Ms.OOJA 撮影=ハヤシマコ
『40』(2023年)以来、約2年半ぶりのオリジナルフルアルバム『最終回』をリリースしたMs.OOJA。キャリア10枚目のオリジナルフルアルバムとなった同作は、40代になったMs.OOJAの人生観や日常の過ごし方が感じられる内容となっており、さらに「物事の終わり」の捉え方についても聴き手に問いかけるものになっている。収録曲は、亀田誠治がアレンジャーを担当し、her0ism(ヒロイズム)がプロデュースを担当した「Hidamari」(テレビアニメ『妻、小学生になる』(2024年/TOKYO MX)エンディング主題歌)を含む計10曲。各曲にはいろんな「最終回」の様子が描かれている。そこで今回は同作について、Ms.OOJAに話を訊いた。
Ms.OOJA
――『最終回』は、人生にはいろんな最終回があることを実感できるドラマチックな作品内容になっていますね。
歳を重ねるごとに「最終回」に直面する機会がどんどん増えていきますよね。そのたびに「強く生きていかなくちゃ」と思うんです。ただ、出会いと別れを繰り返すのが人生というものですが、別れに関しては慣れることはできない。そういった思いをしっかり抱えて「自分として生き抜いていこう」となるんです。その上で、今回のアルバムには「今ある時間を充実したものに」というメッセージを込めました。
――年齢を重ねると自分の人生の終わりも意識し始めますよね。
40代になった瞬間、今まで以上に自分の最期が頭をよぎるようにもなりました。いろいろ考えなきゃいけないな、準備しなきゃなと。思いますよね?
――すごく思います。部屋を見渡して「人生も半分くらいまで来ているから、そろそろ整理していかなきゃ」と断捨離したりして。
そうそう、すごく分かります。いろいろ整理しないとなって。あと部屋という部分では「ここにいつまで住むんだろうな」とか。さらに言えば「今世のうちにもっと大きなお家に住めるのかな」とか(笑)。こういうことってつまり、確実に終わりを意識してのこと。そういう気持ちが出てきているからこそ、『最終回』を歌える気がします。
Ms.OOJA
――Ms.OOJAさんの楽曲は以前から「終わり」と「始まり」を歌った曲が多いですよね。
どんなことでも「終わらないと、始まらない」と考えているんです。人は、持っていられるものには限度がある。なにかを手放さないと、新しいものって手に入れられないはず。つまり、手放すことで新しい発見が得られる気がするんです。だから「最終回」ってネガティブなように見えて、ポジティブにも捉えられるのではないでしょうか。
――なるほど。
何事も必ず終わるから、人生はドラマチックになる。だからMs.OOJAの恋愛ソング、応援ソング、人生ソングは「終わり」がたくさん出てくるのかも。だけど「最終回」や「終わり」という言葉をどう捉えるか、人それぞれだからこそ、それが大切になるのではないでしょうか。なにも準備していない状態で「終わり」という事実と向き合うと、取り返しがつかない傷を作ってしまうかもしれない。みんな誰もが必ずなんらかの「終わり」を経験するので、こうやって歌で届けておくことで、そういうシチュエーションを迎えたときの感じ方の準備ができるんじゃないかなと。そしていざそういう場面が来たとき「そういえばMs.OOJAが歌っていたことって、こういうことなのかも」と思い出してもらえたら。それを歌で届けるのが自分の使命な気がしています。
Ms.OOJA
――『最終回』では、いろんな「終わり」を経験することで、誰かに対して優しくなれることも歌っていらっしゃいますね。でも、たしかにその通りです。
私もそうでしたが、若い頃は自分が生きることに精一杯だから、他人になかなか優しくできないと思うんです。でも年齢を重ねて、いろんな別れを経験することでちょっとだけ、いろいろ見えてきた気がしています。やっぱり、いろんなことを乗り越えたり、たくさん間違えたりして、そのたびに周りの人に支えられ、お叱りも受ける。そういったことから他人に対して優しさを向けることの意味に気づけるんです。なぜなら、自分自身がさまざまな形の優しさを受けてきたから。だから今の自分があるんだなと。
――あと「Oh Well」で歌っていらっしゃるように、しんどいことがあっても「まあいっか」と開き直る気持ちも、人生には必要ですよね。他人が発するシリアスな雰囲気などに流されず、自分にとっての「気楽さ」を追求した方がいい。
他人になにかを強く望みすぎると辛くなるし、他人の心を動かすのも難しい。自分が望むことを他人に委ね、理想の状態になるまで待つのは辛いことでしかない。だからこそ、基本的にはすべて自分を軸に生きた方がいい。自分はどう感じたいか、どうありたいか。それを大事にしていると「まあいっか」という言葉が出てくるんです。
――なにがあっても笑っておけば、大体のことは乗り越えられたりしますし!
ニコニコして「まあいっか」で生きていれば、それを見た周りの人もリラックスできたり、幸せになれたりするから。自分が見せたい人物像、もしくは自分が見たい人物像を自分で近づけていくと、周りもそういう風に見てくれるようになるんじゃないかなと考えています。
Ms.OOJA
――4月よりスタートする『Ms.OOJA Zepp Tour 2025』は、そういった生き方の大切さが実感できるものになりそうですね。
特に、4月は新生活の時期ですから。ワクワクもあれば、不安もたくさんあるはず。今回のZeppツアーは、いろんなものを抱えている方にとっての景気付けになってほしい。だから、元気になってもらえるセットリストを考えています。
――4月って出発点でもあり、その後の自分の道が決まる人生の分岐点でもありますよね。
学校でも、社会でも、新しい場所でなにかを始めると分からないことだらけ。失敗するのも当然のこと。でも、怖がらずにチャレンジして欲しい。あと、本当に辛くなったときのための逃げ道も作ったらいいと思います。一方で、長く続けることの良さも必ずある。長くやることの良さは、それをやった人にしか分からない。それを積み上げていくのって本当に苦労するけど、その苦労を体感するのも経験として良いこと。いろんな覚悟や決意を固めてがんばろうとしている方たちに、このライブツアーをお届けできたらと思います。
取材・文=田辺ユウキ 撮影=ハヤシマコ
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