THE HOPE 2024
『THE HOPE 2024』2024.9.21(sat)・22(sun) お台場THE HOPE特設会場
日本最大級のヒップホップフェスティバル『THE HOPE 2024』が9月21、22日に東京・お台場のTHE HOPE特設会場で開催された。会場は実物大ガンダム立像が設置されている広大なセントラル広場。都内はもちろん、羽田空港からもアクセスしやすいこともあってか、日本全国から多くのヒップホップファンが集まった。入場ゲートを通過するとまず視界に飛び込んできたのは「THE HOPE」のロゴマークを模った大きな構造物。ライブやDJエリアに移動する途中に、マンガ「スーパースターを唄って」の作者・薄場圭が描いた出演者たちのフラッグも掲出された。
Day1
7
本編のオープニングアーティスト・7は「BOSS BITCH」のイントロとともにステージに駆け込んできた。全身ブラックのコーディネートに長いシルバーの三つ編みのエクステが映える。2曲目の「WAKA」ではステージを降りて観客のすぐそばで猛烈なエネルギーを放った。「7だけじゃなくて、今年は和歌山の年にするからな」地元の仲間・MIKADOを呼び込んで「言った!!(Remix)」、さらにTOFUも登場して和歌山の同い年3人で「22」を歌った。ラストは代表曲「非行少女」。「非行」と「飛行」のダブルミーニングと、お台場の風を受けて自由にパフォーマンスする姿が印象的だった。
SKRYU
SKRYUはMCバトルのシーンから勝ち上がってきたラッパーだ。スキルはもちろん、強烈なサービス精神の持ち主でもある。この日も「調子はどうだ〜〜〜! 燃えろ〜〜〜」と絶叫して1曲目の「Heated」を歌い始めた。SKRYUが「今日もTHE HOPEで極上のうんちしちゃう」と叫ぶと歓声があがった。曲間では白目を見せた。SKRYUは絞り出すような声で「気持ちいい……」と感想を述べる。「今日はTHE HOPEのパワーを観に来たんだけど……」と後半は聞き取れない絶叫MCから「How Many Boogie」を1ヴァースを蹴る。夏らしいハッピーチューン「超 Super Star」では上着を脱いでスマートな筋肉を露出させた。大声援を全身に浴びながら、持ち前のエンタメ精神を最大限に発揮して「Mountain Veiw」まで一気に駆け抜けた。
GADORO
般若
続くGADOROは「PINO」の最初のラインをアカペラで歌唱した。そこからレゲエのギターストロークがお台場に鳴り響き、「たぶん今日一番の田舎者ラッパーのGADOROです」と自己紹介してライブをスタートさせた。彼の地元は宮崎県高鍋町。今年6月には宮崎・宮崎市民文化ホールでのワンマンライブも大成功させた。キャリアのさまざまな分岐点を経て現在は「太巻きのWeed/より風呂上がりのPINO」と歌う。だが「自遊空間」では変わらぬラップマシンぶりも健在。名曲「ここにいよう」のライン「この町にゃ何もねえと言ってきたがすいません/間違えてました/紛れもなく俺がおった/地元から嫌われてるけどそれも仕方ねえ/片思いだとしても追うほうが幸せ」は感動的だった。ラスト般若を迎えて「U love song」をしっかり聴かせた。
Red Eye
SALU
13時30分ごろに「POKET」のイントロが爆音で鳴らされる中、Red Eyeが現れた。「調子はどうですか? 全員飛べるよね? 遊びに来たやつどんだけいんの?」と思い切り観客を煽ってから「売り上げは上がってる/地元のやつらはgodamn」と叫んだ。「ASIAN CINEMA[Remix]」は大先輩・SALUをフィーチャーして掛け合いもしっかりとキメた。「今日ね、ヒップホップのフェスだけど、ジャンルは関係なくRed Eyeっていうものをみなさんにどんなものか見せたいので、この曲を歌います」とディージェーのARAREをゲストに「ADVICE」を歌った。最後のライン「誰が呼んだかレベルミュージック/響かしてやれよ世界中に/歪みまくったボクらの地球儀の中から叫ぶ自由人」は大合唱となった。
Watson
気温と体温が上がってきた14時半すぎにWatsonが現れる。トップスはなんと毛皮。「金もったせいわからないほんとのこと」という「小リッチ」のリリックにぴったりだ。切れ目なく「俺の場合したわけじゃない上京/自分の手で変えれた状況」と歌う「RANDO」に繋がった。Watsonは「12月6日にZepp(Yokohama)でワンマンライブやります。もし良かったら遊びに来てください」と発表し、「田舎のヤンキーがZeppに立てます」とチャーミングな笑顔を見せ、自身のサクセスストーリーをたっぷりのユーモアで綴った「Hokori」を歌った。さらに「WORKING CLASS ANTHEM」に、Koshyプロデュースの新曲も。大舞台が似合うWatsonは「Fake Love」でステージを後にした。
JAKEN
COBE J
P-free
IFE
Godzilla East
全国のイケてるラッパーたちを紹介するYouTubeチャンネル・03- Performanceのステージで一番手を飾ったのはJAKEN。「Seaside Flow」はなんと359万回(2024年9月25日現在)も再生されている。続いてadidas Originalsのサポートの下、THE HOPEとコラボした「03- Performance cypher」が披露され、COBE J、P-free、IFE、Godzilla Eastがマイクリレーした。
妙妙
Choppa Capone
Watson
そしてチャンネルでも異彩を放つ覆面ラッパーの炒炒はハイブランドのハットに目出し帽をかぶって「Night Dream」を歌った。Choppa Caponeは発表されたばかりの「Live in Tokyo」で、強烈なバイブスを会場全体に伝える。Bene Babyも8月末に発表した「Fall in Love」でシーンに吹くハードな新風を感じさせた。ラストはWatsonが存在を世に知らしめた名曲「reoccurring dream」でコーナーを締めた。
紅桜
AKLO
ANARCHY
C.O.S.A
ralph
kZm
紅桜、AKLO、ANARCHY、C.O.S.A、ralphらの熱のこもったステージに目を奪われているといつのまにか夕暮れ時に。曇り空から時折パラつく雨と、観客の熱気でムシッとしていた場内に「DOSHABURI」のビートが爆音で鳴らされると全員がジャンプを始めた。kZmは「まだいけるっしょ、THE HOPE。こっから本番だぞ」と煽って大きな合唱を巻き起こした。最新アルバム「DESTRUCTION」からアフロビーツ「Forever Young」を歌い「こんばんは。YENTOWNから来たkZmです。意外とTHE HOPE初上陸だったりして。こんな感じなんですけど大丈夫そうですか? てか俺、ずっと横で観てたんですけど、なんかみんなゆるくない? もっと来るのかと思ってた」と挨拶がてらにさらなる煽りをいれた。そこから「ROKUDENASHI」、「Dream Chaser(KM REMIX)」、「TRAUMA」、「TEENAGE VIBES」までを爆発するようなバイブスで一気に駆け抜けた。
Creepy Nuts
BIM
FUJI TRILL
IO
Creepy Nuts、BIM、FUJI TRILLから1日目もいよいよクライマックスに。IOの出番になると観客が一斉にスマホを掲げた。「City Of Dreams」のイントロの中、サングラスのIOはクールな佇まいで静かにステージに現れた。全身ブラックのデニムスタイルで観客と一緒にヒット曲を歌う。めちゃくちゃかっこいいのにリリックは「唐揚げみたいにヒヨッコから成り上がる」(「HONTO」)のようなユーモアセンスが満載。そこもまたかっこいい。IOは「左利きのBenz」でサングラスを外す。所作がかっこいい。「Racin’」にはKohjiyaが参加。人気者の彼をいち早くフックアップしたのが何を隠そうこのIOだ。「Faith」ではYOKOSQUADのCFN Malik、L.O.S.TのM3Rという注目のMCたちを呼ぶ。「Your Breeze」を挟み「SUNSET」に盟友・Gottzが登場。ラストは「Tokyo Kids」で最高のライブを終えた。その後、Jin Doggのパワフルなパフォーマンスを経て、千葉雄喜の「チーム友達」ショットライブで盛りだくさんの1日目が終わった。
Jin Dogg
千葉雄喜
Day2
Carz
Charlu
快晴の2日目はCarzが本編の口火を切った。2人目のアーティストはフェイクファーのパーカーを羽織ったCharlu。ダンサー4人を引き連れ「CHEESE」からライブを始める。「ラップスタア」でファイナリストまで残った彼女。パフォーマンスにも定評がある。「GIRI」では2人のダンサーとしっかりと作り込まれた世界観を提示した。「みんな調子どう?」と声をかけると大声援が返ってきて「良さそすぎるな」と話して「Perfect Night」を歌う。ラップだけでなく歌も上手い。Charluは「すっげ〜人〜! ヤバ〜い。おかげさまでTHE HOPE出れました」とチャーミングに笑った。Koshyプロデュースの「My Verse」で「今が超幸せ」と素晴らしい表情でラップした。
Lunv Loyal
eyeden
Candee
Kohjiya
Lunv Loyal、eyeden、Candeeらの後、「ラップスタア」王者のKohjiyaが現れた。1曲目は「完璧にこなすから言われてる“出来レース”」と歌う「Never Disappoint」。「KJはリスナーを裏切らないってさ」というラインは観客が大きな声で歌った。その元になった「KJ Season Freestyle」も大合唱。Kohjiyaは「真昼間の序盤なんですけど、みんなのスタミナ削りに来たんで。いける? 今日は俺の仲間をいっぱい呼んできました」とljを呼んで「KENZO」がスタート。もちろん後半はHezronが加わった。「Like That」にはYungFLXとTade Dustも参加してヤングパワーを爆発させた。Kohjiyaは「すぐ戻ってくるから」と匂わせてステージを去った。
Kaneee
Yvng Patra
ほとんど間を空けずにKaneeeへ。1曲目は「Canvas」。「ラップスタア」を観ていたSTUTSがKaneeeに興味を持って一緒に制作した楽曲だ。新人とは思えぬ安定した声量と、堂々とした立ち振る舞いで一気にヤングスター候補の一員に仲間入りした。この日も数万人規模の会場に臆することなく自分をラップを聴かせた。Kaneeは「THE HOPE!ここには東京からだけじゃなくて、日本全国からきてるやつらがいると思う。そんなみんなに俺ら東京の遊び方を教えてやろうぜ」と「SHIBUYA」をドロップ。さらに「俺だって1人じゃねえぜ」と「Champions」のイントロが鳴って、匂わせ通りKohjiyaとYvng Patraがステージイン。3人が歌う「俺らは若すぎるChampions」は説得力がありすぎた。
ゆるふわギャング
SEEDA
OZworld
AI
ゆるふわギャングやSEEDAといった実力者たちが午後の早い時間でパフォーマンスした。OZworldが登場したのは15時ごろ。神秘的な清潔さを漂わせる白の衣装を纏ったOZworldは「Hey Siri, ヒフミヨイ」からライブをスタートさせた。「Compflex」「畳 -Tatami-」を一気に歌い、「RASEN in OKINAWA」の自分のヴァースをアカペラでラップした。さらに「知らん曲でもブチ上がれるやつどんだけいんの?」と未発表曲を披露。「Gear 5」ではAce CoolとMIYACHIが客演し、最後はマイクスタンドを立てて「MIKOTO 〜SUN NO KUNI〜」を歌った。なおOZworldは次に出演したAIのステージで「RISE TOGETHER」の客演としても参加した。
LEX
JP THE WAVY
Only U
LEXのライブは夕方ごろ。とにかくすごかった。出てくるなり絶叫して、会場全体をライブに参加させる。左右それぞれに大きな声を出させて、「俺の、じゃなくて俺らのライブだ」とポジティブなメッセージを送った。そして1曲目が始まる前に全員をしゃがませて3、2、1でジャンプさせてから「HELP!」を投下する。歌い終えると「今日みんな何しに来たんだっけ? 楽しみにきたんだろ? まじ後悔したくないから死ぬ気でやるわ。よろしくお願いします」と宣言して「なんとも思ってねぇ」を歌う。続いてJP THE WAVYをゲストに「なんでも言っちゃって」、さらにOzworldも加えて「WAVEBODY」を畳み掛けた。LEXは「俺さあ、自分でも思うんだけど、たぶん変な人なんですよ。でも俺それでいいと思ってるし、それが良くなかったと思うこともあるし。なんつんだろうな。とりあえずケータイを見るとさ……」と「STRANGER」をアカペラで歌い出し、絶妙のタイミングでバックDJのKMがビートを重ね、客演のOnly Uも登場した。LEXは「僕は“自殺するんで最後にLEXくんのライブを見に行きたいです”ってDMを最近もらってんだけど。そういうやつのためにもまじでかましたんだよね、今日。もしこの中に部屋で悩んでたり、まじでもう自分ヤバいかもとか、自殺したいとか、変なこと考えてるやつがいたら、俺のライブに来い。俺が救ってやる」と語って「GOLD」を歌った。最後は「力をくれ」を全員と一緒に歌って壮絶なライブを終えた。
AK-69
THE HOPEもいよいよ終盤戦に。レジェンド・AK-69はどでかいジュエリーをいくつもジャラジャラ首に下げて、キングの名にふさわしい姿で「IRON HORSE -No Mark-」「The Red Magic」を一気に歌った。「日本のヒップホップもようやくここまで来たな。このステージ、いろんな先人たちが作り上げてきたもの。俺はそう思ってます。ヒップホップのフェスなんてねえとか言ってるタコにも、このTHE HOPEに足を運んでくれたすべてのアーティストにも、ここに集まってくれた全員のお客さんにも、愛を向けてこの曲を捧げます」と「My G’s」をSEEDAとともに歌う。Zeebraを筆頭に日本語ラップの歴史に名を刻んだレジェンドから、Kohjiyaのような若手まで次々とネームドロップしていった。今年で29年目という大ベテランラッパーは「START IT AGAIN」「And I Love You So」「Flying B」を歌って地力を見せつけた。
LANA
MaRI
LANAはキャデラックで会場に乗り付け、レッドカーペットを歩いてステージに登場する演出。超ミニのスカートからペチコートがのぞくチアガールのようなスタイルがかっこよすぎるし、かわいすぎる。LANAはプリンセスだ。挨拶代わりに人気曲「Makuhari」のフックを“お台場”に歌い変えて爆盛り上げた。「BASH BASH」では10人以上のダンサーを従え、小節を利かせる独特のフロウで「仕事が遊び/遊びが仕事」をシャウトした。「うちら令和のbad bitches」のスタンスが心地よい「Huh?」にはMaRIをフィーチャー。ZOT on the WAVEによる「TURN IT UP」にはCandeeが登場。「What’s Poppin」はJP THE WAVY“にいさん”が駆けつけた。LANAのライブには男女ともに強烈な声援が贈られ続けていたのが非常に印象的だった。「THE HOPEのYouTube観た? みんなもうわかってるよね。続き聴きたい?」とWatsonとの新曲「Still Young More Rich」を歌った。「毎日が目まぐるしい。みんながLANAちゃんタオルを持ってくれてるの超嬉しい。でもなんで私がここに立ててるのか思った時、ある人から“音楽やってみなよ”って言われなかったら。本当に感謝してるし。本当にどうしょもなかった自分が……わぁって感じ」とまとまらない気持ちを何とか言葉すると、LEXが「明るい部屋」を歌いながらステージイン。そして真ん中でLANAとがっちり抱き合った。LANAは思わず涙ぐんでいた。さらにLEXが「昔は何にもなくてひどかった暮らし」という歌詞に「だったよな」と思い返すような合いの手を入れると2人は再びキツくハグをした。LEXも満面の笑みだった。「L7 Blues」「99」で完璧なライブを終えた。
Awich
YENTOWN
プリンスの後はクィーンの番。Awichはダークな「Guerrilla」からスタートさせた。「ALI BABA」ではラップしながらダンサーたちとハードなダンスをかます。代表曲のひとつ「WHO R U?」はノイジーなギターが入ったスペシャルバージョン。火柱が上がる中、ポニーテールを振り回した。続いて「ヤバいラップするやつを連れてきた」となんとXGからJURIN、HARVEY、MAYA、COCONAを召喚して「WOKE UP REMIXX」をラップした。このサプライズは誰も予想できず現場には怒号のような歓声が響いた。「ヤバいだろ? まだまだ続くぜ」と「Bad Bitch 美学 Remix」に突入。NENE、LANA、MaRI、AIが次々とマイクを繋ぐ。Awichは「ゆりやんレトリィバァに捧げます」とNetflixドラマ「極悪女王」のエンディング曲「Are you serious?」を歌った。SugLawd Familiar「LONGINESS REMIX」は大合唱。「RASEN in OKINAWA」ではOZworldも参加する。ラストの「GILA GILA」では本日大活躍のJP THE WAVYがしっかりとサポートした。ここからYENTOWNのシークレットライブがスタートする。「不幸中の幸い」「DOSHABURI」、JNKMN「TAMAROU」、PETZ「Blue」に加え、2曲もニューシットを披露した。約1時間弱に及ぶパワフルなライブに観客は騒然となった。そして大トリの¥ellow Bucksが実力通りのステージを披露して、THE HOPE 2024が大団円を迎えた。
取材・文=宮崎敬太
¥ellow Bucks