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XinU オフィシャルインタビューが到着 面白い景色を探す好奇心と少しの勇気で、世界とクロスする

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XinU

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2024年12月4日に、XinUの2nd アルバム『A.O.R – Adult Oriented Romance』がリリースされた。抜け感があり洗練されたビートミュージックに、スモーキーボイスと評される、憂いがありつつも、ミストのような温かみのある歌声が優しく降り注ぐ。世代や国境と問わず、多くの人を惹きつける存在だ。そんな彼女に新作のこと、詞を書くことや音楽のルーツ、台湾でのライブなど様々なことを話してもらった。 

――12月4日、ついに2ndアルバムがリリースされましたね。おめでとうございます。

ありがとうございます。1st アルバム『XinU』から1年半ぶりで、やっとっていう感じで。自分たちで作ってきたものなので、本当に感慨深いです。

――アルバムをリリースするまでには、さまざまなフェーズがあると思います。XinUさんが一番ワクワクするのは、どの段階ですか?

楽曲の制作が終わってからのことで考えていくと、ミックス。ミキシングの作業をみんなでやるんですけれど、それが全部終わった時が一番、なんというか達成感があって。その時の記憶が、いつも印象的なんです。朝になっちゃうこともあるので。
でも、聴いてくれた人たちからの感想が届き始めて。一人で作っていたことが、全国や世界に広がっているんだと改めて思って。ワクワクが、ぶり返してきています。去年の冬に制作合宿をやって、そこで貯めていたアイディアがやっとカタチになって、1年経ってここに入っているので。そう思うと制作って、一個一個が本当に長いですね。

――ものを作っていくことは楽しいですか?

楽しい瞬間と、なんでこんな大変なことやんなきゃいけないんだという、自業自得のその繰り返しです。完成したらその苦労は忘れるけれど、制作が始まったら「わあ、大変だ」ってなります。でもリリースの瞬間を考えると、やっぱりやるしかないので、自分を鼓舞しながらいつも作っています。

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――「大変だ」というのは、どういったところで感じますか?

制作で私の比重が大きいのは、歌詞を書く作業なんです。歌詞って「これで完了」という判断は、自分次第じゃないですか。だから、いつも終わりどころに悩んで、自分との戦いみたいになっています。

――XinUさんの楽曲は、曲が先に完成しているのでしょうか?

そういうパターンが多くて。最近は、セルフプロデュースの曲も増えてきたんですけど、私とプロデューサーの松下さん(松下昇平(M-Swift)氏)、ギタリストの庄司陽太さんと3人でスタジオに入ったり、作曲合宿をしたりして「こういう感じどう?」とか「こういうビートどう?」とか話し合っています。サウンドから作って、次にメロディーをみんなで考えて、ある程度メロディーできたら、どんな歌詞にしようかなと考えているのが、ほとんどですね、今回のアルバムも。

――サウンドやメロディーを聴いて、テーマを決めて歌詞に落とし込んでいくのでしょうか?

そうですね。そういうパターンと、あとは例えば「今回のこの曲は、ライブでみんなと歌えるようにしたい」を先に決めて、そういう曲が出来たら書くのもあります。
例えば「バタフライ」は、joan(ジョーン)ってアメリカのアーティストと一緒に作ったんですけど、英語の歌詞がすでに入っていて、もう英語の音がすごく曲にハマっていて、カッコ良いんですよ。だから日本語の歌詞もそれと同等か、それを超えるような言葉のハマり方をしなきゃいけない縛りの中で作りました。

――XinUさんは、セルフプロデュースもされています。その場合は、曲も歌詞もある程度を固めてから、制作の現場に入るのでしょうか?

曲に関しては、20曲ぐらいアイディアを出して、そこから何曲かが採用されて、作品になっていくことが増えています。デビュー時に比べて今は、自分で曲を書いて、デモの中から最終的に作品になっていく曲の割合が、増えてきたように思います。結果的に、セルフプロデュース曲になるという感じですね。
作品になった場合、ドラムの最終的なサウンドの調整などは、プロデューサーにお任せしますが、自分でデモをつくっている段階では、どんなイメージにするかは、サンプリングされている音から選んで決めています。
歌詞は、最初のデモの段階で自然に出てきた言葉が、そのまま採用になることもあるし、イチから書くこともあります。

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――様々な手法で制作されているんですね。作詞のことを教えてください。先ほどの「バタフライ」もそうでしたが、洗練された音楽の上に、響きが綺麗な日本語を乗せるのは、大変な苦労があるかと思います。歌詞を読むと、たくさん本を読まれる方ではないかな?と感じていましたが、いかがでしょうか?

本を読むのが好きです。今は忙しくて、全然と言っていいほど読んでないですけど。自由な時間がすごくある時期は、ここぞとばかりに読んでいますね。すごく好きな表現とか、「うわっ!なんでこの10文字で、こんなにも心に刺さるんだ!」と思ったものは、自分のX(Twitter)に言葉を保存する用の鍵付きアカウントがあって、そこに、どんどんどんどん投げていて、後で読み返して「うわ。すごいな」と思っていますし、詩集も読みます。いろんな人から「面白いよ」って教えてもらったり、好きな作家の作品なら一気に5冊くらい買ったりもします。

――差し支えなければ、お気に入りの作家を教えてください。

彩瀬まるさんとか。あと恋愛小説もよく読むんですけど、今年は江國香織さんを良く読みました。表現がすごいなと唸ってしまうから、読むのが止まってしまうんですが。それから、『死にたいけどトッポッキは食べたい』って、韓国のペク・セヒさんにもハマりました。この本は「こうしろ」という自己啓発じゃなくて、「私はこういう人間。こういう悩みを抱えて生きているよ。」と書いてあって。もっと気楽に生きたい人へ向けて書かれているんです。
私の歌も「こうなので、こうしましょう。」とは、あまり言えなくて。「こうです、こうです。今はこうです。先は分かりません。」というのが多くて。この本は、「こうしてください」じゃなく、「こういう人間がいます。」と赤裸々に言ってくれていたので、読んでみて「私も、そういうことを言って良いかもな。」と思わせてくれて、励まされました。

――新作『A.O.R – Adult Oriented Romance』の1曲目「ロマンス」は、声の重なりや温もりを感じられます。学生時代は、アカペラのサークルに所属されていましたが、こだわりはありますか?

すごくあると思います。大学生の時は毎日、授業が終わって夜中2時まで、みんなで集まっていました。グループを何個も組んでいたんですよ。このバンドではコーラス、このバンドではリードボーカル、このバンドは女子だけとか。いっぱいやっていたので、2時間ずつ練習すると夜中になってしまって。ハーモニーの付け方は、知らないうちに学んでいたと思います。ピッチを全員が合わせられると、3人のコーラスが5人とか6人とか倍の厚みになって。そういうところに毎回、鳥肌が立っていました。だから、自分が作り始めたアルバムも、たくさんコーラスが入っていますし、今回はやっとアカペラに挑戦できて、すごく嬉しかったです。

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――渋谷WWW で、2024年7月に開催されたライブでも、アカペラの演出シーンがあったと記憶しています。

「罠」という曲の演出でした。大きなビジョンの映像の中で、私が数人出てきてハーモニーを重ねているものですね。数人の自分をバックにリードボーカルを歌いました。このバージョンは音源にはなってないですけど、やっぱりアカペラっていうルーツを、ライブでもやりたい。それに、ライブでしか見られない映像ができたら良いなと思ってやったんです。その後、台湾にもその映像を持って行きました。
高校生の時にテレビでアカペラ番組が流行っていて、歌なんか歌ったことなかったんですけど、絶対にやりたくて。大学選びの重要事項が、良いアカペラサークルがあるかどうかで、キャンパスを見に行きました。

――アカペラから、今の音楽に進まれた理由は何ですか?

大学生の時に、学校の近くにあるジャズのお店でアルバイトをしたのが、きっかけで。毎週1回、東京、世界中からミュージシャンがライブをしに来て、その日に絶対にバイトを入れてくれたので、毎週ライブを見たり音楽を聴いたりして、幅が広がっていきました
さらに広がったのが、松下さんと音楽を作るようになったこと。庄司さんとか、その他のいろんなプロデューサーと出会って、全然知らなかったビートや、今回のアルバムも初めて歌うようなビートが入っていて。なので、どこかでガラッと変わったというよりかは、いろんなものに触れてきて、自分がやりたいのも増えて、みんなが提示してくれるものをやってみようと思ったから、広がった感じです。
こういう歌手になりたいとか、こういう歌い方がしたいとかが、あんまりないんです。自分が好きになる歌手は音楽のジャンルに関係なく、声が好きで聴き始めるパターンが多いです。「こういうのをやってみよう。」って言われて、やったことないけど、やってみる。そうしたら、こんなにも楽しいという。そういう積み重ねが、1st EPとかは、特にあったと思います。

――柔軟に対応をしていくことが、年代や国を問わず聴かれていることにも繋がりそうですね。

YouTubeのコメントとかでも、上の世代の方から「すごく懐かしい気持ちと、逆に新しい気持ちで聴いていて、ザワザワして感動しています。」みたいなコメントを頂くことがあります。リスナーも、フロム・ブラジルですとか、フロム・フランスですとかもあるし。SNSの効果も大きくて、それを実感したのは台湾でした。最初は、台湾でミュージックビデオを撮影したのがきっかけで。台北の中でシンメトリーな風景を探して撮影していったのですが、それが公開されたら、台湾の方が、まず興味を持ってくれて。なぜか日本人が台湾のいろんなところで歌っていると。それで台湾の方がInstagramをたくさんフォローして下さって。今Instagramフォロワーが約10万人で、そのうち2万人ぐらいが台湾です。

――2024年7月に初めて開催した、台北でのライブはいかがでしたか?

熱気がすごくて。始まる前から行列がすごいことになっていて。日本のリスナーの方よりも、同世代とか、その下の世代の方が来られていた印象でした。ステージに出た瞬間から「キャー!」ってなって、「こんなに台湾にファンがいたんだ!」って思ったのを鮮明に覚えています。ノリノリで踊っている人もいたし、日本語なのに一緒に口ずさんでいる人もたくさんいて。
2025年1月5日の台北でのライブは、バンドセットでやります。バンドは、最初のライブから3年間やっているメンバーなので、そのみんなと台湾に遂に行けるっていう、本当に記念すべきにものなると思います。

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――次回のライブも素敵なものになりそうですね。前回の台湾ライブでのファンとの繋がりが、収録曲「また会いに行くから」と「つながっていて」として曲になっていると伺いました。まず、「また会いに行くから」のお話を伺えれば。こちらの曲はライブでお客さんと一緒に合唱や手拍子ができそうな楽しい雰囲気に包まれています。どうやって制作していかれたのでしょうか?

「また会いに行くから」はハッピーな曲にしたくて。冬にリリースするので、今までの曲より温かみのあるサウンドを目指して、曲作りをスタートしました。温かみのあるサウンド、コード進行を考えるにあたって、バンドメンバーでピアノを担当してくれる武藤君(武藤勇樹氏)にも、初めて作曲から入ってもらいました。「とにかく可愛い曲にしたい」と伝えて、一緒につくっていきました。この曲も、完全にメロディができてから、歌詞を考えたものです。

――「つながっていて」は、恋愛の曲かな?と思っていたので、台湾ライブの思い出がモチーフということに驚きました。この曲は、夜のイメージがあるようなドラムと管楽器、浮遊感のあるギターが印象的です。こちらの制作のお話も聞かせてください。

「つながっていて」は、ライブでみんなとのつながりを感じたことから、制作をスタートしました。前作の『XinU EP#03』のアジアツアーで、初めて聴いてくれるみんなとの信頼関係を、自分の中で感じられるようになったなって実感して、それを感じられたことがすごく嬉しくて。歌詞の中にもあるんですけど、「“信じること”を ただ信じてみたいもっと」っていうメッセージを一番言いたいこととして書きました。
おっしゃるように、ライブのことだけじゃなくて、日々の生活だったり、SNSのみんなのコメントだったり、プライベートな友だちとか、大切な人たちとの思いやりだったり、ささいなメッセージのやり取りだったり。会えなくても確かな繋がりに救われることがある1年だったなぁと思っていて。そんな中で、聴いてくれるみんなが 「私の歌のこういう部分に励まされた」と正直に言ってくれたおかげで、私も自分の臆病なところとか、不安に思っていることとか、自分のウィークポイントを正直に書いてみようと思えて。それを書くことで、また誰かに寄り添えたら良いなと思って。自分と向き合いながら書いてみたのがこの曲です。

サウンドは、ギターサンプルの絶妙な浮遊感が、直感ですごく良いなと思ったので、ギターの音色を軸に作りました。ドラムも三連のリズムと16分のリズムが複雑に絡み合っているんですけど、2種類のサンプルを切って貼ってイメージを作って。それを本番はバンドメンバーに、もっとかっこ良くしてもらって、ドラムは生で演奏してもらいました。

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――制作のきっかけは台湾ですが、サウンドも、込められた想いや情景も、それぞれ異なっていて魅力的です。

「また会いに行くから」は、本当にダイレクトにその時の気持ちと記憶が反映しています。台北に行った時の記憶が鮮明で、また台北に行けたらいいな、また会いたい気持ちをストレートに書いていて、「つながっていて」はライブでの“つながり”をきっかけに、もっと日常とか自分の人生に思いを馳せて内側へ向かっていくような曲になっています。
なので、同じテーマで2曲書きたいというよりは、今の私にとっての大きなテーマに「誰かと繋がることで救われる。」というのがあって、そのことがこの2曲にもそうだし、このアルバムの至るところに散りばめられていると、完成してみて改めて感じています。

――2024年に経験したことや感じたことが、このアルバムの中に沢山詰まっていますね。来年も新たな出会いがXinUさんの作品を、より美しく彩るだろうなと思います!最後に、これからの夢や野望を聞かせてください。

夢というか、大きな野望って言えるものはいつもないんです。でも、今までもjoanもライブ見に行って、話してから楽曲を一緒に作れるようになったり、台湾も実際に行って繋がりができたりと、勇気を出した一歩を振り返ってみると「あ、こんなことが実現したな」という繰り返しです。「野望とかを持たなくても、面白い景色見られるんじゃないの?」って期待をしながら、一歩一歩進んで何かに挑戦しているんです。好奇心はしっかりと思って、自分の興味のあることに向けて行動をしていこうって、やっぱり心がけています。
私の中で、絶対的なのはやっぱりライブ。みんなで一つになって、ちょっと現実を忘れても良いですし。いろんなところでライブをして、国境を関係なく、共有できるという奇跡体験を積んでいきたいです。

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取材・文=石井由紀子

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