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Galileo Galilei初のBillboard Live YOKOHAMA公演『メリー!メリー!GG』をレポート 再始動後2年で獲得した強さと温かさ

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Galileo Galilei

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Billboard Live presents Galileo Galilei 「メリー!メリー!GG」
2024.12.4 Billboard Live YOKOHAMA

ライブ序盤から「彼らのわんわんスタジオでのセッションはきっとこんな感じなんだろうな」と思いながら見ていたら、終盤で尾崎雄貴(Vo)が「わんスタでセッションしてる時のノリあるよね」と発言していた。やはりそうなんだと嬉しくなると同時に、Galileo Galileiのライブというアウトプットのレンジの広さを実感する。今年はBBHFとのスプリットツアーも、『MANTRAL』『MANSTER』の2作同時リリースと過去最長のツアー、しかも演劇要素を取り入れた『Tour M』の開催も記憶に新しい。どちらも非常にカロリーの高い公演だっただけに、このBillboard Live YOKOHAMA公演はことさら曲そのものをまっすぐ聴く喜びに満ちていた。

Galileo Galilei

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とはいえ、Galileo Galileiとしては初のBillboard Live公演である。ここでは1st Showの模様をお伝えしよう。エントランスからクリスマス仕様のメンバーのイラストをはじめ、季節を感じるしつらえにワクワクするし、会場に入ると赤い緞帳は雪の結晶の影が投影され、ステージにはシンプルなクリスマスツリーが置かれている。開演までに食事を終えた人も多く、テーブルには“復活の霊薬”と名付けられたスペシャルドリンクがちらほら。温度も湿度も最高のコンディションのBillboard Live YOKOHAMAの場内はリラックスして音楽を楽しむ最高の環境だ。可動式のシャンデリアがするすると畳まれて暗転するとメンバーが登場。クリスマス仕様のセーターにも歓声が上がる。

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お馴染みのシークエンスが流れて、1曲目は「リジー」。着席で演奏するのもセッションを想起させるのだが、そもそも爆音のライブじゃないGalileo Galileiにとって、Billboard Liveでのライブはバンドとの親和性が高い。一人ぼっちで留守番しているような気分にさせるこの曲をゆっくり受け止めると、まるで深呼吸したような体感だ。演奏を終えると、ダサセーターを各々見繕ってきた「ダサセーター・パーティ」であると笑わせた。乾杯にはまだ早いという判断がこのままタイミングを逃すことになる。続けて岩井郁人(Gt、Key)の美しいアルペジオも尾崎和樹(Dr)のイレギュラーなビートもグッと生な手応えを感じる「ファーザー」へ。大久保淳也(Sax、Fl、Syn)のフルートとメロディアスな岡崎真輝(Ba)のベースフレーズが情景を広げる。メンバーが座って演奏している分、ハンドマイクの雄貴によりホームパーティっぽさを感じたりしながら、歌われるのが「死んでくれ」なのが、個人的にちょっとカオスなジョン・アーヴィング的世界を透かして見ている気分になる。

岡崎が「皆さんもうご飯は食べましたか?」と自然に問いかけたり、雄貴は「こんな感じでヌルヌルと……ご飯食べてる人にいうことじゃないな」と自分に突っ込む。前回が非常にコンセプチュアルかつ大きな音像のライブだっただけにこのリラクシーなムードは逆に痛快だ。しかし本質的にGalileo Galileiのトーンは同じといえば同じだ。4人がやれば全てはGalileo Galileiなのだと、今年の活動が明言させる。

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サックスリフで新たなバンドアレンジになった、ちょっと意外な選曲の「くそったれども」、「今回、楽器はみんなに任せてる。この後の曲でギター持たないで歌うのは初めて」という、貴重な「青い栞」へと、今のバンドアンサンブルはもちろん、雄貴の歌を存分に味わうこともできた。一気に今年の新曲「リトライ」に接続しても全く違和感がない。空間系の音もSEよりサックスが担っている部分が大きい。それはこの会場だからこそのライブアレンジなのかもしれないが、全体的にSEの割合は減衰していて、生音の芳醇な味わいにこの曲が持つ制御できない命の煌めきを見た。不思議なことに夏の曲だが、冷たい風に脳内で変換されていた。その感覚は「Imaginary Friends」に繋がっていく。岩井の弾くエレピ〜オルガンのサウンドは熱狂や錯覚じゃなく平熱感を湛えていて、でも静かに喜びを湧き上がらせる。この演奏を聴いていると、もっと寒くてもいいと思った。真冬に聴くGalileo Galileiは至福なのだ。ドアを開けるSEに意識を変えられて「ブギーマン」が始まる。サックスのロングトーンも相まってここまでの明るい場所からいきなり人生の深淵に辿り着いてしまった感覚を覚える。

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さらに、子供時代の記憶に遡るような「カラスの歌」は、単純に素朴なスローチューンにならないGalileo Galileiの音楽性に震える。岡崎のフレージングのセンスは『Tour M』でも際立っていたが、演奏をはっきり見てとれるこのキャパシティではなおのことそれを実感する。短くも鮮明に情景を残すこの曲と「燃える森と氷河」の澄み切った音像の流れもいい。水の冷たさを疑似体験した後は気が遠くなるように広い空間に投げ出される「UFO」へ意識が飛ばされる。歌に集中する雄貴、どこまでも透徹した音を鳴らす岩井のフルアコのギター。ギター1本のライブアレンジだが、グルーヴが深くてマンチェビートのような趣きすら感じた。音の大きさじゃなくグルーヴで作るこの日のアレンジだと思った。そして特段の思い入れをもつファンが多い曲である「色彩」はこの日も自分を失ってしまうほどの想いの怖さと喜びのアンビバレンツを沸々と奏でる。人生の意味の一つを感じていつも動揺してしまうこの曲の凄みをメンバーの表情を見ながら味わう醍醐味があった。

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「レディース・アンド・ジェントルメン」と、雄貴の挨拶でついに始まる乾杯の時。岩井は「忘年会ぽいね」と感想を述べる。そして雄貴は「Galileo Galileiでほぼ2年のタームで走ってきて、このビルボードでライブができて嬉しいです」と言い、始動後の濃厚な時間にこちらも想いを馳せることになる。ちなみに“復活の霊薬”は「無垢な赤子と毒虫」からできているというジョークに笑えた人は『Tour M』を見た人なのだろう。岡崎のオチャ大臣呼びもそうだ。グッと空気が和やかになったところに放たれる「あそぼ」の温かさ、さらに前回のツアーから導入されたペンライトがここで揺れたこの日唯一のダンスチューン「SPIN!」を経て、ラストはこれまでも本編の最後に演奏されることが多かった「Sea and The Darkness II」が披露された。だが、この曲がこんなに明るく聴こえることもあるんだ?と少し驚くほどの前向きさと輝度を持った演奏が、今のGalileo Galileiでもあり、この日のリラックスしたムードも象徴していた。と、同時に3月に開催されるバンドの軌跡を辿るライブ「あおにもどる」の“前髪”に触れた気もしたのだった。

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文=石角友香
撮影=Masanori Naruse

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