一度限りの“ブレイキン・ピアノ”!? 菊池亮太×ござが語る、2都市開催『2台ピアノコンサート』の構想や互いの印象は?

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並外れた表現力で聴衆を圧倒するピアニスト、菊池亮太とござが、ふたりだけでステージに立つ2台ピアノコンサートが今秋、2都市で開かれる。〝ピアノが第一言語〟である両雄の自由な発想を堪能できるまたとない機会。2024年9月14日(土)に岡山芸術創造劇場ハレノワ 中劇場(岡山県)、10月4日(金)に住友生命いずみホール(大阪府)で開催される2公演についてふたりは「演奏するのはお客さんかもしれません」と口をそろえた。

――菊池さん、ござさん共に、コンサート活動のほか、ご自身のYouTubeチャンネルでの生ピアノ配信や、作曲家・編曲家としても活躍されています。まずはおふたりの出会いからお話しいただけますか。

ござ:知り合ったのは、2017年ぐらいでした。共通の知り合いがいて。お互いに似たようなところで活動していたので、やっと会えたなという感じでしたね。

菊池:初対面は、池袋の居酒屋さんでした。

――今年の4月に、京都の平安神宮で行われた『桜音夜 ~紅しだれコンサート2024』で共演されるなど、これまで何度かステージを共にされています。最初に音を合わせたときの印象は覚えていますか?

菊池:最初に演奏したのは(新宿区の)中井にあるサロンでした。知り合いがリサイタルをしていて、終わった後に撤収をする前にセッションしました。「熊蜂の飛行」(ラフマニノフ編)を演奏したんじゃなかったかな。

ござ:そうです。一緒に演奏をして、動画で見たままの実力ある人と感じました。

菊池:僕も動画で見ていたので、「生で演奏を見られた!!」という感慨がありました。当時はインターネットを中心に活動している人のピアノを、リアルで聴けることがかなりレアでしたから。

菊池亮太

菊池亮太

――お互いの演奏について、どんな印象を持たれましたか?

菊池:今まで見たことがない演奏をする人という印象で、ござさんのように演奏する人は、未だにござさん以外、見たことがないです。

ござ:僕はもっと聴いてみたいなと思いました。ピアニストは、ギタリストと違って演奏を聴けばどんな風に演奏をしているのか分かるのでそこに驚きはないのですが、どうしてこの曲の次に、この曲を混ぜようと思ったの?って、その発想力に驚きを感じることはあるんです。それぞれの展開方法は、他者が真似できない個性だと思います。

――その個性を堪能できるのが、今回の「2台ピアノコンサート」です。2台一緒に演奏をする時間、ソロコーナーなどがあるそうですね。

菊池:構成について、細かいところはまだこれからなんですけど、「弾いているときのあなたの反応によって、次の曲が変わります」と書いておいてください!

ござ:基本的には事前に演奏曲を公開せず、その場の空気で展開していく。自由なステージにしたいと思っています。演奏している僕らもお互いの発想に驚き合って演奏しているので、どんな風になるのかは未知数です。

菊池:もしかしたら演奏者は、お客さんなのかもしれません。

――「ピアノが第一言語」である、おふたりらしいステージです。でも、楽しみにしている人のために、もう少しだけ内容を教えていただくことはできますか?

菊池:2台のピアノで「アイ・ガット・リズム変奏曲」(ガーシュウィン)と「ボレロ」(ラヴェル)は演奏しようと思っています。この2曲は事前に練習をして、ほかのパートについては、偶発性を大切にしたいと思っています。

ござ:「アイ・ガット・リズム変奏曲」を2台のピアノで聴く機会は、世界中を見てもなかなかないことなので、この公演の見どころでもあります。「ボレロ」では、個人プレイも入れられるかなって。でも今はこうやって、話していますけど、本番になったら全部変わる可能性もあります(笑)。

――岡山はコンパクトな会場。大阪はパイプオルガンなども設置されたコンサートホールです。今回は2公演ですが、スタイルが異なる会場でコンサートを行うというのも、ユニークだなと感じました。

菊池:僕はどちらの会場でも演奏をしたことがありますが、たとえ同じ曲をやったとしても、似たようなコンサートにならないと断言できます。あと、今回はオンライン配信がないので、来たあなたにしか分からない。同じことは二度ととできない。一度しか見られないコンサートになる!と自信を持って言えます。岡山と大阪。2公演の演奏の変化も楽しんでほしいです。

――クラシックのコンサートは、事前に演奏プログラムが発表されることが多いですが、おふたりは〝明かさないこと〟を選択されました。

ござ:このふたりにとっては、自然で必然的なことでした。

菊池:偶発的なものを大切にしたいと思うふたりなので。

ござ:うん。平安神宮も事前にこの曲と決めずにいました。本番前に「リレー方式で、春の曲メドレーをやろう」と決めていたけど、お互いに何の曲を演奏するのか分からなかった。思いもよらない化学反応が起きて、僕たちも感動しました。

菊池:リハーサルをして得るものと、失うものが僕はあると思っています。練習を重ねれば洗練されていくけれど、みずみずしさを失ってしまう。「THE FIRST TAKE」(YouTubeで展開されているチャンネルの1つ)みたいに、何が起こるか分からない。一発目のヒリヒリとした感じを大切にしたいんです。ふたりともその両極を分かっているから、ここはリハをする、ここはリハをしないで自由にしようという構成になりました。

ござ:即興演奏って、パリオリンピック(フランス)で初採用された、ブレイキン(ブレイクダンス)に似ているなって思うんです。

――ブレイキンですか?

ござ:はい。ブレイキンって、DJがかけた音楽に合わせてダンスをするんですけど、選手は競技をする瞬間まで、DJが何の曲を掛けるか知らないんです。そして、流れてきた曲に対して、自分が持っている技を披露し、自分だけの表現を追求していく。僕らも相手の〝手〟に合わせて、持っている引き出しから展開していく。似ていると思いませんか?

菊池:ブレイキン・ピアノだね。

ござ:うん。ピアノに対して持っている概念を壊すという意味でね。

――なるほど。岡山と大阪。それぞれ楽しみにしていることはありますか?

菊池:大阪では、たこ焼きを食べたいです。岡山は未知の場所なので、オススメがあったらXで教えてほしいです。コーヒーが好きなので、カフェの情報とか知りたいです。

ござ:僕は「ござの日」のコンサートで、6月に大阪に行ったのですが、大阪だけにとどまらず、岐阜で降りて岐阜城を見に行ったりプチ旅行をしたので、今回も無事にコンサートを終えた後に、名所を見て回りたいです。

取材・文=翡翠 撮影=荒川潤

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