BUMP OF CHICKEN 撮影=Yoshiharu Ota
『BUMP OF CHICKEN TOUR 2024 Sphery Rendezvous』2024.12.08(sun)東京ドーム
9月7,8日、厳しい残暑の埼玉ベルーナドームで幕を開け、12月7,8日、冷え込む初冬の東京ドームでファイナルを迎える。5年ぶりのアルバム『Iris』収録曲のお披露目と、ライブに明け暮れた2024年を締めくくる『BUMP OF CHICKEN TOUR 2024 Sphery Rendezvous』。2日間で楽曲を入れ替えながら2時間半を全力で駆け抜けた、8日のツアーファイナル公演を振り返ろう。
撮影=Yosuke Torii
バンドを乗せた円型ステージが白く輝き、観客全員に配られたLEDリストバンドが一斉に発光する。光と闇の壮大な景色の中、ドラマチックなオープニングSEで幕を開けたライブは、「Sleep Walking Orchestra」で一気に加速。七色に輝くリストバンドがドームを美しく染め上げる。左右の巨大ビジョンにメンバーの顔が映る。藤原基央が力強い歌声を響かせる。直井由文がシンセベースを弾いて低音を強化する。全員気合が入ってる。
BUMP OF CHICKEN 撮影=Yoshiharu Ota
円型ステージを取り囲む可変式ライトが上昇し、巨大な天使の輪のようにステージを見守ってる。曲は「アンサー」だ。曲中で藤原基央が「届いてるか!」と叫ぶ。増川弘明が正確で細やかなアルペジオを聴かせる。クールな表情の升秀夫がビートをキープする。ショーアップよりも演奏に没頭するタイプ、4人の性格がそのまま音に乗ってる。藤原がアコースティックギターをかき鳴らす、カントリータッチのリズムが楽しい「なないろ」を盛り上げるドームいっぱいの手振りが壮観だ。ファンもみんな気持ちが入ってる。
藤原基央(Vo/Gt) 撮影=Yoshiharu Ota
直井由文(Ba) 撮影=Yoshiharu Ota
「東京のみんな、ただいま! BUMP OF CHICKENです」
最後だから、マジで最高の思い出にしようぜ。直井の元気な挨拶に続く「pinkie」では増川が広いステージの一番端へ、直井がもう一方の端へ飛び出して大歓声を浴びてる。「記念撮影」では白いヒナギクの群れがビジョンの中で揺れ、藤原が耳に手を当ててファンのコーラスを聴いてる。「聴こえるよ。どうもありがとう」。青いレーザービームが飛び交う幻想的な景色の中で聴く「邂逅」は、藤原の歌声が特に素晴らしい。透明な悲しみに溢れた歌詞の風景が、語るように歌う節回しで生き生きと動き出す。
増川弘明(Gt) 撮影=Takeshi Yao
升秀夫(Dr) 撮影=Yoshiharu Ota
「聴こえるぜ、嬉しいぜ、ありがとうよ。会いに来たぜ、BUMP OF CHICKEN」
。アコースティックギターをぶら下げて、手を伸ばし、マイクをつかんで「strawberry」を歌いながらステージの端から端まで歩いてく。最小限のシンプルなビートと歌、ビジョンには歌詞を読ませるタイポグラフィ。さらに赤とオレンジに染まった壮大な夜明けのイメージをビジョンに映し出す「太陽」へ、藤原の歌声の魅力をダイレクトに伝えるスローナンバーが続く。音と歌と言葉だけの研ぎ澄まされた世界が、ここにいる一人一人と交信している。
開演からちょうど1時間。ここからは花道を渡り、グラウンド中央に位置するセンターステージでの演奏だ。曲は「メーデー」。溢れ出す光と星のイメージの中、躍動的なリズムと増川の弾くギターが華やかにきらめく。間奏でドラムソロを決めた升が誇らしげにスティックを掲げる。寡黙なドラム職人にスポットが当たる嬉しい瞬間。「レム」はしっとりとした優しい曲調に、激しくラウドなアレンジを加えた、ドラマチックな二面性がライブで映える1曲に。エモーション満点だ。
BUMP OF CHICKEN 撮影=Yoshiharu Ota
「マジでこいつがいないと始まらないんです」
全員に同じ前置きをつけて、直井がメンバー一人一人を紹介する。升が満面の笑顔で応える。増川が「最高の1年でした」と胸を張る。藤原がちょいちょいツッコミを入れる。ドームのステージの上でも、たぶん4人は普段と同じモードだ。「SOUVENIR」のリズムが明るく跳ねる。コーラスとクラップはもちろんファン全員参加。みんなよくアルバムを聴きこんでる。
「出会えたことを確かめる、僕と君の歌だ。準備はいいか?」
センターステージからメインステージへ戻った藤原が叫ぶ。曲は「アカシア」。海を駆け地を駆ける、スピード感たっぷりの映像がかっこいい。藤原が切々と歌うミドルバラード「Gravity」の、最後のコーラスでマイクを客席に向ける。全員が声を合わせて歌う、美しいアカペラのコーラスがドームいっぱいに鳴り響く。「ありがとう」と藤原がひとこと。温かい一体感がドームを包み込む。
BUMP OF CHICKEN 撮影=Takeshi Yao
クライマックスが近づいてきた。レーザーが飛び交い、増川のアルペジオの澄んだ音色と藤原のボーカルが輝く「木漏れ日と一緒に」。イントロでキャノン砲をぶっ放し、銀色のテープが宙を舞う「ray」。直井は花道へ、増川はステージの端へ。直井はグラウンドにまで降りて客席のすぐ隣でベースを弾いてる。「君の声を聴かせてくれ!」と藤原が叫ぶ。歓声と歌声がそれに応える。残すはあと1曲。
「生きてて良かったと心の底から思いました。君のおかげです。本当にどうもありがとう」
感情が破れてはみ出しそうな藤原の言葉に続き、ラスト曲に選ばれたのは「窓の中から」だった。穏やかな、しかし力強いキックの四つ打ちとキャッチーなコーラスに彩られた温かい1曲。藤原が一人でセンターステージへ歩み出る。マイクを握った右手を高々と掲げる。『Iris』にはコーラスが映える曲、一緒に歌える曲が多い。5年振りの東京ドーム公演に響き渡る一人一人の歌声が、生きてて良かったという共感で繋がってゆく。
藤原基央(Vo/Gt) / 増川弘明(Gt) 撮影=Yoshiharu Ota
「まだやっていいの? まだ聴いてってくれるの?」
アンコールに応えてステージに戻ってきた4人。曲は「You were here」。そして「ガラスのブルース」。ドラムの前にメンバーが集まって「よっしゃ!」と気合を入れる、この曲が初めて世に出た25年もそんなふうにライブをやっていたんだろう。あの頃と違うのは、ドームいっぱいのファンが一緒に歌ってくれることだ。ここで終わるとみせかけてさらにもう1曲、「花の名」を演奏してちょうど2時間半、19曲。直井がピックを飛ばす。増川がタオルを客席に投げ込む。升が笑顔で手を振る。長いツアーを終えた満足感が、ビジョンに大写しになるメンバーの顔からうかがえる。
BUMP OF CHICKEN 撮影=Yoshiharu Ota
「BUMP OF CHICKENの音楽は、一音残らず全部幸せです。この世界に君がいたからです。ありがとう。またね」
Sphery Rendezvous。天体の、球状の、待ち合わせ。音楽を真ん中にした待ち合わせがライブだと、藤原はMCで言ってた。星が巡るように、生きていればいつかまた会える。BUMP OF CHICKENの2024年は終わり、もうすぐ2025年が幕を開ける。大丈夫、待ち合わせの約束はもうできてる。
取材・文=宮本英夫
撮影=Yosuke Torii
BUMP OF CHICKEN 撮影=Takeshi Yao
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