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MUCC、「死ぬまであっという間の時間の中で、これからも君たちと過ごす時間を作っていけたらなと思います」 地元・水戸で開催したツアーファイナル公式レポ

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MUCCが12月22日に地元・水戸市民会館グロービスホールで開催した『MUCC TOUR 2024「Daydream」』ツアーファイナル公演のオフィシャルレポートをお届けする。


『MUCC TOUR 2024「Daydream」』のファイナルであり、MUCCの2024年ラストとなる公演が水戸市民会館グロービスホールで開催された。

今年3度目のメジャーデビューを果たしたほか、ヴィジュアル系シーンの後輩バンドをゲストに迎えて『MUCC TOUR 2024「Love Together」』を敢行するなど、これまでにない活動を繰り広げたMUCC。その極めつきと言うべきか、この『Daydream』ツアーは、通常のライブに加え、14時開演の昼公演とトークライブを盛り込んだ斬新なツアーだった。

昼公演は、一度渋谷で試験的に開催された時に好評を博したもの。さらに、バンド初の試みであるトークライブは、メンバーたっての希望で企画されたもの。いわゆる内輪向けのファンクラブイベントやリリース記念のトークイベントではなく、ガチの「トークライブ」である(もちろん司会進行はいない)。ロックバンドがなかなかやれるものではないが、持ち前のトークスキルを駆使し、土地ごとのフリートークやファンの質問に答えて大盛況となった。こうした活動から伝わってくるのは、「バンドとして新しいことに挑戦する」といった堅苦しいものではなく、「まだまだ楽しいことやろうぜ」というポジティブな想いだ。結成から27年の重みは当然背負いながら、一瞬一瞬を無駄にせず楽しみ尽くす。もしかしたら、今のMUCCは過去イチに自由なのかもしれない。その自由さによって実現した「Daydream」ツアーと2024年のMUCCを締め括るべく、彼らは地元・茨城県水戸に帰ってきた。

逹瑯(Vo)、ミヤ(Gt)、YUKKE(Ba)に、サポートメンバーのAllen(Dr)と吉田トオル(Key)を加えた5人編成でのステージ。作品を引っ提げてのツアーではないからこそ、自由自在にさまざまな時代を行き交うセットリストは、「今」のMUCCを堪能させてくれるものだった。初期の“ムック”を象徴する「アカ」「大嫌い」で幕を開けつつ、序盤で最新シングル曲「invader」を早くも投下。パンキッシュなツービートに00年代的なヘヴィリフ、哀愁のメロディに長尺ギターソロも添えて、MUCCの武器を全部盛りにしたような1曲だ。今回のツアーで初披露だったにもかかわらず、すでにライブに火を点けるキラーチューンと化していて驚かされる。すっかりMUCCの血肉となった「愛の唄」がその熱狂を不穏さに変え、めくるめく濃密な空気が会場を満たしていった。

MUCCが謳歌する「自由さ」の重要なピースになっているのが、80~90年代や平成カルチャーのオマージュだ。「愛の唄」リリース前のエイプリルフールに公開した“いにしえの”ヴィジュアル系コスチュームや、「平成こじらせ部屋」で撮影した「Violet」のミュージックビデオなどがわかりやすいが、もちろんその核は楽曲の中にある。若い世代が昭和レトロの世界をトレンド化して久しいが、「体験したことのない世代」が表現するオマージュと、MUCCのように自らの経験を踏まえて表現するオマージュはやはり違う。ルーツとなっている音楽へのリスペクト、当時できなかったことへのリベンジ、青春時代の思い出。それらを自分たちの表現として消化できる経験値。とにかく今のMUCCにしか出せない味になっているのだ。

「愛の唄」「invader」にもその隠し味を感じるが、中盤で披露された未発表曲(新曲4)はより“濃い目”の味付けが刺激的だった。タイトなビートと軽快なカッティングギターで疾走し、サビでは艶やかなムードに切り替わっていく。ベースソロからのギターソロもあり、どこか懐かしく、それでいて聴いたことのない質感の1曲だ。それが、ダンサブルな4つ打ちの「G.G.」、YUKKEのアップライドベースが牽引するロックンロール「Friday the 13th」、変拍子が浮遊感を演出する「はりぼてのおとな」に続いて披露されたのだから、あらゆるジャンルとトレンドを飲み込んできたMUCCの闇鍋ここに極まれり、と圧倒された。いや、彼らのカオスはまだまだ深みを極めていくのだろうけれど。

「1年が過ぎるのは早いですね。1年を早く感じるってことは、充実した日々をすごせているということにしておきましょう。死ぬまであっという間の時間の中で、これからも君たちと過ごす時間を作っていけたらなと思います。だから、最後まで――“最後”って、このライブの最後じゃないよ。我々の、そしてあなたたちの“最後”まで、よろしくお願いします。今を思いっきり楽しんでいこう」

心の奥深くに染みこむバラード「October」を切なく歌いあげたあと、逹瑯がそう語りかけた。たくさんの終わりが訪れる時代だからこそ、歩みを止めずに前へ。その意志を受け止めて大歓声が湧き、さらにギアを上げて後半戦へ突入した。

ミヤのヘヴィなリフと逹瑯の咆哮が響き渡る「惡 -JUSTICE-」から、キラキラと目映いサウンドが降り注ぐ「ニルヴァーナ」と、MUCCの持っている顔を余すところなく見せるセットリストが展開。夢烏(=MUCCファンの名称)も、シンガロングにヘッドバンギングに拳にと思い思いの楽しみ方で、一体感を高めていった。「行こうか、俺たちの世界へ!」と「My WORLD」でピースフルな色に染め、本編のラストを飾ったのはまさかの未発表曲(新曲3)だった。変化球だらけの新曲郡の中では珍しく、メンバー3人での力強いコーラスが印象的な直球のロックナンバーで、オーディエンスを誰一人置いていかない温かさに溢れていた。カオスの果てに、明るい未来への予感を残すエンディングだった。

YUKKEが「水戸、ただいま!」と登場し、地元の思い出話に花を咲かせて始まったアンコール。逹瑯とミヤが合流すると、2025年の予定として、MUCC TOUR 2025「Daydream 1997」と「6月9日 2025 スペシャルMUCC Day」の開催が発表された。

とはいえ、3人のトークがこれで終わるはずはない。ミヤが茨城出身の漫才コンビ・カミナリにハマって動画を全部見た話や、トークライブの手応え、未発表曲の感想やオマージュネタ、ファンクラブ会員限定の映像作品「バースデークロニクル 45」に隠しコマンドが用意されていること、果ては正月のお雑煮話まで、たっぷりトークを繰り広げたのだった。

30分が過ぎようかというタイミングで「そろそろやる?(笑)」とようやく腰を上げ、「1年ありがとうございました」と逹瑯。「年内のライブはこれで終わりですが、このライブが終わると、私はMUCCの怒濤の歌録りが始まります。来年みなさんを楽しませるために、年末年始返上で頑張りますんでよろしくお願いします!!」と宣言し、喜びに湧くオーディエンスを笑顔で見渡しながら「ハイデ」へ。

ピアノが入ってドレスアップした「娼婦」でシンガロングを起こしたあと、2024年のMUCC最後の1曲として「蘭鋳」が贈られた。外せないお約束の1曲でも、2024年12月22日に聴く「蘭鋳」は最初で最後の1回限り。最後の一瞬まで目と耳と身体に焼き付けようと、ステージも客席も全力を出し尽くす。逹瑯、ミヤ、YUKKEが寄り添うように並び、暴れる夢烏たちを見つめる光景が眩しかった。

発表されたニュースや未発表曲郡だけでも期待が高まるなか、「Daydream 1997」の“1997”とは何を意味するのか? 逹瑯の歌録りの先にニューアルバムが誕生するのか?など気になる要素が盛りだくさんとなっているMUCCの2025年。ますます自由度を増して、唯一無二の道を突っ走っていく彼らの動向に注目だ。

文=後藤寛子 撮影=冨田味我

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