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Nothing’s Carved In Stoneは過去を凌駕し未来へ繋ぐ。2ndアルバム『Sands of Time』再現ライブを観た

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Nothing's Carved In Stone

Nothing’s Carved In Stone

SPECIAL ONE-MAN LIVE “BEGINNING 2025” feat.『Sands of Time』
2025.2.24(mon)Zepp DiverCity

2025年2月24日(月祝)、Zepp DiverCityで行われたワンマンライブ「SPECIAL ONE-MAN LIVE “BEGINNING 2025” feat.『Sands of Time』」を観た。10周年イヤー以降、コロナ禍による延期と同時期に15周年記念の武道館ワンマンがあった昨年以外を除けばずっと開催してきているから、もう恒例と呼んでいいだろう。ただし、今年は通常のワンマンとは異なり、2ndアルバム『Sands of Time』を再現する内容を含むことが事前にアナウンスされている。懐かしく、今となっては非常にレアとなった曲たちも演奏することが確約されているだけに、当時を知る人はもちろん、後からハマった人にとっても“あの頃”を追体験できる貴重な機会である。

しかし、そこはNothing’s Carved In Stone。単に懐かしさを提供するためだけにこういう企画はしないはずだ。やるからには今の音で、技術で、解釈で、あっと言わせる。当時よりカッコよくなる確信のもと準備を重ねてきたに違いない。『Sands of Time』が意味する通り、刻一刻と変化を続けてきたバンドの最新形と15年に及ぶ時を超えた楽曲群は、一体どんな化学反応を引き起こすのだろうか。

Nothing's Carved In Stone

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ライブ開幕を告げたのは、現時点での最新作『BRIGHTNESS』に収録された「Blaze of Color」だった。出会い頭に生形真一(Gt/Cho)がハードロック系統の硬質なリフをぶっ放したかと思えば、平歌部分で一旦音数を減らすことで村松拓(Vo/Gt)の歌声がオーディエンスをグッと惹きつけ、サビではタフなバンドサウンドを存分に響かせる。ゆらめく炎を思わせる赤系統の照明に時折混じるストロボも鮮やかだ。村松がギターを掲げたのを合図に突入した「Bright Night」も最新作から。ヘヴィネスとダンス成分のハイブリッドサウンドの上で、日向秀和(Ba)の高速スラップが冴えを見せる。ステージからはスモークがバンバン噴出し、フロアからはクラウドサーフも起きた「You’re in Motion」を終えたところで、流れ出したのはインダストリアルなSE。ここからはいよいよ『Sands of Time』再現ゾーンへと入っていく。

まずは唸りを上げるラウドなギターを合図に、レーザーが飛び交う「Chaotic Imagination」からスタート。狂喜するフロアへ向け「いこうぜ!!」と火に油を注ぐ煽りをかます村松は、時折シャウト気味の歌唱も織り交ぜたりといつも以上に気合十分な様子。続く「Cold Reason」は憂いを帯びたアルペジオ×変拍子の構成で攻める。他のバンドだとしたら相当な変化球だが、ナッシングスなら通常運転、いや真骨頂だ。アルバム収録順に沿ってライブは進んでいき、大喜多崇規(Dr)の叩き出す緻密さと跳ねたノリの共存したビートが誘う表題曲「Sands of Time」、イントロからフロント3名がステージ前端まで乗り出してのプレイを見せ、会場中から一斉に拳が突き上がった「Around the Clock」と間髪入れずにプレイしていく。

生形真一(Gt)

生形真一(Gt)

村松拓(Vo/Gt)

村松拓(Vo/Gt)

と、ここまでの楽曲は近年のライブでも聴いた記憶があったが、次のインストナンバー「Memento」はかなり久々ではないだろうか。幻想的なシーケンスにベースが加わり、そこへゆったりとしたビートを重ねていく。海外のポストロックやインディロック的な手触りで、決して激しくはないものの雄大なスケールを湛えた良曲であることを再確認した。ただでさえ爽快な印象のサウンドに、音の飛沫がキラキラと飛び散るような生形のギターソロが彩りを加えた「Sunday Morning Escape」を挟み、今度は今なおライブで定番曲の一角を占める曲、マッドなダンスロック「Rendaman」が来てぶち上がる。かと思えば再びポストロック調のアプローチを見せつつ、途中から人力ドラムンベースへと変貌を遂げる「Slow Down」は相当なレア曲。あまりにもキレキレな演奏が終わると、フロアから感嘆の声が漏れていた。それにしても収録順通りなのに、むしろだからこそ、見事な起伏と緩急に唸らされる。

気づけば再現パートも大詰め。一段と明るい響きを備えた「The Swim」から、比較的シンプルで骨っぽいロックを叩きつける「Pendulum」を経て、優しく穏やかなバラード系の歌やメロディラインとは裏腹にしっかり変拍子してるサウンドと、繰り返される《Say goodbye》のフレーズでアルバムを締めくくる「Palm」へ。ここがクライマックスでもおかしくないくらいの充足感が会場を満たしたところで、ようやくこの日最初のMCである。当時はもっと小さなライブハウスで、メンバー同士も近距離でライブをしていたけれど、今日はその頃以上に心を寄せ合った演奏した、と明かす村松に熱のこもった拍手が飛ぶ。そして「要らないもんは全部置いて帰れ、楽しんでいこうぜ!」との言葉と共に始まった「Beginning」から、ライブは再び現在進行形のナッシングスを見せつけるセクションへと突入していった。

大喜多崇規(Dr)

大喜多崇規(Dr)

日向秀和(Ba)

日向秀和(Ba)

セッション風の演奏から、生形の奏でるカッティングに村松がイントロを重ねていく始まりが秀逸だったのは「Challengers」。そこからSEで繋いで「Freedom」へ。ここ以外でもSEや音源に無い演奏で曲感を繋いでいくアプローチがいくつかあったのも特筆すべき点だった。彼らのライブはいつだって怒涛の勢いだが、この日はそれに加えてスムーズな連続性とクラブミュージック的に音を浴び続ける快感もプラスされていたように思う。で、またしても音を止めることなく繰り出されたのは伝家の宝刀「Out of Control」。レーザーにCO2ガスと特効も全部乗せでド派手に攻め倒した後、ラストの「Dear Future」ではコーラス部をオーディエンスへ委ねるなど、煌々と照らされた場内にあたたかな一体感を作り出していった。

この日ナッシングスから受け取ったのは、思い出補正なんて軽く凌駕して過去も現在もまとめて未来へと引き連れていく意志だった。だから、アンコールで明かされた5月からの対バンツアーも、すでに取り掛かっているという新たな作品にも相当な期待を賭けざるを得ないのだが、それすらも彼らは当たり前のように上回ってくれるはずだ。ドラムセット前にギュッと集まって向き合いながら始まった「Isolation」を痛快に、心底楽しそうに演奏する4人を観ながらそう確信したのだった。

取材・文=風間大洋 撮影=RYOTARO KAWASHIMA

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