『M bit Live #2 UA × アイナ・ジ・エンド』
「生きていく 好きな曲がふえていく」をスローガンに、ひとりひとりの人生に音楽との出会いを届けるプロジェクト<M bit Project>による一夜限りのアーティストコラボレーションLIVE『M bit Live』第2弾が、10月21日(月)EX THEATER ROPPONGIで開催される。
第2弾は、数々のヒット曲を持ちながら現在も様々なことにチャレンジし続けているUAと、元BiSHのメンバーアイナ・ジ・エンドによる、世代を超えたコラボレーションが実現。チケットは発売後、即ソールドアウトとなった。
そしてチケット完売を受け本公演のYouTubeでの無料生配信が決定。無料生配信はM bit Project公式YouTubeチャンネルにて10月21日(月)19時より配信開始。10月29日(火)より1週間限定のアーカイブ配信も予定されている。
さらに、開催を目前にUAとアイナ・ジ・エンドによるスペシャル対談が到着。2022年に上演されたミュージカル『ジャニス』での共演の思い出も振り返りながら、互いのキャリアやイベントへ向けての思いなどを語り合う貴重な対談となっている。
UA×アイナ・ジ・エンド スペシャル対談
「ひとりひとりの人生に音楽との出会いを届ける」ことを掲げてスタートした『M bit Project』のライブイベント、『M bit Live』。様々な入り口が存在する「音楽との出会い」の中でも同イベントが提示するのは、とりわけ世代やジャンルを超えた存在2組を通じたライブの場での出会いだ。
7月に行われた第1弾でOriginal Love Jazz TrioとSTUTSによるコラボレーションが大きな注目を集めた中、ほどなくして発表された第2弾がまた凄い。UAとアイナ・ジ・エンドという組み合わせである。片やソウルやR&Bをルーツとし、30年近いキャリアを重ねてきたレジェンドであり、もう一方はBiSH在籍時から類稀な才能とセンスによって多方面で活躍し、昨年本格的にソロキャリアをスタートさせたばかりの新鋭。いったいどんな空間が生まれるのか想像もつかないが、実は当人同士は2022年に上演されたミュージカル『ジャニス』での共演から既に親交が生まれていたそう。本稿では海を越えたリモート対談で共演時の思い出も振り返りながら、互いのキャリアやイベントへ向けての思いなどを語り合ってくれた。
──おふたりがお話しするのはいつぶりになるんですか。
アイナ:2022年にジャニス・ジョプリンの舞台(ミュージカル『ジャニス』)でご一緒させていただいて。最後はそのときにお会いしてるんですけど、実はそのあと電話もしました。
UA:覚えてる! そうなの、あなたがMステにご出演される楽屋で、メイク中にLINEで話したんだよね。「観てるよー!」みたいな。
アイナ:はい、嬉しかったです!
UA:『ジャニス』の打ち上げも楽しかったねえ。カラオケの個室みたいなとこで「ここ、入っていいのか?」みたいな、みんなドキドキしながらさ。
アイナ:いや、間違いなくUAさんがいることが一番浮いてましたよ(笑)。わたしもあんまりああいう打ち上げ会場に行ったことなかったんで、新鮮でした。
UA:そうだったんだ。もう、あのソウル・シスターズたちのお誘いを断るなんてバチが当たるっていう感じだったから。
アイナ:本当に朗らかな方々でしたね。
UA:素晴らしかった。なんかジーンとくるよね。
アイナ:楽しかったし、わたしはやっぱりUAさんと一緒にステージに立てたことが夢みたいに嬉しかったです。
ミュージカル『ジャニス』
UA:本当? ありがとう。思い出したんだけど、あの日わたしが「なんでアイナ・ジ・エンドっていう名前にしたの?」って聞いて、アイナが「あの──」って話し始めてくれたのに、バーっと割り込まれちゃって、その話題が消え去っていって。たくさんいろんな場所で語られてきたと思うんだけど、わたし、見ないようにしてきたの。いつかアイナから聞かなきゃと思って。「なんであの時聞けなかったんだろう」って後から後悔してたのね。
アイナ:BiSHっていうグループに2015年に入った時に、カタカナで名前を決めなきゃいけなくて。
UA:カタカナが決まりだったの?
アイナ:そうなんです。で、何にしようかな?と思ってる時に、それまでの人生があんまりうまくいってなかったなという思いがあったので、一回アイナを終わらせて、また始めてリスタートさせようと思ってアイナ・ジ・エンドっていう名前にしました。
UA:そうなんだ。じゃあアイナは一回終わった感じがあるの?
アイナ:……実は地続きな感じでやらせてもらってて(笑)。
UA:アイナ・ジ・ツヅキ?(笑) ウケるなあ。でもわたしもさ、デビューした時は「UA=花、または殺す」とか言っちゃって、尖ってたんですよ。だけど10年くらいして「殺す」の方をやめて、今は「花」だけにしてるのね。
アイナ:スワヒリ語?
UA:スワヒリ語。
アイナ:自分で決めたんですか?
UA:そうなの。本当は「いちじく」っていう名前で出ようとしたんだけど、友達に絶対やめとけって止められて。本当に言うこと聞いておいてよかった。
アイナ:おもしろい(笑)。
UA:それでわたしは「虹」の意味を付けたくて。スワヒリ語にしたのは、スワヒリ語のプロナンスエーションが日本語ととても似てるんだって聞いたのと、もちろんアフリカ大陸への憧れもあって、紀伊国屋書店に行ってスワヒリ語の辞書を買ったの。だけど「和スワヒリ」は売ってなかったので「虹」では調べられなくて、スワヒリ語をAからZまで見なきゃいけないわけ(笑)。で、ずっと探したんだけど「虹」が載ってなくて。
アイナ:えー!
UA:ないのかな、虹は?って諦めきれなくて、東京外語大学の教授の方が書かれてる辞書だったんだけど、電話したのね。
アイナ:すごい!
UA:電話して「わたくし歌手になろうと思っていて」なんて説明して、虹のスワヒリ語はなんでしょうか?って聞いたら、すごく長かったの! 全然言えもしない感じだったのね。
アイナ:(笑)。
UA:その時、AからZまで見てた中のUのところに「UA」があったの。「花、または殺す」って書いてあってもうビックリしちゃった。UとAだけでそんな!?と思ってものすごい衝撃的で。当時から二元的な反対の言葉とかに興味もあったし、これだ!と思って。
アイナ:その名前を決めたのっておいくつくらいの時なんですか?
UA:デビューを決めた時なので23歳でした。
アイナ:めちゃくちゃお若い頃からハイセンスでかっこええ。
UA:はははは!
アイナ:スワヒリ語に辿り着かないですもん、生きていて。めっちゃ素敵です。「UAさん」でよかった。
UA:ありがとうー! うなぎの「U」とあなごの「A」っていう説もあるんだけどね(笑)。
ミュージカル『ジャニス』
──世代的には先輩と後輩というか、リスナーとアーティストみたいな関係だった時代も長かったと思うんですが、同じステージに立ったことはアイナさんとしては感慨深かったですか。
アイナ:本当にお父さんが車でUAさんのアルバムをずっと流してて、幼稚園なんで誰が歌ってるかはわからなかったけど、ずっと口ずさんでいたので。大人になって「あ、あの曲ってUAさんが歌ってたんだ」みたいな。
UA:お父さんはあれかな、同じエリアの出身というか、高校の学区とかが近いかもしれないんじゃない? ひょっとしたら。
アイナ:めっちゃそうですね。UAさんにはすごく親近感があると思います。
UA:うれしい。今度お会いしたいもんだわ。
──逆にUAさんからしたら、小さい頃から自分の音楽を聴いてきてくれた人が同じフィールドに上がってきて、共演するっていうのはどんな気分なんですか。
UA:実は今のお話し、初めて聞いたんですよ。だからあんまりそういう、アイナがわたしの歌を聴いてくれていたという認識が薄かったかもしれない。アイナとはちゃんとしたリハーサルが始まる前、小さなスタジオで歌稽古をさせていただいたのが最初の出会いの日だったんだけど、なんか緊張もしなかったしすごくスムースに出会えた感じがして。アイナは緊張してたかもしれないけど、ものすごく真剣に取り組んでる姿を見てわたしも発破かけられたし、いま質問いただいたような感覚でアイナと向き合ってはいなかったですね。もちろん、わたしの方がどう考えても年上ということは頭ではわかってるんだけど、本当に新しい友達に出会ったような気持ちでいたんです。
アイナ:UAさん、出会った日の夜に「初めて会った感じじゃないね」みたいに言ってくださいました。懐かしい人に会ったような気がするって言われたのがすごく印象的です。
UA:ね。
──アーティストやシンガーの感性に世代や時代だとかはあまり関係がないのかもしれませんね。
UA:そうでありたい気はしますね。
ミュージカル『ジャニス』
──おふたりで聴いてきた音楽や影響を受けてきた音楽について話したことはありますか? ルーツとかバックグラウンドみたいな話か、それともいま目の前にある音楽や自分たちの音楽性について話すことのほうが多いですか?
UA:もうね、ミュージカルのお稽古から本番までって本当に怒涛の日々で。ものすごく日本が暑くなり始めた時期だったし、コロナ禍バリバリの中で。毎朝検査してドキドキしながらさ。だからそこと関係ない話ってあんまりしなかったよね?
アイナ:そうですね。わたしもめちゃくちゃ必死で、初めての主演でセリフ量もとてもあったので、音楽の話とかはUAさんとも他の方とも正直全然できてなかったですね。なんなら、わたしが初めての通し稽古が終わって泣いてたら、UAさんが近寄ってきて励ましてくれる時間があったくらい、ミュージカルに没頭してました。
UA:みんな放心状態っていうかね(笑)。なかなかタイトな日々だったんですよ。
アイナ:UAさんも一回喉の調子が良くなかったリハの日があって。でもすごいなと思ったのが、その次の日には全然普通になってて。
UA:ああ! アイナがしばらくお休みしなきゃいけなくなって、代理の方が来てくれてたんだけど、やっぱり気分が盛り上がらなくて。で、アイナが帰ってきてくれた日に、すっごい嬉しくなっちゃって。ウィッグつけて全部衣装着てヒール履いて、マスクつけたまま全開でやっちゃったのね。そしたらなんか生まれて初めて熱中症になっちゃって(笑)。その時のことかな?
アイナ:えー! そうだったんですね。
UA:だから本当、ルーツの話なんていうのはルの字もなかったよね(笑)。改めて話させてもらうと、19歳の頃に当時のボーイフレンドがレコードのコレクターで、誕生日のプレゼントにアレサ・フランクリンの『Aretha’s Gold』っていうベスト盤みたいなものをくれて。それをもう毎晩聴いて、すっごく影響を受けたのね。たぶんそういったジャンルの音楽で自分が3枚目か4枚目に手にしたレコード。そのあと梅田の方の映画館で『ジャニス』という映画を映画館で観たのね。その中の『モントレー・ポップ・フェスティバル』で「Cry Baby」を歌われるシーンでもう、号泣しちゃって。人が歌を歌う姿を観てあんなに泣いたっていうのは生まれて初めてで。なんか革命が起きちゃったんだよね。だからわたしの10代の2大ディーヴァがアレサとジャニスだったの。ミュージカルのことも、わたしがアレサをやらせていただいたこと、そしてあなたがジャニスだったこと、全てがわたしにとってはあまりに不思議なギフトで、奇跡的な体験だったんだよね。
アイナ:すごい。19歳って、一番多感かもしれない時期に出会った2人だったんですね。それは初めて知りました。
UA:だから本当に不思議だった。
アイナ:舞台でアレサ・フランクリンを歌うことになって、あの歌も聴き馴染みがあったんですか?
UA:実際にジャズのクラブで歌ってた時期があって、そこでスカウトされてるんだけども、そこでアレサ・フランクリンの歌を歌ってたのね。「Chain of Fools」とか「A Natural Woman」とか、キャッチーめな曲を歌ってたんだけど、「Spirit in the Dark」は映画のシーンでは観ていたけど、ずっと同じコードでゴスペルでクワイアしながら歌う……歌うというかチャンティングする曲だったので、正直そこまで聴き馴染みはなかったんです。
アイナ:そうだったんですね。初めてのリハーサルの時から「アレサ・フランクリンが出てきたのかな」っていうくらいで──
UA:ちょっと待って(笑)。
アイナ:憑依されてるように見えてました。
UA:でもやっぱり大役だったので、きちんと練習していきましたよ、あの日は。
アイナ:本当に大役でしたね。いろんな歌があって、UAさんがドンと登場して。しかもミュージカルの中で一番尺が長いシーンだったので。
UA:そうだね。10分くらい歌って踊って、アイナと掛け合いのシーンもあって。でもあそこが一番楽しかった!
アイナ:楽しかったし、わたしは人生で初めてああいうアドリブをやったんですよ。だからもうUAさんについていくのが精一杯で、何にも自分からは提案できなくて終わってしまったんですけど。それでも楽しかったです。
UA:だってあなた、いったい何曲歌ったのよ? わたしと宿題の量が違いすぎてるから当然だわ。あと、正直わたしはジャニスは歌えない。ジャニス歌うんだ、ヤバ!この人!と思ったよ?
アイナ:(笑)。
UA:歌えないよ、普通。でも歌えてたから、この人は歌唱力半端じゃないんだなって。
アイナ:もうそんな、UAさんに言われたら一週間笑って生きていけます。
ミュージカル『ジャニス』
UA:いやー、証明されたでしょ。あれは。
アイナ:頑張りました。本当、UAさんが励ましてくれたからですよ。通しリハの最後に私が泣いてたら、「大丈夫?」っていうか、「かわいそうに~」って言ってくれて(笑)。
UA:言っちゃってた?(笑) かわいそうだったんだね、あの時は。すごいプレッシャーなんだなと思ってさ。
アイナ:でもわたしはそれが嬉しかったんですよ。「かわいそうに」が一番リアルで。その後に『キリエのうた』っていう映画で村上虹郎(UAの長男)くんにお会いすることがあって話したんですよ、「UAさんに慰められたよ」って。そしたら「オカンやん、ええな。オカンやん!」って、なんか虹郎くんも励まされたそうでした(笑)。
UA:励ましてるんやけどなぁ(笑)。虹郎くんも本当BiSHからのファンやし、この話をいただいた時にもやっぱり虹郎に相談したんだよね。太平洋を越えた島暮らしなんでいまいちピントが合ってなくて、どうなんだろう?と思ってさ。息子に聞くしかないわと思って。で、一緒にファーストテイクを観たの。そうしたら「ああ、これ本物だ!」って。彼もすごく推してたから、アイナと一緒だったらできるわと思えたのね。
アイナ:よかったぁ。
UA:彼のお父様もめちゃくちゃアイナのファンだよね。車でずーっとかかってるっていう噂だよ。
アイナ:なんかもうUAさん一家といいますか、お世話になってます(笑)。
UA:みんなアイナ好きみたいになっちゃってるね。
──アイナさんのルーツ的なところもお話いただけますか?
アイナ:わたしもボーイフレンドにレコードもらった話とかあればいいんですけど、正直なくて(笑)。ジャニス・ジョプリンぽいよね、みたいなことをお世辞でも言われることは昔からちょくちょくあって、それで「誰だろうな」と思って。
UA:ははは!
アイナ:調べて「あ、27歳で亡くなっちゃったんだ」みたいな。いろいろ調べていく中で「Cry Baby」とかすごく好きだなと思って聴いてたんですけど。まさか自分が?って思ったのと、ミュージカルをやったのがちょうど27歳だったので、なんだかこう……わたしはお酒もドラッグもセックスもめちゃくちゃする人生を送ってるわけじゃないけど、ジャニスみたいにブルースを好きかもしれないと思って、すごくブルースにのめり込んでまして。なんかね、そうすると別に死にたいわけではないんですけど、こう、「死んでやろうかな」みたいに思いながらやってました。
UA:乗り移ってる、乗り移ってる! そんな感じだったの?
アイナ:そうなんですよ。思いっきりルーツとかじゃないはずなのに、本当にジャニスがずっと心に住み着いちゃってましたね。
UA:イタコチックと言いますか、シャーマニックな要素があるんですね。
アイナ:あったのかもしれないですね。でも、楽屋とかでBiSHのメンバーと話したり、それこそ緑黄色社会の長屋晴子ちゃんとか藤原さくらちゃんは同世代で、2人の「あそこのカフェラテが美味しかった」という会話が聞こえてきて。
UA:話してたね(笑)、だいたい食べ物の話だったよね。
アイナ:それですごく元気出たんですよね。あ、こっちの世界に戻って来れそう!って、あの2人の会話のおかげで思えたので。なので憑依されてどうにかなるとかはなかったです(笑)。
UA
アイナ・ジ・エンド
──良かった(笑)。これだけ関係値のできあがった2人が、今度はガチ対バンでライブパフォーマンスをするというのは、なかなかな企画だと思います。最初お話をいただいてどう思いましたか。
UA:わたしの中ではすごくナチュラルな印象だったんですけど。いつかそんな日も来るかいなーくらいの感じで。あとはバンドのメンバーも一部被っているので、常日頃から元気かどうか聞いていたりしたし。どうですか、アイナは?
アイナ:いやもう、めっちゃ嬉しいですよ。魔法にかけられてるのかと思いました、最初に聞いた時は。
UA:えー本当? ありがとうなのはこっちなんですけどね、本当は。
アイナ:UAさんのその嘘偽りのない言葉とか、なんだか身体とかは華奢なのにすごく包容力のあるところとか、声が分厚いのに安らぎが入ってるところとか、わたしが今まで出会ってきた女性の先輩の中で、一番「尊敬」の二文字がぴったりで。尊敬したし、親近感もあるっていう不思議な方なんですよ。UAさんみたいになりたい!って思ってたので、そんなUAさんと一緒にできるのは嬉しいんです。
UA:なんかちょっと緊張してきちゃったな(笑)。
アイナ:UAさんの飾らないところが好きなのかも。だってMCもお茶会と言ってお茶したりしてるじゃないですか。
UA:(笑)。「お茶」っていう曲があるもんで調子乗ってやってたんですけど。あの日はちょうどやたらお茶の話題になっちゃったんだよね。
アイナ:そういう、何も起こらない日さえも愛おしくさせてくれるのがUAさんの曲だし、UAさんの存在だから。ライブの日も、特別な日になってもならなくてもUAさんと過ごせるだけでアイナにとっては特別だから、嬉しいんです。楽しみ。
UA:あらまあ……。でもあなたには今だけじゃない、ずっと持ってる普遍的な才能があるけど、今ちょうど時代のアイコンとしての条件が全部揃ってる女性だと思うのね。まずルックスがめちゃくちゃキュートなのに、その歌唱力でしょ。肝の据わった歌唱力っていうのかな、そのスタイルにしなやかな身体能力があって。すごく難しいことをやっているのに、それを軽やかにポップに表現できる。ものすごい技量と体力とセンスと身体能力が必要なものなのに、身近に見せられるっていうのはまさにスター性だと思うのね。だから時代のアイコンとしてのあなたと、こうしてツーマンをさせもらえるのは、わたしもギフトそのものだと思ってます。
アイナ:やったあー、うれしい!
アイナ・ジ・エンド
──ご自身のライブとはセトリなんかも変わってきますか?
アイナ:そうですね。UAさんもおっしゃったように、バンドメンバーでドラムとギターが同じなので。
UA:西田(修大)くんと大井(一彌)くんがね。
アイナ:その2人が今回の対バンに対して心意気弾んでいて。
UA:言うたら、あの2人のライブみたいな感じだもんなー。
アイナ:たしかに(笑)。そういう2人がいるので、わりと「これやりたいね」「やったら?」とかも言われそうなので。そう言う意味ではいつもと違うセトリになるかもしれないです。
UA:もう任せようかね、あの2人に。その方がうまくいく気がしてきた(笑)。でもやっぱりコラボ感も出していきたいよね?
アイナ:いきたいです。
──お?
UA:なんかアイナの曲も歌ってみたいなー。
アイナ:歌ってほしいです。ぜひ。
UA:難しそうだけどチャレンジしてみたい。……もうわたくしね、今日も朝からお弁当を作って畑に行って、アヒルのうんこを取ったり、アイナとは全然かけ離れた生活を……暑い? まだそっちは。残暑が厳しいざんしょ?
アイナ:うん、はい。
UA:いまダジャレ言ったんだけど(笑)。
アイナ:(笑)。
UA:でも、すごく忙しいでしょ? 休みとかあるのかな。
アイナ:あ、でも増えました。だからわたしもアヒルのうんこを拾いにいきます(笑)。
UA:あ、来てくれる? でもそんなオカンのポップとね、残暑の東京からのアイナのポップが混じり合う日なのよね。
UA
──貴重な日になりそうで楽しみにしております。最後に伺いたいんですけども、今後こういうメッセージを伝えたい、こういうことを成し遂げたい、こんなビジョンがある……アイナさんは日本武道館というヒストリカルで象徴的な場所でのパフォーマンスを終えてのことだと思いますし、UAさんはそれこそ拠点が変わってまた俯瞰で見える日本の音楽みたいなところで考えることもあるかもしれません。それぞれ今見えている自分と、これからの自分をどう描いていますか。
UA:わたしはなんと恐ろしいことに来年が30周年という、アイナちゃんが幼稚園の頃に車で聴いてくださったという曲が発売されてから30年も経ってしまっていて。久しぶりにフルアルバム的なものをこしらえようというのが、今目の前にある自分のビジョンでして。さらなる自分の思うポピュラリティ、ポップスというのは何なのだろう?と日々試行錯誤しているんですね。だから10月のアイナとのコラボも、おそらくわたしに大変な影響を及ぼすだろうと思うんです。あんまり先のことを考えられない性質で、一旦ここがわたしの今向かうべきビジョンですね。
UA
──周年でまたUAさんの音楽を目印にいろんな人たちが集まったり、戻ってきたり、ずっと地続きで追いかけたりというのが大きく混ざり合う、そんなイメージがあるので。作品もライブも楽しみにしてます。アイナさんはいかがですか。
アイナ:わたしは11月に3年ぶりのアルバムが出るんですけど、良い曲がいっぱいできたので、たくさんの人に聴いてもらえたらいいなと思いつつ……最近はスマホ依存症をやめたくて、よくベッドに投げるんですよ、スマホを。
UA:ツンデレだ!(笑)
アイナ:(笑)。このまま壊れてしまえと思っていつも投げるんですけど、全然壊れなくて。
UA:それはベッドに投げるから壊れないんだよ?
アイナ:(爆笑)。
UA:壁とかお風呂とかに投げてみて?
アイナ:そうしようかな(笑)。そうやってスマホをやめたりとか、ちょっと田舎に家でも借りてみようかなとも思ったりしていて。
UA:いいじゃなーい!! 一回ここにも遊びにおいでよ、太平洋を飛んで。
アイナ:本当に行きたいんですよ! 本当に今自分の頭の中に仕事しかないので。カナダも行ってみたいし、ちょっと違う空気の中で過ごしてみて、そこで音楽も耕してみたいなと思ってます。
UA:うん、良い表現ですねえ!
アイナ・ジ・エンド
取材=藤田琢己
文=風間大洋
【UA】Photo by Atsuki Iwasa
【アイナ・ジ・エンド】Photo by Sotobayashi Kenta
【ミュージカル『ジャニス』】Photo by 岩村美佳