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迷って、尖って、音がひびく瞬間の結晶 MyGO!!!!!×トゲナシトゲアリ『Avoid Note』ライブレポート

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(C)BanG Dream! Project (C)東映アニメーション

■2025.01.12「MyGO!!!!!×トゲナシトゲアリ『Avoid Note』」@TOKYO DOME CITY HALL

1月12日、「MyGO!!!!!×トゲナシトゲアリ『Avoid Note』」が東京・TOKYO DOME CITY HALLで開催された。

さまざまなガールズバンドの姿を追うブシロードのメディアミックスプロジェクト『BanG Dream!』の一角を担う“リアルバンド”であるMyGO!!!!!と、ガールズバンドの人間模様を描くアニメ『ガールズバンドクライ』で声優に初挑戦し、リアルな音楽活動を展開するバンド・トゲナシトゲアリ(トゲトゲ)。異なるルーツを持つ2グループ初の対バンライブのチケットは即日完売。当日のTOKYO DOME CITY HALLでは椅子席のバルコニーエリアは当然満員で、オールスタンディングのアリーナエリアは文字どおり立錐の余地もない様相を呈していた。

写真:冨田味我

写真:冨田味我

この日の先攻はMyGO!!!!!だ。両バンドの楽曲がメガミックスされたオープニングSEと、そののちの時計の針の音、そしてそれに合わせたオーディエンスのカウントダウンを背にステージに現れた羊宮妃那が演じる燈(Vo.)、立石凛演じる愛音(Gt.)、青木陽菜演じる楽奈(Gt.)、小日向美香演じるそよ(Ba.)、林鼓子演じる立希(Dr.)の5人は「迷星叫」でライブをキック。冒頭、愛音のアルペジオが始まるや大歓声が上がると、5人はこのヌケのいい1曲でフロアの〈ハイハイ!〉コールとクラップを煽り、会場の熱を一気にピークへと押し上げた。

その後バンドは性急なパンクチューン「歌いましょう鳴らしましょう」、短いMCを挟みつつ、正調J-ROCKといった趣きの「砂寸奏」、そよと立希によるシャープな8ビートと燈のドリーミーなボーカルで魅せる「処救生」、ダンスロックナンバー「影色舞」とアップリフティングな楽曲を連発する。「砂寸奏」ではステージ最前のお立ち台に歩を進めた楽奈がイントロのリフを奏で始めると同時に、燈が「盛り上がっていけますか」「もっともっと声を出せますか」とフロアを挑発。そのサビで彼女の声に呼応したオーディエンスの〈Uh Wow wow〉の大合唱を誘ってみせる。また「影色舞」では燈、愛音、楽奈、そよが軽快な2ステップを踏んでみせ、ステージと客席、その両方をダンスフロアへと変身させた。

今回のライブタイトル『Avoid Note』が「曲の中でうまく周りと響き合わない音」「あまり使わないほうがいい音」の意味であることに触れ、燈が「周りとうまく馴染めない。私たちも同じかもしれない」「でもだからこそ生まれる音とか、私たちにしか作れない一瞬があるんだと思う」「だったら私たちも、全力で私たちにしかできないステージにしたい」と決意を固めて万雷の拍手を集めたところで、ライブは後半戦に突入。5人は、楽奈のインプロビゼーションから始まる由緒正しきハードロックチューン「無路矢」と、その楽奈のピーキーな単音オブリガート、愛音の不穏なコードストローク、低音と高音を激しく往復するそよのベースライン、ある種ドライな立希のビートと燈の切実なポエトリーリーディングが混ざり合う「潜在表明」というディスコグラフィの中でも異色の2タイトルを投下したのち、そのままコンテンポラリーなヘヴィロック「孤壊牢」と超高速パンク「音一会」を畳みかけた。

後攻はトゲトゲ。MyGO!!!!!同様、時計の針の音とオーディエンスのカウントダウンを受けてサポートキーボーディスト、サポートドラマーとともに登場した井芹仁菜役の理名(Vo.)、河原木桃香役の⼣莉(Gt.)、ルパ役の朱李(Ba.)はこの日の1曲目に『ガールズバンドクライ』のオープニング主題歌「雑踏、僕らの街」をセレクトする。そして、楽器隊それぞれの手数が多く複雑なフレーズに乗せて理名がまくし立てる、この高速ポストロックナンバーに続けて、朱李の硬質でノイジーな重低音ベースと、⼣莉の変幻自在なカッティングが耳に残る「空白とカタルシス」をドロップして、やはり大歓声を巻き起こしてみせた。

写真:冨田味我

写真:冨田味我

メンバー紹介と理名の「2025年最初のライブ、盛り上がっていくぞ!」のシャウトののちには、重心をうしろに置いたグルーヴィなリズム隊と前のめりな⼣莉のカッティングがユニークなアンサンブルを生み出す「空の箱」と、楽器隊が圧倒的な音圧を響かせる「声なき魚」を2連発。直後のMCで、理名がこの日の競演相手MyGO!!!!!の面々が出演するTVアニメ『BanG Dream! It’s MyGO!!!!!』について「バンド内の人間関係がギスギスしていてちょっと怖いなと思って観てたけど、こっちのアニメも……」と切り出せば、⼣莉が「こちらもね」と合いの手を入れ、それぞれMyGO!!!!!の推しメンを発表し合えば、朱李が「みんなかわいい」と身もフタもないことを言い出すのほほんとした会話を挟みつつも、いざライブとなれば、その後もバンドのテンションは変わらない。

エレガントなピアノと理名の優しげなボーカルが印象的なバラード「誰にもなれない私だから」をプレイしたかと思えば、直後には一転。ダンサブルな「視界の隅 朽ちる音」や、エモーショナルながらもどこかドライな「傷つき傷つけ痛くて辛い」、ブラストビートや⼣莉が刻むセカンドラインのような高速ストローク、さらにはシンプルな8ビートと複雑なリズムが絡み合う「サヨナラサヨナラサヨナラ」とバラエティ豊かなセットリストを構成して、トゲトゲファン、MyGO!!!!!ファンが入り交じるTOKYO DOME CITY HALLを熱狂の渦に包み込んだ。

そんなフロアの様子を受けた理名が「暖かく迎え入れてくれてありがとう」とMyGO!!!!!ファンに感謝を告げると、バンドは大ネタをつるべ打ちに。ヘヴィなリズム隊と軽快なピアノとギター、そして高速ボーカルからなるバンドのデビュー曲「名もなき何もかも」、朱李のタフなスラップや⼣莉の流麗なアルペジオと、理名の歌声によるハーモニーが面白い「爆ぜて咲く」を2連射。さらにフロアの〈ハイハイ!〉コールと〈1、2、3、4〉コールを背に正統派ロックチューン「運命の華」を叩き込んで、自らのステージの幕を下ろした。

写真:冨田味我

写真:冨田味我

熱烈なアンコールに応えてまずステージに登場したのはトゲトゲの面々と燈だ。その組み合わせにフロアがどよめく中、6人はトゲトゲの「雑踏、僕らの街」をプレイ。どこまでもタフな理名のボーカルとどこか儚げな燈の歌声のリレーという、出自の異なる2組のライブならではのアレンジでまたもフロアを大いに盛り上げてみせていた。

写真:冨田味我

写真:冨田味我

そして燈がMyGO!!!!!の面々をステージへと呼び込み、コンパクトなMCののちには主賓とゲストが交代。MyGO!!!!!の5人が理名とともに自身の2ビートパンクナンバー「壱雫空」をセッションする、やはりエクスクルーシブなパフォーマンスで対バンライブを締めくくった。

その後、トゲトゲメンバーがステージに舞い戻ってきたところで大団円。8人はオフマイクで「本日は本当にありがとうございました!」と叫ぶと、名残惜しむフロアの声を背にステージをあとにした。

写真:冨田味我

写真:冨田味我

MCで両バンドも繰り返していたが、この日初めてMyGO!!!!!のステージを観たトゲトゲファンや、初めてトゲトゲを観たMyGO!!!!!ファンも少なくなかったはず。しかもひとくちに「ギターロックバンド」と言っても、パンクやエモ・ラウド系に軸足を置くMyGO!!!!!と、ポストロックに軸足を置くトゲトゲと、それぞれの音楽性は実は大きく異なっている。

写真:冨田味我

写真:冨田味我

しかしフロアはそれぞれのステージにビビッドかつ的確に反応。両ファンのノリのよさや音楽的経験値の高さに驚かされるとともに、どんなオーディエンス相手であっても確実にロックできるMyGO!!!!!とトゲトゲの楽曲、そしてプレイの“強さ”を再確認させられた。そんな一夜だった。

取材・文:成松哲 写真:冨田味我

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