GOODWARP『ONEMAN LIVE 今夜一緒に潜らないか』 2025.2.15(SAT)大阪・難波 Yogibo HOLY MOUNTAIN
ザバーン。海へ潜る音がする。結成13年目を迎えるダンサブルポップバンド・GOODWARPが2月15日(土)に大阪・難波Yogibo HOLY MOUNTAINにて開催したワンマンライブ『今夜一緒に潜らないか』は、こんなSEでの幕開けにふさわしい、自らのエンターテインメントを追求せんと深い海の底へ潜り込んでいくステージだった。2023年10月ぶりになる大阪でのワンマンライブとなった同公演は、1月にリリースしたバンド初のフルアルバム『Somewhere In Between』を引っ提げたリリースツアーのファイナル。叫びながら登場した吉﨑拓也(Vo.Gt)からも分かる通り、彼らの気合いは十分すぎるほどで、オープニングナンバーに据えられた「HONK !」から4人は待ちに待ったこの瞬間を噛み締めるように、オーディエンスとアイコンタクトを交わしていく。
クリーントーンのギターを紡ぐ藤田朋生(Gt.Cho)、シャラシャラと煌めくシンバルを鳴らすコウチケンゴ(Dr.Cho)、飛び跳ねまくりの萩原”チャー”尚史(Ba)は心からバンドが楽しくて仕方がないといった表情で、結成13年目を迎えてなお、初めて楽器を手に取った胸の高鳴りや学園祭で味わったヒーローさながらの純然たる瑞々しさを抱き続けていることに敬服するばかりだ。
とはいえ、勢いに身を任せるだけではなく、重厚感を携えたサウンドメイキングも忘れないのがGOODWARPらしさ。「今日はここを大阪一熱い場所にしよう」と意気込んだ「月光花」や、「GOODWARPという海へ一緒に潜って、奥底にあるキラキラしたものを探しにいきましょう」とこの日にかける思いを吐き出した「SANZ DANCE」では、冒頭で示されたギターロック性と共振する爽やかさは鳴りを潜め、低音域のボーカリゼーションがシティポップ的なひんやりとした空気感や色気を前景化させる。
このギターロックとシティポップの両面を内包する点がGOODWARPの武器である一方で、インタビューにて彼らはどこのシーンにも属せなかったことに対して寂しさを抱えてきたと語ってくれた。そして、その孤独と相対する中で「どこにも属せなくたって良いんじゃないか」と思えたことが、「間のどこか」を意味するタイトルへ繋がっているとも。このどっちつかずにハグをする楽曲群は、目まぐるしくジャンルを横断するセットリストによって強度を増し、「このごちゃ混ぜっぷりがGOODWARPだ」と宣言するのみならず、白にも黒にも染まりきれない私たちの日常ともオーバーラップしていく。
ライブ中盤、楽曲提供を担当した6人組ゲーム実況グループ・White Tailsの活動を通じて出会ったというよしたくをキーボードに招いた特別編成で届けられたのは「びいどろ」。「今日の記憶が、いつかみんなにとっての傘になりますように」と祈りを添えてネイビーに染まった舞台からペトリコールを香らせると、「カワズ」へ。
言いたいことも上手に言えずにずぶ濡れのままでトボトボと街を歩いていた4人の前に、天使の梯子がかかっていく中、「5人でどうしてもやりたい曲。大切な歌なんだ」と「夜市」をドロップする。和のエッセンスの強いギターリフが、高層ビルが連立する雨の街から屋台の立ち並ぶ宵の街へと場面を転換し、一撃で客席を支配。しかし、シーンが変われど不変であったのは、GOODWARPの眼前に光が灯っていったことだった。
「カワズ」のクライマックスで七色に光ったライティングはもとより、「夜市」で展開された16ビートには虹の架け橋を全力疾走するエネルギーが充満していたのである。どんな逆境に立たされても彼らに天使が微笑んだ理由は、GOODWARPが決して投げ出すことなく周囲を大切にし続けてきたからに違いない。12年の活動において、同じ場所で戦ってきたライバルや後輩たちが大きなステップへ羽ばたいていく背中を見送ったこともあっただろう。
それでも、一筋縄ではいかない道をバンドワゴンに乗って進み続けてきたからこそ、GOODWARPは良縁を勝ち取ると同時に、裸一貫の姿を提示できるようになったのだ。「今からみんなの優しい心が試される時間です」と誘った「真夜中のダンス」で繰り広げられた、チャー扮するイカとケンゴ扮するカニによる寸劇は、そんな4人の飾らないハンドメイドな側面を象徴していた。
「真夜中のダンス」で格好つけない素朴な格好良さを見せつけ、「これからも僕らは皆さんの力を借りると思うけど、みんなもGOODWARPの力を頼って。ライブハウスに一杯力を借りに来てください」と「HINT」を投入。<君がいないと醒める夢を見てる ああ この退屈を愛で眩ましてよ>とファンとの交歓に思いを巡らせ、「止まない雨はないって歌」と称した「レイニー白書」を続ける。雨をモチーフに描かれた同ナンバーが、中盤戦で披露された「びいどろ」や「カワズ」とクロスオーバーを果たしながら、枕を濡らしたあの毎日と今を結んでいく。藤田のソロを合図に自然と中央へ集結していく様子や一糸乱れぬサイドステップで視覚的な豊かさを補填した風姿を目撃し、「今4人はこんなにも楽しそうにバンドをやっているよ」と手紙を送りたくなる思いに駆られた。
多くのリスナーとGOODWARPを繋いだ「ジブンシ」でゴールテープを切ると、アンコールでは「color」「サーチライト」をプレイ。それでも鳴り止まぬ歓声に急遽「snob beat(でっかく見せろ)」で応答し、ツアーの幕を下ろした。アンコール直前、吉﨑は「バンドは有限だし、砂時計をメンバー全員でひっくり返し続けるところがあるんだけど、今日は特大の砂時計をひっくり返すことができました」と語った。このワンマンを経て、ガソリンを入れ直したGOODWARPが進む先は、更に大きなステージ。そんな彼らの野心は「サーチライト」の中で歌われていた。<でも深層心理は決まって 起死回生を狙ってる>――いつだって会心の一撃は彼らの立つ場所から放たれている。
取材・文=横堀つばさ 撮影=美澄
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