ReoNa 撮影=大塚正明
待望のシリーズ第二弾、TVアニメ『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンラインⅡ』のスタートと共に、6年ぶりに神崎エルザの歌声が帰ってきた。10月19日、東京ガーデンシアターで開催された神崎エルザとReoNaの「対バン」ライブ“AVATAR 2024”で情報解禁された、神崎エルザ starring ReoNa名義の6年ぶりの新作EP『ELZA2』。黒星紅白による美麗ジャケット、毛蟹(LIVE LAB.)、rui、ハヤシケイ(LIVE LAB.)等お馴染みのクリエイターが再集結し、新しいストーリーの始まりを告げる大注目の作品だ。
SPICEでは、6年ぶりに再起動した神崎エルザの世界に再び挑んだReoNaへインタビューを敢行。ライブの手ごたえ、EP制作秘話、ReoNa楽曲との相違、切っても切れないReoNaとエルザの絆について等々、気になる話題をたっぷり語ってもらった。
――東京ガーデンシアターでの“AVATAR 2024”、凄い盛り上がりでした。どんな思い出がありますか。
神崎エルザとReoNaの対バンをいかにして実現させるか?という、手探りな部分もいっぱいあった中で、照明から音響から舞台装置からに至るまで各セクションがすごい全力だったなと思います。日笠陽子さんにも出演していただいて、実は現地で直接というのは今回初めてで、だからこそその場にしかできないものがあったのかなと思います。最後に日笠さんがステージに出てこられて、「今日は二人で一つだったね」とおっしゃっていただけたのがすごい記憶に残っています。
――神崎エルザ×ReoNaのガチの対バン勝負という設定でしたけど、やってみてどうでしたか。
見てらっしゃる方が「ReoNaがエルザとガチに戦いに来た」と思ってもらえたらいいなと思っていたんですけど、神崎エルザ楽曲のライブが久々だったこともあって、セットリストも濃かったですし、その日初めてお届けする新曲「Game of Love」と当時未発表だった「Girls Don’t Cry」もあって、かなり濃厚なライブだったので、そこは本当にガチで戦いに行くつもりでした。ReoNaには5曲しか与えられてないけど、匹敵するぐらいのことができたらいいなとは思っていました。
――一つのライブの中でReoNaからエルザへ、そしてまたReoNaへ。気持ちも歌い方も、切り替えはなかなか難しいんじゃないかな?と思ったんですが。
明確に切り替えようというのは正直なくて、エルザの格好になって、ストリングスを聴きながらステージに上がって行くところで、自然と切り替わっていったような感覚はありました。「ここから先は私の体と声帯を使ってエルザがライブするぞ」みたいな感じでした。
――心理的はどうですか。
責任感はもちろんすごく感じていて、神崎エルザは『ガンゲイル・オンライン』の世界の中で超人気アーティストなので、ライブで歌うことに関しても、ReoNaが出来ることの限界がエルザが出来ることの限界になっちゃうのは、すごく悔しいことだなと思うので。ライブでお届けするのが久々なお歌もある中で、ReoNaが好きでライブに来てくださった方もいるけど、『ガンゲイル・オンライン』が好きで神崎エルザのライブを見に来てる人もいると思ったので、責任感はすごく感じていました。
――その責任を果たせたと思いますか。
最大限、できたんじゃないかなと思います。
――久々に歌ってみて、ReoNa楽曲とエルザ楽曲と、違いを感じたところはありますか。
明確に違いはあると私は思っています。歌う時にどんな気持ちを重ねるかとか、どの視点に自分を持っていくか?がそもそも違いますし、純粋培養の私の思いだけじゃなく、エルザという人の思いのフィルターも通さなきゃいけないので。受け取ってくださる方も分けて聴いてくれている方が多いんじゃないかな?と思いますし、曲を作っているクリエイターさんも、ReoNaのお歌を書いてくださる時と、エルザのお歌を作っている時と、意識の差はあるんじゃないか?と思っていて。そういう思いが少しずつ重なって、神崎エルザたらしめているんじゃないかな?と思います。
――“AVATAR”シリーズは2018年、19年に続いて3回目でしたけど、ぜひまた見たいと思ってます。
できたらいいですね。今回は、もう二度とこういう機会が訪れないかもしれないから、できることをめいっぱいやろうという意識がみんなにあったと思うんですけど、その意識とは別に、またこういう機会を与えてもらえることがあれば、またその時の全力ができたらいいなと思います。
――楽しみです。そして、その“AVATAR 2024”で初披露した新曲も含む、神崎エルザ starring ReoNaの、およそ6年ぶりのミニアルバム『ELZA2』がついに聴けました。ライブの時点では、すでに完成していたんですよね。
あの時点で実はまだ最後のピースはできていなくて。楽曲によっては、あの日のライブでもらったイメージや印象を心の中に持ちながら歌った楽曲もあったりします。2024年は『ガンゲイル・オンライン』という作品と並走していた時期がすごく長くて、神崎エルザ楽曲を制作しながらReoNaとしてのシングルも作っていたので、それぞれが掛け算になって出来ていった感じがします。
――ずばり、どんな作品になったと思いますか。『ELZA2』は、ReoNaにとって。
ファーストの『ELZA』の時は人生で初めてのレコーディングで、本当に何もわかっていなかったので。当時は「アニメに携わるお歌を歌いたい」というのがとてつもなく大きい夢だったので、どこか夢見心地の部分もあったりとか、明日にでも「やっぱりReoNaじゃない人が歌うことになりました」って、ドッキリ大成功!とかされてもおかしくないんじゃないか?って、(TVアニメで楽曲が)流れる瞬間まで思っていたので。本当に人生の節目になったミニアルバムで、『ガンゲイル・オンライン』という作品にはとてつもない恩を感じていますし、神崎エルザという存在に誰よりも再会したかった人間の一人として、出来上がった瞬間の「エルザにまた会えた」みたいな感じは、この6年間をReoNaとして歩んだ期間があったからこそ、ファーストの時とは違った感覚で今回の完成を迎えられたんじゃないかな?という気持ちはあります。
――ここからは詳しく聞いていきます。最初に作り始めたのはどの曲ですか。
「Game of Love」です。元々のパーツとして「私たちの讃歌(うた)」というお歌がありまして、10分40秒あるお歌なんですけど、その中に神崎エルザが歌唱するパートとして埋め込んでいて。「私たちの讃歌」を「Game of Love」に先駆けて聴いてくださった方は、「あ、あの時の」と思ってもらえるお歌になっています。ゲームが好きで、ギターをかき鳴らしながら自分の思いの丈をぶつけるという、実にエルザらしいお歌なので、最初に手をつける1曲目としてイメージしやすいというか、「エルザだったらこういうふうに歌うんじゃないかな?」というものをすごく描きやすいお歌だったな思います。やっぱりrui(fade)さんが作曲してハヤシケイさんが作詞してくれるという布陣が、エルザの原風景を作ってくれたなと思います。その上で、ReoNaが歌っている主題歌の「GG」と重なるような文言が入ってたりとか、そういうところで『ガンゲイル・オンライン』という軸と一緒に楽しんでもらえるかなと思います。
――そういう仕掛けに加えて、音楽用語やギター用語が散りばめられていて。好きな人にはたまらない世界観ですよね。
本当にケイさんの憎いところがいっぱい入っていて、しょっぱなから「ERNIE BALL」が出て来て、「ギター好きだねー」みたいな(笑)。ギターが好きな子とか、歌詞を深読みして楽しみたい人に向けていっぱい要素が詰め込んであるので、楽しんでほしいです。
――せっかくなので、7曲全曲についてコメントをください。EPのオープニングを飾るのが「Oh UnHappy Day」。
このお歌は、『ガンゲイル・オンライン』第12話の挿入歌になりました。
――UnHappyというワードを見た瞬間に、あっと思いましたけど、ReoNaのキャッチコピーと言ってもいい言葉をここで使うという、新鮮な驚きがありました。
本当に、ReoNaとして大切にしてきた言葉をエルザに託したんですけど、嫌なことがあった日に「ついてないぜ」と言って歌い抜ける感じが、すごくエルザらしいなと思っていて。「Oh UnHappy Day」というフレーズがメロディにハマったのを聴いた時には、すごく自然に感じました。
――ReoNaとエルザが手を取り合っているようなイメージさえ浮かびました。
このお歌は、ゴスペルパートがあって、UnHappyというフレーズをきいた捻くれもののエルザが、『天使にラブソングを』のあの曲を思い描いて、ちょっと遊び心を入れてみたのかな?と。今回の制作で、『ELZA』を何回も聴き返したんですけど、私の中の時計は6年間進んでいて、でもエルザとしては「スクワッド・ジャム2」から「3」への数か月しか経っていないので、「あえて進化させない」エルザ要素と「それでも進化している」ReoNa要素というのが、大きいテーマだったんじゃないかなと思います。
――ああー。なるほど。
『ELZA』は、私が想像していなかったぐらいたくさんの方に届いたアルバムだったので、みなさんが聴いた時に懐かしんでもらえたり、「帰ってきた」と思ってもらえるものにしたかったし、じゃあ神崎エルザとして紡がれるReoNaの歌のいいところってなんだろう?とか、あの時の声と今と何が違うだろう?とか、そういうことを考える中で、「ついてないぜ」と歌う語尾の感じだったりとか、すごくこだわって歌いました。何て言うのか、すごく大らかに、ついてないことを歌い上げる感じ?「嫌なことを笑顔で話す」みたいな、そういうものが芯にあるお歌だと思います。
――エルザの曲には、そういう強さが常にある気がします。次の「Girls Don’t Cry」もそうですよね。
「Girls Don’t Cry」は、女の子大好きなエルザが女の子たちに向かって、「メソメソ泣いてるばっかりじゃないんだぜ」って、「私たちってそういう生き方じゃん」と言ってるようなお歌ですね。ReoNaとしてはこの歌詞はたぶん生まれてなかった。そういう意味ではやっぱり神崎エルザがいたからこそ紡がれたお歌です。もちろん言わずもがな、全曲そうなんですけど、矢印を向ける先が新しかったなと思います。女の子に向けての歌は今までなかったので。
――『ガンゲイル・オンライン』は強い女性がいっぱい出て来るので。それも意識したのかなと。
『ガンゲイル・オンライン』には、メソメソしてる女の子が全然いない。ゲームという場所を通して、自分のアバターを通して戦うことを覚えたり、戦略を練ったり、その中でずっと死に場所を探してたはずの神崎エルザが、生きる理由とも言うべきライバルを見つけていって。第1期の時のエルザは、「生きる、死ぬ」みたいなところがすごくヘビーにあったなと思っていて、一つのボタンの掛け違いでもしかしたら全部やめてしまっていたかもしれないエルザが、ゲームの中に身を投じて、戦いを通して「私を殺すのはこの人しかいない」ぐらいに思うレンと出会って。だから、進化しない部分はあれども、エルザが一歩足を踏み出したところにはちゃんと寄り添えているんじゃないかな?と思います。
――間違いないですね。
たぶん「スクワッド・ジャム1」や「2」の頃のエルザからは、「Girls Don’t Cry」のようなお歌は生まれていなかったと思います。「Oh UnHappy Day」もそうですけど、エルザの今にちゃんと寄り添えているんじゃないかな?と思います。
――大人になったんでしょうね。確実に。
だからこそ、節々に出てくる危うさだったり、尖ったところだったりが、より鈍くきらめいている感じはするなと、アニメで描かれているエルザを見ていても思いますね。
――そして3曲目は「Toxic」。有毒、ですか。
今回のアニメの第8話のシーンがあったことと、「ボレロ」というパーツがハマって、この「Toxic」というお歌が出来上がっていきました。
――刺激的で、まさに「毒」というのがピッタリの楽曲ですね。
実はもともと(作詞作曲編曲の)毛蟹さんが『ガンゲイル・オンライン』の原作を読んで、銃撃戦をイメージして原型ができたんですけど、毛蟹さんは映像もやられるクリエイターさんで、その画とお歌が合った時の掛け算感がすごい方だと思っていて。今までも「Till the End」というお歌でご一緒したりとか、いろんな楽曲をやってきた中で、毛蟹さんが画をイメージした時のピッタリ感がこのお歌にもあるなと思っています。そこに「Toxic」というタイトルが生まれ、ボレロが加わり、結果、まさにピトフーイが、船のスクリューに木っ端みじんにされるところから曲が始まって、エルザ的には「負けた」という悔しさのまんま、ギターを引っつかんで勢いで書き殴った。そんなお歌がこちらです。
――鬼気迫る迫力を感じます。
GGOの世界の中では、エルザは自分がピトフーイであることを明かしていないんですけど、「橙色の羽」とか、「毒がゆっくり回っていく」というワードに、元々ピトフーイは毒のある鳥の名前で、黒とオレンジの毒々しい羽の色で、歌詞を深読みしていくと、表沙汰にピトフーイという存在を伝えていないエルザが、ここで少し匂わせているんじゃないか?ということにもなるので。
――さすがです、毛蟹さん。そして、さらに毛蟹楽曲が続きます。次は「革命」。これ、ボーカル最高です。いろんな声色で様々な感情を表現していて。
ありがとうございます。これもたぶん、ReoNaとして6年間を歩んできた果てに作らせていただけたからこそ、できたことじゃないかなと思います。私は毛蟹さんのことを博士だと思ってる節があって、ものすごくいろんなことを研究される方なんですね。音作りだったり作曲だったり、いろんなことを細かく突き詰めて深読んで、解体してもう一回組み上げるみたいな、まさに研究熱心な毛蟹さんが、6年間で作り上げてきたReoNaの声の種類を考えて、「ここはこういうふうに歌ってくれるだろう」なみたいなイメージを持って作ってくださったんじゃないかな?と思っています。
――きっとそうだと思います。「できるはずだ」と。
さらに『ELZA』に入っていた「Independence」というお歌と全く同じフレーズが入っていたりとか、アウトを聴いて「おっ?」と思えるところがあったりとか。研究熱心な毛蟹さんだからこその部分が、ふんだんに詰まったお歌なんじゃないかなと思います。
――他の曲とちょっと違ってデジタルっぽいサウンドなので、ライブでも映えそうな気がします。そしてさらに世界観が深いところへ進んで、5曲目が「ハレルヤ」。いい曲ですね。
凄くいい曲なんです。ruiさん×ケイさんの組み合わせで、ケイさんがある種伸び伸びと、エルザを目がけて書いた歌詞がほぼ原形のこのままなので。私はこのお歌を受け取った時に、「本当にエルザ、帰ってきた」と思ったんです。孤独感だったり、あてどなくどこかに行きたい思いとか、そういうものをすごく文学的な言葉で描いていて。頭の中には思い描けるのに、言葉にするのは難しいような景色を、メロディに美しく合わせて聴かせてくれる神崎エルザという、そういう体験ができるお歌がまさしくこれだなと思っています。「ピルグリム」から始まって、「ALONE」とか、どこか根なし草っぽいエルザが、人生という旅路をぐるぐる巡っていろんなものに出会って、その上で紡いだ曲が「ハレルヤ」なんじゃないかなと思います。
――繋がっているんですね。全ての楽曲が。
繋がっていると思います。ちゃんとストーリーになっている、その先にある曲だと思います。
――そして「Game of Love」は、最初にお話ししたような楽曲制作の背景があって。すごく伸び伸び歌ってますけど、歌うイメージはすぐに浮かびましたか。
イメージするところはすごく明確にあったなと思います。そこにたどり着くまでの時間はちょっと必要だったんですけど、「この曲はこういう声で歌いたい」というイメージはすごく明確でした。
――“AVATAR 2024”でもいきなり盛り上がってましたね。みんな初めて聴くのに。そして7曲目が「YOU」。このあとのボーナス・トラック「ALONE-Naked-」をアンコールとすると、本編のラストチューンという立ち位置の、エモーショナルなロックバラード。
「YOU」は、EPの中で最後に位置する曲になるだろうなというイメージは最初からありました。すごく覚えているのは、楽器のレコーディングが終わった時にスタジオに行くことができて、すごくいいスピーカーで録れたばかりの演奏を聴いた時に、涙が出そうになっちゃって……まだ歌詞も固まりきっていないのに、すでに音から説得力とか胸に迫るものを感じていました。「I’ve been waiting for YOU」という言葉はもうあって、「ずっとあなたを待ってたんだよ」という言葉と、胸に迫るような音の掛け算から、この歌の全貌は決まっていったんじゃないかなと思います。
――歌詞が凄く大事な曲ですよね。
ひねくれもののエルザが、珍しくまっすぐに、誰かに自分の愛や思いを伝えるお歌になっているので。きっとエルザがライブで歌う時は、目の前にいるお客さんに向かって「君だよ」と言うんだろうなということは、「AVATAR 2024」のライブを経て、日笠さんのMCを聞いていたので、すごくイメージしやすかったです。たぶんエルザにとっては、「YOU」はレンちゃんのことなんだろうなと思います。彼女はひねくれ者ですから、本当は誰のことなのかわからないですけど。
――確かに。本当のことは言わないかもしれない。
たぶん6年前の時点では歌えなかったお歌で、「君」とか「あなた」という言葉が出てきた時に、人によっては恋人とか、家族とか、友人とか、そういうものがあると思うんですけど、私にとってはそういう相手が見つからなくて。そこで嘘にならずに、私自身の愛や思いを「あなた」という言葉にぶつけようと思った時に、「私にとっての“あなた”はお歌です」とずっと言ってきていて。私がやっと出会えたもの、命を捧げたいとすら思えるもの、ずっと大切にしていきたいと思えるものとして、お歌を私はずっと繋げてきたんですけど。そう言って歩んできた中で、そのお歌を受け取ってくれる「あなた」の存在がちょっとずつ入ってきて、「聴いてくれる人に向けて矢印を向けていいのかもしれない」というふうに思えるようになってきて。そういう意味で、今だからこそ、エルザのお歌ですけど、ReoNaとしても「あなた」「君」という言葉をすごく大切に歌えたお歌なんじゃないかな?と思います。
――「絶望の意味」と「生きる理由」というフレーズもすごくReoNaっぽいと思うので。「Oh UnHappy Day」でスタートして「YOU」で終わる曲順にもすごく意味があるなと思います。そしてもう1曲、アンコールのように収録されているのが「ALONE-Naked-」。その名の通り、アコースティックギターとストリングスのセルフカバー曲になってます。
これはボーナス・トラックに収録されているんですけど。すでに枯れた木のようになった冬の桜を見上げて、春にはあんなにいろんな人が振り向いてくれて、美しいと言ってくれるのに、花が散って葉が落ちれば誰ももう見向きもしないという姿に自分を重ねたエルザの孤独感とか、「いつか私もこうなってしまうんだろうか」という焦燥感とか。だからこそ彼女なりに開き直って、すごく朗らかに「誰も見ていないなら自由だし、誰に期待もされてないのなら何をやっても自由だ」という、力強い孤独みたいなものがふんだに詰まったお歌を、あらためてネイキッド・バージョンにすることによって、言葉の一つ一つが粒立って聴こえるアレンジになっているんじゃないかなと思います。
――まさに。
ライブの時にも、そういう聴かせ方をしたくて、BPMを落として言葉を最優先にしたテンポで歌っていたので。速さを決めずに、私が言葉を出していったものに対して、ミュージシャンの方に音を置いていただいたりしてきた中で、より言葉を聴かせる今回のネイキッド・バージョンが生まれました。
――という、7曲+1曲のミニアルバム。いろんな聴きどころが詰まっています。
ぜひあなたの日常の中で、いろんな場面でいろんな聴こえ方をしてもらえるといいなと思います。ジャケットのイラストも、『ELZA』とは変わって、どこか深海にいるような深みのあるエルザを黒星紅白先生が描いてくださいました。
――こうして、久しぶりに神崎エルザという存在と向き合ってみた今、あらためて聞きます。「ReoNaにとって神崎エルザとは?」。
実在している人以上に一緒にいるような気もしますし、これまでもこれからもReoNaの活動から全く切っても切り離せない、大切な存在だなとあらためて思います。何か腑抜けたことをしたら「何やってんの?」と言われるような気もしますし、私だけじゃなくチーム一同全員が、制作の中でエルザからの目に見えないプレッシャーを感じていたと思っていて、レコーディングがうまく進まなかったりとかすると、「またエルザが…」と言い合ったりしていて。「そんな中途半端な気持ちで、私を喉に下ろせると思うなよ」みたいな、やっぱりエルザは試練を与えてくる存在で、大変だったけどミニアルバムで7曲作れて良かったなと、今本当に思っています。
――ファンの方にはこのEPを、年末年始に聴きこんでもらって、2025年3月から始まるツアーに備えましょう。ツアータイトルは『ReoNa ONE-MAN Live Tour 2025“SQUAD JAM”』。
タイトルが“SQUAD JAM”なので、リリースイベントもありますし 年が明けてからもしばらくは『ガンゲイル・オンライン』と、神崎エルザと一緒に走ることになるかなと思います。それを別にしても、オール・スタンディングでのライブハウスでのワンマンライブはすごく久しぶりになるので、ぜひ楽しみにしていただきたいです。でもセットリストが……「なんで時間って有限なんだろう?」って思います。
――それは仕方ないですね(笑)。
すでに戦いは始まっています。チーム一同も頭をひねり、絞り出し、どういうセットリストにしたら一番楽しんでもらえるのか?の解を探している最中なので、そんなところも含めて、期待値を上げても上げても、超えて行けるようなライブを作れたらいいなと思っています。
インタビュー・文=宮本英夫 撮影=大塚正明
広告・取材掲載