The BONEZ × Dragon Ash『“Straight Up” Tour 』
10月13日(日)KT Zepp Yokohamaで開幕した、Dragon AshとThe BONEZのスプリットツアー『“Straight Up” Tour』。本記事では同公演のオフィシャルレポートをお届けする。
10月13日(日)、共にバンドシーンの雄であり、ライブの最前線で歌い鳴らし続けるライバルでもあるThe BONEZとDragon Ashが、全国9ヵ所を巡る初の対バンツアー『Straight Up Tour』の初日公演をKT Zepp Yokohama(横浜市)にて開催。
互いのフロントマンのJESSE(The BONEZ/RIZE)とKj(Dragon Ash/the Ravens)をフィーチャーした今回のツアーのための書き下ろしナンバーが生披露されたのに加え、それぞれのメンバーをステージに招いて演奏するなど、このツアーでしか目撃出来ないレアなシーン満載の濃密な幕開けとなった。
The BONEZとDragon AshのフロントマンであるJESSE(The BONEZ/RIZE)とKj(Dragon Ash/the Ravens)は、互いに東京に生まれた同世代同士だ。
同じ時代の音楽やカルチャーに刺激を受け、後にDragon Ash、RIZEというバンドでデビューする2人が出会ったのは、グランジロックやロックとタッグを組んだヒップホップがチャートを賑わせていた’90年代の終わり。音楽的なバックグラウンド、幼馴染み+年上のベーシストというバンド構成、さまざまな刺激や興味をすべてぶち込んだオルタナティヴなロックを追求するという音楽性……。あまりにも共通項が多い2人。
若さゆえの反発やすれ違いを経て、互いの距離が急速に近づいたのは、2012年末にPay money To my PainのヴォーカリストであるKを失ったことが大きい。The BONEZはKの急逝という絶望を経て、Kの親友だったJESSEとP.T.P.のメンバーであるT$UYO$HI(B)とZAX(Dr)を核にして生まれた。そして、Dragon Ashは同年4月にオリジナルメンバーであるベーシスト、IKÜZÖNEを亡くしており、その絶望の淵で彼らに手を差し伸べたのが、IKÜZÖNEの親友であるRIZEのベーシスト、KenKenだった。
以降、JESSEとKjは、バンド仲間が主催するフェスやイベントなど、特別なタイミング限定で同じステージに立ち、マイクリレーを披露している。2015年末に開催されたThe BONEZの対バンツアーの福岡公演では、当時、降谷建志のソロ活動に際し結成されたバンドKj&The Ravens(後のThe Ravens)を指名。The Ravensのギタリスト、Pablo(P.T.P.)と共に、K以外のP.T.P.のメンバーが全員同じステージに揃うという奇跡も起きている。
そして、その2組のマッチアップがついに実現したのが、The BONEZ『Straight Up feat. Kj』と、Dragon Ash『Straight Up feat. JESSE』という2曲の新作だ。奇跡の2曲を誕生させ、それを提げた両者初の対バンツアーを行う……そのきっかけを作ったのが、現在、The BONEZとDragon AshのベーシストであるT$UYO$HIだ。
The BONEZとDragon Ashの両バンドで音を奏でるT$UYO$HIの発案と呼びかけがなければ、今日のこの日はなかったかもしれない。
「バンド人生でいちばんいいツアーにしていくつもりです」
そんな2組のバンドの背景を知る多くのファンを前に、一体どんなツアーが繰り広げられていくのか? 記念すべきその初日、最初に会場に鳴り響いたのは、新たな時代の幕開けを宣言するDragon Ashのナンバーだった。
<さあ始めようぜ/逆襲の時だ>
そう歌うステージの上のKjと、美しくも激しい演奏を繰り広げるDAメンバーの姿を見つめ、ステージの袖で嬉しそうに腕を上げ、身体を揺らすJESSEの姿が見える。そして、惜しげもなくライブのキラーチューンを連発した後は、もはやDAのパーティーチューンの1曲となりつつあるhide with Spread Beaverの「ROCKET DIVE」を披露。hideは、今もDAのステージに飾られているチェックのシャツの赤と青がトレードマークだったIKÜZÖNEが敬愛するアーティストだ。Kjと同世代だったJESSEをKjに引き合わせ、いつか2人がタッグを組む日を誰よりも楽しみにしていたIKÜZÖNE。彼の愛するhideの楽曲が、hideの出身地である神奈川県のライブハウスに響く……。これはきっと単なる偶然ではないだろう。
The BONEZ × Dragon Ash『“Straight Up” Tour 』
The BONEZ × Dragon Ash『“Straight Up” Tour 』
「みんなと同じかそれ以上、今日の日を楽しみにしていました。毎日打ち合わせて、細かく決めて……バンド人生でいちばんいいツアーにしていくつもりです」
Kjの言葉に場内から割れんばかりの大きな歓声と拍手が湧き起こる。その言葉通り、The BONEZのメンバーが演奏に加わるという、この対バンツアーでしか目撃出来ない激レアな場面で場内を大熱狂させた後は、JESSEとフィーチャーした『Straight Up feat. JESSE』を投下。華があり過ぎるカリスマ2人のマイクリレーに、フロアはもはやカオス状態だ。
The BONEZ × Dragon Ash『“Straight Up” Tour 』
The BONEZ × Dragon Ash『“Straight Up” Tour 』
さらに、興奮冷めやらぬ場内にサプライズが続く。今回のツアーでは、会場のキャパが許す限りではあるが、転換時も観客を飽きさせない仕様になっているという。この日はDragon AshのDJ BOTSがパリピな時間を提供。終演後にBOTSに聞いたところ、なんと毎回会場ごとにプレゼンターが変わるらしい。
The BONEZ × Dragon Ash『“Straight Up” Tour 』
「初日をP.T.P.のKの地元、横浜でできてるってヤバくねぇか?」
百戦錬磨のメンバーが居並ぶ強者ライブバンド同士の対バンツアーだからこその遊び心に、誰もが笑顔になったところで、The BONEZが登場。冒頭の1音から圧倒的なバンドサウンドを叩きつける4人。その凄まじい演奏とエモーショナルな歌声に観客も全力で応える。
The BONEZ × Dragon Ash『“Straight Up” Tour 』
「楽しくってしょうがないんだ」
曲の合間もZAXと爆笑し合う理由を楽しそうに話すJESSEが続ける。
「Kの地元、よーこーはーまー!『お前そんなんでいいの?』って言ってくれるやつが死んじまったから、俺がその役をやってやっから!」
そう言ってフロアに飛び込み、観客に担ぎ上げられながら歌うJESSE。こんな風に多くの人に求められながら、絶望の中で生まれたThe BONEZは、小さな希望を歌い奏でていく。
The BONEZ × Dragon Ash『“Straight Up” Tour 』
The BONEZのステージでもDragon Ashのメンバーが迎えられ、いつものナンバーに特別な刺激と色が加わっていく。気づくとJESSEはフロアの真ん中で観客に担がれながら2階席に手を振っている。続いてKjを呼び込み、「Straight Up feat. Kj」を披露。熱とメランコリーが交差する楽曲の中で、JESSEとバンダナを頭に巻いたKjが熱くマイクを交わす。客席はもう、熱狂の坩堝状態だ。
The BONEZ × Dragon Ash『“Straight Up” Tour 』
「こっからあと8公演。馬場さん(IKÜZÖNE)、見ててくれよな。そんなツアーの初日をP.T.P.のKの地元、横浜でできてること、ヤバくねぇか?」
最後に両バンド全員で登壇した後、JESSEがマイクに向かって叫ぶ。
「ヤバいツアーになりそうだぞ!」
The BONEZ × Dragon Ash『“Straight Up” Tour 』
ライブの先攻/後攻は完全に「ランダム」
終演後、最高の好敵手を相手に、初日をフルスロットルで駆け抜けたJESSEが誇らしげに言う。「この調子で最後までやっから!」
’90年代、英米で生まれたオルタナティヴなロック……日本で後にミクスチャーロックと呼ばれることになるハイブリッドでラウドなロックをライブシーンの最前線で歌い鳴らし続けるThe BONEZとDragon Ash。本音(Straight Up)でぶつかり合う最高の好敵手同士のマッチアップは果たして、両者に何をもたらすのだろうか?
ちなみに、各公演の先攻/後攻は順番ではなく、その日の条件で決まるランダムなのだという。全公演その日限りのレア場面続出必至の奇跡のツアーになるのは間違いなさそうだ。
The BONEZ × Dragon Ash『“Straight Up” Tour 』
文=早川加奈子
撮影=Dragon Ash:TAKAHIRO TAKINAMI
The BONEZ:Yoshifumi Shimizu