Penthouse
Penthouse ONE MAN LIVE 2024 “Laundry”
2024.12.19 パシフィコ横浜 国立大ホール
Raise Your Hands Up! さぁ手を挙げよう、パシフィコ横浜にPenthouseがやって来る。11月に出たアルバム『Laundry』は絶好調、4300枚のチケットは速攻ソールドアウト。飛躍の1年を締めくくる、バンド史上最大規模のワンマンライブの開演だ。
「こんばんは、Penthouseです。パシフィコ横浜へようこそ!」(浪岡真太郎/Vo,Gt)
広いステージにずらりと並ぶ、6人のメンバーとパーカッション、コーラス2人、ホーンズ3人、ゴスペルクワイヤ5人の大所帯。華やかなショーの始まりを告げる「Welcome to the Penthouse」から「Live in This Way」へ、分厚くもしなやかなファンクミュージックにオーディエンスの盛大なクラップが調和する。「今夜は最高の夜にしようぜ!」と浪岡真太郎が叫ぶ。「まだまだ盛り上がれるんじゃないの?」と大島真帆(Vo)が煽る。冬でも「夏に願いを」、突っ走るエイトビートに乗って大島がタオルを振り回し、Cateen(Pf)が強烈なシンセソロをぶちかます。照明も音楽もとにかく明るくエネルギッシュ、ハッピーオーラがハンパない。
「外は寒いけどここは熱気が凄いですね!」(大島)
「今見せられるPenthouseの、最高のものを見せられるように頑張ります」(浪岡)
『Laundry』からの「フライデーズハイ」は、ソウル/ファンクのグルーヴに、ジャズ/フュージョンの薫り高いCateenのソロを添えて。よく動くベースとワウギターの音色がお洒落な「Kitchen」から、大島のパワフルボイスがリードする「Jukebox Driver」へ。大原拓真(Ba)がニコニコ笑顔でソファに座ってベースを弾いている。矢野慎太郎(Gt)がここぞとばかりに前に出てソロを決める。音のバランスが素晴らしく、全員の演奏が対等だ。個の力と戦術が合致したサッカーのような、チームPenthouseの実力はライブではっきりわかる。
中盤のハイライトは、「花束のような人生を君に」で決まりだ。Cateenの抒情溢れるソロで始まり、壮大なロックバラードへ至る展開力が凄い。浪岡のざらついた深みあるロックボイス、大島の気迫みなぎる歌声に圧倒される。ステージ上とホールの壁と頭上と、無数のミラーボールが四方に光を放つ壮麗なシーンに息を呑む。こんな演出は初めて見た。凄い光景だ。
もう一つのハイライトは、みんな大好き「…恋に落ちたら」。「もっと声聞かせて!」と、“インストラクター大島”の指導でコーラスと手振りを練習し、4300人の合唱が広い空間いっぱいに鳴り響く。こういう曲では、リズムマスター平井辰典(Dr)の堅実なプレイが特に頼もしい。カッティングマスター矢野のストイックなプレイがかっこいい。ステージ上で目移り、耳移りして仕方ない。
「ここは休憩ポイントなので(笑)。リラックスして聴いていただければと思います」(Cateen)
ここでちょっと一休み。ステージに残ったCateenと大島がクリスマスについて話している。Cateen少年がサンタさんに現金をお願いして次の年からプレゼントが来なくなったことや、18歳の大島がクリスマスをパリで過ごしてただ怖かったことをしゃべっている。オチなしゆるトークのあと、クリスマススタンダード「Have Yourself A Merry Little Christmas」を大人びた情感たっぷりに歌い上げる、このギャップが歌姫・大島の魅力。
入れ替わりに登場した浪岡が歌うのは「Lady Madonna」だ。Cateenがビートルズの原曲にPenthouseの楽曲のフレーズを何曲か忍び込ませた、この日だけの特別バージョン。ロック好きの浪岡は伸び伸び歌い、Cateenはホンキートンクなピアノを軽快に弾きまくる。華のある3人の魅力がたっぷり楽しめる、素敵な“休憩時間”だ。
「横浜ベイスターズ、26年ぶりの優勝おめでとうございます。小学校1年生から横浜ファンの僕にとって、今日は凱旋公演と言っても過言ではありません」(平井)
「中学校、高校と横浜の学校に通っていて、体育祭のあとに臨港パークで騎馬戦をやったりしたので。僕の凱旋公演と言っても過言ではありません(笑)」(大原)
「この会場には思い入れがあって。夏にアイドルのライブを観に来た時に、1階B37列68番に座ってました。そこ、よく見えるでしょ?」(矢野)
「僕は千葉の人間なのであんまり思い出はないです(笑)。『Laundry』のライブなので、スッキリさせようと思って今朝髪を切ってきました。ライブ当日切ったのは人生初です」(Cateen)
ボーカル以外の4人も達者なトークでしっかり盛り上げ、サポートメンバー紹介を終えるとライブはそろそろ後半だ。「Taxi to the Moon」はアニメMVを、「流星群」は星空をビジョンに映しながら明るく華やかに。「Taxi to the Moon」の、矢野と浪岡が腕を競うギターソロ合戦が実に楽しい。今日イチハードでダークなグルーヴでぶっ飛ばす「Stargazer」、再び壮麗なミラーボールの演出に目を奪われる「一難」と、バンドも照明も音響も出し惜しみ無しの全力プレイ。もちろんオーディエンスも踊りっぱなしだ。気配りマスター大原が、あちこち歩き回ってサポートメンバーにも絶えず声をかけているのが見える。こういうタイプの人は絶対バンドに欲しい。それぞれがそれぞれの役割に全力で挑んでいる。
「残り2曲です。みんなのおかげでここまでいい感じの仕上がりだけど、もっともっと行けますよね?」(浪岡)
洗濯物みたいな“いい感じの仕上がり”の、さらに上を目指すふんわり仕上げ。大島が懇切丁寧にコーラス指導した「我愛你」は、オーディエンスの元気いっぱいの歌を添えて。そしてラスト曲「Raise Your Hands Up」は、ゴスペルクワイヤにサポートメンバーたちの力いっぱいの歌も加えて。ステージの上と客席が、歌の力で一つになる。最後に残るのはやはり歌。それぞれが優れた技巧を思い切り見せつつ、歌のために一致団結してハッピーな時間を作り出す。チームPenthouseのライブ戦術は明確だ。
そしてアンコール。物販マスター平井が軽妙なセールストークでグッズを紹介したあと、サプライズ発表された2025年のツアー決定の報告に大きな拍手と歓声が湧いた。『Penthouse ONE MAN LIVE TOUR 2025 “Midnight Diner”』は台北公演を含む全6本、東京公演は過去最大キャパを更新する東京国際フォーラム ホールAだ。「ツアーも新曲も通過点。もっといい景色を見たいですよね?」と浪岡が呼びかける。その、本日ライブ初披露の新曲「ナンセンス」は、ラウドな歪みギターをフィーチャーした攻撃力高めのロックチューン。二人のボーカルもシニカルでシリアスな魅力たっぷりに迫り来る、新境地の新曲。リリースが楽しみだ。
さらにもう1曲、輝くミラーボールの絶景の下で「Fireplace」を演奏して、2時間に及ぶライブは幕を下ろした。笑顔で記念写真に収まり、オーディエンスに手を振り、「Taxi to the Moon」のBGMに乗って踊りながらステージを降りるメンバーたち。2025年、その道の向こうにはさらに大きなステージが待っている。そこにどんな景色が広がっているのか、ぜひ一緒に見たいと思う。
取材・文=宮本英夫 撮影=高田梓
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