「次会うために歌おう」Mr.FanTastiC、結成地・大阪を巡るワンマンツアー中盤戦、儚き日々の上で紡いだ再会の約束

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Mr.FanTastiC『キタからミナミまで〜御堂筋縦断ツアー!』2024.8.11(SUN)大阪・#G8 ナンバーゲート 大阪

メガテラ・ゼロ(Vo)率いるロックバンド・Mr.FanTastiCが、8月11日(日)に『Mr.FanTastiC ONE-MAN LIVE 〜キタからミナミまで〜御堂筋縦断ツアー!』を開催した。バンドの結成地である大阪4会場を巡る同ツアーの折り返しとなったこの日は、道頓堀の目と鼻の先にある#G8 ナンバーゲート 大阪を舞台に、大阪らしい賑やかさが漂う1日となった。

温かな拍手に迎えられステージへ姿を現した4人が、<オオーッ!>と歌い始める。「Always the best day」だと気づいたオーディエンスは即座にハンズアップで応答し、ライブが始まって数秒とは思えないほどの一体感を形成。拳を突き上げてパワフルに歌声を届けるメガテラ・ゼロとお立ち台へ登りフロアを見渡すつっくん(Gt)、ろまん西野(Ba)がアジテートすると、早速壮大な景色が立ち現れた。息つく暇もなく、チョーキングが唸るギターソロからベースソロ、マッシブなドラムソロを挨拶代わりに連打し、テンションMAXでファンを迎え入れる。

 

赤と紫色の照明が不気味な雰囲気を演出した「ウィスキーハロウィン」、つっくんが攻撃的なギターソロをかます一方で、ふじゃん(Dr)の刻むシンバルに合わせてメガテラ・ゼロとろまん西野が飛び跳ねた「HOWEVER」を披露。つっくんは「ツアー2本目、楽しんでますか? 御堂筋を回る“大規模”なツアーです」と本ツアーを改めて紹介すると、客席から「“小規模”やろ!」とツッコミが飛ぶ中、「騒ぎ散らかしていけたらと思うんで、よろしくお願いします」と後半戦へと加速していく。

 

マイクを両手で握りしめて歌うメガテラ・ゼロのシルエットが、歌詞に込められた決意を体現しているようだった「シアターライフ」を終えると<CRAZY!>の一声が響いた。「クレイジーダンス」の幕開けを告げるこのワンフレーズで会場のムードは一変、ふじゅんの早急なビートに呼応して観客は一斉にジャンプ。メガテラ・ゼロがマイクをフロアへ掲げると巨大なチャントが巻き起こり、メガテラ・ゼロもイヤモニを捨て去って全身でファンの大合唱を受けとめる。Mr.FanTastiCの楽曲は各パートが複雑に絡み合うためにイヤモニは欠かせないと思われるが、それを捨て去ってでもこの瞬間を共有したいという思いが表出していたし、実際に完璧なプレイをやってのける確固たる技術を再確認させられた。

 

MCでは先日父になったつっくんへとお祝いの声が投げかけられたり終止和やかなムード。そんな中メガテラ・ゼロはライブを締めくくる言葉として、数日前に南海トラフ地震臨時情報が発表されていたことを踏まえ「本当はライブをキャンセルしようと思った」と赤裸々に吐露し、こう続けた。「ワンチャン会えなくなるかもって思ったら、お客さんの顔が見れなくて。メンバーもみんなも失くしたくない。今日はごめんなさいの気持ちも、ありがとうの気持ちも強くある。会えなくなるのが一番嫌だから、次会うために歌おう」―――自身の中に渦巻く不安を丁寧に紡いだMCを終え、エンディングを彩ったのは「fine II」。<終わりは突然いついかなる時に 訪れるかわからない 明日かもしれない>といつの日か訪れる終わりへの恐怖と向き合いながら、それでも日々を懸命に生きることを歌うリリックが、先刻のMCとシンクロする。胸に手を当てて歌い上げるメガテラ・ゼロの風姿は、自分自身に言い聞かせるようでもあった。

エモーショナルな空気に包まれた場内を拍手が満たし、アンコールが噴出しようとするまさにその瞬間、突如として先ほど発表された「High & High」のMVが映し出される。このサプライズにオーディエンスからは大きなどよめきが発生。上へ上へと立ち昇っていくパワフルさを感じさせる同曲の映像を皆で共有しようと、誰からともなく座り始めたファンの様子も印象的だった。MVの初公開を終えると紗幕が上がり、再び4人が姿を現す。口々に感謝を伝えたのち、メガテラ・ゼロの「いつだって良い日になりますように! また会おうな」という誓いを合図に2度目の「Always the best day」でピリオドが打たれた。

 

あっという間に過ぎ去っていった60分に込められていたのは、不可逆の時間を分かちあえることへの喜びといつ崩れ去るか分からない日々の尊さ。ライブ終盤、「fine II」から新曲「High & High」のサプライズ披露を経て、アンコールに再度「Always the best day」を据える流れは、「今日のような素晴らしき日が再び来るように」という再会の約束でも「またこんな日を作り出す」という新たな1歩への決意でもあるように思えたのだ。その証拠に、終演後には年末年始の東阪ツアー『Mr.FanTastiC LIVE2024→2025 ミスファン 年末年始のご挨拶』がアナウンスされた。彼らは「また会おうな」の約束を果たすべく、次なる再会の地を用意してくれたのである。Mr.FanTastiCを愛する全ての人が彼らのエネルギーと共に日々を生き抜き、また集えますように。

文=横堀つばさ 写真=オフィシャル提供

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