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ゴスペラーズ30周年、日本のヴォーカルグループの第一人者が踏み出す新たな一歩

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ゴスペラーズ

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昨年末にメジャーデビュー30周年を迎えたゴスペラーズが踏み出す、新たなチャレンジへの第一歩。3月26日にCDリリース(配信はリリース済み)される新曲「will be fine feat. Anly」は、TVアニメ『天久鷹央の推理カルテ』エンディングテーマソングとしてオンエア中、シンガーソングライター・Anlyをゲストヴォーカルに、Yaffleをサウンドプロデュースに迎えた意欲作だ。Yaffleによる立体的な音響空間の中で、6つの声が自在に飛び交う風景は、これまでのゴスペラーズとは趣の異なる新鮮な魅力に溢れている。リリース後には「G30」=30周年を記念した大規模な全国ツアーも始まる。日本のヴォーカルグループの第一人者として、先頭を走り続ける5人は今何を考えているのか。含蓄ある言葉に耳を傾けよう。

――4月から始まる30周年ツアー、『ゴスペラーズ坂ツアー2025 “G30”』の日程を見て驚きました。およそ6か月で51本、日本中をくまなく回るすごいスケジュールです。

安岡 優:最初に全都道府県を回らせてもらったのが「G10」の前の年で、そこから幸運なことに15周年、20周年、25周年、25周年はコロナの途中で止まっちゃったけど、全国を回るっていうことをやり続けられてるのは、本当にファンのみなさんとスタッフに感謝です。今回も30周年で、51本もツアーを回れるっていうのは、最初の頃の気持ちを僕らもファンのみなさんも忘れずにやってこれたってことなんでしょうね。

――本当にそうだと思います。

安岡:ありがたいことです。とはいえ、自分たちがやりたいだけじゃやれないんだと。20周年の時に、「周年だから」って全国を回れることがあと何回あるだろう?なんて言いながら、「気を引き締めてやっていこうね」なんて話をしたんですけど。なんとか30周年まではやれるので、この10年間にも意味があったなと思います。

村上てつや:正確には「ほぼ全国」ですね。今回、徳島と山梨が、会場とスケジュールの都合でできないので。地元の方が「うちだけないのか…」って思うかもしれないですけど、その方々の気持ちも思いながら、しっかりと全国を回って行こうと思ってます。

――どうですか。この先「G50」くらいまで見えてますか。

村上:いや、それを見てもあんまり意味がないと思うんですよね。最初の頃は5年、10年で終わらないようにと思ってたけど、グループがいつどんなことになるかなんて誰にもわかんないし、先のことを考えるというよりは、一個一個の仕事と向き合って、次にいい曲を書くこと、次にいいステージをすること、その積み重ねでしかないと思うんですよね。でっかい目標を立てると、達成したら達成したで、風船が割れちゃうっていうか。

北山陽一:無理しちゃう時があるからね。

村上:でっかい目標で言えば、「30周年は久しぶりにアリーナクラスでやってみようよ」っていう話が、スタッフ提案でありまして(*2024年12月20、21日の日本武道館と2025年1月13日の大阪城ホール)。これが失敗してたら、今はどん底の気分だったと思うんですけど(笑)。

安岡:3日間ともソールドアウトして。スタッフの提案を、ファンのみなさんが気持ちよく受け止めてくれたということですね。

村上:僕らが受け止めるのは簡単ですけど、実際にお客様が来てくれないと。そのためにスタッフも頑張ったし、ファンの人も頑張ってくれたわけですよね。年末年始の忙しい時に、スケジュールを合わせて全国から来てくださって。そういうことって、若い頃はわかんなかったんですよ。ファンの人たちも頑張ってるって気持ちはわかんなかった。

安岡:「自分たちの夢が叶った」で終わっちゃってた。

村上:そっち側の視点しかなかったけど、今は年齢を重ねて、みんながいろんなことを調整してそこに来てくれてるっていうことを、ことさらに言いはしないけど、「わかってますよ」っていう気持ちをステージからも出せるようになったと思うので。来れなかった人も含めて、僕らを応援し続けてくれる方々の気持ちが僕らのお守りというか、そういうものになっていると思うので。ライブってそういう、双方向のものじゃないですか。本来は。

――そうですね。

村上:今はそういうことがわかるようになって、地に足ついたなっていう気がするんですね。若い頃は背伸びするのもいいと思うんですけど、着地の仕方が大事じゃないですか。売れた瞬間の最大風速のままで、ずっといられるわけがないから。先輩方を見てても、ある高さを保ってる人たちの着地の仕方はすごく参考になるし、幸いなことにそういう人たちにたくさん可愛がってもらえて、それを見て自然に学んだっていうところがあるかもしれないですね。

安岡優

安岡優

――あらためて、メジャーデビュー30年を迎えた心境について、聞かせてください。

北山:やっぱり未だに、今を一生懸命生きてるということは変わらなくて、瞬発力で生きてる感じはあるんですけど。30年やってきたことで、「今やりたいこと」が変わってきたなっていうのは感じます。デビュー当初はよく「座右の銘は?」と聞かれて、「明日できることは今日やらない」って答えてたんですけど。

村上:いい言葉だね。ある意味(笑)。

北山:でも最近は、明日に繋がる何かを今日やっておくのが楽しいなって思えるようになったんですよ。50にもなって今?って感じだと思うんですけど、自分からそういうふうに変わっていってることを感じて、「今を生きる」っていう定義が自分の中で変わってきたと思いますね。

酒井雄二:以前は、せっかくツアーに行くんだったら、地元の人にたくさん入ってほしいっていう気持ちが強かったんですね。だから自分の地元でやったライブで、「チケット取れない」っていう同級生や先生とかがいて、しょんぼりしてたんですよ。「よそからたくさんお客さんが来ちゃって困った」とか言ってたんですけど、今はツアーを一緒に回るというか、「遠征してうまいものを食べて飲んでます」みたいなツイート(ポスト)を見ると、みなさんも余裕ができて、無理してお小遣い全部使って旅してるわけじゃないんだろうなっていう感じが見えるようになって、むしろ俺が「あそこのパンはうまいよ」とか紹介したのを食べに行って、「確かにうまいです」っていう反応は嬉しいなと思うようになりましたね。そういうことに対して「いいね」と思えるようになったのが、以前とは変わったところだと思います。昔はもう少し偏境で、人を許す気持ちが足りない人だったんじゃないですかね。慈悲深くなりました。

村上:慈悲深いまで行ったか(笑)。

安岡:30年間のどこかで急に変わったわけじゃないですけど、若い頃は毎日毎日がそれまでの最高得点を叩き出したくて、がむしゃらで、それ自体は本当に良かったと思うんですけど、ある時から「いつも通り」っていうのが一番大事なんだろうなと思うようになりましたね。どんな時もいつも通りの自分でいるとか、いつも通りのパフォーマンスをするとか、それにたどり着くことが目標なんだろうなっていうふうになりました。

――はい。なるほど。

安岡:この30年の中で、社会全体に災害があったり、最近だとコロナがあったり、生きてる間にいろんな困難が降りかかってきましたけど、そんな時でもやっぱり僕らはいつも通り、5人で笑顔でステージに立つのが一番大事なことなんじゃないかな?と思うので。「今はライブに行く余裕がありません」っていうファンの気持ちも受け止めて、「いつかあなたが来る時のため、その日まで僕らはライブを続けてるんですよ」っていうメッセージを届けるためには、やっぱり「いつも通り」が大事なんですよね。「こいつら、今年もこんなにライブやってんだ」ということを毎年やることが大事で、特別な今日っていうことじゃなく、いつも通りの今日を積み重ねていくことが大事なのかな?っていう気持ちになりましたね。この30年で。

――いい話です。いろんな職業にも通じることだと思います。

黒沢薫:僕は元々歌うことが好きだったんですが、30年経って、より好きになってるなっていうのを感じてるんですね。ツアーでいろんなところに行った時に、「明日ライブだから酒飲めないし、遊びに行けないし」みたいに思ってる自分が、いなかったわけではないんですけど、今は「明日いい歌を歌うためにここを直さないと」とか、昨日のライブ録音を聴きながら思っている自分がいたりして。心穏やかというか、気持ちがより歌に行ってるというか、そういう感じになってますね。

――それはかなりの変化ですね。

黒沢:酒飲んだって不摂生したって、いい声を出すのがミュージシャンなんだよ、みたいな考え方もあったと思うんですけど、30年経って思うのは、俺はもうそれはできないから、自分の中で調整して、いい歌を歌って、「いい声が出たな、楽しいな」って思うしかない。そういうふうに生きていくんだなっていう覚悟が、この30年で徐々に固まっていった感じですね。今は本当に楽しいですよ、ライブツアーは。もちろんライブが終わった後に遊びに行くのも好きですけど、やっぱり一番好きなのは、ライブで歌って、5人でハモってる時なので。「それだよな」っていう確認が自分の中で取れた、そういう30年だったと思います。

黒沢薫

黒沢薫

――素晴らしいです。そして30周年を迎えて、新たな一歩を踏み出す新曲が「will be fine feat. Anly」。デュエットの相手がAnly、サウンドプロデュースがYaffleという、聴きどころいっぱいの楽曲です。どんなふうに作って行ったのか、まずは作曲の黒沢さんから語ってもらえますか。

黒沢:楽曲自体は、ちょっと前からあったんです。デモの状態で、なんとかこれを形にしたいなと思っていた時に、アニメのタイアップのお話をいただいて、Anlyとデュエットにしたいということだったので、Anlyはゴスペラーズのみんな仲良しだし、一緒に何回も歌ってるし、ぜひやりたいですと。ただ、元々のデモはデュエット仕立てじゃなかったんで、それをデュエットに直すところから始めましたね。アレンジメント的には、Yaffleくんにやってもらおうっていうのはわりと早い時期に決まってて、Yaffleくんもゴスペラーズはみんな知ってて、好きだったんですよ。「いつか一緒にやりたいね」っていう話は何年も前からしてたんですけど、タイミングってあるじゃないですか。「頼みたいけど、今じゃないかな」というのが何回かあって、今回、満を持してYaffleくんにやってもらおうということでした。

――時は来たと。

黒沢:実は、作業がスタートしたのは2年ぐらい前だったんです。その時は、我々でオリジナル曲を書いてなかった時期なんですけど、やっぱりゴスペラーズの作詞で一番多くて代表的なものを書いてるのは安岡だから、作詩は安岡に振りました。

安岡:『天久鷹央の推理カルテ』は、小説が原作で、先に漫画化されてるんですね。その漫画と、今回アニメ化されるものの台本を送っていただいて、全部読みまして。内容は医療推理モノっていう感じなんですけれども、物語を読んで、医療って本当にチームワークだなって思ったんですよね。天久鷹央っていう天才医師が主人公なんですが、たった一人の天才だけでは物事を解決できなくて、たくさんの人がそれぞれの立場から真剣にタッグを組むことで事件が解決する。それって、言ってしまうと僕らが30年間やってきたことと一緒だなと思ったんですね。そのチームワークの輪の中に、今回Anlyも入ってくれるっていうことで、Anlyが歌う部分は女性の声にしかない強さとか、特にAnlyは低音がすごくいいですから、「Anlyにはこの言葉を歌ってほしいな」とか、いろいろ考えました。

――デュエットの醍醐味ですよね。

安岡:医療モノっていうことで考えたのは、治療が始まる前にお医者様に言ってもらう「良くなりますよ」っていう一言が、病気になった時の一番の薬じゃないですか。それで「will be fine」っていうタイトルを最初に決めて、曲の最後を「will be fine」っていう言葉で終わろうと。エンディングテーマなので、アニメを見る方に最後に届く言葉を「will be fine」にしたいなと思って、書いていった感じですね。

酒井雄二

酒井雄二

――歌い手としては、どんなところがポイントですか。

酒井:Yaffleくんのアレンジは空間の奥行きというか、隙間を見せて立体的になる曲が多いと思うんですけど、そこにゴスペラーズをどういうふうに配置するんだろう?と。やっぱり混み合うじゃないですか。人間が5人もいて、Anlyちゃんもいるところで、どうするのかな?と思ったら、静けさから入って次第にいろんな声が飛び出すような、そういう配置に落ち着いたんで、すごく学ぶところが多かったです。そもそも「ゴスペラーズをどう使いますか?」というものを、僕ら自身が色々知りたいんですよね。こうやって、誰かと一緒にやりましょうっていう時には、結果が面白いコラボレーションになることを期待して球を投げるわけですけど、今回も十分そういう、新しいゴスペラーズの音像が楽しんでもらえる仕上がりになったんじゃないか?と思います。

北山:我々5人、プラス1で6人が歌う時に、リードヴォーカルが入れ替わるヴォーカルチェンジ芸みたいなものと同時に、リードシンガーじゃない人が何をするのか?っていうのが非常に重要になってくると思うんですけど、そこにもYaffleさんがしっかり提言してくださって、ある種僕らを楽器として使ってくれるというか、そのアイディアが素晴らしかったので、僕らも「彼の音になりたい」と思って預けた部分もあって。いわゆる「ゴスペラーズっぽいコーラスをしてください」ではなくて、6人の歌い手がこのメッセージを届けるのに、リードヴォーカルじゃない人たちもいろんな役割でやってるよ、みたいなところに気づいてもらえると嬉しいです。「これはどういう構造になってるのかな?」と思って聴いてもらうと、ストーリーの流れだったり、登場人物の関係性だったりっていうところと、僕ら6人の関係性が相似系というか、リンクして見えてくることもあるのかな?と思ったりするので。

――そこまで考えていたとは。

北山:最近はそういう、物語の中の中まで入って行って、いろんな構造を見つけるのが好きな人が増えてるって聞いたので。

村上:「深読みしすぎでしょ」って思うくらい(笑)。

北山:でもその反応を見て、脚本家が次のストーリーを考えることもあるらしいので。それで言うと、「エンディングテーマを歌ってる歌手たちの関係もそこにリンクしてるよ」っていうことになると、楽しいんじゃないかな?って思います。

村上:そこまで思わせれば勝ちとも言えるしね。

北山:その意味で、作詩をした安岡は台本を読んでますけど、Yaffleさんはたぶん読んでないですね。

黒沢:読んでないね。

北山:音楽家として、音楽家である我々をどう生かそうか?ってなった時に、そこにチームワークっていうものが音楽として自然とあったということが、たぶんアニメともリンクしていると思うので、その構造を見つけてもらえると面白いのかなと思ったりします。

北山陽一

北山陽一

――いいヒント、いただきました。もう一回聴き直します。

村上:でもね、そうは言っても「ゴスペラーズみ、少し足りないね」っていうのが(制作の)最終盤にあったんですよ。それで大サビにコーラスを加えて、ちょっとこっち側に寄せることで、ちょうどいい具合に変わったかなって思います。そこのところは、こっちからの提案だったんですよね。それでちょうどいい具合に、全体的に空間系のサウンドの中で、あそこだけ肉体感を出すことで、バランスがうまく取れたのかな?っ思います。

安岡:“重なり合う”“誰もが”っていう、掛け合いのところですね。

村上:そこでAnlyが、ちゃんと自分を持ちながら人の輪に入っていけるタイプだったのもすごく良くて。いい意味で流されない、媚びないっていうか…媚びる/媚びないとかっていうことすら考えてないんだと思うけど。

北山:ただそこにいてくれる。

村上:そうだと思うんです。彼女は人間と音楽が直結してるような人だなって、6,7年前に出会った時から感じていたので。しかも、アニメで描かれるような世界の中では、主役の先生がいるとしても、いろんな人がいろんなタイミングで入って来る中でのチームワークが必要じゃないですか。患者の人だって、その輪に入っていかなければ治るものも治らないだろうし。そういう意味でも、我々のチームの中に入って来るAnlyは、結構大変だったと思うんですよ。この話が来た時に、「私に何ができるだろう?」って。

北山:結構考えたって言ってたよね。

村上:バーン!って歌う歌でもないし。もうちょっと声を張る歌だと、悩まなくてもいいところもあるじゃないですか。でも彼女は、スキル的にもできることが多いし、張るわけでもなく、引っ込むわけでもなく、AnlyがAnlyとしてのたたずまいでそこにいてくれる。結果としてそういうものになったので、それこそが彼女の実力なんだろうなと思います。

――一つお聞きしたかったのが、AnlyさんもYaffleさんもゴスペラーズから見れば若手のアーティストで、そういう人たちとコラボすることで新しい刺激を求めるみたいな、そういう意識もあるのかな?と思うんですね。

黒沢:それは、我々が共通して好きなブラックミュージックの文脈からすると、若い勢いのあるプロデューサーを起用して、ベテランが何かしら違う切り口を出すっていうのは、わりと普通のことなんですね。やっぱり常にアンテナを張っていて、「この人はいいね」っていうのはずっと見てるんですけど、それは元々の出自の音楽性というものもあると思います。そういう意味でYaffleくんは本当に良かったし、歌モノと今の感覚みたいなところのバランスが、すごくゴスペラーズと親和性が高いんじゃないかな?と思ってたんですよ。Yaffleくんがやった藤井風くんの曲とかを聴いてると、新しい部分もあるんだけど、オーソドックスなこともできる人だから、たぶん親和性は高いだろうと。そのフレッシュな感覚を、アルバムの何曲目みたいな形で埋もれさせるのはもったいないと思ったんですね。せっかくならこういう、ちょっと変わった企画の中で一緒にやれるのは、本当にタイミングとしても絶妙だったなと思います。

――そうですね。まさに。

黒沢:僕ら自身ができることはすごくオーソドックスで、はっきりと歌モノじゃないですか。我々がもうちょっと、音楽性としていろんな方向にハッチャケてたら、逆に後ろ(サウンド)は安定したほうが良かったりするかもしれないし。そこで「我々をどういうふうに料理してくれますか」というものは、5人とも常に持ってると思います。

北山:今回Yaffleさんとお仕事させてもらって、すごい勉強になったのは、「捉える力」ですね。アニメやドラマを作る映像の人から見た、音楽に対するリクエストって、結構特徴があるんですよ。音楽家から音楽家へのリクエストと、映像の人から音楽家に行くリクエストは毛色が違うんですけど、それをそのまま捉えて、言われたまんまの音を出してくるんですよね。言葉を音にする変換が速くて、「これはすごいな」っていうのを間近で見せてもらえたので。

黒沢:Yaffleくんは劇伴もやってるからね。

北山:そりゃ、この才能はほっとかないよねっていう感じですね。映像側からすると当意即妙というか、言ったらそのまんまの音が出てくるわけですから、これはすごいなと思って、楽しかったです。

村上てつや

村上てつや

――話が一回りして、30周年の話になりますけど、ベースになる歌モノは変わらず、そうやって新しいクリエイターから刺激を受けつつ、その都度いろんなやり方を考えて進化していくのが、ゴスペラーズがここまで第一線で活躍し続ける秘訣というか、一つの方法論なんだなという気がしてます。

村上:それは、我々が程良い才能だったからかもしれないですね。やっぱり(グループ内で)完結する能力っていうのは、諸刃の剣というか、閉じてしまうから。

――ああ、たとえば、音楽的に強力なリーダーがいて、内部で全部作ってしまえるとか。

村上:そうそう。「お前は俺の言ったことをやりゃいいんだ」っていう関係性だったら、もしもそこで結果が出なかったとしたら、しんどいじゃないですか。でもうちは素直に「補完するところは補完してくれ」と。自分たちにできることとできないことがわかってるから、「こういうのは外の人に投げたほうがいいよ」とか、「Yaffleくんにコーラスも作ってもらったほうがいいよ」って言えるんですね。「俺たちが全部やります」っていうところだけで押しきれないのは、(メンバー同士の)組み合わせの運の良さはあったかもしれないですよね。

――面白いです。なるほど。

村上:いいバランスで、強気で行けるとことと、弱気になれるところと、両方あるんですよ。メンバーの中の話でも、「俺に任せろ」という時もあれば、「おまえに任せた」という時もあるし。

北山:「頼むからお願いします」もある(笑)。

安岡:軽く「お願いね!」もある(笑)。

村上:そういうグラデーションがあるのが、いいところかもしれない。それはもう、かなりハモリに近いからね。

黒沢:まさに、だね。ハーモニーだ。

村上:二声ぐらいでバーン!と行くハモリじゃなくて、五声あるからこそのハーモニーというかね。そういうことにみんながいろんなタイミングで、いろんなところで気づいて、積み重なっての「G30」なんじゃないですか。

――素晴らしいです。そしてこのあと、『ゴスペラーズ坂ツアー2025 “G30”』が4月6日から始まります。どんなツアーにしたいですか。

安岡:今回は初めて行く街が多いツアーなので。

黒沢:ずっと行けなかったところにやっと行ける。

安岡:自分の街に来てくれたから、初めてゴスペラーズのライブに生で触れてみようと思ってくれる人もたくさんいると思うので。そういう意味では、必ず代表曲はやりますし、その上で、30年やった今のゴスペラーズっていうものに、初めて出会ってくれると嬉しいなと思います。音楽って、知った瞬間がその人にとってのリリース日なんですよね。30年前に僕らが作った曲だって、その人がその日に初めて聴いて、いい曲だって思ったら、その人にとってはその日がリリース日なので、そういう出会いをまた積み重ねていけるといいなと思っています。

取材・文=宮本英夫

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