6thTAMのビジネスセミナーが開催~第1部「激動する欧米の音楽市場と非メジャーレーベルの現状」
「JAPAN国際コンテンツフェスティバル(コ・フェスタ)」のオフィシャルイベント「第6回東京アジア・ミュージックマーケット(6thTAM)」のビジネスセミナーが、10月23日東京・品川プリンスホテルにて開催された。
今年のビジネスセミナーは、欧米の音楽ビジネス市場にスポットをあて、第1部、「激動する欧米の音楽市場と非メジャーレーベルの現状」、第2部「日本アーティストの欧米進出と配信の現状」の2部構成で行われた。
第1部の、「激動する欧米の音楽市場と非メジャーレーベルの現状」では、ILCJ理事の上出 卓氏がモデレーターとして登壇し、パネラーには、文化人類学者で2007年よりJ-ROCKを研究しているアンジェラ・ビーティ氏、オーストラリアを拠点にインディ・レーベル、音楽出版社などを有するRubber Group of Companiesのマネージング・ディレクターを務めるデビッド・ヴォディカ氏、各国のインディーズ団体が共同で設立した「IMPALA」の理事を務めるヨナス・セオストロン氏の3名を招聘し、欧米の音楽市場について語った。
まず、デビッド・ヴォディカ氏がオーストラリアの音楽市場と、同国から世界的アーティストが多数輩出されている要因を発表。
デビッド氏によると、現在のオーストラリア市場は、2008年には3億9千万ドルの収益があり、2009年はフィジカルの売上が84%、デジタルが13%という割合で、デジタルの数字が現在も上がっているそうだ。
同国からAC/DCなど世界的アーティストが多数輩出されている経緯として「多くのアーティストはインディーズとしてスタートし、メジャーと契約している。」と述べ、その要因として、「インディーズの柔軟性」「ユニーク・オリジナリティ」「母国語が英語」「強い意志」を挙げている。
さらに、日本人アーティストの輸出について「音楽を輸出するということは簡単なことではないので沢山の熱意と犠牲と誠実さが必要。アドバイスとしては“良い音楽を作れ”ということを言いたい。厳しい時期であっても努力をし、ほかの人と違うことをやってもらいたいと思う。」と述べている。
続いてヨナス・セオストロン氏がヨーロッパ(EU)の音楽市場と同国における日本のアーティストの評価などを発表した。
セオストロン氏は、「EUの音楽市場はたくさんの国から構成されている多様な市場。参加加盟国が音楽産業に前向きではなく、市場が小さいので音楽産業の見方を根本的に変えなくてはいけない。かつては20社ほどの中堅のレコード会社が国際的に活動してきたが、今は4社になり、売上はこの5年で半分になってしまった。これはインターネットの著作権侵害が大きな理由で、被害は40万件にものぼっています。ネットは国境がなく、音楽も国境を超えていくので、著作権侵害を取り締まるための国際的な法律の制定の仕組みが必要だと思う。」とUEの音楽市場の現状語った。
先頃採択されたフランスの「スリーストライクアウト法」については「必要かもしれないが他の方法もあるかもしれない。しかし理解してほしいのはこのまま違法ダウンロードが進めば音楽業界がなくなってしまうかもしれないということです。」と述べた。
EUでの日本人アーティストの評価については、「日本のカルチャーに興味をもっている人がたくさんいるのでアメリカよりはEUのほうが日本の音楽は進んでいると思う。商業的に言えば非情に小規模だが、拡大する可能性は大きいでしょう。日本の特有性を強調することが重要です。」としている。
最後にアンジェラ・ビーティ氏がアメリカ・カナダにおいてのJ-ROCKの活動状況、海外から見たJ-ROCKの魅力などを語った。
ビーティ氏は、「ヴィジアル系がJ-ROCKのファンカルチャーの中で中核になっています。J-ROCKのファンになるきっかけとしては、アニメからということが多い。だが、19才以下はアニメのファンではなくネットや口コミがほとんどです。」と、アニメだけが海外に進出する方法ではないと語った。
ファンの行動、傾向としては、「アメリカにJ-ROCKカルチャーの流れを作ったファンたちはアーティストに対する所有感が強く、アーティストに関わるインタビューやコンサートのMCなど全てを翻訳し、すぐさまブログなどでネットにアップします。そして自らJ-ROCKバンドを結成し、再現しようとします。こういった動きの中、J-ROCKヴィレッジがL.A.やサンフランシスコでは出来上がりつつあり、日本の音楽ナイトも開催されています。以上から私は楽観的な印象をもっています。カルチャーマーケットも大きくなっているしファンも熱心なので、このエネルギーで市場
はこのまま維持されていくと思います。」とJ-ROCK市場の可能性を語った。
このセッション終え、上出 卓氏は、「東京アジアミュージックマーケットは年々海外との取引が活発になってきていると聞いています。ネット時代を迎え、世界へのアクセス、世界からのアクセスがやりやすくなりました。そういった意味ではますます海外との交流も進んでくるのではないかと思う。今後はしっかりした話し合いをもち新たな時代のルール作りというのを我々が権利者として、あるいは直接的に音楽ビジネスに従事しているものとして関わり合っていかなければいけないと思う。」と締めくくった。
▼第2部「日本アーティストの欧米進出と配信の現状」
→ http://www.musicman-net.com/cgi-bin/public/n-view.cgi?hid=07-49-0106
▼第6回東京アジア・ミュージックマーケット(6thTAM)
→ http://www.tamm.jp/
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