『FUJI ROCK FESTIVAL ’24』 撮影=Teppei Kishida
『FUJI ROCK FESTIVAL ’24』(以下、フジロック)が7月26日から3日間にわたって新潟県湯沢町苗場スキー場で開催された。苗場に会場を移してから25周年を迎えた今回の出演アーティスト数は200組以上、観客は7月25日の前夜祭から延べ4日間で9万6,000人が来場した。
前夜祭 撮影=宇宙大使☆スター
天候面では前夜祭のスペシャルライブの幕開けを告げる花火が靄に隠れてしまうというアクシデントに対し、花火に向かって「がんばれー!」コールがかかるという初の展開もあったが、初日と2日目の日中は強い陽射しが続いたが夕方から夜にかけては気温がぐっと下がって涼しく快適で、最終日は小雨が降ったり止んだりを繰り返し、レインコートが必要な程度の雨も2度ほど降ったものの長くは続かず、総じて過ごしやすいコンディションだった。
■キラーズが救い、クラフトワークが揺らし、ノエルがシンガロングを巻き起こす
ザ・キラーズ(The Killers) 撮影=Chris Phelps
初日のヘッドライナーとして登場したザ・キラーズ(The Killers)は、シザ(SZA)のキャンセルを埋める形で出演することになったが、海外での人気の高さとは裏腹な日本でも20年ぶりの登場とあって大いに盛り上がった。また、日本人のワタル(from東京)という男性が「CAN I DRUM?」と書かれたボードを掲げて演奏を志願し、「For Reasons Unknown」でドラムを1曲通して叩いたことも大きな話題となった。
クラフトワーク(KRAFTWERK) 撮影=Masanori Naruse
2日目にはエレクトロニック・ダンスミュージック界のビートルズとも呼ばれるドイツの生んだテクノの重鎮、クラフトワーク(KRAFTWERK)が初登場。緑に囲まれた大自然の中での彼らを想像できなかったが、実際に目にすると違和感はないが異様な空間で、交わらなさそうなものが交わるのがフェスの面白さであることを見事に体現したショーだった。親交のあった坂本龍一を「永遠の友」と語り、スクリーンには若き日の教授とラルフ・ヒュッターの姿が映し出され、楽曲「Merry Christmas, Mr. Lawrence」をカヴァーして追悼したほか、反原発を訴え続けた坂本龍一の監修による日本語詞バージョンで「Radioactivity」を披露した。
ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ(Noel Gallagher’s High Flying Birds) 撮影=Masanori Naruse
最終日のヘッドライナーは、ノエル・ギャラガーズ・ハイ・フライング・バーズ(Noel Gallagher’s High Flying Birds)。セットリストのうちの半分以上がオアシス(Oasis)時代の名曲を披露するという大盤振る舞いで、ラストはやはりあの曲「Don’t Look Back in Anger」の大合唱。そのまま感動的に終わるのかと思いきや、最後の最後でワルさもチラッと見せる一幕もあって、やはりノエル・ギャラガーという男が一筋縄ではいかないロックスターであることを再確認させられるステージだった。
グラス・ビームス(Glass Beams) 撮影=Yuta Kato
ペギー・グー(PEGGY GOU) 撮影=大橋祐希
ジーザス&メリー・チェイン(THE JESUS AND MARY CHAIN) 撮影=Ruriko Inagaki
アス(US) 撮影=Taro Konishi
そのほか海外勢では、グラス・ビームス(Glass Beams)、ザ・ラスト・ディナー・パーティー(The Last Dinner Party)、ガール・イン・レッド(Girl In Red)、ペギー・グー(PEGGY GOU)、イン・イン(Yin Yin)、ターンスタイル(TURNSTILE)ら世界的にも注目を集めている旬のアーティストから、ジーザス&メリー・チェイン(THE JESUS AND MARY CHAIN)、ベス・ギボンズ(BETH GIBBONS)、キム・ゴードン(Kim Gordon)といった時代を築いてきた先駆者たちが各ステージで観客を沸かせた。中でも6ステージに出演した新人バンドのアス(US)は前評判の高さを伺える集客を記録していた。
MAN WITH A MISSION 撮影=Taio Konishi
Awich 撮影=Taio Konishi
TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA 撮影=Hachi Ooshio
日本勢も激アツだった。10-FEET、MAN WITH A MISSION、Awich、東京スカパラダイスオーケストラらがGreen stageに立ち、それぞれの世界観でオーディエンスを盛り上げた。Red Marqueeには電気グルーヴが登場したほか、、『WEEKEND LOVERS』ではLOSALIOSがthee michelle gun elephantの「CISCO ~想い出のサンフランシスコ(She’s gone)」を投下、The BirthdayはTha Blue HerbのBOSSを迎えての「ハレルヤ」や、Suchmos/Hedigan’sのYONCEと共に「ローリン」を披露、さらにメンバー一人ひとりが歌い継ぐ感動的な場面もあった。その場にいた全員で偉大なるロックンローラー・チバユウスケを追悼し、彼の残した音楽と仲間に感謝した。
電気グルーヴ 撮影=Masanori Naruse
WEEKEND LOVERS 2024 “with You” LOSALIOS / The Birthday (クハラカズユキ・ヒライハルキ・フジイケンジ) 撮影=Taio Konishi
■音楽以外のアクティビティも充実
日本一長い空の旅を満喫できるドラゴンドラは毎日運行され、天空のステージのあるDAY DREAMING and SILENT BREEZEへと来場者を運んだ。KIDS LANDではこどもフジロッカーたちが全力で遊び倒せる森のプレイパークや、巨大な木製のジャングルジムに滑り台、シーソー、メリーゴーラウンドがあるほか、授乳やオムツ替えに利用できる個室テントも完備されていて、小さな子ども連れのファミリーで溢れていた。また、会場のそこかしこで繰り広げられる大道芸では芸人の技に笑ったり驚かされたり、ところ天国で開かれる寄席では爆笑の渦に巻き込まれたりしていた。
THE PALACE OF WONDER 撮影=宇宙大使☆スター
そして『フジロック』では、昼と夜、2つの異なるサーカスを観ることができる。昼はPYRAMID GARDENで毎日開かれるクロワッサンサーカス、夜は大人の遊び場THE PALACE OF WONDERで毎夜開催される、さくらサーカスだ。クロワッサンサーカスは子どもたちが綱渡りや空中ブランコなどを体験できるワークショップもあり、さくらサーカスでは深夜にもかかわらず大勢が詰めかけ、スリリングなパフォーマンスに夜ごと魅了される人が続出していた。
■新サービス提供に伴う、ホスピタリティの進化
『フジロック』の誇るホスピタリティがさらに進化していた。まず、チケットでは初日26日の18時から翌朝5時まで楽しめるリーズナブルな「金曜ナイト券」と、18歳以下は1日券の一般発売価格の半額以下となる「Under 18 1日券」が新設され、参加者にとって選択肢が増えた。
フード、ドリンクを提供する店舗には入れ替わりもあり、新たな店が多く見られた。これまでも世界の料理を楽しめる店が多い印象だったが、今年はおしゃれなスイーツを出す店や高級うなぎがメニューに並ぶ店、中国料理店など、インバウンドを意識したようなメニューが取り入れられていたのが印象的だった。
撮影=宇宙大使☆スター
FUJI ROCK go around 撮影=大橋祐希
そして、今年新たに提供された2つのサービス「FUJI ROCK go around」と「CAMP VILLAGE」も好評だった。
場内の移動を快適にする新サービス「FUJI ROCK go around」は専用ラウンジで休憩をしながらバス移動で場内を楽に動けるとあって、小さな子どもを連れたファミリーや、シニア層、海外からの参加者の利用が多くあった。
CAMP VILLAGE 撮影=大橋祐希
CAMP VILLAGE 撮影=大橋祐希
CAMP VILLAGE 撮影=大橋祐希
CAMP VILLAGE 撮影=大橋祐希
新たに誕生したキャンプエリア「CAMP VILLAGE」では、海外からの来場者の利用も多く、フラットな地面に張られたレンタテントや、冷房も使えてプライバシーも確保できるキャンピングカーでのキャンプで快適に過ごせた模様だ。
さらにAmazonでの無料ライブ配信は来場できなかった音楽ファンだけではなく、来場していても様々な理由で最後まで場内で楽しむことが叶わない人や、お目当てのアーティストが重なってしまった際、別ステージエリアにいながらにして他の観たいステージをチェックできるとあって広く重宝された。
文=早乙女 ‘dorami’ ゆうこ