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音楽フェスでプロレスのゴングが鳴った『RADIO CRAZY 2024』moon drop、林萌々子(Hump Back)ら全組レポート【1日目・Antenna、境内STAGE】

アーティスト

SPICE

『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2024』

『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2024』

FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2024』2024.12.27(FRI)インテックス大阪

大阪のラジオ局・FM802が主催する関西最大級のロックフェス『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2024』(以下、『レディクレ』)が、12月27日(金)〜29日(日)の3日間にわたり、大阪・インテックス大阪にて開催された。

Chevon 撮影=河西沙織

Chevon 撮影=河西沙織

毎年恒例となった屋外のこたつサテライトスタジオでは、出演アーティストとDJがこたつを囲んで公開収録を実施。初日は15:30~ライブ前のChevonが『RADIO∞INFINITY』(DJハタノユウスケ)に登場。

でらし(ハンブレッダーズ)&牧達弥(go!go!vanillas) 撮影=キョートタナカ

でらし(ハンブレッダーズ)&牧達弥(go!go!vanillas) 撮影=キョートタナカ

16:45からは『SATURDAY AMUSIC ISLANDS-AFTERNOON EDITION-【特別編】』(DJ樋口大喜)として、Z-STAGEにて前後でライブを行ったでらし(ハンブレッダーズ)&牧達弥(go!go!vanillas)が観客を交えてトークを行った。

会場のあちらこちらで催しが行われた「ロック大忘年会」の15周年をお祝いすべく、SPICEでは前代未聞の全組レポートを実施! ここでは今後期待のアーティストが出演するZONe ENERGY LIVE HOUSE Antennaでのシンガーズハイ、紫 今、jo0ji、CLAN QUEEN、moon dropと、2号館で行われた新日本プロレスの試合やRe:nameのアコースティックライブ、映秀。、林萌々子(Hump Back)のステージ様子をお届けする。終演後のDJ落合健太郎&ハタノユウスケによる振り返りも併せてチェック(こちら)。

【ZONe ENERGY LIVE HOUSE Antenna】

■シンガーズハイ

シンガーズハイ 撮影=松本いづみ

シンガーズハイ 撮影=松本いづみ

トップバッターはシンガーズハイ。毎年秋に開催しているサーキットライブイベント『MINAMI WHEEL』に出演し、FM802のDJとスタッフたちが『レディクレ』でライブが観たいとラブコールを送った「これから」期待のアーティストが集結するのが恒例のステージ。というけれど、2025年にはZeppツアーが決定し、春には新作も発表予定と、「これから」どころかすでに期待以上の勢いを見せている彼ら。開演前にはDJハタノユウスケが前説に登場。「2024年の抱負に「『レディクレ』に出演します」と語っていた彼ら。有言実行するほど音楽に捧げた一年、その集大成を大いに楽しんで」とエールを送る。

シンガーズハイ

シンガーズハイ

シンガーズハイ

シンガーズハイ

「『レディクレ』始めます!」と内山ショート(Vo.Gt)が声高に叫び、1曲目「愛の屍」へ。まくしたてるようなほりたいが(Gt.Cho)のギターに、内山のハイな歌声が絡みフロアの熱気を瞬時に高めてしまう。「Kid」では癖になるジャンキーなギター、体にまとわりつく重く中毒性のあるみつ(Ba.Cho)、りゅーいち(Dr)が打ち出すリズムにフロアが大いに揺れる。

シンガーズハイ

シンガーズハイ

シンガーズハイ

シンガーズハイ

「オレたちのこと、じっくり教えていくんで!」と「ニタリ」では豪快なビートにシンガーズハイの強さを目の当たりに。楽曲が終わるごとに歓声が沸き起こり、メンバー一人ひとりが主張する音を聴き洩らすまいとオーディエンスが前のめりになって聴き入っている。それでも4人はまだまだ足りないと、溢れる感情を楽曲に落とし込み、ラスト「ノールス」ではアグレッシブなバンドサウンドでフロアを圧倒した。

取材・文=黒田奈保子 撮影=松本いづみ

■紫 今

紫 今 撮影=松本いづみ

紫 今 撮影=松本いづみ

「この数カ月で何があった?」。15時前のAntennaに登場した紫 今のライブを終え、7カ月ぶりに彼女を目撃した筆者の頭に浮かんだのはこんな驚きだった。この日のピリオドを打った「魔性の女A」をはじめ、演歌やゴスペル、ソウルなどの影響を受けた歌唱を目まぐるしく、かつ繊細に使い分けていくのが、彼女の武器だと考えていたのに、猛烈にフィジカルになっているではないか。

紫 今

紫 今

息もできない緊張感を漂わせたアカペラではじまった新曲やリリックに合わせてフロアを指差した「正面」、常夏を思わせるビートでタオルを振り回させた「メロイズム」、「大阪、そんなもんじゃねぇだろう」「ここにいる全員で伝説作りませんか」と煽りまくったサディスティックなMC。いずれの要素も彼女がダイレクトなファンとのやり取りを最大限に楽しんでいることを伝えており、その高揚感に比例して紫 今のリアクションも大きくなっていく。

紫 今

紫 今

その結果、歌声を主軸に置いた目に見えない感情表現と肉体的な身体所作、そしてラウドなバンドアンサンブルが昇華され、「ライブかくあれ」といった血流駆け巡る光景を完成させていたのである。この進化の背景には、各地でのライブはもちろんのこと、8月から開催されたワンマンライブの存在も大きいはず。みるみるうちに進化を遂げている紫 今。来年の『レディクレ』で再会する頃には、どんなアーティストになっているのだろう。

取材・文=横堀つばさ 撮影=松本いづみ

■jo0ji

jo0ji 撮影=松本いづみ

jo0ji 撮影=松本いづみ

折り返しを担ったjo0jiのショータイムは、朝霧に濡れた木々や開き始めた蕾をイメージさせる生命力のほとばしる35分間だった。近所のお店に立ち寄るかのごとく、ふらりと姿を現したjo0jiがポツポツと鍵盤を奏で始める。言葉を絞り出す際のざらつく喉の鳴りと語尾の柔らかさが空間を満たし、恵みの雨さながらに客席を浄化していく。

jo0ji

jo0ji

手を揺らしながらステージを歩き回るjo0jiは、純真無垢なムードと厭世的な雰囲気を纏っており、「ワークソング」では前者、「escaper」では後者の側面が濃い香りを放っていた。とはいえ、彼は完全に悲観しているわけではない。

jo0ji

jo0ji

「Nukui」で<Everything all right んなことねぇのは知っているだろう>と吐き捨てながらも<ここは一つ覚え奴らのように言うさ 全てはうまくいくさ>と語りかけていることを筆頭に、希望と言うにはあまりにも小さすぎる、しかし確かに存在する明かりを捕まえようとしているのだ。実際、「Nukui」で巻き起こった合唱はそれぞれのハピネスや祈りが集結することで何かが叶うかもしれないと思わせるエネルギーに満ちていたし、終止符を打った「≒」でハンズアップが連鎖していく様子も1輪1輪と花開く光景にそっくりだった。

取材・文=横堀つばさ 撮影=松本いづみ

■CLAN QUEEN

CLAN QUEEN 撮影=松本いづみ

CLAN QUEEN 撮影=松本いづみ

「アートロック」を掲げる3人のパフォーマンスは、呼吸音がするSEからシームレスで「自白」へとつなぎ、開始。光の中に浮かび上がるシルエットからyowa(Vo.Gt)の鋭いハイトーンや、AOi(Vo.Gt)のラップを轟かせる。さらに「プルートー」、「求世主」、「天使と悪魔」を連ね、AOiが「飛べるか、『レディクレ』!」と煽れば、多くの手がアップ&ダウン。サウンドはあやしげにもドラマチックにもなって体を突き動かす。加えて曲の合間も物語をナビゲートするようにSEが埋め尽くされ、実にイマーシブだ。

CLAN QUEEN

CLAN QUEEN

そしてムードをガラッとおしゃれに変化させる「ファンデーション」でいったん空気を緩めると、12月21日(土)に発表したばかりの曲「ゲルニカ」で今度は緊張感のある世界に。圧を増すギターは観客の熱を上げ、次のキャッチーかつスピード感ある「サーチライト」では、人々がクラップ&バウンド。そこに間髪を入れずヒットチューン「踊楽園」を鳴らせば、ワクワクさせるような曲の華やかさにボルテージももっと上昇する。

CLAN QUEEN

CLAN QUEEN

だがここでクールダウンの間を置いてラストシーンを彩るスローな「PSIREN」へ。不思議な感覚にも陥る音像は曲が進むにつれて押し寄せるようになり、遂には聴く者を深淵へと引き込んでいった。

CLAN QUEEN

CLAN QUEEN

取材・文=服田昌子 撮影=松本いづみ

■moon drop 

新進気鋭のアーティストたちが多数登場するステージの初日のトリを担ったのはmoon drop。

moon drop 撮影=松本いづみ

moon drop 撮影=松本いづみ

浜口飛雄也(Vo.Gt)の「Antenna、最後ですけどまだまだ有り余っているんじゃないですか。ここに集まったすべての……」の一声からスタートした「ボーイズアンドガールズ」で、観客の拳が一気に突き上がる。坂知哉(Ba.Cho)はステージからはみ出しそうなくらい動き回り、時には視界から消えることも。

moon drop

moon drop

moon drop

moon drop

「みんないけそうすっすね」と初手の反応に手応えを感じた浜口。「シンデレラ」では<思い描いた未来は幸せになれって 君に叶えてほしかったのにさ>という歌詞に「大阪」というワードを付け足すなどのアレンジを見せ、「アダムとイブ」では「みんなの今年一番の大きな声を聞きに来ました、声を出せる人いますか。今から歌う言葉を真似して歌ってください」と観客にシンガロングをリクエスト。「大阪、もっとちょうだい」「もっと!」とフロアから声を引き出していく。そうやってお互いが呼応する様からは、moon dropと観客の間にある強い信頼が感じられた。その光景は「アダムとイブ」の一節<こんな世の中で一体何を信じたらいい>のアンサーになっているようだった。

moon drop

moon drop

ラスト曲「どうにもならんわ」でも、浜口の「お手を拝借」の言葉を受けて、観客は最後の最後まで頭上で手を叩き続けた。moon dropのライブは、ステージとフロアが絆で結びついているということがあらためて証明された。

moon drop

moon drop

取材・文=田辺ユウキ 撮影=松本いづみ

【2号館プロレスリング】

■RADIO CRAZY 新日本プロレス スペシャルマッチ

高橋ヒロム 撮影=キョートタナカ

高橋ヒロム 撮影=キョートタナカ

新日本プロレス所属のレスラーが餅つきに参加するのは恒例行事であったが、15周年目で遂にプロレススペシャルマッチが開催されることに。2024年10月から3ヶ月にわたり、高橋ヒロムがFM802『EVENING TAP』の毎週火曜日夕方6時台の20分枠「ELECOM scuchame 802」のDJを担当していたことが大きいだろう。

高橋ヒロム

高橋ヒロム

リング特設席は満席であり、そこを囲むように立ち見の観客も溢れ返っている。試合前には、大抜卓人、仁井聡子、内田絢子、田中乃絵のDJ陣による盛り上げトークも実況席から行なわれた。仁井の「ロックが好きな人なら、絶対プロレスも好きだと思う!」という言葉はまさしくそうで、プロレスの闘魂ストロングスタイルという精神はロックとも相通じている。

また、関西のフェスということもあり、関西出身のレスラーがリングに上がったのも嬉しかった。大阪府和泉市出身の嘉藤匠馬もそのひとりであり、その上、翌日12月28日が誕生日という特別な試合。惜しくも負けてしまったが、1試合目から異様に盛り上がった。

辻陽太、高橋ヒロム

辻陽太、高橋ヒロム

第2試合では新日本プロレスリング社長の棚橋弘至もリングに上がり、熱狂と興奮はピークに達するが、そのピークを第3試合で更新させたのは802DJの高橋ヒロム! 棚橋や高橋のマイクパフォーマンスも堪能できたし、フェスなのにプロレスも体感できるのは素晴らしすぎるので、来年以降も是非とも続けて欲しい。

棚橋弘至

棚橋弘至

取材・文=鈴木淳史 撮影=キョートタナカ

【境内STAGE】

■Re:name(アコースティックver.)

Re:name 撮影=一守香穂

Re:name 撮影=一守香穂

アコースティックライブが行われる境内STAGEのトップを飾ったのが、Re:name。その時刻は15時30分。ちょうど甘いものが欲しくなるタイミングで、「Donut Song」が奏でられる。<大事な話はドーナツと少し苦めのコーヒーを 淹れてからにしてね>。その歌詞も、高木一成のボーカル、Somaのギター、ヤマケンのドラムの音色の柔らかさから、いつも以上に味わいが深まる。

Re:name

Re:name

「prettyfine :)」も、高木が爪弾く繊細な弦の音、そしてボディを軽く叩いてリズムを取る音が聴いていて実に心地良い。FM802の2023年3月のヘビーローテーション曲とあって、立ち止まって聴き入る観客の姿も見られた。そのほか、冬にぴったりの「Not a Love Song」でのファルセットを効かせた歌声や、ライブ初披露がアコースティックという貴重なパフォーマンスとなった「Magic Hour」でのSomaの美しいコーラスなど、Re:nameがいかにボーカル力の高いバンドであるかが感じられた。

Re:name

Re:name

高木は途中のMCで「『レディクレ』には3年連続で出ていますが、1年目は「電波無限大」という企画で4バンドで1つのステージに立って、去年は単独でAntenna、そして今年は境内ステージでアコースティックライブ。これは来年、リングでプロレスをやってるかも」と、自分たちの出番前に境内ステージ近くで開かれていた「新日本プロレス スペシャルマッチ」のリングを見て笑みを浮かべながらも、最後には「またライブハウスで会いましょう」とメッセージを贈った。

Re:name

Re:name

取材・文=田辺ユウキ 撮影=一守香穂

■映秀。

映秀。 撮影=浜村晴奈

映秀。 撮影=浜村晴奈

神社の境内をモチーフにしたステージは、能楽堂のような佇まいもあり、異彩を放つ。舞台に立つのは2021年11月FM802ヘビーローテーションにも選ばれた映秀。である。1曲目は、まさしく、そのナンバー「脱せ」。弾き語りではあるが、ギターカッティングは力強く、聴く者全てに届く。続くは2024年11月にリリースされたばかりの「ほどほどにぎゅっとして」。アコースティックギター1本ながら独特のファンクグルーヴを体現できているのは凄い。勢いそのままに、これまた2024年12月にリリースされたばかりの「涙のキセキ」へ。来春には大学を卒業してプロミュージシャンとして生きていく決意をした映秀。の覚悟を感じるナンバー。どのような想いを楽曲に込めたかを丁寧に説明してくれるので、聴く側も感情移入しやすくなる。

映秀。

映秀。

自身が本当に辛かった時にかけてもらった言葉を歌にしたという「まほうのことば」は、我々も映秀。を通して、その魔法の言葉をかけてもらっている感覚にすらなる。1月22日(水)にニューアルバム『音の雨、言葉は傘、今から君と会う。』がリリースされ、引っ提げてのツアーが2月22日(土)には大阪で開催されることも告げて、そのニューアルバムからラストナンバー「よるおきてあさねむる」へ。ハンドクラップが似合うリズミカルなナンバーであったし、新曲で〆る心意気も頼もしかった。

映秀。

映秀。

取材・文=鈴木淳史 撮影=浜村晴奈

■林萌々子(Hump Back)

林萌々子(Hump Back) 撮影=浜村晴奈

林萌々子(Hump Back) 撮影=浜村晴奈

初日の境内ステージを締め括ったのは、林萌々子(Hump Back)。Hump Backは『レディクレ』開催の少し前のワンマンライブで、約1年半の産休から復活したばかりということもあり、開演前からたくさんの人が集まっていた。

林の弾き語りを初めて観るという人や、産休中にバンドを好きになってた人もいたはず。「弾き語りでこんなおっきいステージに出させてもらうのは初めて」ということで、自己紹介。「初めまして。30歳、普段は主婦をしています。一人息子がいてるんですけど、ミルクやオムツ代を稼ぎに歌いに来てます」と、さらっと挨拶。すると、少し緊張感のあった会場の空気がほどけた。

1曲目「今夜、抜け出そう」でアコギを鳴らし、歌い始めればもう会場の想いはぎゅっとひとつに。いつだって歌で寄り添い、未来へと背中を押してくれた林萌々子が変わらずそこにいた。

林萌々子(Hump Back)

林萌々子(Hump Back)

MCでは「子育てって、感じたことない孤独感と幸福感がずっと一緒にやってくるんです」「子育てがこんなにも切なさがともなうものとは」と胸中を素直に明かす。そんな想いを綴った新曲は、今の林にしか書けない、今までになかった曲で、それでいてこの先もずっと、子どもと共に成長して永く愛される特別な存在になるにちがいない、大名曲だった。

涙なしでは聴けない母の歌から、今度は「大人は、若い子たちにカッコええ姿を見せなあかん!」「休んでる間にどんどん新しい才能が出てきて焦る。負けてられへん!」と叫び、ラストナンバーをかき鳴らす。いくつになっても、母になっても、最高にパンクでロックンロールだ。

林萌々子(Hump Back)

林萌々子(Hump Back)

取材・文=大西健斗  撮影=浜村晴奈


■1日目の別ステージレポートは以下よりチェック!

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