど全然変じゃないしカッコいいからこれでいこうや”みたいな感じでしたね。
釘屋:春先ぐらいにレコーディングしたんですけど、そのときの俺たちがそのままパックされてる感じ。
――たしかに、何十年後かに聴いても当時の空気が思い出されそうなぐらい生々しい。
マツシマ:今まで僕たちが録った音源とか、最近世に出てる音源とは毛色が全然違うと思うんで、何十年後に聴いてもバイブスが上がるというか、“おっ!”ってなると思います。
城戸:空気ごと録れてるから、あのときの空気まで思い出しそう。
マツシマ:スタジオの匂いとかね。
釘屋:音は60年代だし曲にも60年代の要素はあるけど、そのままのスタイルじゃないんで、いい意味で時代性があやふやというか。よくわかんない時代感だけどロックンロールであることは確かだから、そういう意味でも面白いんじゃないかと思います。
――今後、暴動クラブの音楽性は変わっていくんですか。
マツシマ:わかんないです。
釘屋:狙えないというか、その時々って感じだよね。
城戸:流れに身を任せるだけって感じ。
――これまで4人が通ってきた音の中から今後何が出てきてもおかしくないっていう感じ?
釘屋:そうですね。メンバーそれぞれが好きな年代とか、国、ジャンルはいっぱいあるので、もっとジャンルに寄ったものを狙わずに出してみたいですね。
城戸:自分たちの根底にあるのは今回のアルバムみたいなものだと思うんで、変わっていくにしても進化するにしても、多分今回の進化系みたいな感じになっていくかなと。急に裏切るかもしれないけど(笑)。
――他のインタビューで“有名になりたい”という発言を見たんですけど、あくまでも自分たちのスタイルを貫いた上でということですよね?
釘屋:そうですそうです。
――この音をオーバーグラウンドにも届けたいという野心はありますか。
マツシマ:野心しかないです。
釘屋:こういうジャンルの素晴らしい音楽もあるんだよっていうことを、そこら辺の女子高生とかおばちゃんとかが知ってたら面白いじゃないですか。
――でも、最初にシーンの話をしましたけど、今のような状況だとなかなか大変な道のりだと思います。それについては何か考えていたりするんですか。
マツシマ:や、僕はなんも考えてなくて、カッコいいことをひたすらやるだけっていう。それがいいのかどうかはわかんないですけど、考えたところでしょうがないって感じはありますね。
城戸:自分たちがカッコいいっていう自信は多分みんなあるので。
マツシマ:“勝手についてこい!”って。
鈴木:僕らは僕らの音楽をやるだけです。
釘屋:ただ、やっぱり時代ごとに人間が好きになるものには傾向があるじゃないですか。だから、傾向と対策ではないですけど、俺たちがカッコいいと思うことしかやらない中でも何かできることはあるんじゃないかなって。まだ見つかってはいないですけど。
――世の中のトレンドを視界の端っこで捉えつつ。
釘屋:そうですそうです。
――最後に、音楽以外で暴動クラブの活動を通じて成し遂げたいことはありますか。ものすごくベタな例を挙げると“世界平和”とか。
鈴木:満足して言い訳なしで死ぬ。
――それはカッコいい。
釘屋:あー、それでいいじゃん!
マツシマ:それでいこうや。
取材・文=阿刀”DA”大志 撮影=和田遥瑠香