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Empty old City、1stワンマン『Blood in the Void』をレポート 「いつも僕らの自由な作品を楽しんでいただいてありがとうございます」

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Empty old City

Empty old City

1st ONE-MAN LIVE『Blood in the Void』
2025.3.29 渋谷WWW

コンポーザー&プロデューサーのNeuronと、ボーカリストのkahocaによる音楽ユニット・Empty old City。2020年の結成以降、インターネットを主軸に活動をしてきた2人は、神秘的でありながらもどこか退廃的で、それと同時に多彩なバックグラウンドを感じさせるエレクトロサウンドと、そこに綴られたメロディを紡ぎ上げていく美麗な歌声をもって、国内外の音楽リスナーから熱い支持を集めてきている。そんなEmpty old Cityが、3月29日(土)に渋谷WWWにてワンマンライブ『Blood in the Void』を開催。結成4年半して初の単独公演というファン待望の一夜は、瞬く間にチケットが完売となった。今回のライブタイトルは、3月12日に配信リリースされた1stフルアルバム『Blood in the Void』と同名なこともあり、同作の世界観を表現していくものだと予測していたのだが、蓋を開けてみれば、Empty old Cityが結成以降に発表してきた楽曲をほぼすべて披露するという、あまりにもタフで、濃密なステージを繰り広げた。

アルバム『Blood in the Void』のオープニングSEでもある「BitV」が流れる中、Neuronとkahoca、サポートを務めるいけだゆうた(key)が姿を現す。拍手と大歓声を受けて持ち場につくと、そのまま「アニマリズムと25人の子どもたち」へ。ステージ背面には、晴れ渡った青空の下、文明が崩壊した後の世界を思わせるような廃墟が映し出される。演者の顔があまり見えないようなライティングが施されていたこともあり、2人の表情までは分からなかったのだが、ダンサブルなビートに身を委ねながら、冷静に、それでいて情熱的に届けられるkahocaの歌声が、とにかく心地よい。曲が終わると幻想的なサウンドがフロアを満たしていき、「Rhapsody」に繋げていく。この日披露された大半の楽曲には、原曲には存在していなかったイントロが新たに追加されていて、オーディエンスの“次に来る曲は何か”という期待をより高めていた。また、次の曲が分かった瞬間にフロアから大歓声が上がるところからも、オーディエンスがどれだけこの日を楽しみにしていたかが伝わってくる。そんなフロアの熱をさらに高めるように、「Chronicle A」では服の裾を揺らすほどの強烈な重低音をフロアに放ち、続く「ミレニアの水槽」を透明感のある歌声でメロディを紡いだkahocaは、曲を終えると「ありがとう」と感謝を告げた。

「無事に今日を迎えることができて、みなさんに音楽を届けられることを嬉しく思います。今日はEmpty old Cityの音楽に存分に浸って、楽しんで行ってください」(kahoca)

Neuronがメロウな旋律を奏でる中、kahocaがオーディエンスに話しかけると、「Lazy and Loose」へ。ステージ背面の映像は夕焼け空に変わり、荒廃した街を赤く染め上げる。

前述の通り、この日はほぼすべての既発曲が披露されたのだが、それぞれ大まかにブロック分けがされていた。Neuronがサンプラーとキーボードを操り、静と動を描いた「Interlude;BitV」から始まった中盤戦で強いインパクトを残したのは、「Area G」「Death Designer」「Gemini」の3連発。どれも原曲が持っているオリエンタルな空気を増幅させるイントロが追加され、トライバルなサウンドでフロアを高揚させていた。「アーバンクルーズ」や「お一人様と侵略者」は、アコースティック形式で披露。kahocaとNeuronが向き合いながら音を重ね合わせると柔らかな空気が広がっていったのだが、あまりチルな空間になりすぎないようにするNeuronの軽快なプレイが抜群に心地よかった。

「Buffer」の舞台背景が語られた「Bedtime story “Buffer”」が流れる中、サポートメンバーの今野颯平(Ba)とSo Kanno(Dr)が登場。後半戦はリズム隊を招き、より躍動感を増した演奏が繰り広げられた。「Enigma」はジャズ、「Moonian」はフュージョン、「ゴースト警告を唄う」はネオソウルと、さまざまな音楽要素を感じさせるバンドアレンジはどれも珠玉の出来栄え。ポストロック的な雰囲気を帯びた「Astronomy」では、ステージ背面に映されていた廃墟が、満天の星空が浮かぶ冬の夜を迎える中、それとは裏腹に、細かな表情は分からないながらも、サポートメンバーの演奏を受けたkahocaとNeuronの一挙手一投足から高揚している様子がしっかりと伝わってくる。本編ラストの「ノスタグラム」では、バックライトが激しく明滅する中、孤独や焦燥を突きつけるスリリングかつ熱を帯びた演奏に大歓声が巻き起こった。

この日はアンコール含めて全28曲が披露されたのだが、エレクトロサウンドを軸にしつつもそのベクトルは実に様々で、改めてEmpty old Cityの広大な音世界に魅了されると同時に、創造力の赴くままに自由に楽曲を構築していくこのユニットのスタンスを明示したステージになっていた。あくまでも音楽を届けることをメインにした構成になっていたこともあり、MCの回数は曲数にしてみるとかなり少なく設定されていたのだが、その中でNeuronが明かしていたことがあった。彼は先日、知り合いの音楽家と話していたときに、「Empty old Cityはいつも自由に作品を作っているのがすごいけど、幅広い作品を出しても毎回楽しんでくれるファンがいるのがすごい」と言われ、改めて感じたことがあったそうだ。

「僕がどんな曲を作っても、kahocaがちゃんとEmpty old Cityとして最後にまとめて表現してくれると思っていたんですけど、それに加えて、毎回楽しんでくださるみなさんに対しての感謝が、その言葉を聞いてより一層大きくなったので、今日はそのお礼を言いたいと思って来ました。みなさん、いつも僕らの自由な作品を楽しんでいただいてありがとうございます」(Neuron)

その気持ちを胸に、ここから2人はより自由に音楽を作っていくだろう。この日のラストナンバーに選ばれたのは「Cipher」。ブライトなサウンドと真っ白な光が渋谷WWWをまばゆいまでに包み込んでいた。

この日、Empty old Cityは、2025年10月19日(日)に渋谷WOMBにて『Empty old City 5th Anniversary Live “Quintennial: recall”』を開催することを発表。このライブはゲストを招いて行なわれることになっており、詳細は後日発表される。渋谷WOMBという会場の特性上、照明・音響共にEmpty old Cityの音楽により深く没入できる空間になることは間違いない。是非とも多くの音楽ファンに体感してもらいたい。

文=山口哲生

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