『UNDER THE LIVE 2025 ~15th Anniversary~』
UNDER THE LIVE 2025 ~15th Anniversary~
2025.1.13 板橋区立文化会館大ホール
地球尺度の時間単位で言えば、これまで15年にもわたって遂行されてきたアンダーバー星の国王・アンダーバーによる地球侵略の歴史と実態。このたび板橋区立文化会館大ホールにて開催された『UNDER THE LIVE 2025 ~15th Anniversary~』の中に、高らかな歌や壮大なるパフォーマンスというかたちで凝縮されていたのはまさにそれだった。
「アタシが、アンダーバー星からやってきた、アンダーバー星の国王!アンダーバーです!今日は15周年ライブだぜ!みなさん来てくれてありがとうございます!……いやー、それにしても15年って早いね。早いよねぇ」
そのタイトルどおり、舞浜やユニバーサルシティあたりのショータイムで流れていてもおかしくなさそうなファンタジックチューン「夢のアンダーバーランド」や、侵略者と名乗りながらもアンダーバーが基本精神として大事にしている“世界中の人を笑顔にすること”をうたった「ダーバーテイメント」、そして軽快なリズムとキャッチーなメロディで場内がより一層の盛り上がりを見せた「ALIEN」と、まず3曲を歌い終えたところでアンダーバーはこう挨拶することに。
ちなみに、この挨拶のあとには__(アンダーバー)が2009年10月27日に初投稿した「フリーダムに「脱げばいいってモンじゃない!」を歌ってみた」について言及。今となっては自らが作詞作曲したオリジナル楽曲を歌うことが活動の主軸である反面、15年前には“歌ってみた”からスタートしたという原点を振り返る意味で、ここからは「十面相」「パンダヒーロー」「こちら、幸福安心委員会です。」といった懐かしい曲たちが場内に響きわたり、この流れに当時からのファンたちが大歓喜することになったのは言うまでもない。と同時に、近年になってアンダーバーのファンとなった人々にとってもこのひとときは過去を追体験する良き機会となったはずだ。
『UNDER THE LIVE 2025 ~15th Anniversary~』
「ここまでの15年ではいろんなことをやってきましたが、5年前には『ダバランティス』という活動10周年を記念したコンセプトアルバムを出させていただきまして、そこからミュージカルとはちょっと違うし、演劇とも違う、まぁ音楽劇というんですかね。それを2020年の1月に『UNDER THE LIVE 2020~ダバランティス~』としてやったんですが、そのあとすぐにコロナが流行ってしまったので。本当だったら、『ダバランティス』の再演をやりたかったんです。結局そこから3年くらい、なかなかライブができない世の中になってしまいましたが、2年前の2023年の1月からは、この15周年に向けていろんなことに挑戦をしてきました。ということで、今日は『ダバランティス』の全曲を!メドレーで!お送りするぜ!!」
なお、ここからのメドレーについては以下のような説明もなされたため、仮に今回の15周年ライブで初めてアンダーバーの生パフォーマンスを体験することになった場合でも、ストーリーとしてはかなりわかりやすいものになっていたのではなかろうか。
「僕、こう見えて何万年も生きてるんですよ(笑)。『ダバランティス』の内容というのは、簡単に説明すると1万数千年前のアトランティス時代(プラトンの著書の上で1万2000年前に天変地異により滅亡したとされているアトランティス文明を指す)に、アンダーバーが地球にやってきたよという時のお話です」
『UNDER THE LIVE 2025 ~15th Anniversary~』
かくして、ここから繰り広げられたのはアルバム『ダバランティス』のメドレー。アンダーバーを取り巻く周囲のキャラクターもこの音楽劇に置いては重要な存在で、アンダーバー王に忠実な家来を演じるしゃむおんをはじめとして、アンダーバーが作り上げた王国ダバランティスの民に扮したneroと+α/あるふぁきゅん、そんなダバランティスと国交を結んだナノ王国の国王役ナノ、敵国アトランティスの国王役のピコ、そしてアトランティス軍の軍隊長を演じるNORISTRYは、各人が持ち前の歌唱力をおおいに発揮しながらストーリーに華を添えてくれていたと言っていい。もともとはアンダーバーも含めて“歌い手”とシングルタスクかのように十把一絡げで呼ばれていた表現者たちが、今や演技までからめた音楽劇で観衆を惹きつけているという事実。きっとその事実が意味するのは、このシーン自体と各人の経てきた変化と成熟だろう。歌ってみたという次元で終わるのではなく、歌ってみることで何を受け手に伝えられるのか、というところまでを把握しているボーカリストがここには見事に揃っていたわけだ。そうした人材を集めることが叶ったのは、ひとえにアンダーバーの人徳によるところも大きいに違いない。メドレーとはいえども、約40分の大ボリュームとなった『ダバランティス』の世界を締めくくったのは、ミュージカル並みのスケール感を持つ「未来のために」。
しかし、まだ物語は終わらない。ノイズの音が走り、登場したのはアンダーバー・オルタ。2023年4月に開催された『UNDER THE BIRTHDAY LIVE 2023 ~アンダーバー・オルタ~』や、2024年9月の『UNDER THE LIVE 2024 ~オルタ・ジ・オリジン~』ともリンクしているような内容の“音楽劇”が続いた。
『UNDER THE LIVE 2025 ~15th Anniversary~』
無邪気なほどに愛と夢と希望をふりまくアンダーバーに対し、ヴィランのごとく闇と痛みと絶望を発するアンダーバー・オルタはとても対照的な存在といえるが、物語が進めば進むほど彼らは表裏一体な存在であることも露になっていくのが実に興味深いところ。それはキャラメルポップコーン単体よりも塩バターポップコーンをツインでセットにした方が、さらなるやみつき無限食い状態を招くのと少し似ている。ほぼ『UNDER THE LIVE 2024 ~オルタ・ジ・オリジン~』を踏襲するような「Rebelion」から、本編ラストのオールキャストによる「次元を超えし者達」までのくだりでも圧巻のステージングが実現。そのうえで、アンダーバー・オルタはこう言い捨てるようにしてその場を去った。
「おまえたち! それでもなお笑顔と愛の世界を望むのであれば、その名を呼ぶがいい。さすれば、また世界線の移動が起きることもあるだろう。さぁ、おまえたちが望む世界があるのならその手でつかんでみろ! 正しい行動を起こせ!! できるものなら、せいぜい大声でその名を呼んでみることだな」
『UNDER THE LIVE 2025 ~15th Anniversary~』
当然、場内からはこのあと「アンダーバーは最高です!」というアンコールを求める定番の声が自然と湧きあがり、それに応えるようにして再登壇したのは白を基調としたキラめく新衣装に身を包んだアンダーバー。再会の歌である「この星でまた会おう」、晴れやかな空気感に満ちた「スマイル for ザ ワールド」は、それこそ“笑顔と愛の世界”がここに戻ってきたことを感じさせるものになっていたのだ。
「アンコール、ありがとう! アンダーバー星からやってきた、アンダーバー星の国王!アンダーバーです!……っていうか、もしかしてここで何か起きてた? 僕はなんにも知らないんだけど。新衣装に合わせて髪形を変えるのに、途中で美容院に行ってきたらもうアンコールになってて(笑)」
ここからはカーテンコールに近いスタンスで各キャストを呼び込みつつ、ラフで楽しい雰囲気をまじえながらの「僕らのフェスティバル」と、まさにステージ上も客席もお祭り騒ぎとなった「オマツリアンドゥワールド」で無事に大団円を迎えたのである。
『UNDER THE LIVE 2025 ~15th Anniversary~』
さてさて。アンダーバーによる地球侵略の歴史と実態が、今回の『UNDER THE LIVE 2025 ~15th Anniversary~』により明確な事象として証明された一方で、異星人・アンダーバーからすれば地球尺度の15年など一瞬のことに過ぎないのだとしたら。彼にはまだまだ、この地球で遂行しなければならない任務は多々ありそうな気がするが、いかんせん地球人の浅はかな考えではアンダーバーの未来を予想することはなかなかに難しい。ともあれ、地球の尺度では計り知れない奇想天外な謀略で彼がまた我々を驚かせてくれることを心待ちにしていよう。アンダーバーは最高です!
文=杉江由紀
撮影=インテツ
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