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【対談】ワタナベシンゴ(THE BOYS&GIRLS)×橘高連太郎(Sunny Girl) 互いに認め合い、相思相愛、だけど付かず離れず切磋琢磨しあう二人が語り合うロックバンドの理想像

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L⇒R:ワタナベシンゴ(THE BOYS&GIRLS/歌)、橘高連太郎(Sunny Girl /Gt, Vo) 撮影=大橋祐希

L⇒R:ワタナベシンゴ(THE BOYS&GIRLS/歌)、橘高連太郎(Sunny Girl /Gt, Vo) 撮影=大橋祐希

来年3月に迎える結成15周年に向かう1年間を「ROAD TO 15th ANNIVERSARY」と称して動き始めているTHE BOYS&GIRLS。3月22日に東京・下北沢SHELTERで開催された『THE BOYS&GIRLS × SHELTER《FROM SAPPORO 2MAN》』はSunny Girlを迎え、濃密な日々の幕開けを飾るライブが繰り広げられた。この公演の数時間後に行われたTHE BOYS&GIRLS ワタナベシンゴ(歌)、Sunny Girl 橘高連太郎(Gt, Vo)の対談をお届けする。

――THE BOYS&GIRLS(以下、ボイガル)とSunny Girlの最初の接点は?

ワタナベ:名古屋だよね?

橘高:名古屋です。

ワタナベ:2023年のR.A.Dのイベントだったと思います。

――Sunny Girlにとっては、憧れの先輩との初対バンだったのでは?

ワタナベ:そういうのは、こいつの場合はないですよ(笑)。

橘高:なんで決めつけるんですか?(笑) もともと曲を聴いたりして知ってたバンドと対バンをする時は、「どういう感じなんだろう?」ってなりません?

ワタナベ:そうだね。あの頃、何歳だった?

橘高:23歳でした。「仲良くなりたい。知りたい」と思ってました。

ワタナベ:連太郎の方から話しかけてきたから、「ハートが強いんだろうな」と思った。

橘高:自分にはないものを感じると、そうなるんですよね。

――初めてボイガルの曲を聴いたのはいつ頃でした?

橘高:専門学校の時でした。ウチのベース、小野くん(小野友揮)に教えてもらったんだと思います。

ワタナベ:その頃、もうSunny Girlを始めてた?

橘高:いや。まだバンドをやってなかったです。「ボイガルのライブ、観てみたい」と思いました。たしかサーキットで観たことがありましたね。

ワタナベ:俺がSunny Girlのライブを初めてちゃんと観たのは、対バンした時の名古屋です。めちゃくちゃ良くて。言い方は変ですけど、「負けたなあ」という感じがありました。当時のSunny Girlは、めちゃくちゃ尖ってましたし。

橘高:あの頃は結構そうですね(笑)。

ワタナベ:「ぶちかましてやる!」っていうライブをしていて、「これはちょっと厄介なバンドと出会ってしまったな」と(笑)。「付き合いが長くなりそうな」と言うとおこがましいですけど、そんなことも思いましたね。それと同時に「付き合いが長くなるバンドでいなきゃいけないな」というのもありました。

――それ以来、対バンすることはありましたか?

ワタナベ:お互いのツアーで対バンをしたりはなかったですけど、フェスとかで一緒になる機会は増えました。ライブハウスが組んでくれたイベントで一緒になったりとか。

ボイガルは「優しさで勝つ」みたいなところがある。そういう強さって結局、一番強いと思います。(橘高)

――イベントの時は、先輩後輩関係なく「ぶちかます!」という気持ちで臨んでいますか?

橘高:はい。多分、どのバンドもそうなんだと思います。

ワタナベ:「負けねえ!」というのが大前提で、その気持ちがあってバンドを組んでますからね。「誰もわかってくれないからバンドを始めた」みたいなところがあるので。もちろん、知ってもらいたくて、聴いてもらいたくてやってるので、矛盾しているようではあるんですけど、「誰もわかってくれなくてもやる!」という気持ちは大前提としてあるんです。「あいつが持ってないものを俺は持ってるはずなんだ。それを見せたい。それを出さなきゃ負けるんだ」みたいな気持ちはみんな持ってると思いますし、俺もいまだにその気持ちが心のどこかにありますね。

橘高:俺もそういう気持ちでバンドを始めたし、今でもありますよ。

ワタナベ:でも「俺が一番になってやる!」だけでやってたら、かっこよくないよね?

橘高:そうですね。

ワタナベ:お客さんは喧嘩を観に来てるわけじゃないから。時間を使って、チケットも買って来てくれた人が「ここに来て良かった」って最終的に思えなきゃ意味がない。

橘高:初めて名古屋で対バンした時の俺は「一番になってやる!」しかなかったです。でもボイガルのライブを観て、そういう意識が顕著に変わった気がします。アルステイクのひだか(ひだかよしあき)と、そんな感じのことを話したことがあります。初めて対バンした名古屋のイベントでボイガルはトリだったんですけど、「そんなんあるんや!?」というライブだったんですよ。

ワタナベ:そうなの?

橘高:はい。悔しい気持ちにすらならずに、気持ちよく負けた感覚でした。俺らの世代のバンドは優しいやつらから負けていく感じがあったんですけど、ボイガルは「優しさで勝つ」みたいなところがあって、「こういうのもありなんだ!?」って。そういう強さって結局、一番強いと思います。お客さんとしても「まじで来て良かった」ってなりますから。

ワタナベ:ウチはお客さんの年齢層が幅広いんです。お客さんそれぞれの感じ方があると思うので一概には言えないですけど、好きなように受け取ってくれてる感じがあるんですよね。お客さんから放たれる目に見えないパワーに感化されて、「自分もそうなりたいな」と感じるんですけど、それが今、連太郎が言ってくれたことなのかもしれないです。ロックってなんかモヤモヤしたものを爆発させたり、むかつくものに対して「ちくしょー! なんでなんだ?」っていうものだとは思うんですけど、自分には自分のロックがきっとあるんです。それを胸を張ってやれるようにならないとかっこよくないなと年齢を重ねる中で感じるようになりました。「温かさ」みたいなことは狙って出せるものではないけど、そういうものがライブで充満するようになった感覚はあるので、大事にしたいですね。

ワタナベシンゴ(THE BOYS&GIRLS/歌)

ワタナベシンゴ(THE BOYS&GIRLS/歌)

――連太郎さんはボイガルを「優しさで勝つ」と表現しましたが、ワタナベさんはSunny Girlをどのように感じていますか?

ワタナベ:今まで何回か観てきた中で感じるのは、「今日のSunny Girl、ここがめっちゃ好きだった」っていうのがあるバンドだということです。今日のライブで思ったのは、「俺も同じようなことがあった」みたいな感覚になるということでしたね。僕は連太郎がSunny Girlで歌にしているようなことを体験していなくて、当事者でもないのに、そういう気持ちになったんです。

橘高:嬉しいです。

ワタナベ:「そういう恋をしてきたような気がする」「そういう人がいる」というか。実際の自分の中には存在してないにもかかわらず、「俺もそういうことがあったな」みたいな気持ちになる感じが、今日のライブにはすごくありました。Sunny Girlのお客さんも、「私の気持ちを歌ってくれてる」「私のために歌ってくれてる」「俺が歌えないことを歌ってくれてる」っていう気持ちになるのかなと思いました。これは僕のロックンロールの定義の一つなんですけど……「自分のことを歌ってくれる」「自分のためだけに歌ってくれてる」って思うのがロックバンドのあるべき姿。それを今日のSunny Girlにめっちゃ感じたので、「ちゃんと戦って生きてんだな」って思いました。

橘高:嬉しくて今日はぐっすり眠れそうです(笑)。

――(笑)。おふたりは、プライベートでの交流はあるんですか?

ワタナベ:そういう感じでもないんですよ。そもそも僕は、あんまり「飲みに行こうよ」という感じではないので。

橘高:俺もそうなんです。

――お互いについて意外とまだ知らないことも結構あるんじゃないですか?

橘高:全然あると思います。

ワタナベ:そうだよね。

橘高連太郎(Sunny Girl /Gt, Vo)

橘高連太郎(Sunny Girl /Gt, Vo)

――この機会に基本的なことも語り合ってみます? 例えば「好きな音楽は?」とか。

ワタナベ:連太郎のルーツは何?

橘高:ブルーハーツと銀杏BOYZです。

ワタナベ:それでバンドを始めようと思ったの?

橘高:そうですね。ギターを始めたきっかけは、それです。

ワタナベ:意外だね。

橘高:意外ですか?

ワタナベ:うん。でも、結構いろいろな音楽が好きだよね?

橘高:そうかもしれないです。

ワタナベ:メロディックも好きだよね?

橘高:好きです。バンドを始めたきっかけは、Ken Yokoyamaです。

ワタナベ:だからさっき俺が楽屋でKen Yokoyamaの曲を歌いだしたら、速攻で反応したんだ?

橘高:はい(笑)。パンクからメロコアに行って、いろいろ聴く感じになりました。シンゴさんのルーツは?

ワタナベ:俺はGOING STEADY。それが最初の入り口。「えっ? いいんだ、これで? こういう音楽がいる世界でいいんだ? やば!」ってなったのが中1。GLAYやラルクは小学生の頃から好きだったんだけど、日本語のパンクにゴイステで出会って、そこからいろいろ聴くようになった。メロコア、パンク、洋楽、ヒップホップも聴いて……っていう感じだったかな。俺、なんでも好きというタイプ。アイドルもポップスも好きだし。

――おふたりとも峯田さん(峯田和伸)の音楽から衝撃を受けたんですね。

ワタナベ:はい。田舎者の僕には衝撃でしたね。

橘高:リアルタイム世代ですか?

ワタナベ:ゴイステは、解散する直前くらいだった。

橘高:いいなあ!

ワタナベ:中1の時に「さくらの唄」はもう出てて。俺が中2の時に「童貞ソー・ヤング」だったかな? 「若者たち/夜王子と月の姫」が中3?

橘高:一番トキントキンの時じゃないですか。

ワタナベ:そう。あれはまじで衝撃だった。

橘高:俺はリアルタイムじゃなかったんですよね。リアルタイムだったら、かなり拗らせてたと思います。

ワタナベ:俺、やばかったよ。中1の時に学級目標みたいなのをみんなが画用紙に書くことになったんだけど、俺は「生活面の目標 忘れ物をしない」「学習面の目標 予習復習をちゃんとする」って書いて、その下にスペースが余ったから、「もしも君が泣くならば僕も泣く!! もしも君が死ぬならば僕も死ぬ!! もしも君が無くなれば僕も無く!! もしも君が叫ぶなら僕も叫ぶ!!」(※GOING STEADY「もしも君が泣くならば」の歌詞の引用)っていう4行を書いた(笑)。

橘高:俺も、もし中1の時にリアルタイムでゴイステを聴いてたら絶対に書いてた(笑)。

ワタナベ:他のクラスのやつがそれを見て、「シンゴ、何これ? くっさーい!」って言うから、俺は「うっせーよ! お前らにはわかんねえだろうな!」って(笑)。当時、付き合ってた女の子に曲を聴かせたこともあった。

橘高:『クローズ』観て喧嘩強くなったような感じと同じというか。そういう感覚で書いたんでしょうね。

ワタナベ:ほんと、そう(笑)。峯田さんの字も、めっちゃ真似たもん。

橘高:俺も中3の時にメロコアを聴くようになって、同じような感じでした。小学校の頃に親の影響でブルーハーツとかを聴いてたんですけど、その影響をアウトプットすることはなかったんです。でも、中3くらいでハイスタとかを聴いちゃったら、「英語以外、だめでしょ」ってなって、ギターを弾き始めてからはストラップを思いっきり長くして、横山健さんを真似して数珠みたいなネックレスもつけてました。学生服にそれですよ(笑)。

ワタナベ:いいじゃない。そういうのもその時期ならではの宝物だから。

ワタナベシンゴ(THE BOYS&GIRLS/歌)

ワタナベシンゴ(THE BOYS&GIRLS/歌)

15周年を迎えてからの1年をアホなものにするためには、その前の1年を強いものにしないといけないなと。(ワタナベ)

――では、ボイガルの「ROAD TO 15th ANNIVERSARY」についてのお話に移りましょう。今日のお昼にボイガルとサニガの2マン『THE BOYS&GIRLS × SHELTER《FROM SAPPORO 2MAN》』が開催されましたが、このライブを皮切りに「ROAD TO 15th ANNIVERSARY」を展開していくんですよね?

ワタナベ:はい。2026年で15周年なんですけど、今までは周年っていうものにまったく興味がなくて。でも、15周年が来年だと知った時に「そこまで来てたんだ? それはめっちゃ素敵なことじゃないか」ってなったんですよね。メンバーがやめたりとか、いろいろあったんですけど、スタッフたちにも支えられてここまで来られて、仲間も増えて、全国各地にライバルと言えるような存在も増えてっていう中で、「めっちゃいい1年にしたいな」って思いました。別に15周年のために14周年を過ごしたいというわけではなくて、いつでも「今がすべて」という気持ちでやってるんです。でも、15周年を迎えてからの1年をアホなものにするためには、その前の1年を強いものにしないといけないなと。だったら面白がってくれるライブハウスやイベンターさんとかの力も借りながら、強い相手との2マンをやっていきたいなと。その最初の2マンだった今日は、シェルターの店長の吉村さんに「じゃあ、Sunny Girl」って言われて、「最高な始まりだ!」って思いました。

橘高:嬉しいですね。

ワタナベ:主旨を伝えつつ吉村さんに相談したら、「ちょっと考えていい?」と。「誰になるんだろう?」って待ってたらSunny Girlだったんです。

橘高:15周年に向かう最初の2マンなのが嬉しかったし、情報解禁のシンゴさんのSNSを見て主旨がわかって、より嬉しくなりました。

――《FROM SAPPORO 2MAN》は、今後も全国各地で開催されていくんですか?

ワタナベ:そうですね。現時点では何本やれるかわからないんですけど、やれるだけやりたいです。「次はいつなんだろう?」というところも含めて楽しんでもらいたいです。

――既に決まっている予定もありますよね?

ワタナベ:はい。5月27日は八王子RIPS。7月18日にまた下北沢SHELTERでやって、7月25日はF.A.D YOKOHAMA。そこからさらに2マンをやっていって、来年の3月26日、結成日にZepp Sapporoでワンマンをやります。

橘高連太郎(Sunny Girl /Gt, Vo)

橘高連太郎(Sunny Girl /Gt, Vo)

俺、まだ「15周年を迎える」っていう感覚がわからない。「気づいたら」というのが一番近い感覚なんだろうなと想像してます。(橘高)

――「ROAD TO 15th ANNIVERSARY」は、2マンライブがメイン?

ワタナベ:2マンがメインということでもないんですよ。この1年を「ROAD TO 15th ANNIVERSARY」と言ってるだけというか(笑)。《FROM SAPPORO 2MAN》が柱にはなっているんですけど、いろんなバンドのライブに呼んでもらったりイベントとかに出たりも含めて、何をやるにしても「ROAD TO 15th ANNIVERSARY』というのを念頭に置いておきたいということなんです。

橘高:俺、まだ「15周年を迎える」っていう感覚がわからないんですよね。今日のライブのMCでシンゴさんが言ってましたけど、「気づいたら」というのが一番近い感覚なんだろうなと想像してます。

ワタナベ:結成年はわかるけど、周年って実感しにくいよね。でも「15周年」って、なんか楽しそうじゃん?

橘高:そうですよね。今日のMCで「15周年でなんか面白いことやりたい。チャーハン作りたい」って言ってたじゃないですか?(笑)。俺もそういう感覚でいたいなと思ってます。

ワタナベ:チャーハン作るとか、絶対やんないけどね(笑)。

橘高:俺もバンドを続けたいし、「Sunny Girlが15周年を迎える時、ボイガルもいるだろうな」と思ってます。

ワタナベ:そうありたい。そう思うようになった。長くやるのが正義だとは思ってないけど。1、2年の活動でかっこよく散っていくバンドもめちゃくちゃ美しいし、そういうバンドはたくさん知ってるし、長くやったから偉いとは思わない。でも、長くやったからこそわかることや見えるものは間違いなくあるので、今はそこに興味があるんだよね。今、バンドやるのがめちゃくちゃ楽しい。

――「ROAD TO 15th ANNIVERSARY」に関して付け加えて語っておきたいことは?

ワタナベ:ないです……って言うとあれだけど(笑)。とにかく一つひとつのことに改めて向き合って意味を見出していくっていうことに尽きますね。「15周年なんて関係ない」という気持ちも同じくらいあるので、楽しんだり、ふざけたり、苦しくなったり、悔しくなったりしながら、その一つひとつをちゃんと次のページに繋げるというか。「過去一番のライブをしたい」っていつも思うんですけど、ライブを塗り替えたくはないんですよ。塗り替えたら、塗り替えられたライブを観たお客さんが悲しいじゃないですか? そうじゃなくて、「あの日はあの日でまじで最高。次のページも最高だったんだ」っていう風にしたい。それでずっとやってきましたし、1ページあたりの濃密さをさらに強いものにしていきたいです。

――2マンの対バンに関しては、いろいろ声をかけている段階ですか?

ワタナベ:はい。5月27日の八王子RIPSはUNFAIR RULE。 7月25日のF.A.D YOKOHAMAはHERO COMPLEXに出てもらいます。他にもいろんな人たちとやることになるはずです。今後、初めて対バンする相手がいる可能性もあるでしょうね。そこもすごく楽しみです。どうなるのかわからないのでスリリングではあるけど、リスキーな賭けではないというか。お客さんにも「あいつは多分何かやってくれるだろう」って信じてもらいたいです。

 

――ボイガルは3月21日に新曲「モアフューチャー」をリリースしましたが、これは今抱いている心境がとても表れていますよね?

ワタナベ:そうですね。まじで売れなさそうな曲(笑)。札幌の後輩のKALMAの悠月(畑山悠月)と新曲をよく聴かせ合うんですけど、「いいのできた」って歌詞を見せつつ聴かせたら、「めっちゃいい! めっちゃいいけど、今それ書いちゃだめ」って。

橘高:あいつ、言いそう(笑)。

ワタナベ:「シンゴさんだわあ。もっと行ける、書けるっしょ?」って(笑)。「でも、これはバンドマンが喜ぶ曲」って言ってました。「お客さんがシンガロングする」「お客さんがステージに飛んでくる」というようなことは考えずに、とにかく後悔のない歌詞にしたかったんですよ。「札幌でやってる」っていうのがすごくあったので札幌の固有名詞を出したりしつつ、《最低な日だった》とか、今さら言わなくてもいいことも書いてます。そういうことも楽しく歌いたいなっていうのがあったので、サポートメンバーと曲を作ってレコーディングしました。演奏するのがムズいんですけど、多分ライブで育っていくと思います。

――《送りバントのような人生》とか、ボイガルらしい表現だなと思いました。

ワタナベ:僕は高校までずっと野球をやってて。身体が小さくてパワーもなかったので、打席に立った時に来るのが大体バントのサインだったんです。でも、「自分がアウトになってもあのランナーを次に進めるって、こんなロックンロールある? こんなロックンロールなサイン、あるんだ?」って思ってた。だからひたすらバントの練習をしていましたし、「そういうバンドになりたいな」と。ホームランを打てるはもちろんかっこいいけど、俺はライブを観てくれる人たちが次の塁に行けるような、「今日のボイガル、大ゴケしてたけど、それに私は背中を押されたよ」っていう風になってほしいし、その方が性に合ってる。そういうことをこの曲を作る時に改めて思ったんですよね。

橘高:この曲、めっちゃボイガルですよ。

ワタナベ:うん。めっちゃボイガルの曲ができた。

橘高:バンドマンは共感するけど、こういうのはなかなか歌詞にはしないんですよね。「階段に座って」もそういうイメージの曲ですけど、「等身大でありつつも背伸びはちょっとしたい。だけど……」っていうのがぎゅっとなってる感じがすごいです。生き方を感じる曲、今歩いてる現在地の曲ですよ。

ワタナベ:未来のことを歌わないようにしてきたって言うと変だけど、俺は過去や現在地のことを歌ってきたんだよね。でも、15周年が見えてきた中、このタイミングでボイガルのことを知ってくれる人が増えてほしいと思ってるし、聴いてくれていた時期があったけど、いろいろな事情で離れてた人たちにも聴いてほしい。「相変わらずこんな歌詞、こんな歌でやってます」というのを素直にかっこつけずに出そうと思ってた。

 

――Sunny Girlも新曲「まだ書いている途中なのに」を3月12日にリリースしましたね。

橘高:はい。昔、YouTubeで途中まで聴ける曲ってあったじゃないですか?

ワタナベ:あったね。

橘高:サブスクの音源を途中で切って、「この後はライブハウスやCDでしか聴けません」っていうことをやってみたかったんです。「新しいことをしてるね」って言われたんですけど、俺としてはリバイバルみたいな気持ちでした。歌詞を書くのも楽しかったです。途中で切る用とフルで聴いてもらう用を考えたので。

ワタナベ:めっちゃリアリティがある。作られたものじゃないというか、生身の現在地で進行してるような曲だと思う。

橘高:嬉しい。お客さんに面白がってもらうのと同じくらいバンドマンに面白がってもらえるのが嬉しいです。

「またボイガル、こんなことやってる」っていう機会をこれからも作っていきたいし、Sunny Girlでそういうことを感じたい。だから、心と身体は大切にやっててほしいな、と。(ワタナベ)

――そろそろ対談を締めくくろうと思うのですが、最後に何か語り合いたいことは?

ワタナベ:ないです(笑)。

橘高:俺もないです(笑)。多分、聞きたいことは今までに聞いてきたんだと思いますし、「みなまで言うな」みたいなのがあるんだと思います。

ワタナベ:「みなまで言うな」はあるね。別に全部知りたいわけじゃないし、そこに重きを置いてないというか。

橘高:お互いのライブに呼ぶ、呼ばれるが、これからもきっとあるでしょうし。

ワタナベ:例えば朝まで一緒に飲んだり、連絡を頻繁に取り合うのが仲がいいのかって言えば、そうじゃないし。「またボイガル、こんなことやってる」っていう機会をこれからも俺は作っていきたいし、俺もSunny Girlでそういうことを感じたい。だから言えることは「心と身体は大切にやっててほしいな」と。思ってるのは、そういうことです。

橘高:来年のZepp Sapporo、まじで観に行きたいです。

ワタナベ:日曜日だから。

橘高:土曜日に俺らが札幌でライブをやって、日曜日に観に行くとかできたらいいですね。あと、言っておきたいのは何だろう? 「ツアーでSunny Girlを呼ぶか」ってなってもらえるバンドであり続けたいですし、「面白いことやってるな」って思われ続けたい。「面白いね。ちゃんとやってる。戦ってる」ってお互いに思いえ合える関係であり続けたい。ライブで「最近どう?」をやり続けたいという感じですよね?

ワタナベ:ほんとそうだね。今日も一緒に2マンをやってケツ叩かれた気持ちにもなったから、そういうのがこれからもあり続けてほしいです。

取材・文=田中大 撮影=大橋祐希

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