6thTAM、ビジネスセミナーを開催~第2部「日本アーティストの欧米進出と配信の現状」
第2部では、ライツスケール代表取締役 福光 衛氏が講師として登壇し、「日本アーティストの欧米進出と配信の現状」というテーマからノンパッケージに変わり期待が持たれる配信ビジネスの可能性を検証。
このセッションにパネラーとして登壇したのは、ヨーロッパで日本のアニメを紹介しているkazeという企業から設立されたWasabi Recordsのガエル・ブシュレアー氏、アメリカで日本のアーティストを展開しているレーベルMaru Musicを創立したロブ・ケルソー氏、JaMEという日本の音楽を紹介するウェブサイトを2004年に立ち上げたピエール・ルノー氏、アメリカの大手デジタルディストリビューターIODAでシニア・ディレクターを務めるアイザック・ベス氏、ソニーミュージックエンタテインメントで邦楽の海外マーケティングを担当している伊佐山 健氏の5名
Wasabi Recordsのガエル・ブシュレアー氏は、同レーベルでの事業展開について、「日本の音楽はEUでポピュラーになってきているが、未だに隙間市場なので、今は可能性のあるツールを全て使いクロスプロモーションの可能性を探っている。ヨーロッパ、とくにフランスでは、アニメとマンガという市場は強く、ジャパニーズカルチャーに興味のある人のコミュニケーションツールとして有効だと思います。」と語り、日本人アーティストの海外での展開について、分島花音を例に挙げ、「分島のファースト・アルバムをフランスをはじめ、ヨーロッパ全域でワールドプレミアとして日本より1週間早くリリースしました。リリース日にショーケースを行い、また、ヴィジュアル系とJ-ROCKファンに向けパーティーを開催。さらにJapan Expoでサイン会、ミニライブを行いました。CD、DVDの販売は非情にうまくいきましたので、次はファッションのパートナーを探している。」と語った。
これに対し、福光 衛氏は「アニメとのクロスメディア、アーティストの稼働をしっかり行っている。アニメの主題歌をやるということがワールドワイド展開の初めのステップになるというのは間違いないことだと思う。」とコメント。
続いてMaru Musicのロブ・ケルソー氏は、海外ファンの獲得方法として、「レーベル回りでコミュニティを構築することがJ-ROCKの顧客にリーチするのに有効。広範囲に訴求するのではなくコミュニティを構築してアーティストを紹介する。」と述べた。
アンティック-珈琲店-の海外展開でアニメコンベンションは行わずクラブツアーを行った背景について「J-ROCKやヴィジュアル系のファンは必ずしもアニメのファンじゃないので強制的にアニメのコンベンションに参加させることはできない。それからアニメコンベンションは多くの商品があるので、クラブツアーのほうが顧客にリーチできる。また、J-ROCK、ヴィジュアル系というのは熱狂的なファンがいるために、バンドの準備ができてない段階で上陸させたりする。北米でツアーを行うときには的確なパートナー選び、チーム作り、目標を明確にすることが必要。」だと述べている。
JaMEのピエール・ルノー氏は、同サイトでのヴィジュアル系以外のアーティストの反応について「ヴィジュアル系はトレンドとして1つの市場を作ったが、いずれは廃れていくと思う。ファンの一部はすでにヴィジュアル系に興味をもたくなくなってきており、その他のジャンルにもアクセスがある。」とヴィジュアル系以外のジャンルにも可能性があることを示した。
また、日本の企業に対し「日本においてはインタビューのやり方が他の国と違い、プレスの自由度があまりありません。日本のマネージメントから前もって質問を提出してくださいと言われたり、写真をチェックされるということは、私達にとっては非情に異様なこと。より大きな海外メディアに載せてもらいたいのであれば質問を事前に要求することはやめるべきです。そしてインタビューの許可をもらうまでに3ヶ月もの時間がかったことがあるのですが、これはアーティストにとってもファンにとってもよくないこと。全ての日本企業にリアクションを早めてほしい。」と訴え、会場からは拍手が起こった。
IODAのアイザック・ベス氏は、欧米の配信の現状として、「DRMフリーのMP3を定額でダウンロードできるサブスクリプションサービスは大きな収入源になっている。着メロなども欧米では増えてきている。」と述べ、日本人アーティストの活躍の可能性に関しては、「日本のアーティストですでに国際的に成功している人もいます。デジタル配信の世界ではチャンスが多くあり、インディーレーベルには特に大きなチャンスがあると思う。ただ、課題は常にあって適切なバイヤーとアーティストを結びつけることが難しい。具体的に日本のレーベル、アーティストで考えると、もちろん課題はあると思いますが、乗り越えられない課題はないと思います。まずはいい音楽を作らなければならない。そしてどういうことを達成したいか、という目標をクリアにしなければならない。」と語った。
ソニーミュージックエンタテインメントの伊佐山 健氏は、ソニーミュージックの海外展開として、「最初に入念な準備をした。98年頃にアメリカ人だったらオルタナティブだと感じるんじゃないかと思うアーティストをアメリカのラジオプロモーション会社と一緒に選び、コンピを作りました。それをシリーズ化し、その中でも人気の高かったアーティストを集めSXSWでショーケースライブを開催しました。そこで現地のレーベル、プロモーターなどを呼んでオーディションのようなものを行いました。」と延べ、次に日本のアーティストが海外でビジネスとして成り立っている事例を紹介。
・パフィー
「アメリカにはいないユニークな存在ということがフックになった。一番大きな収入はアニメーションのキャラクター使用およびマーチャンダイジングで、複数のチャンネルからビジネスができた。」
・吉田兄弟
「楽曲の二次使用で十分な収入を得ることができた。海外の音楽市場では、二次使用に関してもしっかりと使用料を支払ってくれるので、総体的に収入を得るためには検討してもいいんじゃないかと思う。二次使用に関しては音楽出版社など現地でサブパブリッシャーを持っているような会社と仕事をするべき。」
・ポリシックス
「アメリカでは毎年のようにツアーを続けてファンを獲得し、マイスペースレコードとライセンス契約するに至った。イギリスではBBCの日本のスペシャル番組にブッキングした。これに出演したことで一般のファンだけでなく、カイザーチーフス、ブロックパーティーのようなアーティストたちに浸透し、海外アーティストとリミックスをしたりツアーを一緒にまわったりして、ペイできるような状況になってきた。彼らが海外で活動すればするほど日本でも評価が上がり、それにともなって日本でのセールスや動員が増えたりと相乗効果をもたらしている。」
日本の音楽が海外で普及した理由として、「興味をもってくれたのは若い世代。彼らは生まれた頃から当たり前に日本のアニメに出会ったり、インターネットもあったりと全く違った物事のとらえ方をしていて、自由な発想で面白い物を求めている。インターネットが普及したことと、世代が変わったことが今の日本の音楽が欧米に普及した理由。」と語った。
セッションの締めくくりとして、福光 衛氏は、「マーケットを広げるという意味で海外に目を向け、ワールドワイドで通用するようなアーティストを情報を共有しながら作っていくということが大切。すでに成功例もあるので果敢にチャレンジしていくべき。」と語った。
▼第1部「激動する欧米の音楽市場と非メジャーレーベルの現状」
→ http://www.musicman-net.com/cgi-bin/public/n-view.cgi?hid=07-49-0105
▼第6回東京アジア・ミュージックマーケット(6thTAM)
→ http://www.tamm.jp/
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