さとう。
シンガーソングライター、さとう。一度聞いたら忘れないのは名前だけじゃなく、声も歌詞も存在感も唯一無二。アコースティックギターの弾き語りシーンで頭角を現し、2024年に「3%」のSNSヒットで一躍注目を集めた24歳は、しかしすでに長年のキャリアを持つ音楽家だ。リアリティ溢れる魅力的なフィクションを作り上げる、シンガーソングライターとしての大きな才能には驚かずにはいられない。 SPICEでの初インタビューは、いわばさとう。の自分史。歌い始めたきっかけや影響を受けた邦ロック、初期のライブ活動や上京後の心境の変化、初めてバンドサウンドに挑戦した「朗朗」(TVアニメ『花は咲く、修羅の如く』エンディング主題歌)を含む新作ミニアルバム『とあるアイを綴って、』に至るまで、その音楽と人柄にせまった。
――「日村がゆく 高校生フォークソングGP」に出演して脚光を浴びたのが2018年12月。話せば長くなりそうですけど、ここに至るまでに第何章とかありますか。
曲作りにおいてだとしたら、2回ぐらい大きな変化があって、コロナ禍の時と、あとは去年ですね。上京してライブハウスで歌い始めたのが2019年の11月で、いろんなところから呼んでもらえるようになって、これから楽しみだなって思ってた矢先に、(コロナ禍で)全部ライブがキャンセルになっちゃって。それが自分の中では大きな気持ちの変化というか、やっぱり辛かったですし、「自分は何も知らないまんまこのまま終わっちゃうのかもしれない」と本当に思いましたし、それが一番大きかったですね。自分だけじゃなかったかもしれないですけど。
――あの時期は、みんなそうだったかもしれない。
それでも、ちょっと落ち着いたあたりにライブハウスに出させてもらえるようになったんですけど、コロナ禍の前にたくさんライブしてたわけでもないので、お客さんを呼べるわけもなく、そもそもライブハウスに対する偏見もあった頃なので。そういうのもあったにも関わらず、ライブハウスの人は優しい人ばっかりで、全然お客さん呼べてないさとう。をずっと出してくれて、すごいありがたいなって思いながら歌っていた、それが自分の中での第2章という感じがします。
――その頃の思いを歌った曲ってあります?
それが「楽屋」という曲です。リアルタイムで書いてたんじゃないですけど、その時を思い起こしながら書いた曲ですね。
――ああ、それで“出囃子が聞こえないからこの部屋から出れない”なのか。あれって、ダブルミーニングですよね。そういう時代の状況と、まだ世に出られない自分の状況との。そして二度目のターニングポイントが去年ですか。
「3%」っていう曲がSNSでいっぱい聴いてもらえるようになって、リリースもされて、アルバムを出したりツアーをやったりで、目まぐるしく1年動いてて。出会う人がとても増えたというか、ミュージシャンもライブハウスの人も「はじめまして」がすごい増えて、今までのさとう。は自分の内側にあるものをずっと歌ってきたんですけど、そのあたりから徐々に「この人たちに歌いたい」っていうビジョンがくっきりしだしたというか、そこが去年の1年間を経てすごく変わりましたね。
――その変化は、今回のミニアルバム『とあるアイを綴って、』にも、すごく詰まってるなと思います。
そうですね。アレンジが加わったっていうのはもちろんですけど、前作『産声みたいで、』(2024年)はギターと声だけで、「ありのままのさとう。をとにかく聴いてほしい」っていうのがすごく強いアルバムだったんですけど、今回は今までのさとう。を知ってる人も、初めて出会う人たちにも届いてほしいなっていうのが、気持ち的にも楽曲的にもこもってますね。
さとう。 – 3%【Music Video】
――ここから新章スタート、という感じがすごくします。ちょっと時間をさかのぼって、音楽的ルーツの話をしていいですか。プロフィールを読むと好きな音楽がサカナクションで、ちょっと意外だったんですよね。今やってることとはだいぶ違う気もしますけど。
最近いろんな方に「ルーツとかあるんですか?」って聞かれる時に、私、本当に物心ついた時から音楽がやりたいって思ってたので、この人のライブ映像を見てとか、この人の音楽に憧れてとか、そういうのがないまま来ちゃって、どうしようってなっちゃって(笑)。自分が邦ロックにハマった中学の時に、ONE OK ROCKさんとかを聴いてたんですけど、自分で音楽を選んで聴くようになってから今までずっと長く聴いてるのはサカナクションさんだなと思うので。サカナクションさん自身も波があるというか、メディアにわーって出る時期もあれば、お休みする時期もあったりとか、その温度感がさとう。にたぶんすごく合ってて、ずっと聴いてますね。
――そういう姿勢に、音楽性の好みも含めて?
そうですね。音楽性もそうですし、山口さんの音楽に対する姿勢がさとう。と真逆というか、今度出るサカナクションの新曲が3年ぶりで、それぐらい1曲に対して、1個の歌詞に対してすごい思い詰めることが出来る方だと思うんですけど、さとう。はそのままを書いてしまうことが多いというか、サッと書くことが多くて。それは自分でも強みというか、好きな部分でもあるんですけど、逆に1曲に対して1年かけてっていうのをやったことがないし、やれって言われてもきっとできないと思うので、私とは別の角度の曲との向き合い方を持ってる人だなと思って、すごい尊敬しています。
――オリジナル曲を作りだしたのは、「日村がゆく 高校生フォークソングGP」に出る頃ですか。
さかのぼると、小学校6年生ぐらいの時に作ったりはしてたんです。ピアノを習っていたので、ピアノで弾いてみたりして、世に出すわけでもない曲を。で、中学2年生からツイキャスをやってて、そこでたまにオリジナルを歌ったりしてたんですけど、それをちゃんとみんなに聴いてもらえる場所を作ろうと思って、YouTubeを始めて、高校3年生の冬に「幸せ」っていう曲を書いて、「日村がゆく 高校生フォークソングGP」に出て、みなさんに聴いてもらえてっていうことがあって。シンガーソングライターのさとう。と名乗り出したのは「幸せ」からなので、それがさとう。の始まりと言っても過言ではないかなって思います。
――しかもいきなり悲しい失恋の歌。
そうなんです(笑)。タイトルからはちょっと想像ができない、悲しい歌です。生まれて初めて、後にも先にもあそこまで実体験というか、失恋をちゃんと歌ったことがなかったので。今やろうとすると、ちょっと背伸びしちゃうというか、そういう感じで書こうって言われても書けないだろうから、「あの時の自分、ナイス!」って感じですね。書いといてよかったって思います。
さとう。 – アマレット【Music Video】
――そこからたくさん書いて、ストックはいっぱいありますか。
はい。曲を作るのはすごく好きで、前回のアルバムも新曲は1曲だけで、あとはライブハウスでやってた曲ばかりで、過去から今日までのさとう。をそのまま入れたアルバムだったので。今回のミニアルバムも、新しめの曲が多いんですけど、ライブハウスではお馴染みの曲ばっかりで、しかもバンドアレンジで生まれ変わって、新しいものとして届いたらいいなって思ってます。
――どんなパターンが多いですか。歌詞が先ですか。
詞先、曲先がなくて、ギターを弾きながら同時に歌い始めて、「このメロディ好きだな」ってなった時に詩を乗せるっていう感じです。
――たとえば「3%」はどんなふうに?
「3%」は最初のギターのフレーズをずっと弾いてて、できた曲ですね。歌詞に関しては、姉に電話してる時だったんですけど、一時期一緒に住んでて、「今帰ってるところ」っていうのを急いで伝えようとして、電話を切ったあと「これを恋人の会話にしたら面白いだろうな」っていうので書き始めました。そういうこともまちまち、あったりします。
――作家ですね。実体験を物語に変えていく。
実体験のものにフィクションを混ぜて書くのが好きなんです。
――「ピアス」もそうですか。耳に穴を開けるっていう肉体的な行動に、感情の比喩を乗せていくのがすごくうまいなぁと。
ありがとうございます。本人はピアス開いてないんですけどね(笑)。
――そこが面白い(笑)。やっぱり作家的ですね。
「ピアス」はライブハウスの企画で、曲名縛りで書き下ろすっていうのがあって、ピアスの日っていうのに出させてもらった時に書いたんですけど。人がピアス開ける時っていつだろう?って色々考えて、大学デビューとか、そういう人もいるかもしれないけど、「もしかしたら好きな人に振り向いてほしくて自分を着飾る子もいるんだろうな」と思って書き始めたのが「ピアス」でした。
――完全想像なんですね。でも全然そういうふうに聴こえない。実体験ぐらいリアル。
嬉しいです。自分はピアス開いてないのに、開いてる人から「わかる」っていう声があったりとか、すごいありがたいです。
――面白いから片っ端から聞いちゃいます。「あの夜」っていう曲、好きなんですけど、かなり生々しいじゃないですか。エロティックというか。
誰しもが、「もうどうなってもいい」みたいな夜ってきっとあるだろうな、みたいな。ちょっと強がってるけど、どこか垣間見える女々しさがのぞくような曲になったらいいなと思って書いてみました。テンポが変わる曲が書きたくて、それが露骨に出てるのが「あの夜」ですね。
――歌の中に主人公がいるんですね。自分というわけじゃなくて。
さとう。じゃない人が常にいるんです。「楽屋」とかは結構自分の歌だったりするんですけど、どっちかっていうと、さとう。じゃない人の、どこかの誰かのノンフィクションを歌うっていうことをいつも意識してます。フィクションなんですけど、でも誰かにとってはノンフィクションかもしれないって思いながら、歌おうかなって思ってて。「歌が寄り添ってくれる」って、よく言っていただくんですけど、その意識がそこに繋がってるのかな?って思います。
――それは大きなポイントですね。シンガーソングライター・さとう。を語る上で。「振り返る街」とかもそうですか。青春を振り返るような、せつなくいけどとても素敵な曲。
「振り返る街」は、好きな芸人さんがいて、その二人に向けて書いた曲です。もう解散しちゃったんですけど、うしろシティっていうコンビで、だから「振り返る街」なんです。その二人が終わっちゃうって聞いて、すごい好きだったので、すぐにワーって書きました。でもそうやって何かを振り返ることって、私はその二人をイメージしてるけど、もう会えない昔の友達を思ってくれたりとか、いろんな方がいろんな形で受け取ってくれるのはすごくありがたいです。嬉しいです。
さとう。 – 点滅する【Music Video】
――ちょっとずつわかってきました。曲を作る動機が、認証願望や自己表現だけじゃなくて…。
物語を歌いたいっていうか、物語が多いですね。最近になって、「楽屋」ぐらいから自分の歌を書いてみようって思って、たまに書いてみたりしてるんですけど。結構悲しい歌が多いです。
――確かに。悲しい歌、多いですね。
ついつい、悲しくなっちゃうんですかね。
――ハッピーな歌ってありましたっけ。
あんまりないかもしれない。希望は常にあるんですけど、「細胞」とか「食卓」とか、戦うぞ!みたいな曲はあったりするんですけど、最初から最後まで楽しい、嬉しい、ハッピーみたいな曲は少ないかもしれない。
――なんででしょうね。
なんでですかね? 自分自身ハッピーではあるんですけど、すごく幸せなんですけど、どうしても闇の部分というか、影の部分に愛しさを求めてしまうというか。暗闇に美しさを求めてしまう自分がいるのかもしれないですね。今回のミニアルバムの「点滅する」っていう曲が、それが露骨に出てるというか、明るい曲ではあるんですけど、「闇にフォーカスした応援歌」みたいな感じなので。
――確かに。そろそろ新作『とあるアイを綴って、』の話に行きましょう。「点滅する」は、どこから思い浮かんだ曲ですか。
「点滅する」は、歌詞に信号が出てくるんですけど、私の仲良しのシンガーソングライターの方たちと、信号をテーマにしたライブを2回やったんですよ。最初にさとう。プレゼンツでスリーマンをやって、3人ともそれぞれ違う音楽をやってるんだけど、私は二人のことが大好きで、信号が切り替わる時のように、隣でずっと歩いてくれるし、一緒に立ち止まってくれる人たちだな、私もそうありたいなと思って、「信号が変わる時」っていうタイトルのライブを作ったんです。その企画が好評で、去年の7月にまた3人で集まって、「信号待ちに口ずさめば」っていうタイトルでやった時に書き下ろしたのが「点滅する」です。一応カラーが決まってて、私、黄色担当になったんですよ。黄色って、チカチカするじゃないですか。
――それで「点滅する」なのか。なるほど。
その二人もそうですし、私の周りにいる人たちって、いつも元気でニコニコしててっていう人よりかは、たまに弱さを見せてくれたり、もう頑張れないって時は素直に落ち込んだり、「頑張れない」って言ってくれる人がすごく多くて、それが人間らしくて愛おしいなってずっと思っていて、その人たちに向けて何か歌えたらなと思って書きました。背中を押すような曲でもないですし、闇にいる人を引っ張り上げるような曲じゃないんですけど、その闇に寄り添えるような、背中をさすれるような曲が書けたらいいなと思って書いたのが「点滅する」ですね。
――それが、闇にフォーカスした応援歌。
こういう曲が書けるようになれて、さとう。はすごく嬉しいです。
さとう。 – 朗朗【Music Video】
――「朗朗」は、アニメ『花は咲く、修羅の如く』のエンディング主題歌。書下ろしですか。
そうです。アニメの話をいただいて、初めてのタイアップなので、何ならこの曲でバンドアレンジを初めてやろうってなって。アレンジをしてくださった関口シンゴさんが話をいっぱい聞いてくれて、弾き語りが好きなんですよねっていう意見を汲み取ってくれて、自分のギターの音がすごく聴こえるアレンジにしてくれてて、それが大きかったですね。「あー、バンドサウンド楽しい!」って思いました。
――歌詞については。
最初に原作の漫画を読んだんですけど、漫画がアニメになる時って、原作のファンの方も多くいらっしゃいますし、作品に寄り添った曲にしたいなっていうチャレンジが自分の中にあって。それまでのさとう。は、自分の曲を自分の言葉で、自分の中にあるものを伝えなくちゃいけないっていうことにすごく重きを置いていたのが、2024年の1年でとても大きく変わって。そんなさとう。の曲を聴いてくれる人たちが本当に増えて、「もっとこの人たちにちゃんと届くように歌わなきゃいけない」って、それが使命でもあり希望でもあり、そういうことをすごく思った1年で、その時にこの話が来て。
――運命的ですね。グッドタイミング。
朗読がテーマのアニメなんですよ。話に出てくる人たちはみんな、すでにある言葉を自分の声で伝えることに重きを置いてる人たちだったので、「今までのさとう。とは真逆だな」と思って。「たとえ伝わらなくても、さとう。の言葉でさとう。の歌を歌う」っていう今までの自分ではなくて、「朗朗」のサビの1フレーズ目は、この作品と出会わなかったら歌えなかった言葉だなって思います。“誰かの言葉でも構わない、伝えるんだ”っていうのは、さとう。も「伝えなくちゃ」ってすごく思った1年だったので、そこにすごく重きを置いて歌おうと思って、この曲を書きました。
――この歌詞も、いろんな受け取り方ができると思うんですね。自分は、リスナーとして、普段言えないような心の中の思いを、さとう。が歌にしてくれてるっていうふうに受け止めました。
みなさんがこの曲を聴く時に、そうやって自分の思いも乗せて聴いてくれたら嬉しいですね。
――いい歌って、そういうものじゃないか?と思うんですね。心に残り続ける歌って、誰かの言葉だけど、それってやっぱり何か自分を代弁してくれてるものが乗っかってるからだと思うし、「朗朗」はそういう歌でもあるかなって思いました。個人の意見です。
嬉しいです。無意識に書いてる部分もあって、最初は作品の中の子たちの歌だと思って書き始めて、でも徐々に書き進めていくうちに、「このサビのフレーズは私の本心だな」って思うようになって。この女の子たちのことを代弁するつもりで書いたかもしれないけど、今の自分が本当に思ってることだなって、歌うたびに思うので、本当に大切な曲になりましたね。
――ちなみに、この曲に限らず一人称を「僕」にすることが多いのって、何か意味ありますか。
そうなんですよね。深い意味はないんですけど、たぶん昔から男性アーティストの曲ばっかり聴いてたこともあって、僕って言っちゃうんです。さとう。自身を歌うことがほとんどないので、私っていうよりかは、僕って言っちゃうことが多いですかね。
――ちなみに女性アーティストで、好きな人っています?
上京する前までは、私の勝手な偏見で、女性シンガーソングライターって、可愛い女の子が可愛い歌を歌うんだろうなみたいに、勝手に思ってたんですよ。だから、「シンガーソングライター・さとう。」って名乗るのがこっ恥ずかしかった時期があって。でも上京したての一人暮らしの部屋で、テレビがなかったのでラジオを聴いてたら、カネコアヤノさんが流れてきて、「なんてかっこいいんだこの人」って、シンガーソングライターってめちゃめちゃかっこいいじゃんと思って。私がONE OK ROCKさんとかサカナクションさんとかに抱いたような「かっこいい」が、ちゃんとシンガーソングライターにもあると思って、「私はかっこいい人になるんだ!」と思って、シンガーソングライターっていいなって思わせてくれたのがカネコアヤノさんでした。
――いい話。
あとは、すごい身近な人になってしまうんですけど、自分の師匠って勝手に言ってる人がいて。初めてライブハウスでご一緒した時に、今まで出会ったことのないかっこよさにすごく衝撃を受けた、一寸先闇バンドのおーたけ@じぇーむずさんという方が、私の師匠です。慕ってる人がいっぱいいる方なんですけど、最近さとう。のことを「私の弟子」って言ってくれるようになったので、認められたのかな?って思います。
――いいですね。いい関係。
上京して、ライブハウスに出るようになって、「シンガーソングライターってかっこいい」って再認識することがすごく多くて、私よりも全然場数を踏んできてる方々と一緒にできたことも宝ですし、そういう場を作ってくれたライブハウスの人たちにも感謝ですし、追う背中がとても多いのが、今のさとう。が走り続けたいって思える原動力です。
さとう。-mini album「とあるアイを綴って、」 【全曲ティザー】
――ミニアルバムのラストを締める「Aini」について聞かせてください。これは誰かの物語じゃなくて、一人称がさとう。の曲ですよね。
これは私の曲ですね。毎年12月31日に1曲書き下ろすっていうのを、2019年からやってるんですよ。自分の勝手な縛りみたいな感じで。この「Aini」っていう曲は、2023年の12月31日に書いた曲です。書いた時にはすごく祈りがこもっていて、それが本当に2024年はこの歌通りの1年になったなと思っていて、本当にたくさんの人に会いに行けたし、会いに来てくれたし、そういう1年になったなと思っていて。でもその祈りは、今もずっと私の中で変わってないので、初めてのバンドアレンジが加わったミニアルバムで、最後の曲でこれが歌えるっていうのは、しかもギターとさとう。の声だけでできるっていうのは、すごく嬉しいですね。
――初めてバンドアレンジでやってみて、自分の声との相性とか、どのぐらい手ごたえがあったかとか。ミニアルバム作り終えて思ったことは?
前作のアルバムを聴いた人が、このミニアルバムを聴いたらびっくりはすると思うんですけど、それでもちゃんとさとう。の声もギターも、変わったというよりかは広がったようなアレンジにしていただきましたし、アニメを通してでも、ジャケット見て手に取ってくれた人でも、素敵だなって思ってくれるような曲が入っていると思うので。「アマレット」とか「Aini」とか、ギターの音がすごく聴こえてくる曲もありますし、どんな人に聴いてもらっても、さとう。のありのままを伝えられるんじゃないかな?っていう、そういうミニアルバムになったなって思います。
――そしてタイトルが『とあるアイを綴って、』。「、」を忘れないようにしないと。
名前にも「。」が入ってたりして、ハッシュタグにはじかれちゃうのが悩みどころではあるんですけど(笑)。点や丸を入れるのが好きなんですよね。「アイ」をカタカナにあえてしたのは、ラブのほうの愛だったり、自分自身のIだったり、哀しいの哀だったり、そういうものがふんだんに散りばめられてるミニアルバムなので。ジャケットのメッセージボトルは、さとう。の曲だけじゃなくて、音楽って誰かの元に届いて完成するものだと思っているんですけど、このタイトルには自分の中でかっこ書きがあって、本当は『(あなた)とあるアイを綴って、』なんですよ。あなたが最初にあって、「あなたと一緒にある愛を綴って」っていう意味合いを込めて作ったんです。メッセージボトルみたいに、このミニアルバムがあなたの元に届いて初めて完成する音楽になってほしいなと思って、このタイトルにしました。6曲とも全部、本当にさとう。の大事にしてきた曲たちが詰まってるので、受け取った人たちがそれぞれの愛し方で、それでも一緒に寄り添えたらいいなっていう祈りが、すごくこもったミニアルバムになったなって思います。
――いろんな人に届きますように。そしてここからの活動に、どんな夢を描いてますか。
リリースの後に初めてのバンド編成のツアーが始まるので、バンド編成もありつつ、弾き語りもちゃんと残しつつ、さとう。を今までずっと聴いてくれてる人たちが見ても、このツアーで初めてさとう。を見た人も、ちゃんと何かを受け取って帰れるような、そういうライブにしたいなって思いますし、その後に出していく作品にも、ちゃんとそういう祈りはずっと込めていきたいなって思ってます。
取材・文=宮本英夫
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