撮影:ハタサトシ (C)BanG Dream! Project
■2025.01.19『RAISE A SUILEN ZEPP TOUR 2024-2025「PANDEMONIUM」』@Zepp DiverCity (TOKYO)
(C)BanG Dream! Project
1月19日にZepp DiverCity (TOKYO)にて、RAISE A SUILEN ZEPP TOUR 2024-2025「PANDEMONIUM」東京公演が開催。タイトルどおりライブハウスを伏魔殿に見立てたこのライブは、さながら煮えたぎるマグマのような、最強にアツくて楽しい“地獄”を体現したものに。本稿では、RAISE A SUILEN(以下:RAS)ならではの高い質のパフォーマンスが生み出した熱狂の一夜の模様をお届けする。
◆“業火”のような熱を生んだ、圧倒的なパフォーマンス力
まずはオープニングアクトを務めた夢限大みゅーたいぷが登場し、1st Singleの表題曲「コミュ着火Fire!」からライブスタート。冒頭のフレーズの歌唱後から、フロアからはコールが起こりまくり。“今”の世に刺さる心の叫びを盛り込んだようなナンバーを、セリフ調の部分も交えてエモーショナルに叩きつけ、オーディエンスの心を一気に焚きつける。
曲明けにはメンバーそれぞれの自己紹介を挟み、仲町あられ(Vo.)が作詞にも挑戦した「コハク」へ。こちらもみずみずしい歌声に想いを思い切りぶつけて、他メンバーも含め5人ともが堂々の力強いステージング。落ちサビではクラップによって一体感も巻き起こすと、最後はバンドはじまりの曲「夢現妄想世界」を披露。
さらに場内のボルテージが高まるなか、ステージ上を端から端まで移りながら歌う仲町に加え、途中千石ユノ(DJ&Mp.)もステージ前方に出てきて、ポエトリー部やハモを担当。最後までアツいステージをみせ、一見キュートながらも実は強いエモーショナルさをも持つデジタルポップバンドという、『BanG Dream!』の他のどのバンドとも個性の重ならない存在を確かに刻み込んでみせた。
撮影:ハタサトシ (C)BanG Dream! Project
そして開演時刻を迎えるとともに場内は暗転し、客入れBGMもカットアウト。紡木吏佐(チュチュ役・DJ)のナレーションでライブの雰囲気が作られていくなかメンバーが登場し、オープニングアクトの雰囲気を引き継ぎ、さらにフロアをアツくするデジタルミクスチャーロック「HELL! or HELL?」から、RASのライブが幕を開ける。
のっけから圧あるプレイ、そして場内の全てを制し先頭に立つかのような迫力あるRaychell(レイヤ役・Ba.&Vo.)のパワフルな歌声によって生まれたすさまじい熱気が、1曲目から場内を包む。1サビではさらにオーディエンスを煽ると、サビあけにはRaychellは小原莉子(ロック役・Gt.)とセッション。紡木の小悪魔なラップも、序盤から非常に効果的に響く。また、2サビでは倉知玲鳳(パレオ役・Key.)が片足立ちで跳ねながらキーボードを弾きスピンまで決めれば、夏芽(マスキング役・Dr.)はラウドなリズムをパワフルに作り続けてオーディエンスをノらせる。すさまじい完成度とパワーを持った1曲が、場内の熱を一気にぐいっと引き上げてみせた。
そしてメンバー紹介とともに1人ずつソロプレイをみせていくと、豪快なドラムソロから5人での演奏へと展開し、そのまま「UNSTOPPABLE」へ。小原と倉知がツーステップをしながら演奏し、それに合わせてRaychellも身体を揺らしながらの歌唱と演奏をみせるなど、とにかくどの部分にも隙なく見せ・聴かせていくRAS。サビではフロアのペンライトと拳が左右に揺れ、早くも場内には一体感が。そして和の艶やかさも持ち込んだ「EXIST」では、パワフルさはありながらも歌い出しからボーカルには麗しさが。サビの中音域部分やDメロのウィスパー気味に歌唱する部分などを通じて、力強さとともに楽曲の雰囲気を十二分に表現していった。
歌唱後のMCパートでは、5人がステージに揃って「We are?」「RAISE A SUILEN!」のコールアンドレスポンスを経て、タイトルにちなんで「『地獄』にまつわる曲を入れている(紡木)」というコンセプトを持つツアーになぞらえて、各メンバーが「実はこの曲、地獄を感じるぐらい厳しいと感じている曲」についてトークを繰り広げていくことに。ここでは小原が「Repaint」を挙げると「それ!」と言わんばかりにメンバーが同意したり、「両足を動かす曲。となると、『OUTSIDER RODEO』かな?」と夏芽が挙げたりと、五者五様の“地獄”を明かしていた。
さて、ライブは倉知の速弾きに続いてスタートした「Takin’ my Heart」から再開。比較的清らかな歌い出しから徐々にパワーがこもっていき、1サビではフロアからのコールとともに再びアツさを前面に出していくと、落ちサビ前にはヘドバンも発生。ボーカルも次第にパワフルさを増してまたも場内を呑むと、歌唱後には再びの倉知によるキーボードソロを経て、Raychellによる「Beautiful Birthday」のタイトルコールに場内は沸き返る。イントロでは彼女が各メンバーと視線を交わして、ステージ上での絆も感じさせてから始まったこの曲。歌声のパワー感はそのままにサウンドからはどこか清涼感も漂わせつつ、フロアをプレイと歌声でしっかりと沸かせてみせる5人。2サビ明け間奏では、まずDJブースを向いてRaychellと小原がプレイすると、それを受け取った紡木がジェスチャーで倉知にソロをパス。その後さらに小原が笑顔でソロをプレイするなど、全員がそれぞれどこかでフィーチャーされていく。またDメロでは「R・A・S(We are!)」のコールが響き渡り、その絆がフロアのオーディエンスとも結ばれていくと、ハイテンポかつヘヴィな「Life on the Lotus」でまたもライブは加速していく。2-Aメロで紡木と倉知によって先導され、フロアからはクラップが。そんなフロアからはさらにステージへと腕が伸び、振られ、場内の温度はますます上がっていった。
そして紡木によるDJプレイから始まる、倉知や小原を交えたセッションが展開されると、それを導入にした「CORUSCATE -DNA-」では疾走感と熱を伴ってさらに場内はぶち上げ。2サビ明けにはRaychellが「さぁ会場ひとつになろうか!」とオーディエンスを煽ると、落ちサビではクラップが響き渡り、その言葉どおりコールも含めて会場がさらにひとつになっていく。
曲明けにはまたもDJプレイをきっかけに5人がアツい演奏を繰り広げると、ドラムのリズムに乗せてRaychellが「DRIVE US CRAZY」冒頭のフレーズを歌い始める。そのパートならではの、拳を掲げながらのコールがしばしフロアから響き渡り、その音量が存分に高まったところで、いよいよその「DRIVE US CRAZY」のスタート。冒頭からコールが引き続き彩ると、そこに歌声を重ね「東京、全力でかかってこい!」と意気を上げさらにオーディエンスを引き上げる。熱量渦巻く場内を、そのプレイと歌声で、“ライブ”で制しつつ、ともに熱を帯びていくRAS。フロアの誰もがそのライブに心を掴まれ捉えられエネルギーを全開にして、その一人ひとり高ぶりがさらに、場内の温度を上げていた。
撮影:ハタサトシ (C)BanG Dream! Project
◆真冬のお台場に生まれた、一夜だけのアツすぎる天国のような“地獄”
まさにCRAZYなくらいのドライブ感を持った曲を披露したところで、メンバーは一旦降壇。場内にはしばしRAS曲のフロアリミックスメドレーが流れ観客の熱量を保つと、メンバーが再登場して最新Singleの表題曲「Bad Kids All Bet」から後半戦がスタートだ。
実は前述のMCで「毎回最新曲が地獄」と語っていた紡木が、それを疑いたくなるほど巧みにラップパートを乗りこなしていけば、頭サビ明けにはまたもステップを踏みながら小原と倉知が演奏しサビではジャンプを盛り込む。そんな様々なアングルの隙のないパフォーマンス力こそ、RASのライブの魅力の1つだな――とこの最新曲でも改めて思わせてくれるし、そんなメンバーの中心にどっかりと立つように、Raychellはステージの中央で堂々と歌声を響かせていく。DJプレイをバックに彼女と小原、倉知がお立ち台に足をかけてクラップや腕振りを誘って「JUST THE WAY I AM」へ。この曲では紡木もボーカルを取りつつステージ上を自由に動き回り、小原と肩を組んだり夏芽と顔を見合わせながら2コーラス目のラップを歌ったりと、フリーダムに盛り上げていく。しかも2サビ明けに自身のDJプレイで魅せてただの“好き勝手”にはせず、ラストのコーレスまでフロアを沸かせきった。
そして「V.I.P MONSTER」ではRaychellの「全員で踊れー!」のシャウトに続いて、フロアはイントロから、左右の腕を交互に上げて踊る。その後もオーディエンスは踊り、声を上げ、ステージ上の5人とともに1曲を作り上げていき、その光景を目にした彼女の顔には満足そうな微笑みが。その沸き方を反映するかのように、場内は最後まで大揺れに揺れまくりだった。
続く「灼熱 Bonfire!」でも、イントロから大歓声。自然と身体を揺らしたりクラップしたりしてついていきたくなる、アツくなりたくなるライブが、ずっと繰り広げられ続けている。この曲の頃には、着席してメモを走らせていた筆者が汗をぬぐうほどの熱気が場内には充満。これこそが、RASとファンの絆と一体感が生んだ熱なのだろう。
撮影:ハタサトシ (C)BanG Dream! Project
そしてそれは、「EXPOSE ‘Burn out!!!’」のイントロが流れた瞬間大熱狂に変わる。ステージ上からは引き続き、さらなる高ぶりを生み出すすさまじいパワーが発され続けていく。もはや“どこが”いいというレベルではない。全てが渾然一体となって否応なしに私たちをアゲていく――目の前にあったのは、そんな光景だった。
少しの間を置いて、倉知のしっとりとした演奏が温かな雰囲気を作り、「Light a fire」がスタート。ナチュラルに力を抜いたスーッと染み込むようなボーカルも相まって、“地獄に差し込む光”のように感じられる、この曲順だからこそ効いてくる1曲に。この日唯一のバラードを通じて聴きどころも作りつつ、Bメロではフロアから声が上がる。これは、聴かせるナンバーにおいても、しっかりとオーディエンスをとりこにしていた証拠だろう。
そして「ありがとう」の言葉とともに歌い終わると、本編ラストとして本ツアーのテーマソング「WELCOME TO PANDEMONIUM」へ。最後にまたもフロアを踊らせるねらいを込めたのだろうか、スウィングジャズ要素のあるエレクトロロックを、パワフルかつグルーヴィーに披露。間奏や後奏部分ではラストまで身振りも合わせつつオーディエンスとともにこの曲を楽しみ尽くして、本編を終えた。
それからすかさず上がる、アンコールを求める声。次第に大きさを増すその声を受け止めた5人がステージにカムバックし、紡木のDJプレイが場内を再びライブの空気に引き戻せば、倉知がショルダーキーボードを提げてお立ち台でソロを披露。そのままこの2人のセリフから始まる「TWIN TALE」がアンコールの幕開けを飾り、場内のペンライトは、この曲でフィーチャーされたパレオの髪色を彷彿とさせるピンクに染まり変わる。そんなエレクトロ・ロックで倉知は、2-AメロではDJブース下に移動して紡木と向き合いプレイしたり、小原とともにステージ前方のへりまで行ってオーディエンスとのコミュニケーションも交わしたりと、楽しみつつしっかり魅せ・聴かせてくれた。
歌唱後には、次のワンマンライブを6月14日に、有明アリーナにて開催することを発表。既に最速先行の受付が開始されているので、こちらもぜひチェックしてみてほしい。
そんな喜びの余韻が残るなか、ラストナンバー「!NVADE SHOW!」の披露がスタート。イントロ中から場内はまたも揺れに揺れて、オーディエンスは素直に高ぶりを表す。1サビ前には紡木が「暴れろー!」とシャウトして煽れば、ステージ上では小原がスピンを決め、サビ中にはくるくる回りながら演奏してひときわ目を引く。さらに倉知は足を高く蹴り上げながら弾き、Raychellはパワフルな歌声を響かせ続けたりと、最後の最後まで会場中が思いっきり暴れまくり。最高に楽しい“地獄”の締めくくりとしてこの上ない時間を作り上げ、東京公演は幕を下ろしたのだった。
撮影:ハタサトシ (C)BanG Dream! Project
撮影:ハタサトシ (C)BanG Dream! Project
ライブが始まるやいなや即座に観客の心を掴み、一瞬の隙もなくそのボルテージを高め続ける。そしてそのまま最後まで突っ走りきっていく――本公演はそんなRASの魅力を存分に楽しめる、大充実のものとなった。ツアーファイナル・大阪公演はもちろん、6月の有明アリーナではどんな熱気に満ち満ちたライブを楽しませてくれるのか。その期待を否応なしに高める、アツくて心に刺さるライブだった。
取材・文:須永兼次 撮影:ハタサトシ
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