とた、2ndワンマンのオフィシャルライブレポート到着「また次の“ページ”で会いましょう!」
テキスト:ふくりゅう(音楽コンシェルジュ) photo by 垂水佳菜
2000年代生まれ、ベッドルームポップを奏でるシンガーソングライター「とた」が、10月4日に渋谷WWW Xで「Live Tour 2024 “bloomin’ page 2”」東京公演を行った。
開演前。ステージ上で気になったのがお馴染みのベッドサイドランプ。そして、当日のテーマを匂わす、花瓶に飾られた手作りの花だった。
19時過ぎ、4人のバンドメンバーがステージにあらわれ、ハンドクラップで“とた”を迎える。ダンサブルなビートに牽引されるアッパーチューン〈押して〉からスタート。1曲目からオーディエンスの気持ちを掌握し、熱狂を生み出していく。ロックフェスへの出演経験を重ね、ライブパフォーマンスに大きな成長を感じられた躍動感あるいい意味ではっちゃけたステージ。
「みなさん、わたしに愛みせてくれますか?」と、人気チューン〈片依存〉へ。「東京のみなさん、わたしが「ねえねえ愛して!」と言ったら、愛を返してくれますか?」と、フロアを共依存状態へ盛り上げていく。
「もう秋になってしまったんですけど、夏の曲をやります!」と、せつなくも狂おしいギターポップチューン〈ブルーハワイ〉、さらに〈あしたてんき〉と、ライブでの人気曲が続いていく。自宅へ籠る歌を、たくさんのオーディエンスへ向けて歌い放つ、絵も言われぬ開放感。繊細な青春期の心の機微が、赤裸々に昇華されていく。
「あらためまして、とたです!『bloomin’ page 2』に来てくれて本当にありがとうございます。“bloomin’”というタイトルは1年前に初めてのワンマンライブに付けた名前で。花が咲くと言う意味の英語です。渋谷WWW Xのステージから見えるみんなの笑顔が花が咲いているように見えて、今日はいい日になるんじゃないかなと期待でいっぱいです。(ステージにある)花はラケナリアというお花で。花言葉は変化や好奇心、あと、浮気はやめてというのがあって。1年前、初めてのワンマンライブをしてからわたしの中で変わっていったことなどを今回はみんなに観てもらおうかなって、テーマとしてやらせてもらっています。今日は1日楽しんでいってください!」
そして歌われるドラマティックな〈薔薇の花 page2〉。エントランスで配られた絵葉書には、とた自筆のイラストに歌詞が書かれていた曲だ。大事な公演ごとに物語がアップデートされていく宝物のようなナンバーである。やわらかな雰囲気そのままに〈右手のネイル〉。淡いイメージをセピア色に描き出す〈カメラロール〉。さらに新曲〈あるく〉では、暖かな日常に寄り添ったまるで童謡のような優しい歌を届けてくれた。途中、キーボーディストとポップに連弾を披露するなど、開かれた“とた”が満面の笑みで弾けていく。
ここで、バンドメンバーを紹介。好きな秋の味覚をそれぞれに質問しながら、ソウルフルでシティポップなセッションを繰り広げる。続けて元気いっぱいにファンクな新曲〈agenai〉でフロアを扇情していく。
勢いは止まらない。ロックな骨太ビートをかます〈日めくり〉、さらに青春期の葛藤を描ききったエモーショナルな〈せーかいせかい〉。ラスト、祈りを込めるかのように大きな声で4回「実を結ぶ日はくる!!!!」と決意表明を熱くシャウトしながら、新星“とた”の進化が自信とともに裏づけられていく。続けてロッキンな〈こうかいのさき〉。「リリースしていない曲やります!」と、メロディックなピアノフレーズがキャッチーな〈寄り道〉を歌いあげていく。
「そろそろ終盤になってきました。わたしは普段、家でひとりで曲を作っているんですけど。曲を作っている時って基本孤独なんです。書きたいことを自分と向き合って。こうやってみんなの前で歌わせてもらえる機会ができたことで、自分ひとりの言葉だと思っていたことが共鳴している感覚になって。ひとりじゃないんだと思うことができて幸せです。今日という日は1年間でどれだけ変われたかを記念する日。これからも変わり続けていきたいです。また、会いにきてください!」と挨拶。音像のシャワーを浴びるかのような解像度高い特異なポップソング〈Transpose〉へ。高揚感は上昇し続け、ラストへ向けて拡がっていく重厚なゴスペル展開が胸熱だった。
そして、シーケンスそのままにノイズが混じり合い、雫がポツンと落ちるサウンドから“とた”が全国的に知られるきっかけとなった代表曲である〈紡ぐ〉。誰もに寄り添い人生を歌い紡いでいくナンバー。サビですべての葛藤が開放されていくロックチューン。国民的ヒットソングになるべきナンバーだと思うのは筆者だけではないはず。
実際、この曲に救われたリスナーは多いのではないだろうか?
「今日はありがとうございました!ほんとのほんとに最後の曲です。今日のために作ってきた曲です。新しいページを記念して、みんなとこの曲を歌いたいです。聴いてください、〈〇〇記念日〉!」と、アッパーなギターポップをオーラスで繰り広げていく。“とた”のライブにアンコールは無い。1日1日の記憶と記録を赤裸々に歌い紡いだ全16曲を全力で駆け抜けていった一夜となった。
「ありがとうございました!また次の“ページ”(※ライブの意)で会いましょう!」と、去る“とた”。ステージに残されたベッドサイドランプの灯りがふっと消えて終了へ。鳴り止まない拍手がオーディエンスの熱量の高さを物語っていた。