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からあげ弁当、初ワンマンライブーー冬の夏祭りみたいな手作り感が満載、魂がこもった美味しい夜に

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『祝!からあげ弁当初ワンマン』

『祝!からあげ弁当初ワンマン』 撮影=Ayaka

『祝!からあげ弁当初ワンマン』2024.12.8(SUN)大阪・心斎橋Music Club JANUS

12月8日(日)大阪・心斎橋Music Club JANUSで、からあげ弁当、初のワンマンライブ。舞台後方の”からあげ弁当”と書かれたバックドロップはわかるとしても、観客フロア中に吊るされた”からあげ弁当”と書かれた赤提灯は盆踊り大会みたいだし、”からあげ弁当”と書かれたノボリは焼きそば(Vo.Gt)の母からの寄贈だという。その母と姉は入り口付近で物販を担当して、観客にグッズを売っている。

入り口近くではスタッフがからあげの試食を配っている。その上、メンバー手作り”からあげ弁当”も500円で売っている。何だかわけわからないけど、とにかく売り切れない内に”からあげ弁当”を購入して、”からあげ弁当”のライブを待つことに。

春貴(Ba)、こーたろー(Dr)、Ryu-no.(Gt)が舞台に登場して、最後に焼きそばが法被を着てマイクだけを持って現れると大歓声が起きる。その異様な黄色い声援と野太い声援が混じった大歓声には、待ち侘びられていたスーパーヒーロー感すら感じてしまう。初っ端から観客に向けてダイブしたりと好き放題だが、ボーカルに徹することができるのはギター加入の4人体制になっての大収穫。そんな1曲目「乾杯しよう」から「チキン野郎」「ベルロード」と立て続けにぶちかましていく。

<大人になんてなってたまるかよ>

「ベルロード」の青臭すぎる歌詞は、40半ば過ぎの大の大人の私でもグッときてしまう。真っ赤な夕日が照らす街など誰もが体感した情景を歌にできるのは、全曲作詞作曲を手掛ける焼きそばの強みだろう。5曲目まさかの「チキン野郎」2回目。流石に「??」と思ってしまうが、別に順序立てた意味や複線などは彼らに必要なく、やりたい時にやりたい曲をやる……、それで良いのだ。なんせ初ワンマンライブなのだから、やりたいことをやれば良い。続く「OH MY GOD」では一転して、ハードでエッジ鋭いヘビーな演奏を4人で繰り広げる。そうそう、”からあげ弁当”や”焼きそば”などアホみたいなふざけた屋号や名前の彼らだが、本格的なテクニックある演奏を繰り広げるというギャップは何度ライブを観ても驚いてしまう。

「冬の夏祭りをしよう!」

なんて名言が焼きそばから出たところで、「HERO」へ。<俺の歌で売れずに終わったなら それはそれで大正解>というHEROになるための腹を括った覚悟を感じる。続く「ミサンガ」も含め、彼らは勢い良さがイメージにあるが、実はミディアムナンバーで、より本領を発揮しているように思う。特に「ミサンガ」は哀愁あるメロディーラインで、焼きそばの声ともマッチしている。緩やかに回るミラーボールも哀愁を際立たせる。前髪が自然と目を隠して、やんちゃだけじゃないミステリアスさも感じさせる焼きそば。いつの間にやら色気も出てきていた。

「BLUE」から「はぐればぐれ」というアップテンポでチャーミングなナンバーでも、焼きそばの声がぴったり合わさっている。ストイックさを感じる「君色ライフ」では歌い方もストイックになっていて成長・進化を感じるが、そこを支えているのは3人の演奏陣。着目すべき点は、こーたろーの深く重いリバーブがかかったドラムサウンドであり、まぁ本当に思わずおったまげてしまった。ライブならではの生の臨場感とはいえ、焼きそばの歌が追いつかない時に、この凄腕の演奏陣が支えて引っ張っている確実に。そういう意味では良い4人組バンドである。

適当やノリで生きていて悩みがないと言われるも、悔しい思いだってすると吐露してからの「ちくしょう」。焼きそばがギターを爪弾き、ひとりで歌う。そして3人の演奏が加わるとスローナンバーに一気に深みと厚みが増す。当たり前だが歌に気持ちが乗っかると最強になる。だから、11月リリース最新シングル「どこか遠くへ」は6分40秒という超大作ながらも、ライブで聴くと良い意味で長さを感じなかった。焼きそばが表現力を手に入れ始めている。

「ここからやりたい放題!」

15曲目「街を走る」は3年半前という一番最初にリリースされたからこその瑞々しい躍動感がある。そのまま「Your song!!」が歌われるが、こちらも初期楽曲独特の衝動感とアンセム感があり、聴いてるだけで清々しい。「バカ野郎」からの「そんな日々を生きていく」もイメージそのままの疾走感があったが、ここからの「again」には説得力があった。やはり焼きそばにはミディアムテンポな歌が似合う。<いつか出会うだろう最高の自分>と歌う焼きそばを本気で応援したくなる。「今君は聞こえるかい この声よこの声よ」と歌われたラストナンバー「Good Day」には、焼きそばが伝えたい全てが詰まっていた。こうして本編が終わる。

「5分後の(19時)30分にアンコールで再集合しましょう!」

なんちゅうアンコール予告……。前代未聞で驚愕したが、まぁ“からあげ弁当”らしいかと全て受け入れられるのが不思議な魅力なのかも。「stay with me」は焼きそばの美メロが抜きんでたナンバーで幸先良いアンコールスタートだったが、2曲目で再度「乾杯しよう」へ。大人のでき上がりすぎた脳みそで考えると、何故?と思うが、先述したようにそんなものは”からあげ弁当”には全く関係ない。

アンコールにおけるラストナンバーはなんと「チキン野郎」を5回連続で疲労して〆。いやいやほかにも素晴らしいラストナンバーあったでしょうと老婆心ながら考えてしまうも、やっぱり“からあげ弁当”が”からあげ弁当”たる所以がここにある。ソールドアウトに至らなかったこと、新年の告知がないことなどなど本人も触れていたが、そんなのも別になくたって今日の全てを出し切ったのであれば、それで良いじゃないか。

最後の最後に焼きそばはTシャツを脱ぐと胸には大きな文字で”魂”と書き殴られていた。以前はギターのストラップで隠れたりとやきもきもしたが、マイク1本で歌える今ははっきりと”魂”が見える。もっと濃く太く書いたらいいのに……とかは一瞬頭をよぎるも、目に見える”魂”ではなくて、目に見えない”魂”が重要だし、その目に見えない”魂”は我々のもとにしっかり届いていた。

なかなか賑やか まだまだこれから。これが正直な感想。決して物足りなかったという意味合いではない。”からあげ弁当”の未来を信じているからこその言葉。そうそう余談ですが、終演後に500円で購入した”からあげ弁当”を食べた。何度も食べたことがある味なのに、全然色褪せない美味しさがあった。”からあげ弁当”というバンドも、そういうバンドなのだろう。

取材・文=鈴木淳史 写真=オフィシャル提供(撮影=Ayaka)

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