グラス・アニマルズ(Glass Animals)
イギリスの4人組ロックバンド、グラス・アニマルズが2025年2月19日、神奈川KT Zepp Yokohamaで一夜限りの来日公演を開催する。
2010年の結成から15年。サイケ、R&B、ヒップホップ、オルタナ、エレクトロニックの要素が入り混じるポップサウンドが歓迎され、着実に人気を伸ばしてきた彼らは今や世界的な人気バンドの地位を揺るぎないものにしている。中でも2020年8月にリリースした3rdアルバム『Dreamland』収録の「Heat Waves」は5週連続No.1になったアメリカをはじめ、世界各地で大ヒット。Spotifyでは再生回数が30億回を超え、世界的なセンセーション、あるいは世界最大のブリティッシュバンドと謳われるきっかけになった。
さらなる新境地を開拓した2024年7月リリースの最新4thアルバム『I Love You So F***ing Much』も全英5位を記録。同アルバムをひっさげ、現在、世界各地を回っているワールドツアー「Human Music Group Sensations Glass Animals: TOUR OF EARTH」は、ともに2万人規模のニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンとロンドンのO2アリーナを含むグラス・アニマルズ史上最大の規模のものとなっている。
その一環として、ついに実現する今回の初来日公演は、世界のロックシーンの最前線で活躍しているロックバンドのライブを体験できるという意味で貴重なものになるに違いない。
来日を目前に控えたバンドを代表して、中心メンバーのデイヴ・ベイリー(Vo, Gt, Key他)に来日公演の見どころなど、メールでいろいろ質問してみたところ、とてもていねいに答えを返してくれた。
――グラス・アニマルズがどんなバンドなのかを含め、まず自己紹介をお願いします!
グラス・アニマルズのシンガー兼ソングライターのデイヴだよ。僕たちの音楽を言葉で説明するのは難しいんだけど…ピンク・フロイドやフリートウッド・マック、ドクター・ドレー、クラフトワーク、レディオヘッド、ビートルズ、そして最近のポップミュージックなど、さまざまな音楽から影響を受けている。ギター、古いシンセサイザー、サンプラーを駆使したサウンドにヴォーカルを重ねて、実験的で僕たちらしいポップソングを作ってるんだ。
――目前に迫ったグラス・アニマルズにとって初めての日本公演の意義込みを聞かせてください。
待ち切れないよ。本当に昔からずっと日本に行きたかったんだ。「死ぬまでに絶対プレイしたい国リスト」の1位だったからね。2020年に公演を予定してたけど、パンデミックで叶わなかった。だからこそ、今回の公演は特別だ。ずっと待ち望んでた公演だからね。
■とてもパーソナルな曲なんだ。その曲がヒットしたことで、もっと自分に正直な曲を書いていいんだと勇気づけられた。
――日本の国にはどんな印象を持っていますか?
まだ行ったことはないけど、日本で公演を行えるなんて、本当に光栄だよ。だって日本には豊かで活気あるアートや音楽カルチャーが溢れてる。それを実際に体感し、吸収するのを楽しみにしてる。きっとすごく刺激を受けると思うよ。それと…食べ物! 日本食が大好きなんで!
――ライブでは日本のファンにどんなことを期待していますか?
日本でのライブは未体験だから、何を期待すべきかもわからないというのが正直なところさ。実は、公演の1週間前には東京に行くんで、いくつかライブを観たり、街を体験して、観客の雰囲気を少しでも掴めればなと思ってる。でも、これだけはわかるんだ。きっとめちゃくちゃポジティブで良いエネルギーが僕らを後押ししてくれて、最高のパフォーマンスになるんじゃないかってね!
――さて、現在のツアーのセットリストの大半を占めている4thアルバム『I Love You So F***ing Much』についても聞かせていただけますか。全英5位、全米11位を記録するヒット作になりましたが、『I Love You So F***ing Much』はグラス・アニマルズのキャリアにおいて、どんなアルバムになったと考えていますか?
こんなにも多くのアルバムを出せるなんて、つくづく僕らは恵まれてると思うんだ。多くのバンドやアーティストには、そんなチャンスはなかなか巡ってこない。アルバムを作るたび、僕らは常に進化を目指し、毎回新しいことに挑戦している。3rdアルバムの『Dreamland』はエレクトロニックで、どこか懐かしさを感じさせる作品だったから、次はギターを多く使い、歌詞も過去ではなく、現在や未来に目を向けた内容にしたかったんだ。
――前作の『Dreamland』と比べて、ヒップホップの要素が減った印象がありましたが、『I Love You So F***ing Much』を作るにあたっては、どんなアルバムにしたいと考えていましたか?
歌詞では現在と未来に焦点を当てたかったから、サウンドでは未来を感じさせるレトロ感を目指したんだ。それを実現するために、僕自身の楽器コレクションの中から60年代や70年代に”未来的”だとされていた古いシンセサイザーを引っ張り出して使ったり、レトロフューチャーな音色が出せるギターやペダルを用いた。『Dreamland』が80年代や90年代の影響を受けたアルバムだとしたら、『I Love You So F***ing Much』は間違いなく60年代や70年代のサウンドが基盤になったアルバムだ。
――リファレンスやインスピレーションになったアーティストや作品はありましたか?
このアルバムのレコーディングに取り掛かる前によく聴いてたのは、エンニオ・モリコーネ、ビーチ・ハウス、カン、BBC Radiophonic Workshop のサウンドトラック盤、Harumi(1968年に唯一のアルバムを残している謎多き在米日本人アーティスト)、スーサイドなどさ。
――グラス・アニマルズが世界最大のブリティッシュバンドと謳われるきっかけになった2020年のシングル「Heat Waves」の大ヒットは、『I Love You So F***ing Much』の制作に何らかの影響を与えましたか?
世界最大のブリティッシュバンドはさすがに言い過ぎだよ。ビートルズのほうがずっとビッグさ(笑)。「Heat Waves」は、僕がベッドルームで一人きりの時間の中で書いた、とてもパーソナルな曲なんだ。その曲がヒットしたことで、もっと自分に正直な曲を書いていいんだと勇気づけられたし、今後もベッドルームで一人きりで書き続ける自信が持てた気がする。
――『I Love You So F***ing Much』に対する、とあるメディアの“グラス・アニマルズのアルバムの中で最もダークなアルバム”という評は個人的には頷けるものでした。なぜ『I Love You So F***ing Much』は、そういう作品になったのだと思いますか?
興味深いね。『Dreamland』と「Heat Waves」の成功の後、僕はちょっと奇妙な心境だった。言うなりゃ、存在の危機さ。キャリアは想像以上にうまく行ってたけど、気分は絶望的だった。成功すると、外向的な自分を演じなきゃならない時間が増える。でも、僕はもともと内向的な人間だ。それを無理に外向的になろうとしていたから、暗い気持ちになっていたのかもしれない。
――今後、『I Love You So F***ing Much』からさらにバンドの音楽性をどんなふうに発展させたいと?
とにかく進化し続けたい。2回まるで同じ音楽スタイルを繰り返すんじゃつまらないよ!
――伏せ字にせざるをえないことは避けられないにもかかわらず、敢えてアルバム・タイトルに「F***ing」という4文字言葉を使ったのはなぜ?
(笑)あの言葉を使うことで、I Love youというフレーズが秘めるパワーがより強調され、どこかダークなニュアンスが加わるのがなんだかいいなと思ったんだ。そのままだとキレイすぎる気がしたんだ。
――YouTubeで最近のグラス・アニマルズのライブを見たところ、『I Love You So F***ing Much』の中で最も悲劇的でエッジィなサウンドを持つ「Wonderful Nothing」が新たなライブ・アンセムとして、ファンから歓迎されているという印象がありました。それについては、どんなふうに受け止めていますか?
あの曲をライブでやるのは本当に楽しいよ! ライブという状況で、人は大音量で鳴るベースとドラムには自然と興奮するんだと思う。ただ、あの曲のグルーヴはちょっと難しいんで、演奏は決して楽じゃない。それにたくさんの言葉を矢継ぎ早に歌わなきゃならない。でも簡単にやれてしまう曲だったら、おもしろくないだろ?
――ライブで演奏することが多い『Dreamland』収録の「Tokyo Drifting」は、日本人にとって興味深いタイトルを持つ曲ですが、Tokyoをモチーフにしたきっかけを含め、どんなふうに生まれたのでしょうか?
タイトルを考えたのは(フィーチャリング・アーティストの)デンゼル・カリーさ。リフとドラムが生み出すパワーとエネルギーを強調する言葉を探してたんだ。Tokyoには、そのエネルギーがあったということ!
――今一度、グラス・アニマルズのライブについて聞かせてください。グラス・アニマルズのライブの魅力はどんなところだとご自身では考えていますか? ライブに足を運んだら、どんな体験ができるでしょうか?
僕らのライブはレコードとはまるで違う。バックトラックもクリックトラックも一切使わないし、ファン次第で僕らの演奏も変わってくる。会場のノリが良ければ、演奏のテンポも速くなっていくし、逆にリラックスした雰囲気なら、ゆっくりと時間をかけて盛り上げていく。だから毎晩、全然違うパフォーマンスになるよ。
■どの曲が聴きたいか、ぜひ教えて! ファンのみんなが喜んでくれる曲をやりたいんだ。
――グラス・アニマルズのライブをより楽しむためのアドバイスがありましたらぜひ。
どの曲が聴きたいか、ぜひ教えて! ファンのみんなが喜んでくれる曲をやりたいんだ 🙂
――今回は1公演のみの来日ですが、将来的にジャパン・ツアーを開催する可能性や興味はありますか?
ああ、ジャパン・ツアーをいつの日が絶対に実現させたい。今回は時間がなくて1都市だけど、次はどうなるかわからないよ!
――最後に、これを読んでいる日本の読者にメッセージをお願いします。
日本のみんなに会いに行くのを心から楽しみにしているよ。日本で何を食べたらいいか、見るべきおすすめのアートや音楽、そしていいバーをぜひ教えて。待ちきれないよ! すぐに会おう。今日はどうもありがとう。
取材・文=山口智男
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