撮影=Toshinari Tani
kobore『FLARE TOUR 2025』2025.2.24(MON)京都・KYOTO MUSE
koboreは現在、昨年11月27日にリリースした5thアルバム『FLARE』を携えて『FLARE TOUR 2025』を4月5日(土)まで開催中。同ツアーは前半を対バン、後半をワンマンで行う全21公演で、2月24日にはKYOTO MUSEにて前半のセミファイナルを迎えた。ソールドアウトとなった同公演のゲストは、所属事務所の先輩であるSHE’S。2組は互いに全力のパフォーマンスで火花を散らしつつ、長い付き合いだからこその舌戦でもファンを楽しませた。約2時間30分、合計26曲となったこの日の模様を紹介する。
SHE’S
撮影=Toshinari Tani
先行は先輩のSHE’S。マーチングドラムでひきつけ「The Everglow」でポップに幕を開けると、「追い風」、「Cloud 9」と続けて彼らの色を濃くする。井上竜馬(Vo.Key)の声も服部栞汰(Gt)のギターも時に哀愁をまとい、コーラスはアンセミックに。英語詞は耳心地よくファルセットはせつなく響き、観客の手が揺れると、次は「Blowing in the Wind」の軽快でのびやかな一面。井上もリラックスした様子で歌い、クラップもやむことがない。
撮影=Toshinari Tani
またMCもくだけたムードでkoboreについて。井上は「(佐藤赳に)初めて会った時、高校の時の彼女がSHE’Sが好きで、僕も聴いてました!って言うてた」と早々に笑わせ、「あん時のかわいかった赳が、今やサングラスかけて……」と話すが、「久しぶり会ったけど、かわいかったな」とツンデレ。
撮影=Toshinari Tani
そしてやさしい「If」の物語で心を温めたあとは「Ghost」へ。ギターがひずんで観客の集中も高まり、たっぷりのアウトロでは4人が全開放のアクト。満点の聴きごたえで圧倒すると、「Crescent Moon」で大人の世界へ誘ってから再びMCに。話題は2組の音楽の違いにもおよび「(koboreのように)2ビートとかないけど……いつかやろうか。おっさんになって解散しますってなった時」(井上)、「それで、もっかい火つくかもしれんし」(服部)、「つかない(笑)。なんやこれ!で終わるねん」(井上)と爆笑の予言を残し、「Kick Out」のスケール感で高揚させたらついにラストスパート。
撮影=Toshinari Tani
しかも井上が「合ってる?」と観客に聞きながらkoboreの「ヨルノカタスミ」をひと節サービスし、全員を笑顔にしてから「Grow Old With Me」と「Dance With Me」へ。晴れやかな祝祭の音像がクラップを大きくし、最後はだれもが弾んでワイパーもコールも。まさに最高潮で熱いバトンをかわいい後輩につないだ。ちなみに取材席の横にはkobore・佐藤の姿が。服部のギターが炸裂するたび、声を上げて盛り上がっていたことを報告しておく。
撮影=Toshinari Tani
kobore
撮影=Toshinari Tani
先輩の好演を受けて立つkoboreは、伊藤克起(Dr)が天を指さし、佐藤赳(Vo.Gt)が拳を掲げて登場。人気曲「幸せ」で大合唱を起こしてスタートダッシュをかける。また「エール!」 、「HEBEREKE」、「Don’t cry anymore」と勢いよく連ねて疾走し、佐藤は「SHE’Sに酔いしれてんじゃねえぞ!」とファンを煽ったうえ、安藤太一(Gt)もたきつけてギターも痛快。会場にはコールやシンガロングがあふれ、拳も次々突き上がり、熱気もすさまじい。
撮影=Toshinari Tani
撮影=Toshinari Tani
加えてMCでも佐藤は「やってくれたなSHE’S!」と対抗心をむき出しにしたかと思えば、「生まれ変わったらあの人になりてえんだよ。ピアノ弾いてよ、歌いてえんだよ」と井上のマネも。そして完売となった今日の公演については「やばくね? 狭い部屋でさ、書いた歌詞がここまで届いたんだぜ。めっちゃうれしいわ!」と語り、次は「ためいき」と「メリーゴーランド」を。やわらかなボーカルやきらめくメロディ、さらにスピード感や髪を振り乱す佐藤の姿でまたも観客を夢中にしたら、間髪入れずに今度は浮遊感あるギターも印象的な「ジェリーフィッシュ」のレトロフューチャーな質感。オーディエンスが大いに弾んで堪能すれば、佐藤からは「すげー景色だ」のひと言が。
撮影=Toshinari Tani
撮影=Toshinari Tani
そしてここで小休止。佐藤は「俺にとって(今季の)初雪は京都でした。これ忘れらんねえぞ」と口にし、「たしかあの日も雪、冬の曲を」とセンチメンタルな恋の歌「ドーナツ」で空気を一変する。じっくり聴かせて涙腺を刺激し、最後の<言葉にできません>のフレーズの余韻も強烈だ。そんななか佐藤が「20歳のころ、バンドを本気でやろうと思って大学やめた。それから10年、30歳になったらやめようと思った。今年29なんだけど、まだ俺、20歳の時より音楽やりてえわ。まだまだ曲書けるって思うの」と思いを言葉にして続く「リボーン」で熱を放出。
撮影=Toshinari Tani
観客を釘付けにしたら「パーフェクトブルー」、「君にとって」、「熱狂」という猛攻でより高みへ。フロアの歌声も大きくなって興奮の度合いも上昇の一途。文字どおりに熱狂が渦を巻く。4人も息が上がったようで、呼吸を整えながら佐藤は「いっぱい笑えた? いっぱい泣けた?」と問いかけ、「SHE’Sは俺の元カノが聴いてました(笑)」と井上のMCにかぶせ、「SHE’Sになりたかった! そのほかにも(なりたいバンドが)いっぱいいた。ONE OK ROCK、RADWIMPS、BUMP OF CHICKEN。10年間バンドやってわかったよ。もう俺は憧れにはなれねえんだ。俺はお前にとっての佐藤赳であり続ける。俺らはお前にとって4人でkoboreであり続ける。そうやって真っすぐ、かっけーバンドになりたい!」と宣言。
撮影=Toshinari Tani
撮影=Toshinari Tani
撮影=Toshinari Tani
直後「STRAIGHT SONG」の2ビートで何度でも暴れてバンドの矜持を示したら、最後は「この夜を抱きしめて」で描く青春。メンバーはリミッター解除のプレイで、田中そら(Ba)はステージに突っ伏すようにもなるが、ミュートでは「いつも頑張ってる、お前ら。やり切らねえとな、俺らも」、「いつもこの音が憂うつをぶっ飛ばしてくれる。だからやめらんねえよ。やめらんねえよな!」と佐藤が話して弾き語り、その光景を焼き付けると、そこから再度急浮上する劇的な展開で多くの拳を上下させ、夢の中に人々を残すようにして4人は舞台から去っていった。
撮影=Toshinari Tani
しかし、彼らの名前を呼ぶ声が続き始まったアンコールはゆるいトークからで、SHE’Sのメンバーをいじり返してワイワイ。「ごっつ楽しかったわ」(佐藤)の関西弁も飛び出すが、態勢を立て直すとまずは温もりある「BABY」を。メッセージは丁寧に伝えられ、ピンスポットライトを浴びて放つ歌声は強くやさしく。そしてオーラスには井上のアドリブにこたえるように「ヨルノカタスミ」がセレクトされ、感傷的なバラードがギュッと胸を締めつける。予想に反するエモーショナルなラストナンバーにすべての人が息をのむようにして全16曲のライブは終わりの時を迎えた。
今回のツアー前半ではSHE’Sのほか、キュウソネコカミやreGretGirlら全10組と競演し、さらにパワーを増したであろうkobore。3月7日(金)、仙台から始まる後半のワンマン9公演にも期待せずにはいられない。
取材・文=服田昌子 撮影=Toshinari Tani
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